【新帝国暦二十四年五月 ハイネセンポリス・第九区 酒場】
通りを二つ曲がったところに、小さな酒場があった。古い木目の卓と、細かな傷のついたグラス。壁の端末ではニュースの音声が消され、宇宙港の運行案内がときおり更新されている。
アッテンボローは慣れた様子で席を選び、飲み物を二つ注文した。
ユリアンはカリンへ短い連絡を入れた。カリンからは、遅くなるならテオとの約束を忘れないように、とすぐ返事が来た。
「家庭持ちは忙しいな」
「あなたが連れ出したんですよ」
「ではその責任を取って一杯目はおれが払おう」
グラスが運ばれてくる。
アッテンボローは一口飲み、しばらく口をつぐんでいた。
「国防委員長を引き受けるかどうか、考えているんだろう」
アッテンボローが唐突に切り出した。
「ご存じなんですね」
「ハイネセンで新聞を書いていて、そんな話を知らない方が難しいさ。ほとんど皆、お前の名を挙げる。制度上は評議員でなくても委員長にはなれるが、次の選挙には出ろと言われるだろうな。まあ、どこの政党から出ても当選するだろうが」
「……まだ、引き受けるとも断るとも言っていないんです」
アッテンボローは頷いた。いつもなら一言くらい茶化すところだったが、今回は何も言わなかった。
「お前さんだって、〈傘の会〉の会長を長くやってきた。いまさら政治家や役人の椅子に座れと言われても、面白くないだろう」
「まあ、それは……」
「おれも人のことは言えん。こっちは念願かなってやっと新聞屋になれたんだ。取材したいことも、まだ書きかけの原稿も山ほどある。なのに軍を作るとなったら、戻れという連中が山ほどいる。昔から、おれに自分のやりたい仕事をさせてくれない勝手な奴ばかりだ」
「アッテンボローさんなら、断れるでしょう」
「もちろん。引き受けたくない理由は百でも並べられる。ああ、もっとも、これはおれの話だったな」
アッテンボローはグラスを持ち上げ、ユリアンの顔を見た。
「お前さんもそうなんだろうか。そんなに国防委員長をやりたくないのか?というか、今の仕事をそんなに続けたいのか」
ユリアンは返事をしなかった。
昼間から何度とな受けた問いだった。
コーツも、キャゼルヌも、ムライも、カリンも、皆、彼が何を引き受け、何を手放すかについて話していた。
それぞれにもっともな理由があった。ただ、どの話を聞いても、心のどこかが落ち着かなかった。
アッテンボローは黙って待っていた。
「……違うんです、アッテンボローさん」
「何がだ」
「〈傘の会〉の会長を続けたいから、迷っているんじゃありませんよ」
「じゃあ、何だ?」
ユリアンは、自分のグラスを見つめた。
国防委員会に文民の責任者が必要なことは、よく理解していた。
あの職を引き受ければ、自分にできることはあるだろう。
ただ、昼間から何度も考えてきたその先には、どうしても人に説明しにくい答えが残っていた。
「僕は、軍人に戻りたいんです」
アッテンボローは動きを止めた。
「……そうなのか」
ユリアンはようやく顔を上げた。
「……僕は、宇宙に戻りたい」
ユリアンは、一度グラスへ視線を落とした。
「ヤン提督が亡くなったあと、僕は分かったつもりでした。あの人のような軍人になりたかったわけじゃない。ただ、あの人の役に立ちたかったんだと。あのときの気持ちは、今も本当だったと思います」
子どものころ、ヤンの傍らで戦史を読んだ時間が好きだった。
ヤンから質問されると、少しでもいい答えを返したくて夢中で考え、勉強した。やがて革命軍の指導者になり、ヤンのいない艦橋で判断を下したこともある。
自分が何を望んでいるのか、今になってようやく言葉にできる気がした。
「僕はヤン提督のようにはなれない。それは分かっているんです。でも、あの人のそばで覚えたことを、教わったことを、自分の手でやってみたい。艦橋に立って、自分で考えて、自分で判断する。……僕は、それをやりたいんです」
アッテンボローは笑わなかった。ユリアンは、相手が何か言う前に続けた。
「民主共和政を守りたいのも、今回の救難みたいなことを繰り返したくないのも、本当です。文民統制も重要でしょう。でも、それだけじゃないんです。僕は、いよいよ軍ができるというなら、議場ではなく艦橋に立ちたい」
ユリアンはアッテンボローの顔を見て言った。
「あの星の海をもう一度、駆け回りたいんです」
彼は少し困ったように笑った。
「……いい年をして、子どもっぽいとは思いますが」
二人は笑った。
「別に子どもっぽいとは思わんさ。さて、もう一杯どうだ?」
「ええ。今度は僕が払います」
「結構。そういう申し出は断らん主義でね」
のちにバーラト自治防衛軍の元帥となり、宇宙艦隊司令長官と副司令長官として、それぞれ一万五千隻の艦隊を率いることになる二人が、まだどちらも軍服を着ていなかったころのことであった。
以下に記すのは、この夜からしばらくの時を経て、バーラト自治防衛軍と教国軍が激突した『レサヴィク星域の会戦』の一場面である。
後世に編纂された『バーラト自治防衛軍戦史』は、このレサヴィク星域会戦を、バーラト自治防衛軍が初めて独自の作戦計画に基づき、二個の宇宙艦隊三万隻と空戦隊、混成陸戦群を統合して教国軍の正規艦隊四万隻と戦った大規模会戦として記録している。
かつて宇宙艦隊を持たなかったバーラトが、その三軍を独自の指揮と責任のもとで戦わせた、歴史的な一戦であった。
***
【レサヴィク星域会戦・戦況図】
【新帝国暦三十年夏 レサヴィク外縁宙域 バーラト自治防衛軍〈第一艦隊〉旗艦〈ユリシーズ〉 ユリアン・ミンツ】
「敵中央戦列、前進!祈燈増光、斉鐘信号を確認!」
「敵第二聖団の前衛、イングリット・アーレンスも動きました。ですが、ブレドウの〈サトゥルヌス〉艦隊は動きません!依然、後方で待機を続けています!」
バーラト自治防衛軍宇宙艦隊副司令長官、ユリアン・ミンツ元帥は、〈第一艦隊〉旗艦〈ユリシーズ〉の艦橋中央に立っていた。
ユリアン麾下の一万五千隻は、広大な宙域に戦列を展開している。
その左方には、宇宙艦隊司令長官のダスティ・アッテンボロー元帥率いる、同じく一万五千隻の〈第十三艦隊〉が布陣していた。
バーラトの両艦隊の正面には、教国軍の四個艦隊四万隻が待ち構えている。
アッテンボローの正面を第一聖団の主力が占め、その右に第二聖団の戦列が続いていた。
二つの敵聖団の境界付近には、旧軌道施設を改造し、長射程の防御砲座と要塞砲を設置した宇宙要塞があった。
この宇宙要塞の防御砲座と要塞砲を無力化しないかぎり、アッテンボローの第十三艦隊は前進できない。
さらに敵軍の右奥後方では、バルタザール・フォン・ブレドウ聖将麾下の〈サトゥルヌス〉艦隊が、開戦以来ほとんど位置を変えずに予備として控えていた。
「第一鐘確認!斉鐘斉射、来ます!」
教国軍の砲列が一斉に金色に輝いた。
だが、数千条の光芒はバーラト自治防衛軍の戦列を大きく外れ、左右の何もない宙域へ広がっていった。
「……敵の斉射、外れています!」
「いや、待て!着弾予測が――」
戦術投影図の表示が一変した。
安全と判定されていた回避針路が次々に赤く染まり、別の方向から放たれた砲光が、そこへ一斉に流れ込んできた。
先に撃たれた光と、後から撃たれた光とが、まるで最初から約束されていたかのように、味方艦隊の周囲で交差していく。
「何だ、この斉射は……!」
前衛の戦艦が爆発した。回避した隣の艦も、さらにその後方の艦も、次々に砲火に捉えられていく。艦橋の戦術投影図では、いままで見たことのない形で損害を示す赤い光点が広がっていた。
「前衛に損害!戦艦十隻、巡航艦十五隻が戦闘不能!見たことのない斉射です!」
ユリアンは戦術投影図から目を離さなかった。
「救難隊を向かわせてください。後続の戦隊は前へ出て、戦列を維持するように」
教国軍の中央では、第一聖団の艦隊が徐々に左へ寄り始めている。
アッテンボローの第十三艦隊の攻勢に対応するためらしい。
その分だけ、第二聖団との間隔が徐々に広がっていた。
二つの敵聖団の境界には狭い空間が生まれ、広がりつつあった。
だが、その隙間を通ろうとすれば、教国軍の設置した宇宙要塞の要塞砲と防御砲座から側面を撃たれる。
さらにその奥には、ブレドウの一万隻も予備で控えている。
「アッテンボロー司令長官につないでください」
ほどなく画面に、見慣れた顔が現れた。
『よう、ユリアン。そっちの調子はどうだ』
「敵の中央、第一聖団と第二聖団の間が開き始めています。あそこを通って、中央の側面へ回り込みたいんです」
『なるほど。おれの方で敵を引きつけておけばいいわけだな』
「はい。ただ、通路を押さえている要塞が厄介です。今、ポプランさんとカリンがそちらへ向かっています」
『ポプランとカリンが要塞を落とすまで待つのか?』
「三時間ください」
『三時間か。よし、こちらは攻勢の手を替えながら、第一聖団を左へ引っ張り続ける。お前さんが出てくるまで、おれたちが本命だと思わせてやる』
アッテンボローは笑った。
『おれの戦史に、「ユリアン・ミンツ、時間を守らず」と書かれたくなければ、遅刻するなよ』
***
バーラト自治防衛軍宇宙艦隊〈第十三艦隊〉旗艦〈トリグラフ〉の艦橋では、アッテンボロー元帥が戦術投影図を睨んでいた。
麾下の一万五千隻は、教国軍中央に陣取る第一聖団と激しい砲撃戦を展開している。前衛では損傷艦が相次いでいたが、後続の戦隊が次々に前進し、戦列は崩れていなかった。
「敵中央、増援が到着!こちらの正面へ展開しています!」
「結構。ようやく本気で相手をしてくれる気になったらしい」
アッテンボローは椅子から立ち上がった。
「前衛は敵中央を押せ。右翼の戦隊も前へ出ろ。ただし、敵の懐へ入りすぎるなよ。連中をこっちへ引きつけておけばいいんだ」
「了解!」
「全艦、第一戦速。
一万五千隻が前進した。
中央から厚い砲火が放たれ、教国軍の前衛を襲う。
数十隻の艦が炎を噴き、損傷した艦が後退を始めた。
だが、その後方からは新たな教国艦が前進し、金色の戦列を再び整えていく。
敵の応射も激しかった。
バーラト軍の巡航艦数隻が艦首を吹き飛ばされ、回避した別の艦が隣接する戦隊の進路を塞いだ。
「右翼、陣形混乱!」
「損傷艦を左へ逃がせ!後続は速度を落とすな。空いたところへ予備の戦隊を入れろ!」
アッテンボローは立ったまま命令を続けた。
「まだまだだ。もっと押せ!」
教国軍は新たな艦隊を中央へ投入した。
アッテンボローが前進するたびに、敵もその正面へ艦を集めなければならなくなる。
両軍の砲火がいっそう激しくなる一方で、教国軍の中央と第二聖団の間隔はますます広がっていった。
***
「敵中央、さらに左へ移動!」
ユリアンの艦橋にも、その変化が報告されていた。
戦術投影図では、第一聖団の右端がアッテンボローの方へ寄り、第二聖団との間に目立つ空白ができていた。
要塞の砲座さえ沈黙すれば、そこを抜けて敵中央の右側面へ出られる。
「敵の第一聖団と第二聖団の間の隙間が広がりました! 今なら突破できます!」
参謀の一人が進言した。
ユリアンは傍らに立つジュガ・ジンホン大佐へ目を向けた。
「大佐。ブレドウの動きを読んでもらえますか?」
ジンホンは危機事例分析官、通称〈灯読み〉の主任分析官である。
後方では現況担当官と史料担当官が、敵の動きと過去の交戦記録を照合していた。
「承知しました、閣下」
ジンホンは送られてきた資料に目を通した。
「なるほど、結構、結構。実に魅力的な隙間ですね。しかし、右奥に控えているのはブレドウでしょう?」
「ええ。開戦以来、まったく動いていません」
「過去二十八件のブレドウの交戦記録を確認しました。ブレドウが戦機を求めて持ち場を離れた例は一件もありません。ところが、敵が防御線の間隙へ進入した事例は五件あり、その五件すべてで部隊を全速前進させています」
「つまり、今回も?」
「ええ。我々があの隙間へ突入すれば、ブレドウはある時点で必ず動いてきます。あの男は攻撃の好機には動きませんが、守るべき場所を脅かされれば、確実に動くのです。……とはいえ、ミンツ閣下は、それをわかっていて突入なさるのでしょう?」
ユリアンは戦術投影図へ目を戻した。
「ええ。ブレドウが動く前に、入れるだけ入ります。ウォード、あの空隙を通る最短経路を出してください。それと、ブレドウ艦隊がこちらの側面へ到達するまでの時間も。退路の確保も忘れずに」
「了解です、ミンツ閣下」
宇宙艦隊司令部の作戦主任参謀、ユアン・ウォード准将が戦術投影図を拡大した。この会戦では第一艦隊に配属され、ユリアンを補佐している。
ウォードは要塞とブレドウ艦隊の位置を確認し、進路を表示した。
「後方に四千隻ほど残して、ブレドウの前進を遅らせます。要塞砲座が沈黙したら、その間に第一艦隊の主力を一気に通す。撤収経路も確保できます」
ウォードはブレドウ艦隊の進路を横切る遮断線を引いた。
「一万隻のお客様には、少々順番待ちをお願いしましょう。割り込みは困りますよ、と」
「四千隻で受付をするんですか。ずいぶん忙しくなりそうですね」
「ええ。ですから、苦情が出る前に通り抜けてしまいましょう」
ユリアンは笑った。
「分かりました。要塞砲座が沈黙し次第、主力は敵中央の側面へ進出。後衛四千隻はブレドウ艦隊の前進を遅らせ、撤収経路を確保してください」
ウォードは頷き、各戦隊への指示を作り始めた。
ジンホンも端末へ視線を戻した。ブレドウが現在位置を離れて前進した場合に備え、現況担当に監視を続けさせている。
***
戦場の右方では、空戦隊司令オリビエ・ポプラン中将が、新型単座式戦闘艇〈スパルタニアン〉Mk.IIの編隊を率いていた。
旧自由惑星同盟軍の名機〈スパルタニアン〉を、バーラト自治防衛軍が最新技術で全面的に再設計した機体である。
伝統的な機体の輪郭を受け継ぎながら、推進系、姿勢制御、索敵・火器管制などを一新し、旧型を大幅に上回る機動性能と戦闘能力を獲得していた。
目標は、二つの敵聖団の境界を守っており、バーラト軍の前進を阻んでいる敵の宇宙要塞である。
旧軌道施設を軍用に改造したその要塞には、長射程の砲座と戦闘艇の発着設備が残されていた。砲座を停止させることができれば、ユリアンの率いる第一艦隊の進出経路が開ける。しかし、拠点の周囲には教国軍の戦闘艇〈アンゲルス〉が群がっていた。
『さあて、久しぶりに空を飛び回る楽しさを思い出してもらおうか』
ポプランの声が飛行隊の通信網に流れた。
『迎撃機はこっちで引き受ける。護衛隊は突入艇から離れるなよ。間違っても味方を撃つんじゃないぞ』
『司令、それは我々より司令ご自身が気をつけるべきでは』
『生意気な口を利く暇があったら仕事をしろ!』
編隊が散開した。
迎撃に現れた教国軍の単座式戦闘艇〈アンゲルス〉の編隊が、一斉に多弾頭式誘導ミサイルを発射した。
射出された弾体が次々と分裂し、無数の小型誘導弾となって〈スパルタニアン〉Mk.IIの編隊へ殺到する。
噴射炎が白い糸を引き、幾百もの光跡が絡まり合いながら、複雑な螺旋を描いて追いすがってきた。
『おやおや、盛大な歓迎だな。よし、教えたとおりにやってみろ!』
ポプランの声に応じて、Mk.IIの編隊が三次元に散開した。
各機の戦術管制装置には誘導弾の軌道と予測到達位置が共有されており、先頭の機体が急上昇すると、後続は左右と下方へ加速して追尾する弾頭群を引き延ばしていく。
無数の噴射炎が絡み合い、白い光の網が編隊を包み込んだかに見えた瞬間、全機が一斉に進路を変えた。
光跡の束が鋭く折れ曲がったが、誘導弾がその旋回を終えるころには、Mk.IIはもう別の空間へ抜けていた。最後の弾頭が後方を通り過ぎたとき、Mk.IIの編隊は一機も失われていなかった。
『さて、敵さんへのご挨拶は済んだな。諸君、今度はこちらの礼儀を教えてやろうじゃないか』
編隊は上下左右へ大きく弧を描き、〈アンゲルス〉を異なる方向から射程に収めた。
青白いビームが敵編隊の進路上で交差し、教国機は反射的に散開する。
しかし、その回避方向は既にMk.IIの戦術管制装置によって予測されていた。
『今だ!〈サリッサ〉、撃て!』
各機の機首に内蔵された対機電磁加速速射砲〈サリッサ〉が、一斉に高速徹甲弾を放った。
ビームとは違い、その弾道に光の筋は生じない。
だが、次の瞬間、先頭の〈アンゲルス〉に幾つもの破口が開き、推進器の光が途切れた。
続く二機も側方からの射撃で姿勢を崩し、別のMk.IIが放った短パルス・ビームによって撃墜された。
生き残った教国機が散開する間に、Mk.IIの編隊は既に次の攻撃位置へ移っていた。
教国軍の編隊が崩れた。
ポプランは追撃を命じなかった。彼らの任務は敵機を狩り尽くすことではなく、宇宙要塞へ向かう突入艇の進路を開くことだった。
『まだ敵の第二波が来るぞ。護衛隊、突入艇から離れるな。お客さんを通してやるんだ』
ポプランは追撃を命じず、迎撃編隊を再編して残存する敵機へ向かわせた。その後方では、護衛隊に守られたバーラト軍の突入艇群が宇宙要塞へ接近していた。
『こちらクロイツェル。要塞への接近を開始するわ』
混成陸戦群司令カーテローゼ・フォン・クロイツェル・ミンツ中将の声が通信網に入った。
『了解。お嬢ちゃん、あまり無茶するんじゃないぞ』
『その呼び方はやめてって言ってるでしょう!』
『おっと、怖い怖い。教国軍よりよほど怖い』
ポプランは笑いながら操縦桿を倒した。
『しかしまあ、お前らに何かあったら、帰ってからヨーゼフに俺が叱られるな』
『だったら、ちゃんと援護しなさいよ!』
『はいはい。全機、前進!残った敵機はこっちで引き受けるぞ!』
〈スパルタニアン〉Mk.IIの迎撃編隊が一斉に加速した。その後方を、カリンの指揮する突入艇群が通過していった。
混成陸戦群の各部隊は、複数の戦場に分かれて展開していた。
カリンが直接指揮する突入隊は、宇宙要塞の砲座管制室を攻略する任務を担う。
別動隊のカスパー・リンツ少将が率いる混成陸戦群第一連隊は、別の拠点で教国軍の増援を阻止する任務についていた。第一連隊は、〈
***
「右舷接舷口を確保! 突入を開始します!」
突入隊の先頭で、バーラト自治防衛軍の装甲歩兵が隔壁の閉鎖機構に取りついた。
強化された両腕が重い隔壁を押し開き、変形した固定具を引き剥がす。
金属が軋み、通行に十分な幅が生じると、素早く左右へ退いて後続の進路を空けた。
装甲歩兵たちが施設内部へ踏み込んだ。
艶消しの濃青灰色の装甲に、鈍い白銀色の補強縁が走っている。
肩には開いた傘をかたどった白い徽章があり、無機質な面甲には細い青色の視界スリットが光っていた。
重装甲でありながら腰や脚部の輪郭は引き締まり、兵士たちは装甲の重量を感じさせない滑らかな動作で進んでいく。
バーラト自治防衛軍の誇る陸戦兵科『装甲衛士〈ホプリタイ〉』。
バーラトは大規模宇宙艦隊を長年保有せず、その間、救難・防災・産業用途の外骨格技術を独自に発展させた。再軍備後には、その技術的蓄積を歩兵戦力の強化へ集中的に投入した。
その結果として開発されたのが、白兵戦用の装甲戦闘外骨格〈パノプリア〉である。
彼らが着用する装甲戦闘外骨格〈パノプリア〉は、同軍が研究開発の力を注ぎ込んだ、この時代の銀河最高水準の白兵戦用装甲だった。
磁力靴が床を捉え、各機の視界には施設内図と味方部隊の位置が重ねられる。
先頭の兵士が通路の分岐を確認すると、その情報は後続にも共有され、装甲衛士たちは足を止めることなく配置を調整した。
「中央通路でゼッフル粒子を検知! 敵が散布を始めました!」
突入艇の指揮席にいたカリンは、装甲衛士たちから送られてくる映像を確認した。
壁面の散布口が次々と開き、検知器には警告が表示されている。
「全隊、火器使用禁止! 白兵装備へ切り替え!」
装甲衛士たちが銃器を固定し、右手に対装甲鉤槌〈コラクス〉を握った。
片側に重い槌頭、反対側に短く鋭い鉤を備えた、強化装甲同士の白兵戦に特化した武器である。
左前腕では前腕盾〈アスピス〉の固定具が動き、収納されていた補助装甲板が展開した。
「前列、接続」
先頭の三名が前腕盾〈アスピス〉を構えると、隣り合う装甲板の縁が噛み合った。
後列の二名は対装甲鉤槌〈コラクス〉を構え、反撃と側面警戒の位置につく。
同じ動きが左右と後方へ連鎖した。
前列の盾列は隣の小隊の盾列とも連結され、やがて通路の幅いっぱいに、濃青灰色の装甲壁が横一線に築かれていく。
その背後には、十組五十名の装甲衛士〈ホプリタイ〉が幾重にも重なり、肩越しにのぞく青い視界スリットが、暗い通路の奥まで連なっていた。
その向こうから、灰色の重装甲をまとった教国軍の陸戦部隊、聖騎士〈ケルビム〉が現れた。
装甲には細い金色の線が走り、肩からは灰白色の短い外套が垂れている。
彼らが握る巨大な両手剣は、経文の発光による淡い光を帯びていた。
先頭の聖騎士が踏み込み、両手剣を振り下ろした。
凄まじい金属音が通路に響いたが、剣を受けた
前腕から肩、胴体へ伝わった荷重を脚部の駆動機構が受け止め、磁力靴が床に固定されている。
両隣の兵士も盾の角度を調整し、連結された防壁を支えていた。
聖騎士は剣を引き、再び振り下ろした。
「右、開放」
前列右端の盾が接続を解除し、兵士が半歩退いた。
その背後から後列の装甲衛士が踏み込み、対装甲鉤槌を振るう。
角張った槌頭が聖騎士の膝関節を捉え、灰色の重装甲が片膝をついた。
それでも聖騎士は剣を手放さなかった。
上半身を捻って斬りかかろうとしたが、左右から押し込まれた二枚の盾に武器を封じられ、続く鉤槌の一撃で肘の駆動機構を破壊された。
「一名制圧。前進します」
後列の兵士が元の位置へ戻り、盾列が再び閉じた。
聖騎士〈ケルビム〉の攻撃はなお続いた。
一人が倒れても後続が間髪を入れず前進し、両手剣を盾の接続部や装甲の関節へ打ち込んでくる。前列の装甲衛士に負荷が集中すると、後列が進み出て交代し、損傷した兵士は後方へ退いた。
前列が入れ替わっても、通路を塞ぐ盾の数は減らなかった。
バーラトの装甲衛士は、激しい白兵戦のさなかでも隊形を維持し、少しずつ前進していた。〈ケルビム〉の装甲は厚く、剣の一撃も重かったが、装甲戦闘外骨格〈パノプリア〉の機動性能と防御力、そして装甲衛士たちの練度が、正面からの猛攻を上回っていた。
「中央通路、敵前列を押し返しています! 進出可能です!」
カリンが戦況を確認していたとき、別の回線が開いた。
「右側面、敵部隊接近! 整備通路から高速で進入してきます!」
***
中央通路の右手にある整備用隔壁が開き、数名の装甲兵が飛び出してきた。
聖騎士とは異なる、旧帝国軍系の強襲装甲服だった。
増設された装甲や補修の跡が目立ち、武器も戦斧、短剣、拘束索と統一されていない。
装甲衛士たちは盾の接続を解除して側面へ向き直り、最初の二名を鉤槌と盾の連携で撃退したが、反対側からも敵が現れた。
正面の聖騎士〈ケルビム〉に加え、左右から同時に攻撃を受け、盾列は分割を余儀なくされた。
「敵部隊識別!ラスバッハの野犬……〈聖赦執行隊〉です!」
その先頭に、一人の男がいた。
旧帝国軍系の強襲装甲服には独自の改造が施され、透明な面甲の向こうには銀灰色の髪と淡い灰青色の眼が見える。
整った顔立ちには不釣り合いなほど、楽しげな笑みが浮かんでいた。
キリアン・ラーベンホルスト。聖赦執行隊第一強襲群長。
「やっと来たね!ずいぶん待たせてくれたじゃないか!」
少年のように弾んだ声を響かせ、彼は側面を守る装甲衛士へ駆け出した。
装甲衛士は前腕盾を構え、接近に合わせて対装甲鉤槌を振るった。
ところが、ラーベンホルストは打撃の直前に身体を沈め、盾と鉤槌の間へ滑り込む。
剣が膝関節を捉え、駆動機構を損傷した装甲衛士が片膝をついた。
「おっと。そこ、もう動かないんだ?」
ラーベンホルストは追撃せず、一歩退いた。
装甲衛士が残った力で鉤槌を振るうと、嬉しそうに身をかわし、次の攻撃を待っている。
そこへ後列の装甲衛士が進み出た。
負傷者との間に盾を構えて立ち、別の兵士が後方から搬送用の連結具を取りつけようとする。
ラーベンホルストの眼が輝いた。
「ほら、来た!」
彼は救援兵へ斬りかかったが、剣は前腕盾に止められた。
装甲衛士が即座に鉤槌を振るい、その先端がラーベンホルストの肩を捉える。
強襲装甲服の外板が一部剥がれ落ちた。
「……おっ?」
彼は自分の肩を見て、それから満面の笑みを浮かべた。
「へえ!すごいね、その装甲!腕も速いし、力も強いし!」
再び剣を構え、今度は盾の縁へ刃を滑らせた。
装甲衛士が防御面を傾けた瞬間、ラーベンホルストは相手の右腕が動く方向を読んで側面へ回り込み、肘の駆動機構を損傷させる。
しかし、追撃はできなかった。
別の前腕盾が割り込んで剣を押し戻し、最初に負傷した装甲衛士は既に後方へ収容されていた。
右腕を損傷した兵士も退き、その位置には新しい装甲衛士が進み出ている。
「えぇ?もう後ろに下がるの?せっかく楽しくなってきたところなのに」
ラーベンホルストは不満そうだったが、すぐに次の相手を見つけて笑った。
相手は一人が盾で受け、もう一人が鉤槌で反撃し、負傷者が出れば即座に交代する。
個々の兵士は、ラーベンホルストよりも強くないかもしれない。
しかし、何人傷つけても一向に隊形が崩れないことが、彼にはかえって面白かった。
片手を上げると、聖赦執行隊の兵士たちが左右へ展開した。
ラーベンホルスト自身も盾列の接続が解除される瞬間を狙い続け、中央通路への圧力を強めていく。
***
「中央通路、側面からの攻撃が激化! 〈聖赦執行隊〉……ラーベンホルストによる負傷者が増えています!」
カリンは装甲衛士たちから送られる映像を見比べた。
正面の〈ケルビム〉は押し返せているが、側面から現れた〈聖赦執行隊〉が執拗に関節部を狙ってくる。
とりわけ銀灰髪の男は、負傷者の回収動作を狙って先回りして攻撃していた。
「ラーベンホルストね。駄々っ子の相手なんてまともにする必要はないわ。好きなだけ粋がらせておきなさい」
カリンは通路の配置を確認し、続けた。
「正面は二組ずつ交代で後退。残る組が援護して、次の防御位置へ移りなさい。側面の連中とは距離を取って。深追いは絶対に禁止よ。それから、負傷者の回収位置は固定しないこと。同じ手を二度見せないで」
「ラーベンホルストはどうしますか?」
「放っておきなさい。あいつが暴れている間、ほかの連中も中央通路に釘付けになるわ。そこで好きなだけ暴れさせておきなさい」
中央通路の部隊にはまだ戦闘能力が残っていた。
しかし、その先にも敵の防御線がある。
中央通路から突破し続ければ、管制室へ到達するまでにどれほどの時間と損害を要するか分からなかった。
カリンは上層の偵察班を呼び出した。
『クロイツェル司令。こちら、第二点検通路の入口を確保しています。旧施設図では管制室へ直結していますが、途中の隔壁が一枚閉鎖されています。装甲服の通行幅は確認できました』
「隔壁の向こうは?」
『未確認です』
「隔壁までは進めるのね。分かったわ、そっちから突入よ」
カリンは中央通路と上層点検通路を並べて表示した。
敵の主力は中央通路に集まっていた。
カリンは中央の部隊へ通信を開いた。
「中央はもう前進しなくていいわ。負傷者を回収しながら、防御位置を順番に下げて。敵にはまだ中央からの突破を狙っていると思わせておきなさい」
『しかし、敵は押し返せています!』
「だったら、もう少し付き合ってあげて。こっちが下がれば、あの駄々っ子……ラーベンホルストは追ってくるわ」
続けて上層強襲班へ、第二点検通路から砲座管制室へ突入するよう命じた。
強襲班には短柄斧槍〈ペレキュス〉を装備した装甲衛士が配属されており、狭所で敵の防御を崩し、突破口を開く訓練を受けている。
「上層の合流点には、遮断部隊を配置。敵が追ってきても、そこから先へは通さないで。無理に倒そうとしなくていいわ。強襲班が管制室へ到達するまで持ちこたえれば、あたしたちの勝ちよ」
命令を受けた部隊が動き始めた。
中央通路では、先頭の三名が前腕盾を連結して敵の攻撃を受け止め、その間に後列が負傷者を下がらせる。
次の防御位置に別の盾列が完成すると、前列は接続を解除して後退し、後方で再び防壁を形成した。
〈ケルビム〉も〈聖赦執行隊〉も追撃してきたが、バーラト軍の隊形は崩れなかった。
装甲衛士たちは反撃の機会があれば鉤槌を振るい、敵がひるんだ隙に次の位置へ移る。
必要以上に戦わず、それでいて敵に背中を見せない後退だった。
その間にも、上層強襲班は砲座管制室へ向かってていた。
***
「ええ?もう終わりなの?」
ラーベンホルストは不満そうに声を上げた。
目の前のバーラト兵は、盾で剣を受け止め、鉤槌を一度振るうとすぐに後退してしまう。
彼が追えば別の装甲衛士が進み出て、また同じことを繰り返した。
先ほどまであれほど激しく戦っていた相手が、今は長く剣を合わせようとしない。
「待ってよ!もっと僕と遊んでいきなよ!」
三度目の突撃を思いとどまったとき、部下から報告が届いた。
「ラーベンホルスト様!敵の別働隊が上層点検通路へ進入しました。砲座管制室を狙っています!」
ラーベンホルストは後退するバーラトの装甲衛士たちを見た。
彼らは恐怖に駆られて逃げているのではなかった。負傷者を収容し、交代しながら下がり、別働隊が目的を果たすための時間を稼いでいる。
「ああ……そういうこと?」
笑みが消えた。
「……僕を無視しようとしてるのか?こんなに楽しませてやってるのに」
装甲衛士たちは答えず、また後退した。
「おい、無視をするな!ふざけるなよ!勝手に終わらせるな!まだ僕が相手をしてる最中だろう!戦えよ!」
ラーベンホルストが剣を振り上げて怒鳴ったところへ、部下の一人が近づいた。
「ラーベンホルスト様、それよりも早く管制室へ向かった敵を追わなければ――」
言い終わるより早く、ラーベンホルストが振り向いた。
強襲装甲服の駆動力を乗せ、剣を部下の胸部装甲へ思いきり叩き込む。
男は隔壁へ吹き飛ばされ、鈍い金属音とともに床へ崩れ落ち、それきり動かなくなった。
「死刑囚のクズが、うるさいんだよ!僕に指図するな!」
周囲の兵士たちは凍りついたが、ラーベンホルストはもう部下を見ていなかった。
後退するバーラト軍へ目を戻すと、何かに思い当たったように口元を緩める。
「……このやり方。ああ、そういうことか」
彼は小さく笑い始めた。
「司令官は、あのクロイツェルとかいうババアなんだろう!いつか捕まえて、じっくり時間をかけて責めてやるよ!最後は生身のまま宇宙に放り出してさ……ああ、その時どんな顔するかなあ!今から楽しみだなあ!」
ひとしきり笑うと、上層の通路図を呼び出した。
「半分はここを押さえて!残りは僕と来るんだ。先回りするよ!」
先ほどまでの怒りが嘘のような弾んだ声で命じ、部下を率いて整備用昇降路へ駆け込んだ。
***
上層の合流点へ達したとき、ラーベンホルストは足を止めた。
広い点検通路の向こうに、濃青灰色の装甲衛士が五名、待ち受けていた。
先頭の三名が前腕盾を連結し、後列の二名が対装甲鉤槌を構えている。
無機質な面甲には細い青色の視界スリットが光り、盾には白い傘の徽章が並んでいた。
「……待っててくれたのかい?」
嬉しそうな笑みが戻った。
「今度はちゃんと僕と遊んでくれるんだね!逃げるなよ!」
ラーベンホルストは正面から駆け出した。
剣が盾の接続部を打ち、重い衝撃が三名の装甲衛士へ伝わった。
しかし、盾列はほとんど動かなかった。彼が剣を引こうとした瞬間、中央の盾が押し出され、側面から鉤槌が振り込まれる。
ラーベンホルストは身をかわしたが、再び踏み込んだときには盾列が閉じていた。
今度は右端へ向かった。
剣を高く振り上げて相手に盾を持ち上げさせ、露出した脚部を狙うつもりだったが、隣の装甲衛士が盾を傾けて攻撃を受け止めた。
右端の兵士は逆に一歩退いて鉤槌を振るい、ラーベンホルストが側面へ回ろうとすると、後列の一名が進路を塞いだ。
「……なるほど。一人じゃなくて、五人で戦うんだね」
彼は剣を握り直し、今度は盾列の中央へ斬り込んだ。
二名の装甲衛士が反応し、盾の接続部にわずかな角度の違いが生じる。
ラーベンホルストはそれを見逃さず、左端へ身体を寄せた。
振るわれた鉤槌をかわして右肘の関節部へ剣を走らせると、装甲衛士の腕が不自然に下がった。
「ほら!やっぱり、そこは壊れるんだ!」
彼は盾列の隙間へ飛び込もうとした。
しかし、後列の一名が前へ出て盾を接続し、損傷した兵士と入れ替わった。
負傷者は別の装甲衛士に支えられて後退し、ラーベンホルストの前には再び三枚の盾が並んでいる。
「ちょっと待ってよ!なんで下がるの?今の君さぁ、まだまだ戦えただろう?」
返事の代わりに鉤槌が振り下ろされ、彼の肩部装甲を掠めた。
既に傷ついていた外板がさらに裂ける。
「……へえ。やるじゃないか!」
ラーベンホルストは部下を右側へ集中させ、盾列の接続を解除させようとした。
装甲衛士たちは左右の攻撃に対応して位置を変え、その隙に彼は一名の脚部を損傷させ、ついに数歩前進することに成功した。
だが、通路の角を曲がった先には、また三枚の盾が待っていた。
同じ濃青灰色の装甲、同じ傘の徽章、同じ陣形だった。
最初の五名とは違う兵士たちが、既に次の防御位置を完成させている。
後退してきた部隊はその脇を抜け、負傷者を後方へ送っていった。
「……また?」
ラーベンホルストは呟き、それから楽しげに笑った。
「いいよ、たくさん遊ぼうじゃないか!」
先ほど覚えた盾の動きを利用して斬り込んだが、新しい装甲衛士たちも同じ訓練を受けていた。
右端が下がれば中央が前へ出て、剣を受ければ側面から鉤槌が振られる。
彼は何度か装甲を傷つけたものの、突破しようとするたび別の盾が現れ、その間に負傷者は後方へ収容されてしまった。
個々の兵士は、自分よりも弱い。
動きを読み、隙を突けば傷つけることができる。
しかし、どれほど攻撃しても、致命傷を与える前に後列と交代し、同じ防壁が次々と目の前に現れる。
「……ねえ、君たち。僕と戦ってるんだろう?だったらさぁ、ちゃんと最後まで相手をしろよ!」
装甲衛士たちは答えず、必要な一撃だけを返して、次の防御位置へ下がっていった。
「下がるな!少しは本気で戦えよ!これじゃあ、殺せないじゃないか!」
彼らはもちろん、本気で戦っていた。
ただ、ラーベンホルストを倒すために戦っているのではなかった。
***
「第二点検通路、最終隔壁に到達! 管制室まで残り二区画です!」
上層強襲班の前には、厚い隔壁が閉じられていた。操作系統は切断されており、二名の装甲衛士が両側から力を加えると、固定具が軋みながら扉の中央に隙間が生じた。
その奥で、淡い光を帯びた両手剣が動いた。
「敵聖騎士、二名!」
先頭の装甲衛士が前腕盾を押し出し、隙間から突き込まれた剣を受け止めた。
背後の兵士が肩を支え、盾の角度を変えて切っ先を外側へ逸らす。
そこへ、短柄斧槍〈ペレキュス〉が突き出された。
強襲班が用いるこの武器は、斧刃と槌頭、刺突用の突起を備え、敵の装甲を損傷させながら防御を崩すために設計されていた。短い柄を持つため、狭い通路でも扱うことができる。
その先端が聖騎士の武器腕を捉え、続く槌頭の一撃が肘の駆動機構を破壊した。
なお剣を振ろうとする聖騎士を盾で押さえ込み、別の装甲衛士が隔壁を開放する。
二人目の聖騎士が横薙ぎに剣を振るったが、先頭の装甲衛士は盾を傾けて受け流した。
その脇から強襲兵が踏み込み、短柄斧槍を肩装甲へ打ち込む。
敵がなお反撃しようとしたところへ盾が押し込まれ、膝の駆動機構を損傷させられた聖騎士は床へ倒れた。
「通路確保。前進!」
強襲班は戦闘不能となった二名の監視を後続に任せ、管制室へ急いだ。
最後の扉を開くと、内部には操作卓と大型表示盤が並んでいた。
守備兵が剣を手に迎え撃ってきたが、先頭の装甲衛士が盾で押しとどめ、その間に短柄斧槍を持つ強襲兵が左右へ展開する。
一名の守備兵が操作卓へ向かおうとしたものの、装甲衛士が進路を塞ぎ、武器を取り上げた。
室内の戦闘は長く続かず、まもなく要塞の管制設備が確保された。
「管制室、制圧!要塞砲座の射撃管制を停止します!」
カリンは通信を受け、要塞の外周砲座と上層強襲班の位置を確認した。
「設備はなるべく壊さないで。停止を確認したら、すぐ報告して!」
操作卓の前で、装甲衛士たちが防御砲座と要塞砲の状態を確認していた。
砲座群は中央管制から停止できたが、要塞砲だけが射撃可能状態を維持している。
「要塞砲、停止指令を受け付けません! 現地制御に切り替わった模様!」
管制画面を調べた隊員が、非常遮断系統を発見した。
指揮官の許可を受けて操作すると、残っていた要塞砲の射撃可能表示が次々と消えていく。
「全砲座の射撃停止を確認! 防御砲座と要塞砲、沈黙しました!」
カリンは艦隊側からの観測情報でも停止を確認し、各部隊へ撤収準備を命じた。
それから、艦隊司令部への回線を開く。
「こちらクロイツェル。要塞砲座を全部停止させました。ユリアン、もう通れるわ!」
***
「ラーベンホルスト様!要塞砲座が停止しました!敵の主力艦隊が進出を開始しています!」
ラーベンホルストは剣を振り上げた姿勢のまま、足を止めた。
「……え?」
目の前の装甲衛士たちは、なお盾列を維持しながら後退していた。
損傷した仲間を後方へ運び、前列と後列を交代させ、必要なときだけ反撃する。
その向こうでは、任務を終えた強襲班が撤収を始めている。
「……もう終わっちゃったの?」
彼はしばらくその光景を眺め、ゆっくりと剣を下ろした。
〈ケルビム〉はなお戦闘能力を残し、〈聖赦執行隊〉も前進を続けることができた。
目の前の盾列だって、もう少し攻めれば崩せるかもしれない。
しかし、要塞砲座は既に沈黙していた。
「……せっかく楽しくなってきたのに」
ラーベンホルストは心底残念そうに呟いた。
「ねえ、君たち。これで僕に勝ったつもりなの?」
最後尾の装甲衛士が盾を構え直したが、答えはなかった。
ラーベンホルストは再び斬り込もうとした。そのとき、内部回線が開いた。
『ラーベンホルスト』
ラスバッハの声だった。
『撤収しろ。犬どもはそこに置いてけ』
「閣下。でも、まだ敵が――」
『撤収』
ラーベンホルストは目の前の装甲衛士を見た。
相手はなおも盾を構え、こちらの動きを警戒している。
しばらく見つめ合ったあと、彼は剣を下ろした。
「……承知しました、閣下」
通信が切れると、ラーベンホルストは〈聖赦執行隊〉の部下たちを振り返った。
「じゃあ、みんな元気でね。もうすぐ首輪から薬が入るから、そんなに苦しまないんじゃないかな?知らないけど」
先ほどまでの興奮が嘘のような、穏やかな声だった。
ラーベンホルストは軽く手を振ると、整備通路の奥へ消えた。
***
「要塞の砲座、沈黙を確認!」
ユリアンの艦橋に報告が響いた。
戦術投影図では、第一聖団と第二聖団の間に開いた空間が、そのまま敵中央の右側面へと伸びていた。これまで進路を押さえていた要塞の砲座は、もう火を噴いていない。
「ウォード、進路は?」
「確保できています。先頭の戦隊から順に通せます。後衛も予定の位置で待機中です」
ユリアンは頷いた。
ブレドウ艦隊の前進に備え、第一艦隊のうち約四千隻を右後方に残してある。主力が敵中央の側面へ向かっている間に〈サトゥルヌス〉が動けば、この後衛がその前進を遅らせる手筈だった。
「よし。主力、前進!」
第一艦隊が動き始めた。
先頭の戦隊が二つの聖団の境界へ向かって加速し、後続が間隔を保ちながら続く。敵中央はアッテンボローとの激戦を続けており、ユリアンの進出を阻むために十分な兵力を戻せないでいた。
「先頭、敵中央の右側面へ接近!」
「第一聖団、こちらへの回頭を開始!」
ユリアンは正面の表示を見た。
第一聖団は急いで戦列を向き直らせようとしていたが、アッテンボローの攻撃を受けながら巨大な艦隊を一度に旋回させることはできない。前衛が動けば後衛との間隔が乱れ、後衛を動かせば正面の砲火が薄くなる。
そのとき、別の報告が入った。
「第二聖団司令部と〈サトゥルヌス〉艦隊の間で、通信量が急増しています!」
ユリアンは右奥に控える金色の戦列へ目を向けた。
「ジュガ大佐。読みどおり、ブレドウが出てきますね」
「過去の事例から申し上げれば、動き出したあとのブレドウはきわめて迅速です」
ジンホンが答え終わるより先に、新たな報告が飛び込んだ。
「〈サトゥルヌス〉艦隊、前進開始!ブレドウの一万隻が動きました!」
それまで静止していた金色の戦列が、一斉に加速を始めていた。前衛が先行し、後続が整然と続く。その針路は、ユリアン艦隊の後方を横から押さえる方向へ向いている。
「早い!このままでは退路を断たれます!」
ユリアンはウォードへ目を向けた。
「後衛は間に合いますか?」
「はい。迎撃位置までの進路は計算済みです。すでに展開を始めています」
「よし。予定どおり〈サトゥルヌス〉艦隊の前進を遅らせてください。主力は進路を変えません」
「了解しました」
右後方に残しておいた四千隻が、ブレドウの率いる〈サトゥルヌス〉艦隊の進路を塞ぐように展開して遅滞戦を開始した。
ユリアンが用意していたのは、敵と正面から撃ち合い続ける計画ではなかった。
後衛を二つに分け、一方が遠距離から砲撃して敵の前進を妨げ、その間にもう一方が後方の射撃位置へ移る。
先に撃っていた部隊は敵が近づく前に退き、後続と役割を交代する。これを繰り返して距離を保ちながら、敵の前進速度を落とすのである。
まもなく、両軍の間で砲火が交錯し始めた。
ブレドウの一万隻は、厚い戦列を保ちながら前進してくる。
バーラト軍第一艦隊の後衛は砲火を浴びせて後退したが、ブレドウは無理に追いすがらず、前衛を入れ替えながら距離を詰めてきた。
「後衛、敵の第一撃を受けました!戦艦六隻、巡航艦九隻が戦闘不能!」
「損傷艦を収容しながら後退してください。予定の経路から外れないように」
ユリアンは主力の位置を確認した。
先頭の戦隊は、まもなく敵中央の右側面へ達する。そこまで進めば、アッテンボロー艦隊と挟み撃ちにできる。
「ウォード、主力が射撃位置に着くまで、あとどれくらいですか?」
「五分です」
「後衛は?」
「現在の損耗率なら、三十分は持ちこたえられます。ただし、それ以上は保証できません」
ユリアンは戦術投影図を見た。
五分後には敵中央の側面を攻撃できる。そこから二十五分以内に第一聖団を後退させ、第十三艦隊との間隔を詰めなければならない。そうしなければ、ブレドウ艦隊に後方を塞がれたまま、孤立する危険があった。
「分かりました。三十分で第十三艦隊と戦列を揃えて、第一聖団を後退させます。ウォード、後衛には予定どおり遅滞戦を続けるよう伝えてください」
「了解しました」
後方ではブレドウ艦隊の激しい攻撃が続いていたが、第一艦隊の主力は進路を変えなかった。あらかじめ残しておいた後衛が、その前進を遅らせている。
「主力は前進を継続! 敵中央の側面へ出るまで、速度を落とさないでください!」
第一艦隊の後衛四千隻が、右後方でブレドウの一万隻を迎え撃つ。その間にも、ユリアンの主力はアッテンボローと交戦する第一聖団の側面へ迫っていた。
「敵中央の右側面、射程内!」
「第十三艦隊は、なお正面で交戦中!」
ユリアンは頷いた。
「主力各戦隊に告げます。これより敵中央の側面を攻撃します。損傷艦の退路を確保しながら、前進してください」
命令が各艦へ伝達された。
「
数千隻の戦艦が主砲を放った。
青白い光芒が宇宙を横切り、第一聖団の右側面に殺到した。教国軍の艦が次々に爆発し、損傷した艦が戦列から離脱していく。正面ではアッテンボローの猛攻が続いており、第一聖団は二方向から砲火を浴びることになった。
「敵中央、陣形を変更!」
「こちらへの反撃を開始しています!」
ユリアンは被害報告を確認し、前進する戦隊と損傷艦を収容する部隊の位置を調整した。
「前衛は間隔を広げてください。後続はそのまま進みます。敵の砲火を一か所に集めさせないように」
「了解!」
第一艦隊は敵の側面に沿って広がりながら、射撃を続けた。
第一聖団は応射しながら戦列を組み替えようとしたが、右側面へ火力を向ければアッテンボロー艦隊に正面を押され、正面へ向き直ればユリアン艦隊から集中砲火を浴びた。
やがて教国軍の中央戦列が、少しずつ後退を始めた。
***
「敵中央、後退!」
〈トリグラフ〉の艦橋に報告が入った。アッテンボローは戦術投影図を見た。
これまでバーラト自治防衛軍第十三艦隊と正面から撃ち合っていた教国軍第一聖団が、右側面からの攻撃を受けて陣形を崩している。
ユリアン艦隊は敵の右側面を押さえ、さらに奥へ回り込もうとしていた。
「よし、やったな!」
アッテンボローは拳を握った。
「全艦、もうひと押しだ! 正面の連中を押し返せ!」
第十三艦隊が攻勢を強めた。
前衛の戦艦群から一斉に砲火が放たれ、教国軍の中央へ殺到する。敵は応射しながら後退を続けていたが、側面からの砲火を避けるために戦列を曲げるたび、正面の火力が薄くなっていった。
「敵中央、後退速度上昇!」
「追撃しますか!」
「待て。ユリアンの位置を確認しろ」
通信士が回線を開いた。
***
『どうだ、ユリアン。そっちはうまくやっているようじゃないか』
「ええ。第一聖団は後退を始めました。ただ、ブレドウの艦隊が後方へ迫っています。こちらもそろそろ戦列を揃えたいところです」
『なるほど。こちらも上々だ。もう少し押してやるつもりだが、どう思う?』
ユリアンは戦術投影図を見た。
「賛成です。ただし、敵の後退を追いすぎないでください。こちらの後衛も損害が出ています。これ以上離れると、互いの援護が難しくなります」
『まったく、お前は昔から心配性だな』
「あなたが昔から無茶をするからですよ」
アッテンボローは大声で笑った。
『よし。では、敵中央をもうひと押しして後退させる。そのあとそっちと戦列を揃えて、ブレドウを押し返そう。準備しておけよ』
「了解しました」
通信が切れた。
ユリアンは自分の艦隊へ向き直った。
「前衛は攻撃を継続。後続は左へ寄せて、第十三艦隊との間隔を詰めてください。ブレドウを押さえている後衛も、順次こちらへ戻します」
「了解!」
ユリアンの第一艦隊が陣形を変え始めた。
その左方では、アッテンボローの第十三艦隊が教国軍の中央を押し込み、遠くではポプランのスパルタニアン群が残る敵機を追い払っていた。カリンの混成陸戦群も要塞を確保し、後続の収容部隊への引き継ぎを進めている。
ユリアンは眼前の戦場を見渡した。
まだ戦いは終わっていない。第一聖団は後退を始めたものの、教国軍の主力は健在であり、ブレドウの一万隻も整然と前進を続けている。こちらも多くの艦を失った。負傷者を収容し、損傷艦を安全な場所まで運ぶ仕事も残っていた。
それでも、バーラト軍は教国軍の中央戦列を押し返すことに成功していた。
やがて第十三艦隊が最後の集中砲火を浴びせ、第一聖団の主力が後退を始めた。
「第十三艦隊、こちらへ進路を変更!」
「両艦隊の戦列、まもなく接続します!」
ユリアンは戦術投影図を拡大した。
左方から第十三艦隊が接近し、第一艦隊もそれに合わせて陣形を整えていく。後方では、ブレドウを押さえていた戦隊が、敵の砲火を受けながら順次合流を始めていた。
残された時間は、もう長くなかった。
しかし、二つの艦隊は間に合った。
右方には〈サトゥルヌス〉の一万隻が迫っている。ブレドウは追撃のために戦列を崩すことなく、厚い陣形を保ったまま前進を続けていた。
「ブレドウ艦隊、さらに接近!」
その報告に続いて、アッテンボローから短い通信が入った。
『ユリアン、こっちは進むぞ!』
「はい。こちらも行きます!」
ユリアンは指揮卓へ手を置いた。
「全主力艦、前進!」
アッテンボローの第十三艦隊と、ユリアンの第一艦隊が、互いの側面を援護しながら右方へ進路を変えた。
幾万もの砲口が輝き、青白い光が〈サトゥルヌス〉の金色の戦列へ殺到する。ブレドウも応射を命じ、広大な宙域は再び無数の閃光に満たされた。
その光の中を、バーラト自治防衛軍の二つの艦隊は進んでいった。
【機体紹介】単座式戦闘艇〈スパルタニアン〉Mk.II
【挿絵表示】
旧自由惑星同盟軍の単座式戦闘艇〈スパルタニアン〉を、バーラト自治防衛軍が全面再設計した後継機。
原型機の重武装・多用途という特徴を引き継ぎ、推進系、姿勢制御、火器管制、乗員保護などを改良している。
■ 基本諸元
・全長:40.0m
・全幅:7.0m
・全高:10.5m
・乗員:1名
・標準出撃質量:200t
・主機:核融合タービン主機×1基
・主推進:双噴射式
・短時間最大推力:16MN
・最大緊急機動:8G(3秒以内)
・標準任務持続時間:6時間
・単独ワープ能力:なし
■ 主要武装
① 2cm短パルス中性子ビーム砲 ×4門
・配置:機首固定式
・標準放射量:8MJ/パルス/門
・最大発射速度:毎秒4パルス/門
・基準交戦距離:2~15km
・射撃方式:四門斉射、二門交互射撃、各門順次射撃
・用途:対戦闘艇攻撃、対艦部位攻撃、編隊による交差射撃
旧型から継承した機首の主兵装。単機での射撃に加え、複数機が異なる方向から射撃することで、敵の回避方向を制限する運用も想定されている。
② 対機電磁加速速射砲〈サリッサ〉 ×1門
・配置:機首下面内蔵式
・口径:20mm級
・加速方式:誘導コイル式電磁加速
・加速筒長:14m
・弾種:タングステン系高速徹甲弾
・弾体質量:200g/発
・初速:8km/s(発射機基準)
・最大発射速度:毎秒20発(毎分1,200発)
・搭載弾数:1200発
・標準射撃:5~10発の短連射
・主な交戦距離:2~5km
Mk.IIで追加された実体弾兵装。電磁加速した徹甲弾を短時間に連射し、敵戦闘艇の装甲、姿勢制御系、推進機構などを破壊する。
ビーム砲と異なり、発射された弾体は明瞭な光条を引かない。着弾時には装甲の破口や破片の飛散が生じ、命中箇所によっては一撃で戦闘不能に至る。
③ 4cm自動追尾レーザー機銃 ×2門
・配置:機体背面・腹面に各1門
・用途:近接防御、敵戦闘艇への自衛射撃、誘導ミサイルの迎撃
・特徴:火器管制装置と連動した自動追尾機能
④ 多用途外装兵装
・ハードポイント:左右各1か所
・選択装備:対艦巡航ミサイル、多連装誘導ミサイルポッド、大口径対艦ビーム砲ポッド、増槽、偵察・電子戦装備
外装兵装は任務に応じて換装する。対艦攻撃用の重装備を搭載した場合は、機動性能に制約が生じる。
■ 機体の特徴
・推進・姿勢制御:核融合主機1基と左右2基の主噴射口を備える。機体各部の姿勢制御スラスターにより、進行方向を維持したまま機首を別方向へ向けることもできる。
・編隊戦術管制:敵機の位置・予測進路、味方の射線、兵装の使用状況などを編隊内で共有する。
・複合射撃:ビーム砲による交差射撃と〈サリッサ〉の高速徹甲弾を組み合わせる。敵の回避行動を予測し、別方向の僚機が射撃を引き継ぐ。
・乗員保護:操縦席を機体の重心付近に移設し、装甲化された救命区画に収容。全身支持型の耐G座席と緊急分離機構を備える。
・整備・補給:高出力機動や兵装使用には推進剤・電力・排熱上の制約があり、母艦での補給と冷却を前提とする。
■ 開発思想
旧型〈スパルタニアン〉は、火力と多用途性に優れ、旧同盟軍のエースたちによって数々の戦果を挙げた機体である。
Mk.IIでは、その性能をさらに高めるとともに、機体同士の情報共有と射撃管制の連携に重点が置かれた。
一機が敵を攻撃している間、別の機体はその回避先を監視し、次の射撃位置へ移る。攻撃を終えた機体は僚機の射線を空け、次の敵や護衛対象へ向かう。
こうした連携を、一部のエースだけでなく、訓練を受けた搭乗員たちが実行できるようにすることが、Mk.IIの設計上の特徴となっている。