越智家の棟梁   作:すりーみにっつ

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間違いないんよ

やや寝不足

いつもは六時半には目覚めるのだが、今朝は七時過ぎまで寝てしまっていた。

もっとも盆休みの真っ最中なので何の心配もいらないのだが。

 

「おはようさん、桂ちゃん。」

真知子叔母さんの声が布団の私に投げかけられた。

ふと隣を見ると将がいない。

 

「将君ならもう朝ご飯食べよるよ。」

真知子叔母さんの朝ご飯だ。私も早く食べなければ。

今日は墓参りに行く日だ。越智家代々の墓は歩いて十五分ほどの裏山にある。

 

将をなだめすかして連れて行かなければならない。途中までは車で行けるが、細い階段があるので、そこからは徒歩になる。

 

しかし昨晩の記憶はいったい・・・

 

ふすまを開けて隣の大部屋を覗く。

十畳の大部屋。

欄間には先祖の写真が額縁で飾ってある。中には桂太郎さんのものもある。

なんの変りもない。

 

「どうしたん、桂ちゃん。」

「いや、なんでもないです。」

 

昨晩の出来事を叔母さんに言おうか迷ったが、気がふれたと心配されるのがオチであろうからやめておいた。

しかし、気になることだらけだ。昨晩の出来事をそのまま言うことはないが・・・

 

「おばちゃん、桂太郎さんってどんな人だったんです?」

「突然なん?桂太郎さんはそりゃあ軍人らしい軍人・・・」

「いや、なんていうか、その。それじゃ人間味がないので・・・」

「ああ、性格とか人となりとかんこと?」

 

そうねえ、と叔母さんは首を傾げてなにかを思い出そうとしていた。

 

「案外ひがみっぽかったらしいんよ。」

「へえ」

「沖縄に行くと決まった時、桂次郎叔父さんやお父さんに「俺ばっかりだ!」って相当自棄になって愚痴を言ってたらしいんよ。」

 

「初めて聞きますね。」

「今更内緒にすることもなかろうからね。お父さんがこっそり教えてくれたんよね。」

 

私はあと一つ、確かめねばならなかった。

 

「あの~」

「なん?」

「恭子さんのこと。」

「桂太郎さんのお嫁さん?」

 

「火傷で亡くなったときに妊娠されてたらしいんですけど・・・」

「よう知っとるねえ。桂次郎叔父さんが話したんか?」

「ええ。」

 

私は嘘をつくのが苦手なので、桂太郎さんの写真を見ながら答えた。

「赤ちゃんも一緒に亡くなったんですか?

もう内緒の話もなにもないとおもうんですけど・・・」

私は含みを持たせて叔母さんに質問した。

 

「恭子さんと赤ちゃんは確かに、空襲のあとに亡くなったんよ。

二人とも亡くなった。間違いないんよ。」

 

叔母の言葉に含みがあったのか、それとも素直に亡くなったという事実を教えてくれたのか。

はたまた仮に桂太郎さんと恭子さん、二人の赤ちゃんが生き延びていたのが真実だとして、叔母もその真実を知らないのか。

 

気付くと蝉の声があたり一面に聞こえる。まさに夏だ。

さあ、叔母さんの作ってくれた朝ご飯を将と食べて、支度をしたら墓参りだ。

 

今年は念入りに墓参りをせねばなるまい。

 

 

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