翌日。
仕事を終えた俺は、そのままダンジョン協会へ向かっていた。
目的は一つ。
ジョブストーンだ。
異能介護加算が付くようになってから、以前より生活には少しだけ余裕ができた。
もちろん無駄遣いをするつもりはない。
これは未来への投資だ。
「ジョブストーンを三つください。」
売店の女性が小さな箱を三つ、カウンターへ並べる。
一つ一万円。
三つで三万円。
財布は軽くなった。
でも、不思議と後悔はなかった。
探索者なら武器を買う。
防具を買う。
アーツキューブを買う。
俺の場合は少し違う。
スケルトンへ投資する。
それが、今の俺の戦い方だった。
◇
その足で名東第二ダンジョン――骨ダンジョンへ向かう。
「癒骨、行くぞ。」
「カタ。」
影から現れた癒骨が、小さく頷く。
いつものように受付を済ませ、ダンジョンへ入る。
薄暗い通路。
乾いた空気。
奥から聞こえる骨の擦れる音。
一番最初に来た時は不気味に感じたこの場所も、今では少し慣れてしまった。
慣れって怖い。
「カタ?」
「いや、なんでもない。」
癒骨を先頭に、奥へ進んでいく。
現れるスケルトンを倒しながら、目的の数だけ仲間を増やしていく。
「スケルトンテイム。」
【スケルトンをテイムしました】
一体。
「スケルトンテイム。」
【スケルトンをテイムしました】
二体。
「スケルトンテイム。」
【スケルトンをテイムしました】
三体。
新しく仲間になった三体のスケルトンが、静かに俺の前へ並ぶ。
見た目は全部同じ。
骨。
ただの骨。
ここから何になるかは、ジョブストーン次第だ。
「よし。」
俺は最初のジョブストーンを取り出した。
「スケルトンプロモーション。」
ジョブストーンが音もなく砕け、白い光がスケルトンを包み込む。
【スケルトンプロモーションを発動しました】
【ジョブストーンを消費しました】
【従魔へジョブを付与します】
しばらくして、文字が浮かび上がる。
【従魔がジョブを取得しました】
【空間術師】
【ジョブ特性:空間術師】
【空間系PP補正】
【空間系熟練度補正】
【ランク1アーツを習得しました】
【ショートワープ】
光が消える。
そこに立っていたのは、さっきまでと何一つ変わらないスケルトンだった。
「……やっぱり見た目は変わらないか。」
ローブを着るわけでもない。
杖を持つわけでもない。
普通の骨だ。
でも、ジョブは確かに付与されている。
「空間術師か。」
名前からすると便利そうだ。
戦闘よりも探索向きだろうか。
ショートワープ。
短距離転移みたいなものなら、荷物運びにも使えるかもしれない。
介護で使えるかは分からない。
でも、移動や運搬に使えるなら可能性はある。
「後で試してみよう。」
「カタ。」
癒骨が頷いた。
……お前が頷くのか。
◇
「次。」
二つ目のジョブストーンを取り出す。
正直、少し楽しくなってきている。
何が出るか分からない。
でも、出たジョブをどう使うか考えるのは嫌いじゃない。
「スケルトンプロモーション。」
再びジョブストーンが砕け、白い光がスケルトンを包み込む。
【スケルトンプロモーションを発動しました】
【ジョブストーンを消費しました】
【従魔へジョブを付与します】
少し間を置いて、表示が浮かぶ。
【従魔がジョブを取得しました】
【鑑定士】
【ジョブ特性:鑑定士】
【鑑定系PP補正】
【鑑定系熟練度補正】
【ランク1アーツを習得しました】
【インスタントアナライズ】
光が収まり、二体目も静かに立っている。
やっぱり見た目は変わらない。
「鑑定士。」
これは当たりだろう。
ダンジョンでは、情報が命になる。
モンスター。
素材。
アーツキューブ。
ジョブストーン。
使い道はいくらでも思い付く。
ただ、名前はインスタントアナライズ。
インスタント。
つまり簡易鑑定みたいなものかもしれない。
詳しいことまで分かるとは限らない。
介護で使えるかは不明だ。
でも。
「見る力があるのは大きいな。」
介護でも、ダンジョンでも。
気付けるかどうかで結果は変わる。
このスケルトンは、きっと役に立つ。
◇
残るジョブストーンは一つ。
最後のスケルトンが、静かに俺の前へ立っている。
「……さて。」
空間術師。
鑑定士。
ここまではかなり良い。
最後も便利なジョブが出てくれれば、今後の探索も介護もかなり楽になる。
俺は最後のジョブストーンを手に取った。
「スケルトンプロモーション。」
ジョブストーンが砕ける。
白い光が、最後のスケルトンを包み込んだ。
【スケルトンプロモーションを発動しました】
【ジョブストーンを消費しました】
【従魔へジョブを付与します】
静かなダンジョンに、システム音だけが響く。
ゆっくりと文字が浮かび上がる。
【従魔がジョブを取得しました】
表示された文字を見て、俺は思わず目を見開いた。