ミストバーンは「この数百年の間、ほんの数回だがお前も私がこの姿で戦う所を見た事があるはず」
とキルバーンに述べています。

ならば、ミストバーンに「真の姿」を出させる強敵はどんな人物なのか。

思いついたので執筆します。


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ミストバーンに闇の衣を脱がせるほどの強敵というと、ロン・ベルク以上の強者ですよね…。


氷結の暴帝

 バーンパレス。

 そのホワイトガーデンに、一人の女性魔族が立つ。

 

 腰まで伸ばされた鮮やかな蒼髪がサラサラと揺れ、同じ色の猫を連想させる勝気な瞳が周囲の景色を映し出す。

 

 黒衣に身を包んでいる事もあり、染み一つない白い肌の美しさを際立たせている。

 黙っているだけで一枚の彫刻になるだろう。

 

 

 

 

「ここに居たのかい、フィン」

「キルバーンか。」

 

 仮面をつけた、道化師のような男が使い魔を連れて声をかける。

 

 

「ここは、このバーンパレスで最も美しい場所だそうだな。噂以上だ。」

「ウフフフッ、どうやら客人はご満悦のようだよ、ミスト」

 

 

 

 白い衣の男がジッと見つめてきたことで、フィンも顔を向ける。

 

 

「案内、感謝する。これを見れただけで来たかいがあるという物。流石、魔界を二分する宮殿。主の偉大さが伝わってくる。」

「……」

 

 多少の世辞が混ざっていないとは言い切れないが、本心でもある。

 とはいえ、何の返答も無い事に、フィンは少し困惑する。

 

 

「ああ、ミストは無口なんだ。」

「仲が悪いのか?」

「そんな事は無いよ、ねぇ、ミスト。」

 

 キルバーンの発言に、ミストバーンは何も返さないが、二人だけに通じる物がある事にフィンは気づく。

 

 踵を返し、ミストバーンは歩き出す。

 ついてこい、という事だろう。

 

 フィンは会いに行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 案内された玉座の間で、フィンは彫像のように全身をこわばらせる。

 

 

 玉座に腰掛けているのは、まるで枯れ木のような老人だ。深い皴、白い髭、手首は自分よりも細そうだ。 

 だが、その全身から立ち上るプレッシャーの前に、フィンは思わず膝をつかないようにするだけで精いっぱいだった。

 

 

 

「余が大魔王バーンだ。ようこそ、余の宮殿へ。氷結の暴帝フィン。」

「…ご招待、感謝する。」

「フフフ、随分と気に入ってくれたようだな。ホワイトガーデンはそんなに気に入ったか?」

「実に…素晴らしい場所でございます。」

「それは上々。あそこは余も気に入っておる場所でな。」

 

 

 雑談を交えながら、フィンの頬を汗が流れる。

 魔界の神、大魔王と名乗っているようだが、噂が真実だったためしがない。

 

 彼女はそう思って大魔王バーンからの招待を受けてきたが、確かに噂は真実では無かった。

 

 

 噂は過小評価され過ぎていた。

 

 

「時にそなた。我らが魔界の空をどう思う?」

「…暗く、よどんでいる」

「いかにも。余は地上に打って出る際に、一人でも多くの強者が欲しい。」

「…つまり。」

「すでに察していよう。」

 

 

 大魔王バーンは、椅子からゆっくりと立ち上がる。それはまさに、玉座から立つ王。

 

 

「余の、部下とならんか?」

 

 

 その一言は、ヒャド系とバギ系を極め、魔界の一角に氷の居城を打ち立てた女魔族を。

 

 

「…謹んで、お受けします。」

 

 跪かせた。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、良かったですねぇ。六大軍団の一つは安泰でしょう?」

「目つきは魅力的だったが…地上の全軍を任せる司令官には不向きか。もう少し、覇気が欲しい所よ。余を目前にしても力を試そうとするぐらいの、な。」

「そんな魔族なんてそうそう居ないでしょうに。まぁ、実力は申し分ない。そうだろう、ミスト?」

 

 

 相変わらず言葉を発する事は無いが、その動作から二人は肯定と受け取る。

 

 

 

 

~~フィンの日々、日常~~

 

 

「ガーハッハッハ!我輩はこのバーンパレス最大最強の守護神!キング、マキシマムである!」

 

 

 重量感溢れるオリハルコンの巨漢。

 それをフィンは、呆れの感情が表に出ないよう取り繕う。

 

 

 自分は大魔王バーンにとっては新参者。軽薄に見えて、マキシマムは有事の際には有能な男なのかもしれない。

 冷酷かつプロフェッショナルに、侵入者を始末する番人。何より、軽薄な言動は油断させるための演技という可能性はある。

 

 

 

「オリハルコンの生きた駒(リビング・ピース)…。貴公の身体に傷をつけられる者など、この魔界にもそうはいないだろう。」

「ほぅ、分かっているでは無いか。」

「貴公がバーンパレスを守っているのであれば、守りについては心配無用か。」

「いかにも!我輩のボディと、特殊能力があればどんな相手だろうと敵では無いわ!」

「なんと。オリハルコンの王というだけで完全無欠というのに、能力まであるのか。」

 

 

 多少の世辞混じりだが、煽てられたことにマキシマムの機嫌はさらに上がる。

 

 

「見せてやろう!キィ~ング、スキャアアアンッ!」

 

 

 

 マキシムは目を光らせる。

 どんな能力なのか、と興味深げなフィンの前で。

 

 

「げぇっ?!71、58、76?!」

 

 

 次の瞬間、フィンは相手がバーンパレスの守護神を名乗っている事、自分が新参者の部下である事を忘れ去り、眼前の非礼極まる巨漢をマヒャドで氷漬けにする。

 知られてはならない秘密を言い当てた事で、マキシマムの「キング・スキャン」がどんな能力なのか理解したからだ。

 

 

 

 その様子を、物陰からミストバーンは見ていた。

 

 

(ふっ、掃除屋には今の姿の方がお似合いだな。)

 

 

 とはいえ、このまま放置するわけにはいかない。怒り心頭のフィンが去ってから、ミストバーンは暗黒闘気でマヒャドの氷を砕きにかかるのであった…。

 

 

 

 

 

 

~~フィンの非日常~~

 

 

「ぐっ…。こ、これは」

「フフン。貴公の残された手は6つ、さぁ、どうする?どちらにせよチェックメイトだが。」

「こ、こんなはずでは…!」

 

 

 フィンはチェス盤をはさんで、対峙している鳥獣魔人をあざ笑う。

 

 ホワイトガーデンに椅子とチェス盤を持ち込んで対局中。

 フィンは勝利を確信している。相手の指し方、癖。そういったものは見切った。後はどう終わらせるかという段階。

 

 

 思った以上にチェスに熱中し、周りが見えていなかった。だから気づけなかった。

 

 

「ほぅ。多少厳しいが、巻き返せないほどでは無いな」

 

 

 その声の主に、フィンと鳥獣魔人はアストロンがかかったように硬直する。

 

 

「だ、大魔王バーン様?!」

「も、申しわけございません!」

 

 

 慌てて席を立とうとする二人の魔族だが、大魔王バーンを前に委縮し、動けない。

 

 

「代われ。余がここから逆転して見せよう。」

「は、ははっ!」

 

 

 鳥獣魔人はスッと席を立ち、二歩後ずさる。

 一方でフィンは奥歯をかみしめ、あっさりと席を譲った対戦相手を睨む。

 

 

(あっさりと交代して!ここからどうやって負けろと!)

(おまっ!俺如きが大魔王バーン様に逆らえるわけ無いだろう!)

 

 

 アイコンタクトだけで通じるほどの感情を乗せたやり取りを見ながら、大魔王バーンはフッと笑う。

 

「フィンよ。ここからお前が余に勝っても咎めたりはせぬ。形勢不利と知りながら、途中参加したのは余だからな。」

「…恐れながら大魔王バーン様、ここから逆転できる手があるのですか?」

「勝てないと思っているなら、交代したりなどせぬ。さて、余からだな。」

 

 

 

 フィンが手を指すたびに、時間が延びる。

 一方で大魔王バーンは即断。ノータイムで打つ。

 

 

 有利なはずの盤面が崩されていく。

 ナイトが、ポーンが、クィーンが消えていく。

 

 スッと、フィンは目を細め、覚悟を決める。

 

「お前の手は優秀だ。ゆえに読みやすい。」

 

 

 黒のキングに、白のナイトが迫る。

 

 

「…これで、目的は達しました。」

「ん?」

 

 

 そう言われ、大魔王バーンは盤面を見渡す。

 

「私には、もう動かせる駒がありません。敵の駒の移動範囲に、王を動かすのは禁止。」

「なるほど、お前の狙いは」

 

「「ステールメイト」」

 

 

 勝利確定から引き分けに持ち込まれた時点で、まぎれもなく大魔王バーンの勝利。だが、その結果は引き分けに持ち込まれた。

 

 

 

「ふ、フフフフフ…ハーハハハハハハハ!!」

 

 大魔王バーンには、勝利と敗北しかない。だからこそ「引き分け」に持ち込もうとしたフィンの思考に気付けなかった。

 

 

「良い余興になった。なるほど、お前は思ったより優秀だ。今後とも、励むが良い」

「ありがとう、ございます…」

 

 

 立ち上がった大魔王バーンは、しばしホワイトガーデンを歩いた後、去っていく。

 

 

 

 大魔王が去った次の瞬間、フィンはチェス盤を、鳥獣魔人は椅子を2つ持ち上げると駆け足でホワイトガーデンを去る。

 外縁部まで逃げおおせたところで、二人は大きくため息をつく。

 

 

 

「…一つ聞きたい。私は、どうすれば勝てた?」

「お、俺に聞くな…。それで次のチェスはどうする?このまま負けっぱなしは性に合わんからな。」

「日時は後日。とりあえず場所はホワイトガーデン以外。」

「当たり前だ!くっ、生きた心地がしなかったぞ…。」

 

 

 

 

 

 

 

~~フィンの戦い~~

 

 

 

 バーンパレスの外縁部。

 騒ぎを聞きつけ、降り立ったミストバーンの眼前ではすでに戦いが始まっていた。

 

 襲撃者と対決しているのは、フィンと冷気を纏った巨大な鎧。

 

 

「ミストバーンか。たまたま近くにいたのでな、先に始めさせてもらった。加勢は無用だ。」

 

 

 それに対し、眼前の火竜は咆哮を上げる。

 冥竜王ヴェルザーの手下では無い。血気盛んな魔界のドラゴンによる突発的な襲撃。

 

 

 

 そのブレスを、氷の鎧がその籠手で防ぐ!

 

 

「どうだ?氷の暗黒闘気、すなわち魔氷気。禁呪法で作り上げたモンスターを魔法耐性を持つ鎧に組み込めばここまで強くなる。」

 

 ブレスが途切れた瞬間、氷の鎧は籠手で殴りつける!

 

「グギャアアアアア!」

 

 

 そのまま冷気を浴びた火竜が悲鳴を上げ、それに対し冷気を纏った巨大な鎧が声を発する。

 

 

「いかがしましょうか、ミストバーン様。捕虜にしますか?」

 

 

 その問いに、ミストバーンは無言で返す。

 どうも捕虜にする価値すらない、とフィンは察する。

 言葉を発さずとも、それを読み取れる程度の歳月をフィンとミストバーンは過ごした。

 

 

「では、私が始末を。」

 

 

 スッとフィンが細い足を上げると暗黒闘気を込め、軽くけり出す。

 暗黒闘気の黒い塊が、火竜の脳天を穿ち、命を断ち切る。

 

 

「さて、自室へ下がらせてもらう。後片づけは、掃除屋に任せても良いな?」

 

 その問いかけに肯定で返すミストバーン。

 去っていく後姿を見送ったミストバーンの耳に、耳障りな騒音が響く。

 

 

「ヌウッ?!いかん、出遅れたか…。ちいっ、新参者の分際で出しゃばりおって。」

 

 

 今になって現れたマキシマムに一瞥も向けず、ミストバーンは歩き出す。

 

 やはりあの女魔族のほうが、マキシマムよりずっと上等だ、と。

 

 

 

~~決別~~

 

 

 ある日。フィンはバーンパレスに複数の発射口がある事に気付く。全部で、6本。

 地上征服の為の大砲か何かだろう。そう思ってどんな物か彼女は興味を持ち、調べた。

 

 調べてしまった。

 

 厳重な守りを掻い潜り、警備の眼を盗み…知ってしまった。

 

 

 

「…?!黒の、核晶!」

 

 

 大陸すら吹き飛ばす、魔界の爆弾。禁呪法に平然と手を出す自分でさえ、恐れて使わないシロモノ。

 

 

「あーあ。気づいちゃった。」

「?!キルバーンッ!まさか、最初から知っていて!」

「そうだよ~。いやぁ、驚いたね。自力でたどり着くなんて。ちょっと見誤っていたよ。」

「地上の人間どもを一掃するなら、一つで十分すぎる…。それをおそらく六個という事は、六芒星の形になるように打ち込んで…!」

「グレイトォ!すると、どうなると思う?」

「地上を、消し飛ばすつもり?なんのために?」

「ウフフフッ、魔界を覆う邪魔な地上を吹き飛ばし、魔界に太陽を齎す。それが、大魔王バーン様の真の計画なのさ。」

「なんてことを…。折角の豊かな地上をわざわざ破壊するなど。」

「残念だよ、キミともうお別れなんて。」

 

 

 振り下ろされる鎌を、フィンは素早く躱す!

 

「逃がさないよぉっ!クラブの8!」

 

 

 キルバーンがキル・トラップを発動!

 周囲から迫る無数のナイフに対し、フィンは自身を守るようにバギマで空気のバリアを張って凌ぐ。

 

 無差別に飛ぶ無数のナイフに、キルバーンは足を止めざるを得ない。

 

 

「ダイヤの3!」

 

 地中から伸びる尖った石柱を、フィンは足に暗黒闘気を込めると蹴り砕きながら駆け抜ける!

 

 

 

「…キル・トラップを二つも躱されるなんて。少し、甘く見ていたかなぁ?ウフフフッ、今ので死んでいれば、まだしも綺麗な死に様だったろうに。」

 

 

 キルバーンが笑う中。

 

 

 逃走を続けながら、フィンは自身のシモベに合図を送り、呼び寄せる。

 地上を征服したいのだ。地上を吹き飛ばされたら、支配すらできなくなる。まずは脱出。

 

 

 

「ミストバーン?!」

「…裏切るのか。」

 

 

 咎める声色に、フィンは足を止める。

 

「私は、地上を破壊する大魔王バーン様の計画を妨害する気は無い!ただ、協力する気になれない。私はこれまで太陽の輝きに満ちた地上を手に入れる為に力を身に着けてきたのに!」

「偉大なるバーン様に、お仕えできる名誉を捨てるのか。」

 

 

 スッ、とフィンは目を細める。

 

「確かに大魔王バーンは偉大だ。魔界の神というだけの事はある…。だが、見くびるな!貴様など私の相手では無い!」

 

 

 右手からマヒャドが吹き荒れ、ミストバーンに襲いかかる!

 

 

 ビュートデストリンガーを放つミストバーンだが、それは即座に作り出された氷の塊に防がれ、貫けない!

 

 

 一連の攻防の最中に、暗黒闘気の塊を蹴り出すが、ミストバーンに対してあまり効果が無い。

 

 どうやら純粋な暗黒闘気の実力はミストバーンが上と悟ると、フィンは魔法と剣で応酬する。

 

 

 

 幾たび、マヒャドが直撃しただろうか?

 バギクロスは何発直撃した?

 

 愛用の禍々しい長剣は何度か急所を斬っている。

 

 攻撃は通っているはずなのに、ミストバーンは傷ついた様子が無い。

 

 

「…言うだけの事はあるな。私の攻撃を凌ぐお前と、くらっても効果が無い私…一見互角に見えるが。」

「ならば、この場は引き上げるとしよう。」

「させぬ。」

 

 

 

 ミストバーンは暗黒闘気を圧縮し、右手に闘魔最終掌を発動。

 即座にフィンは禍々しい長剣をミストバーンの右手に振り下ろす!

 

 

「フハハハッ!我が超圧縮された暗黒闘気に砕けぬものなど…?!」

 

 だが、長剣は砕けない。

 どういう事だ?と困惑するミストバーンの足元がヒャダインにより氷漬けにされる。

 

「おのれっ!」

 

 焦るミストバーンに、悪魔の目玉を通じて監視していた大魔王バーンからメッセージが届く。

 

 

『…ミストバーンよ。許す』

「?!はっ…!」

 

 

 傍を駆け抜けようとするフィンのすぐ真横で、ミストバーンは首飾りを砕き、まばゆい光を放つ!

 

 

 

 その輝きにフィンは思わず目を抑え、その場に立ち止まってしまう。

 光が収まると、フィンの前に立って居るのは美しい魔族の青年だ。

 

 腰まで届く銀髪。端正な顔立ち。瞼はしっかりと閉ざされているが、額には「怪しい影」のようなデザインの飾り。

 

 

 

「…それが、貴様の正体か。」

 

 

 その美しさに一瞬見惚れたフィンに、ミストバーンは腕を振りぬく。

 

 

「きゃああああああ!」

 

 

 思わず悲鳴を上げ、フィンは膨大な風にあおられたかのように壁に叩きつけられる。

 

 愛用の長剣が手から離れ、床に転がる。

 

 

「しょ、掌圧?!こんな力があるなら、何故大魔王バーンの部下を…」

 

 

 力こそが正義の魔族である彼女は、思わぬダメージと、これほどの力を持ちながら大魔王バーンに忠誠を誓うミストバーンの考えが理解できず、硬直する。

 

 歩み寄ってくるミストバーンに、フィンは立ち上がり、抵抗する。

 

 

「バギマッ!」

 

 掌をかざされただけで、吹き消される。

 

 

「マヒャド!」

 

 バーンパレスごと氷漬け、とばかりに放った必殺の一撃。

 その吹雪の中、ミストバーンは平然と歩いて来る。

 

「攻撃呪文が効かない…?!ならば!」

 

 

 禁呪法による「氷漬け」対象となった物は身動きできず、氷の中でどんどん生命力を失う禁呪。

 だが、ミストバーンは平然と氷を砕く!

 

 

 あり得ない、あってはならない光景。

 

 近づいてきたミストバーンの手刀を咄嗟に屈んで避け、自慢の蒼い髪が数本切れる中。

 

 フィンは飛び上がり、ミストバーンの背中に降り立つと足を払う!

 体勢が崩れた所に、暗黒闘気を込めた拳を振り下ろす。

 

 

 その時、フィンは猛烈な違和感を感じる。

 ミストバーンの顔が冷たい。マヒャドを浴びたからではない。表層では無いナニカが凍っている。

 

 

「?!キサマッ、何故、凍れる時の秘法がかかったまま動け」

 

 

 フィンは言い終える事が出来なかった。

 その前に、ミストバーンの手刀が彼女の腹部を貫いたからだ。

 

 

「カハッ…」

「もうさえずるな。お前は、余りにも知り過ぎた。」

 

 

 モノ言わぬ躯となり果てた女魔族を、ミストバーンは討ち捨てる。

 

 

『よくやった、ミストバーン。』

「…ハッ」

 

 

 

 主が倒れたことで、マキシマムのオリハルコン軍団と戦っていた鎧のモンスターも力尽きたようだ。

 

 禁呪法によるモンスターと魔影軍団の鎧の組み合わせ、という戦い方はミストバーンの記憶に残った。

 

 

 ふと、フィンが使っていた長剣が気になり、ミストバーンは拾い上げる。

 

「…そういう事か」

 

 

 長剣には、「凍れる時の秘法」がかけられていた。道理で、闘魔最終掌で壊せないわけだ。

 

 

『ミストバーンよ。その剣を持ってまいれ。余が破壊する』

 

 

 偉大なる大魔王バーン様以外にもこの呪法にたどり着き、戦いに応用する魔族が居るとは。

 

 

「ガーハッハッハ!ミストバーンか。裏切り者を仕留めたか。だが、この我輩もそやつの部下を始末したぞ!」

 

 

 そう言って大笑いするマキシマムの傍らには、ヒビが入ったオリハルコンのビショップとルークが居る事にミストバーンは気づく。

 

「…何故オリハルコンにヒビが?」

「ぐっ?!そ、それは…。あ奴は姑息にも、我がビショップの足を掴むと振り回して暴れおった!全く、何と野蛮な!」

 

 

 それを聞いたミストバーンは完全に興味を失うと、大魔王バーンの元へ馳せ参じる。

 凍れる時の秘法を掛けるには、皆既日食を待たねばならないが、解除するだけならば別。

 

 いくら武器として有用だとしても、残しておくわけにはいかない。大魔王バーン様の最大の秘密につながるのだから。




いかがでしたか?
個人的に、大魔王バーンの地上破壊計画を知って逃亡を図り、相応の実力があってミストバーンが真の力を発揮せねば始末出来ない、となれば全力で始末する気がします。
今回は単独で追い詰めた実力者として執筆しましたが、複数の魔族たちが反発したのでまとめて始末する、という事もあったでしょう。

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