ダンジョン介護師の日常   作:河馬田いわし

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話し方とかが違和感だったので直しました


旧友との再会

 

 

 癒骨が施設へ来てからしばらく。

 

 最初は驚いていた職員も、今ではすっかり慣れてしまった。

 

「癒骨、体支えてて。」

 

「カタ。」

 

 看護師さんの声で、癒骨が利用者さんの身体をゆっくり側臥位へと動かす。

 

 足を曲げ、身体が捻れないよう支えながら、顔がサイドレールへ当たらない位置まで丁寧に調整する。

 

 最初は正直、不安だった。

 

 でも今じゃ俺より気を遣ってるんじゃないかと思うくらいだ。

 

 癒骨が身体を支えている間に看護師さんが処置を行い、最後はレッサーヒール。

 

 利用者さんも職員も、もうそれを当たり前のように受け入れていた。

 

「黒田君、オムツ届いたよー。」

 

「はい、今行きます!」

 

 事務所へ向かう。

 

 介護施設では毎日のように届く消耗品。

 

 特に珍しいことじゃない。

 

「受領印お願いしま――」

 

 そこで言葉が止まった。

 

 配送担当の男性も、俺を見たまま固まっている。

 

「……つかちゃん?」

 

 高校時代、源だけがそう呼んでいたあだ名だった。

 

 百九十センチ近い長身。

 

 服の上からでも分かる鍛えられた身体。

 

 その上に乗っているのは、優男みたいな整った顔。

 

 高校の頃から、そのアンバランスさだけは変わらない。

 

「……源?」

 

 高校卒業以来だろうか。

 

 久しぶりに見る友人だった。

 

 

「久しぶり。」

 

「うん……。」

 

 源は返事をしたものの、どこか落ち着かない様子で辺りを見回している。

 

 その時だった。

 

「カタ。」

 

 空になった段ボールを抱えた癒骨が、事務所へ入ってきた。

 

「ひゃっ!?」

 

 源が肩を大きく跳ねさせ、思わず一歩飛び退く。

 

 段ボールを抱えたスケルトンと目が合う。

 

「…………。」

 

 数秒、本当に時間が止まったみたいだった。

 

「つ、つかちゃん……。」

 

「ん?」

 

 源は震える指で癒骨を指す。

 

「あれ……。」

 

「つかちゃんの従魔?」

 

「ああ。」

 

 源は小さく息を吐いた。

 

「そうか……。」

 

「骨ダンジョン、見つかったんだ。」

 

「この近くにな。」

 

「へぇ……。」

 

 ようやく納得したように頷く。

 

 その時だった。

 

「癒骨、ちょっとお願い。」

 

「カタ。」

 

 癒骨は段ボールを置くと、看護師さんの元へ向かう。

 

 利用者さんの身体を優しく支え、処置の介助を始めた。

 

 その様子を見た源が、もう一度固まる。

 

「…………。」

 

「つかちゃん。」

 

「ん?」

 

「この子も……。」

 

「おじいちゃんたちの介助してるの?」

 

「ああ。」

 

「身体を支えたり、処置を手伝ったりな。」

 

「レッサーヒールも使えるから助かってるよ。」

 

 源は癒骨と俺を見比べる。

 

「……そんな使い方してるんだ。」

 

「使えるなら使った方がいいだろ。」

 

 源は少しだけ笑った。

 

「……なんか。」

 

「つかちゃんらしい。」

 

 近くにいた職員さんが、その様子を見て笑う。

 

「ああ、癒骨ね。」

 

「今じゃ、うちにはなくてはならない存在なんですよ。」

 

「カタ。」

 

 癒骨は照れくさそうに頭を下げた。

 

「あ……どうも。」

 

 反射的に源も頭を下げる。

 

 でも、さっきまでの引きつった表情は少しだけ和らいでいた。

 

 ……やっぱり源は昔から変わらない。

 

 

「黒田君、このオムツお願い。」

 

「はい。」

 

 仕事中だ。

 

 俺は荷物を受け取り、倉庫へ運ぶ。

 

 癒骨も別の箱を軽々と持ち上げる。

 

「カタ。」

 

「ありがとう。」

 

 その様子を源は、信じられないものを見るような顔で眺めていた。

 

 

 高校時代。

 

 源とは三年間同じクラスだった。

 

 見た目だけなら誰もが振り返るようなイケメン。

 

 百九十センチ近い身長に鍛えられた身体。

 

 初対面では怖がられることも多かった。

 

 でも実際は真逆。

 

 とんでもないビビりだ。

 

 ホラー映画は苦手。

 

 人見知りも激しく、初対面の人とはなかなか話せない。

 

 見た目と中身が、まったく噛み合っていない男だった。

 

 だからこそ、今みたいな反応も源らしい。

 

 高校時代なら、夜にスケルトンを見た瞬間、叫びながら逃げ出していただろう。

 

 

 仕事を終え、伝票を返す。

 

「じゃあ、源。この辺担当になるならまたよろしく。」

 

「あ……うん。」

 

 トラックへ戻りかけた源が振り返る。

 

「つかちゃん。」

 

「ん?」

 

「今日、仕事終わるの何時?」

 

「夜勤じゃないから夕方には。」

 

「……久しぶりに、ご飯行かない?」

 

 その言葉に自然と笑みがこぼれた。

 

「いいよ。どこ行く?」

 

「今も前の家だから……この近くのファミレスで。」

 

「了解。」

 

 午後八時。

 

 そう約束すると、源は少しだけ安心したように笑った。

 

「……じゃあ、また後で。」

 

「おう。」

 

 配送車がゆっくり施設を出ていく。

 

 その背中を見送りながら、俺は少しだけ懐かしい気持ちになった。

 

 高校を卒業してから、それぞれ違う道を歩いてきた。

 

 まさか、介護施設で再会するなんて思いもしなかった。

 

 ……何から話そうか。

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