虹色の星空 -Argonauter-   作:ミコユラ

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第43話 戦人(いくさびと)

 

──────黎明(れいめい)は宇宙を駆ける。

 

迫る4機のモビルスーツ。これまで感じたことのない強い覇気を纏ったそれらは真っ直ぐに黎明を追う。

 

白い鮫の様な顔の機体は手首袖口から光弾を放ち、その臀部(でんぶ)にある尾びれの様な部分から小型のビット達を射出した。

 

素早い動きで蛇行するように動くビットは黎明と並走するかのように飛び、光線を放つ。

 

「フンッ!貴様らもそのような児具(じぐ)を使うか!このライラ・リルを舐めるなっ!」

 

飛び交う光線をすり抜けるように紙一重でかわす黎明。その光線が交差してできる網の形状を正確に把握するかのような動き。

 

次々と移動して光線を放つビット達、そのひとつひとつの挙動を視線を移すことなく感じ取っている。

鬼神と呼ばれた女。ライラは今、このアクシズを取り囲む空間全てを掌握しつつある。

 

光線を避けながら反撃に転じようとした時、眼前に迫る赤い巨体。

不気味だが真っ直ぐ黎明に向けられた威圧感。

その手に握られた大型のライフルから光弾が放たれる。

 

その軌跡は既に読んでいる。

しかしこの光の網を潜りながら避けると次の光線に触れてしまうだろう。黎明はその大型のシールドを構え光弾を受け入れる。

 

「なんとも小賢しい・・・っ!やはり貴様からかっ!チョロチョロとっ!」

 

黎明は頭部のバルカンを連射し、迫る白い機体のビット達を撃ち落としてゆく。

 

背後に感じるプレッシャー。

すかさず飛んだ黎明の背後に太く長い光刃が振り下ろされた。

 

大型ホワイトドール。その巨体は挙動性を損なうことなくそのまま威圧として生かされている。

額の砲門が光る。

 

刹那太い光柱が宇宙を駆ける。

 

「そんなものが当たると思うか小僧っ!」

 

黎明はホワイトドールにシールドを向け、先の戦乱で見せた衝撃波を放つ。

押し流される巨体。

迫る白い機体の光刃を避け離れた空域に飛ぶも背後から迫るミサイル。

赤い機体が放ったもの。

 

忌々しい表情を浮かべハンドガンによる光弾を連射し撃墜する。

 

「なんとも鬱陶しい!・・・アイツは⁉︎」

 

それぞれの気配を分けて読もうとも何故かその先には巨大な一つの意思に辿り着き、個別の動きに対応するのがどうしても遅れてしまう。

 

長く戦場に身を置くライラにとって初めての窮地とも言えるこの状況、彼女は苛立ち始めていた。

 

 

目線の先に白く光る物が見える。

それに感じた脅威。黎明はライフルを取り出し光弾を放つ。

 

刹那横から迫る覇気。

初めて鳥肌というものを理解した。

 

素早く身をひねると共に光弾が飛び抜けてゆく。

先程まで胸があった場所である。

 

光弾の主は騎士の様なホワイトドール。

先程持っていたシールドがなくなっている。

今ライラが撃ち抜いた脅威。

捨てたシールドにまでまとわりつく威圧感。

 

黎明の節々から黒い煤(すす)の様なモヤが立ち始めている。

そしてコックピットに座るライラは笑っている。

 

戦場に身を置く戦士として、初めて自身にとっての脅威となる強者を前にして戦いへの高揚を抑えきれない。

 

そして同時に彼女の胸の奥で眠る黒い感情が目覚めつつあった。

 

 

遠くから戦況を見守る巨大な花。

天征(てんせい)に乗るアクィラは笑みを浮かべる。

 

「そうだ・・全部曝け出せ・・・全てを吐き出せ・・!ライラ!」

 

黎明の双眼が赤く染まってゆく──────

 

 

──────突然四肢を分裂させたXX(クロスエックス)。

 

その関節の接合部からは稲妻を纏った光が漏れ出し、次の瞬間白閃を囲む様に飛びながら光弾を放つ。

 

白い光の尾を引きながら光弾を避けて飛ぶ白閃。

アクシズの大地に光弾がぶつかり、稲妻と共に緑がかった虹色に輝く粒子があたりに飛び散る。

 

XXの頭部ははるか上空を飛び、胴はミサイルを吐き出しながら白閃を追う。

 

「ほう!今のを軽々避けるとは!やはり良い目をしている様だな少女よ!ならばっ!」

 

袖口から光弾を放ちミサイルを撃ち落とす白閃。

しかし撃ちこぼしたミサイルはそのままこちらに目掛けて迫ってくる。

 

「邪魔だぁ!しつけぇんだよっ!」

 

大地に足を下ろし踏ん張る様に立ちながら頭部のバルカンで残るミサイルを落とす。

 

いつの間にか合体していたXXはその卵の様な手甲を三つ爪の様に割り、そこから漏れ出す稲妻を纏った光を帯びた拳を振り下ろしてきた。

 

白閃はすかさず横に飛び、XXが降りてきたタイミングで脛に光刃を走らせ蹴りを打ち込む。

 

当たるはずの蹴りは空を切る。

下半身を切り分けた上半身がこちらを向き、その光る手を白閃に放つ。

 

直撃の寸前で光刃を走らせた掌底で捌き、その腕を返して肘から光刃を伸ばす。しかし腕を切り離したXXにはそれすらも当たらず、先程の下半身から繰り出された蹴りを受けてしまった。

 

衝撃で顔をしかめるヒメノ。

「クソッ!次から次へと!卑怯者!」

 

XXは遠くで再度合体を果たし、リュウは高らかに笑う。

「ハッハッハッ!卑怯ではないぞ少女よ!武家の末裔として正々堂々とこのXXの真価を遺憾なく発揮しているに過ぎないさっ!そもそもこのXXは・・・・・・!」

 

「うるせぇっ!話し長ぇんだよベラベラベラベラッ!」

自身が置かれる窮地とこの男のどこか癪に触る口調が相まって苛立ちを隠しきれないヒメノ。

男はそんな事はお構いなしで続ける。

 

「少女よ!貴様は私の戦う理由をくだらないと称したな!」

 

そのリュウの声量は普段と変わらないが雰囲気が違う。わずかに怒気を孕んだようにも聞こえる。

 

「だから何よ!1000年以上生きる目的が怨念返しなんて!」

「怨念返しなどでは無い!貴様も武に生きる者ならば義は理解できよう!」

 

XXは不動立ちのまま静かに佇んでいる。白閃もそれに倣(なら)い不動立ちになる。

 

「このXXはある伝説のモビルスーツを再現した物!かつてその元となった機体を操る月の守護者がいた!」

 

リュウは真っ直ぐに白閃を睨みながら語る。しかしその眼差しに否定の色は無く、1人の武人としてヒメノに接するようだ。

 

「その男はあろう事か義を忘れ自らの闘争本能の赴(おもむ)くままに争いに身を投じ!和を乱し!そして彼に仕えた我が祖先をも切り捨てたのだ!」

 

「だからなんだよ!それと隕石落としとどう関係・・・っ!」

「身勝手な振る舞いの末に男はガンダムと戦い!無様に負けたのだ!我が祖先の忠義の末の裏切りと敗北!その無念は時を経て癒えるものでは無いっ!だからこそ・・・っ!」

 

「話し長ぇっつんだよっ!そんなんで地球潰すのに加担しようなんてくだらないっつう以外何があんだよっ!」

 

お互いに話しを最後まで聞かずの遮り合いをする中でヒメノは決心した。話は通じない。力ずくで黙らせるしか先は見えないと。

それはリュウも同じであった。

 

XXは右拳、と言っていいのかはわからないが、卵状の右手を前に突き出し腰を落とす攻めの姿勢を構える。

 

ヒメノはニヤリと笑う。

この劣勢とも取れる状況で何かを企むような怪しい笑み。

そう、ヒメノはこの決戦に挑む出撃の前に初(・)め(・)て(・)こ(・)の(・)白(・)閃(・)の(・)仕(・)様(・)書(・)に(・)目(・)を(・)通(・)し(・)た(・)のだ。

そして得た新事実。

この白閃にはヒメノの知らない武具が隠されていた。

白閃の背負うバックパックには上部に1対のビームサーベル。背面にシールド。そして側面に突起が出ていた。

今まで気にも留めなかったそれはこの機体の武具。

 

説明書を読まないで事を進める性分が引き起こした無知、無関心、それを正しく使えば切り抜けられた窮地もあったかもしれない。

しかしそんな後悔など微塵も感じさせないドヤ顔を放つ少女。

 

白閃はその両の手にトンファーを握る。

重厚な金属製のその武具の側面には脛と同じビームレールが添い付けられており、白い輝きを放つ。

まるで湯気のような真珠色の輝きを上げる武具を前腕に密着させるように持ち、左腕を上げ、受けの構えを取る。

 

「ほう!守りながらの攻めの構え!やはり貴様は面白い!では・・・っ!」

 

XXは後ろ脚を強く踏み締める。白閃も同じく後ろの足を少し浮かせて今にも飛び出す構えに入る。

 

「「勝負‼︎」」

 

2人が同時に叫ぶと共に先程の稲妻を纏った突きが猛スピードで白閃に迫る。

光を帯びた前腕をかち上げ突きをいなす白閃。

眩く激しい光が稲妻と共に湧き起こる中両者は目を見開きながら次の一手を探る。

 

先に仕掛けたのは白閃。

光を帯びた膝突きを放つもまたもや分裂され空を切る。

すかさずその足を踏み込み逆手に持ったトンファーを振り下ろした。

XXの腿に擦り、触れた部分が黄色い光りを上げながら溶けているのが見える。

 

振り下ろした腕を曲げ、体を捻りながらその肘から光刃を突き出しXXの上体に打ち込む白閃。

 

しかし先程と同じく三つ爪となった光る手に捌かれ、激しい光を放ちながら弾かれてしまう。

 

同時に後ろに飛んで距離を取る2機。

「ほう!良い動きだ少女よ!戦いの中で成長するその姿勢!評価に値する!」

「うるせぇっ!偉そうに武を語るならあの野郎の企み止めてからタイマン挑めば良いだろ!隕石落として勝ってもなんも意味ないじゃん!」

 

リュウはキョトン顔になった。「何を言っているのだコイツは?」とでも言いたげな顔である。

 

「人の話を聞かないな!私はガンダムに挑むさ!正々堂々とな!そのためにアクィラに協力しているのだ!そしてガンダムを超えた時!我が一族の無念は晴らされる!」

 

XXはまた四肢を分裂させ多方向からの砲撃を狙う。

身構える白閃。

 

「くっだらねぇ!そんな何千年前のしがらみ背負って!」

 

稲妻を纏った光弾が放たれる。

白閃はトンファーの持ち手を軸に素早く回転させながら振り回し、見事に降り注ぐ光弾を地面に弾き飛ばしてゆく。

 

ヒメノは見逃さなかった。

砲撃を放った四肢はその後必ず一度再合体を果たす事を。

恐らくエネルギーチャージのための本体との結合。

読みは当たる。

胴に目掛けて集まる四肢。

 

「後ろばっか見て歩いてるやつが前に進めるわけねぇだろぉっ!」

 

白閃の指先から短い光刃が伸び、XXに渾身の貫手を繰り出す。

 

「やはり貴様は面白いっ!このXXを読み切るとはっ!」

 

紙一重のところで胴と腰を切り離され、勢いよく空を突き抜ける白閃。当たるはずであった突きをかわされ口惜しい表情のままXXに向き直る。

 

足を広げ、右手を天に掲げた体勢で白閃を向く乳白色の機体。

 

「かつてあの男は自身の乗る機体の能力に溺れ!ろくに研究もせず!その真価を一つも発揮せずに呆気なく敗北した!」

 

その機体の胸部に交差するように深く刻まれた溝、それは虹色の光を放ち始める。それと同時に右手の甲が開き眩い光と共に稲妻を放つ。

 

XXの醸し出す空気が変わる。

リュウから醸し出された覇気を感じ取ったヒメノはゴクリと唾を飲み、白閃は先程同様に左手を前に出し、腰を落とした上げ受けの構えを取る。

 

「私は奴とは違う!黒歴史のあらゆる機体の研究を重ね!そしてこの機体の真の力を引き出す事に成功したのだ!」

 

アクシズの大地から吹雪(ふぶ)く虹色に輝く粒子はXXの掲げた右手の輝きに巻き込まれるように激しく舞い上がる。

来る。ヒメノは瞬きを止め、目を見開きながらその一挙手一投足を見極めんとしていた。

 

リュウは声高らかに叫ぶ。

 

「私のこの手が光って唸るぅっ!」

 

叫びと共に右手を胸の前に掲げる。まるで肉体のように手を振るわせる様は本当に力を込めているようである。

 

まるで口上を垂れるようにまだ何かを叫び続ける男にヒメノの片眉が上がる。

まさかとは思った。

しかし本気のような気迫。

 

そして前足に体重がかかるかのように大地を踏み締め、そして一気に力を込めて蹴り、白閃に向かって飛び迫る。

 

猪突猛進。その言葉がピタリと当てはまるほどまっすぐな突き。

腰に構えた三つ爪から稲妻を激しく漏らしながらこちらに目掛けて猛スピードで突っ込んでくる。

 

白閃はその愚直さを真っ向から否定するかの如く、拳を腰で構えXXに向かって駆け出す。

リュウはそれを見て笑顔を見せながら力強く叫びその拳を突き出した。

 

「必殺っ!シャァイニングッフィンガァァァァッ‼︎」

 

その叫びに、そしてヒメノの感情の昂(たかぶ)りに呼応するかのように白閃の握られた拳の節々から真珠色の輝きが勢いよく漏れ始める。

 

「いい年(とし)こいて技名叫んでんじゃねぇぞジジィィィッ‼︎」

 

心からの叫び。それと共に光り輝くその手をXXの三つ爪に向けて繰り出す。

 

両者はぶつかり合い、稲妻と真珠色に輝く激しい炎のような輝きがあたりに飛び散る。アクシズから発せられる虹色の粒子はそれに巻き込まれるように激しく渦を描き宇宙を照らす。

 

両者は反発し合うエネルギーに耐えるように足を大地に踏ん張りながらなおも押し返そうと力を込めている。

 

「ぬぅっ!なんとっ!これはぁぁっ!」

「くっそぉぉっ!私はそっち側じゃないぃぃぃっ!」

 

自らの繰り出す技に近しい攻撃を仕掛け押し合う白閃に驚きとわずかな笑みを漏らすリュウと結果的に似たような見た目の攻撃になってしまい激しい自己嫌悪とその否定に苦悩するヒメノ。

 

生み出された激しい光は更に強く輝き、お互いを弾き飛ばす。

大地に足をつけながら飛ばされまいとする両者は滑るように距離を空け、光は収まり元の静寂の空間に戻る。

 

白閃のその手からは未だにわずかな輝きが湯気のように立ち上る。一方のXXの三つ爪は溶け落ち、中に隠れる手のひらがまるで痙攣するかのように微振動を起こし、そして白閃と同じように真珠色の輝きを放ち始めた。

 

リュウはその様子を見て目を丸くして満面の笑みを浮かべる。

 

「素晴らしい・・素晴らしいぞ!ヒメノ・カストルよ!貴公は私を超えて既に到達していたのだな⁉︎武を極めるその果て!明鏡止水の理(ことわり)に!なんという事だ!すば・・・・っ!」

 

「うるせぇっ!一緒にすんなっ!暑キモイんだよっ!ダラダラベラベラッ!」

 

初めてその名を呼び讃えるリュウの言葉を遮っていかに不愉快かをぶつけようとも男の中では絶賛大隆盛(だいりゅうせい)中らしく一切聞いてはいない。

XXは両手を天に掲げて震えている。

 

なぜこんなのと戦わなければいけないのだ!なぜ自分の周りにはこうも妙なのが集まってくるのだ!と自ら進んでこの男との決戦を選んだのにも関わらず心の中で文句を垂れるヒメノ。

 

ブツブツ続けるヒメノの周りの空気が黒い霞(かすみ)が多い始める。

 

「ん!何⁉︎今度は何⁉︎」

 

苛立ちを霞にまでぶつけ始めた少女をドス黒い闇が囲むと共に低く冷たい声が響く。

 

「・・・さらばだ友よ・・・・消えてなくなるがいい・・・・・・」

 

────────




自分で書いておいてなんですが、叫んで強くなるのはF.C.の世界だけなので、口上を述べなかった=研究不足。だからあいつは負けたのだというリュウの自論はかなり飛びすぎな解釈な気がしますね。
と同時に信じる気持ちも大事だなとも思います。
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