ダンジョン介護師の日常   作:河馬田いわし

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新たなスケルトン

 

 

 翌日。

 

 仕事を終えた俺は、そのままダンジョン協会へ向かっていた。

 

 目的は一つ。

 

 ジョブストーンだ。

 

 異能介護加算が付くようになってから、以前より生活には少しだけ余裕ができた。

 

 もちろん無駄遣いをするつもりはない。

 

 これは未来への投資だ。

 

「ジョブストーンを三つください。」

 

 売店の女性が小さな箱を三つ、カウンターへ並べる。

 

 一つ一万円。

 

 三つで三万円。

 

 財布は軽くなった。

 

 でも、不思議と後悔はなかった。

 

 探索者なら武器を買う。

 

 防具を買う。

 

 アーツキューブを買う。

 

 俺の場合は少し違う。

 

 スケルトンへ投資する。

 

 それが、今の俺の戦い方だった。

 

 

 その足で名東第二ダンジョン――骨ダンジョンへ向かう。

 

「癒骨、行くぞ。」

 

「カタ。」

 

 影から現れた癒骨が、小さく頷く。

 

 いつものように受付を済ませ、ダンジョンへ入る。

 

 薄暗い通路。

 

 乾いた空気。

 

 奥から聞こえる骨の擦れる音。

 

 一番最初に来た時は不気味に感じたこの場所も、今では少し慣れてしまった。

 

 慣れって怖い。

 

「カタ?」

 

「いや、なんでもない。」

 

 癒骨を先頭に、奥へ進んでいく。

 

 現れるスケルトンを倒しながら、目的の数だけ仲間を増やしていく。

 

「スケルトンテイム。」

 

【スケルトンをテイムしました】

 

 一体。

 

「スケルトンテイム。」

 

【スケルトンをテイムしました】

 

 二体。

 

「スケルトンテイム。」

 

【スケルトンをテイムしました】

 

 三体。

 

 新しく仲間になった三体のスケルトンが、静かに俺の前へ並ぶ。

 

 見た目は全部同じ。

 

 骨。

 

 ただの骨。

 

 ここから何になるかは、ジョブストーン次第だ。

 

「よし。」

 

 俺は最初のジョブストーンを取り出した。

 

「スケルトンプロモーション。」

 

 ジョブストーンが音もなく砕け、白い光がスケルトンを包み込む。

 

【スケルトンプロモーションを発動しました】

 

【ジョブストーンを消費しました】

 

【従魔へジョブを付与します】

 

 しばらくして、文字が浮かび上がる。

 

【従魔がジョブを取得しました】

 

【空間術師】

 

【ジョブ特性:空間術師】

 

【空間系PP補正】

 

【空間系熟練度補正】

 

【ランク1アーツを習得しました】

 

【ショートワープ】

 

 光が消える。

 

 そこに立っていたのは、さっきまでと何一つ変わらないスケルトンだった。

 

「……やっぱり見た目は変わらないか。」

 

 ローブを着るわけでもない。

 

 杖を持つわけでもない。

 

 普通の骨だ。

 

 でも、ジョブは確かに付与されている。

 

「空間術師か。」

 

 名前からすると便利そうだ。

 

 戦闘よりも探索向きだろうか。

 

 ショートワープ。

 

 短距離転移みたいなものなら、荷物運びにも使えるかもしれない。

 

 介護で使えるかは分からない。

 

 でも、移動や運搬に使えるなら可能性はある。

 

「後で試してみよう。」

 

「カタ。」

 

 癒骨が頷いた。

 

 ……お前が頷くのか。

 

 

「次。」

 

 二つ目のジョブストーンを取り出す。

 

 正直、少し楽しくなってきている。

 

 何が出るか分からない。

 

 でも、出たジョブをどう使うか考えるのは嫌いじゃない。

 

「スケルトンプロモーション。」

 

 再びジョブストーンが砕け、白い光がスケルトンを包み込む。

 

【スケルトンプロモーションを発動しました】

 

【ジョブストーンを消費しました】

 

【従魔へジョブを付与します】

 

 少し間を置いて、表示が浮かぶ。

 

【従魔がジョブを取得しました】

 

【鑑定士】

 

【ジョブ特性:鑑定士】

 

【鑑定系PP補正】

 

【鑑定系熟練度補正】

 

【ランク1アーツを習得しました】

 

【インスタントアナライズ】

 

 光が収まり、二体目も静かに立っている。

 

 やっぱり見た目は変わらない。

 

「鑑定士。」

 

 これは当たりだろう。

 

 ダンジョンでは、情報が命になる。

 

 モンスター。

 

 素材。

 

 アーツキューブ。

 

 ジョブストーン。

 

 使い道はいくらでも思い付く。

 

 ただ、名前はインスタントアナライズ。

 

 インスタント。

 

 つまり簡易鑑定みたいなものかもしれない。

 

 詳しいことまで分かるとは限らない。

 

 介護で使えるかは不明だ。

 

 でも。

 

「見る力があるのは大きいな。」

 

 介護でも、ダンジョンでも。

 

 気付けるかどうかで結果は変わる。

 

 このスケルトンは、きっと役に立つ。

 

 

 残るジョブストーンは一つ。

 

 最後のスケルトンが、静かに俺の前へ立っている。

 

「……さて。」

 

 空間術師。

 

 鑑定士。

 

 ここまではかなり良い。

 

 最後も便利なジョブが出てくれれば、今後の探索も介護もかなり楽になる。

 

 俺は最後のジョブストーンを手に取った。

 

「スケルトンプロモーション。」

 

 ジョブストーンが砕ける。

 

 白い光が、最後のスケルトンを包み込んだ。

 

【スケルトンプロモーションを発動しました】

 

【ジョブストーンを消費しました】

 

【従魔へジョブを付与します】

 

 静かなダンジョンに、システム音だけが響く。

 

 ゆっくりと文字が浮かび上がる。

 

【従魔がジョブを取得しました】

 

 表示された文字を見て、俺は思わず目を見開いた。

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