ポケットモンスター サイクルを極めし転生者 作:Notebook119
ハッサムが加入してから、数週間。
レンの旅は順調だった。
とはいえ「順調」という言葉は、一般的なトレーナーとは意味が違う。
レンの旅は、派手な勝利の連続ではない。
一見すると地味。
相手の攻撃を受ける。
交代する。
また有利なポケモンを出す。
気付けば相手は疲弊している。
そして最後に勝つ。
「まただ……」
町のバトル場。
対戦相手のトレーナーは困惑していた。
「俺の方が攻撃してるはずなのに……」
目の前にはハッサム。
相手は強力な炎タイプ。
普通ならハッサムは不利。
しかし、
「とんぼがえり」
ハッサムが攻撃する。
そして戻る。
「ヒポポタス」
砂が舞う。
「なぜだ……?」
相手は頭を抱える。
「普通なら不利な相手を出し続けないだろ」
レンは答える。
「だから交代する」
「不利な勝負を続ける理由がない」
試合後、観客の反応はいつも通りだった。
「強いけど……」
「なんか不思議な戦い方だ」
「派手じゃない」
レンは気にしない。
前世でもそうだった。
サイクル戦は、勝ち方を理解できるまで時間がかかる。
その日の夜。
レンはノートを開いた。
現在の構築。
【砂展開】 ヒポポタス →カバルドン
【サイクル維持】 ウォッシュロトム ハッサム
だが。
まだ穴がある。
「相手が受けに回った時」
レンはペンを止める。
相手が倒れないポケモンを出してくる。
回復する。
守る。
耐える。
そういう相手を崩す駒が必要。
「受け続けるだけじゃ、勝てない」
翌日。
レンは山道を歩いていた。
そこで。
小さな炎が見えた。
「……?」
近付く。
そこにいたのは。
小さな虫ポケモン。
身体には赤い炎。
まだ幼い。
「メラルバ」
レンは驚いた。
もちろん、知っている。
このポケモンの未来を。
しかし。
目の前のメラルバは弱っていた。
炎は小さい。
野生ポケモンとの戦いにも苦戦している。
「どうして、こんなところにいるんだ?」
メラルバは警戒する。
自分は弱い。
何度も負けた。
仲間から離れてしまった。
だから。
人間も同じだと思っていた。
レンは座る。
「君は弱いな」
メラルバの表情が曇る。
しかし、
「今は、な」
メラルバが顔を上げる。
「君はまだ完成していない」
レンはノートを開く。
そこには新しい欄。
【崩し役】
空白。
そして。
その下に書く。
メラルバ
「君は将来、相手がどれだけ守っても、全部壊す力を持つ」
メラルバは信じられない。
自分が?
「ウルガモス」
レンが名前を書く。
「ちょうのまい」
「ほのおのまい」
「ギガドレイン」
「あさのひざし」
メラルバは首を傾げる。
「でも……」
自分にはまだ何もない。
レンは笑う。
「俺の仲間は、最初から完成している奴ばかりじゃない」
「ヒポポタスも」
「ストライクも」
「君も」
「育てて完成させる」
その時。
野生ポケモンが現れた。
メラルバを見る。
弱い相手だと思っている。
「戦えるか?」
レンが聞く。
メラルバは震える。
でも。
一歩前に出る。
「ほのおのキバ!」
小さな炎。
威力はまだ足りない。
吹き飛ばされる。
しかし倒れない。
レンは指示する。
「ハッサム」
ハッサムが前に出る。
「バレットパンチ」
相手を押し返す。
「ロトム」
「ボルトチェンジ」
流れが変わる。
最後。
再びメラルバ。
「今だ」
レンが言う。
「君の炎を見せろ」
メラルバは力を振り絞る。
小さな炎。
だが確かな一撃。
戦いが終わる。
メラルバは自分の炎を見る。
まだ小さい。
でも、初めて思った。
強くなれるかもしれない。
「一緒に来るか?」
レンがボールを差し出す。
メラルバは少し迷う。
そして。
静かに触れた。
こうして。
レンの構築に、新たな可能性が加わった。
【崩し役】
メラルバ。
未来の名は――
ウルガモス。
夜。レンはノートを更新する。
現在の構築。
【砂展開】 ヒポポタス
【対面操作】 ロトム ハッサム
【崩し】 メラルバ
残り二枠。
そのうち一つは決まっている。
最後の詰め役。
レンはページをめくる。
そこに書かれた名前。
ガブリアス