ダンジョン介護師の日常   作:河馬田いわし

15 / 23
新たなスケルトン

 

 

 翌日。

 

 仕事を終えた俺は、そのままダンジョン協会へ向かっていた。

 

 目的は一つ。

 

 ジョブストーンだ。

 

 異能介護加算が付くようになってから、以前より生活には少しだけ余裕ができた。

 

 もちろん無駄遣いをするつもりはない。

 

 これは未来への投資だ。

 

「ジョブストーンを三つください。」

 

 売店の女性が小さな箱を三つ、カウンターへ並べる。

 

 一つ一万円。

 

 三つで三万円。

 

 財布は軽くなった。

 

 でも、不思議と後悔はなかった。

 

 探索者なら武器を買う。

 

 防具を買う。

 

 アーツキューブを買う。

 

 俺の場合は少し違う。

 

 スケルトンへ投資する。

 

 それが、今の俺の戦い方だった。

 

◇

 

 その足で名東第二ダンジョン――骨ダンジョンへ向かう。

 

「癒骨、行くぞ。」

 

「カタ。」

 

 影から現れた癒骨が、小さく頷く。

 

 いつものように受付を済ませ、ダンジョンへ入る。

 

 薄暗い通路。

 

 乾いた空気。

 

 奥から聞こえる骨の擦れる音。

 

 一番最初に来た時は不気味に感じたこの場所も、今では少し慣れてしまった。

 

 慣れって怖い。

 

「カタ?」

 

「いや、なんでもない。」

 

 癒骨を先頭に、奥へ進んでいく。

 

 現れるスケルトンを倒しながら、目的の数だけ仲間を増やしていく。

 

「スケルトンテイム。」

 

【スケルトンをテイムしました】

 

 一体。

 

「スケルトンテイム。」

 

【スケルトンをテイムしました】

 

 二体。

 

「スケルトンテイム。」

 

【スケルトンをテイムしました】

 

 三体。

 

 新しく仲間になった三体のスケルトンが、静かに俺の前へ並ぶ。

 

 見た目は全部同じ。

 

 骨。

 

 ただの骨。

 

 ここから何になるかは、ジョブストーン次第だ。

 

「よし。」

 

 俺は最初のジョブストーンを取り出した。

 

「スケルトンプロモーション。」

 

 ジョブストーンが音もなく砕け、白い光がスケルトンを包み込む。

 

【スケルトンプロモーションを発動しました】

 

【ジョブストーンを消費しました】

 

【従魔へジョブを付与します】

 

 しばらくして、文字が浮かび上がる。

 

【従魔がジョブを取得しました】

 

【空間術師】

 

【ジョブ特性:空間術師】

 

【空間系PP補正】

 

【空間系熟練度補正】

 

【ランク1アーツを習得しました】

 

【ショートワープ】

 

 光が消える。

 

 そこに立っていたのは、さっきまでと何一つ変わらないスケルトンだった。

 

「……やっぱり見た目は変わらないか。」

 

 ローブを着るわけでもない。

 

 杖を持つわけでもない。

 

 普通の骨だ。

 

 でも、ジョブは確かに付与されている。

 

「空間術師か。」

 

 名前からすると便利そうだ。

 

 戦闘よりも探索向きだろうか。

 

 ショートワープ。

 

 短距離転移みたいなものなら、荷物運びにも使えるかもしれない。

 

 介護で使えるかは分からない。

 

 でも、移動や運搬に使えるなら可能性はある。

 

「後で試してみよう。」

 

「カタ。」

 

 癒骨が頷いた。

 

 ……お前が頷くのか。

 

◇

 

「次。」

 

 二つ目のジョブストーンを取り出す。

 

 正直、少し楽しくなってきている。

 

 何が出るか分からない。

 

 でも、出たジョブをどう使うか考えるのは嫌いじゃない。

 

「スケルトンプロモーション。」

 

 再びジョブストーンが砕け、白い光がスケルトンを包み込む。

 

【スケルトンプロモーションを発動しました】

 

【ジョブストーンを消費しました】

 

【従魔へジョブを付与します】

 

 少し間を置いて、表示が浮かぶ。

 

【従魔がジョブを取得しました】

 

【鑑定士】

 

【ジョブ特性:鑑定士】

 

【鑑定系PP補正】

 

【鑑定系熟練度補正】

 

【ランク1アーツを習得しました】

 

【インスタントアナライズ】

 

 光が収まり、二体目も静かに立っている。

 

 やっぱり見た目は変わらない。

 

「鑑定士。」

 

 これは当たりだろう。

 

 ダンジョンでは、情報が命になる。

 

 モンスター。

 

 素材。

 

 アーツキューブ。

 

 ジョブストーン。

 

 使い道はいくらでも思い付く。

 

 ただ、名前はインスタントアナライズ。

 

 インスタント。

 

 つまり簡易鑑定みたいなものかもしれない。

 

 詳しいことまで分かるとは限らない。

 

 介護で使えるかは不明だ。

 

 でも。

 

「見る力があるのは大きいな。」

 

 介護でも、ダンジョンでも。

 

 気付けるかどうかで結果は変わる。

 

 このスケルトンは、きっと役に立つ。

 

◇

 

 残るジョブストーンは一つ。

 

 最後のスケルトンが、静かに俺の前へ立っている。

 

「……さて。」

 

 空間術師。

 

 鑑定士。

 

 ここまではかなり良い。

 

 最後も便利なジョブが出てくれれば、今後の探索も介護もかなり楽になる。

 

 俺は最後のジョブストーンを手に取った。

 

「スケルトンプロモーション。」

 

 ジョブストーンが砕ける。

 

 白い光が、最後のスケルトンを包み込んだ。

 

【スケルトンプロモーションを発動しました】

 

【ジョブストーンを消費しました】

 

【従魔へジョブを付与します】

 

 静かなダンジョンに、システム音だけが響く。

 

 ゆっくりと文字が浮かび上がる。

 

【従魔がジョブを取得しました】

 

 表示された文字を見て、俺は思わず目を見開いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。