夢の力で青春を手助け 作:ライダー志望
――花弁のような頭部から紫色の光線が扇状に放たれる。まるで熊手のようにも見える光線の束は地面を滑るように迫るも、銀色の軌跡は掻い潜るように避けていく。
銀色の軌跡――恭介はベアトリーチェの光線を躱し終えると、【トルネードカプセム】をバックルから取り外し、【タツマキマグナム】の窪みにセットする。
『トルネード、オン!』
その隙を狙うようにベアトリーチェは恭介に手を向け、紫の爆発を引き起こす。爆発に呑まれる前に恭介は転がる事で逃れ、流れる動作で【タツマキマグナム】のレバーをコッキングしていく。
『ランペイジワン!ツー!スリー!――フルアクセル!』
レバーアクションで【トルネードカプセル】は回転し、エネルギーが充填される。充填が完了した【タツマキマグナム】から必殺待機音が流れ始める。
『チィ!』
その音で大技が来ると察したベアトリーチェは、自身の周りに展開した光の槍と瓦礫を次々と投擲していく。恭介は身を翻すように光の槍と瓦礫を躱しつつ、ランチャーモードの【ブレイカムバスター】と【マグネッツカプセム】を何処からともなく取り出す。【タツマキマグナム】を握った左手で【マグネッツカプセム】を【ブレイカムバスター】の窪みにセットし、身体に擦り付けるようにしてセットしたカプセムを回転させる。
『マグネッツ!』
二つの武器の必殺技の準備が完了し、左手の【タツマキマグナム】を【ブレイカムバスター】の下部に添えるように構える。狙う先は勿論、ベアトリーチェだ。
『ト ル ネ ィ ド ストーム!』
『ブレイカムキャノン!』
耳をつんざくような風を切り裂く唸りと、磁力によるプラズマ擬きの弾ける音が響き合い、周囲を吹き飛ばす竜巻の弾丸と、磁力による電磁弾が同時に放たれる。風と磁力――ある意味ベストマッチな二つがベアトリーチェに容赦なく襲い掛かる。
『グゥウウウウウウウウ……ッ!!』
高威力の二つの一撃を真正面から受け、苦悶の声を上げるベアトリーチェ。だが、受け止める為に交差させた両腕を振り払うように広げると、竜巻と電磁弾が衝撃と共に弾け飛び、後ろへと着弾する。着弾の衝撃で土煙が起こるも、着弾した壁は勿論、蛍光灯のように光るステンドグラスにも傷一つ付いてない。
『フフ……この程度で私を倒せると思いましたか?一歩手前とはいえ、“崇高”の域に足を踏み入れたこの私を』
「簡単に行くとは思っていない。だが、お前に余裕が無さそうに見えるのは私の気のせいか?」
『その言葉、そっくりそのままお返ししましょう』
互いに挑発しつつ、ベアトリーチェは両手にエネルギーを溜めていく。恭介は持ち手を取り外した【ブレイカムバスター】の刀身を【タツマキマグナム】の上部に取り付ける。
『アサルトカリバーモード!』
まるで大剣のような形状となった【タツマキマグナム】――【タツマキマグナム・アサルトカリバーモード】を腰だめに構え、恭介は正面からベアトリーチェに突撃する。
『ハァアアアアッ!!』
『ランペイジワン!ツー!スリー!――アメイジング!』
枝のように伸びた両手から誘導弾の如く無数の光弾が放たれ、エネルギーがチャージされた大剣で薙ぎ払うように光弾を叩き落とす。
両者の決着は、まだ着かない。
夢と現実の狭間を彷徨い、歩き続けたセイアは和装の部屋でクズノハと名乗る人物と対話をしていた。
【色彩】の事、セイア自身の状態も。
「残念じゃが、妾でも今のお主はどうしようもない。肉体と精神の乖離がこれ程まで進行しておる上、【色彩】による侵食も大部分に及んでおる。自我を保っておる事自体が奇跡じゃが……直に喪失するじゃろう」
「そうか……」
クズノハの無慈悲とも言える宣告を、ある程度予想していたセイアは素直に受け止める。視認できる範囲だけでも、自身の身体は黒く変色しており、そう遠くない内に消えると予感していたのだから。
それでも……セイアは諦めきれずにクズノハに問い掛ける。
「仮定の話だが……今の状態から脱する術を第三者が保有している可能性はあるだろうか?ゲマトリア……彼の組織なら、【色彩】以外にも何か知っている可能性は?」
「ない。【色彩】を利用しておる者達ですら、アレを理解できておらぬのじゃ。――全く手がないわけじゃないがの」
「……本当に実在するのかい?今の私でさえ、解決出来うる可能性のある手が」
「お主が見えなかった白き夢……お主の“権能”とは異なる【明晰夢】、“外の理”とでも呼ぶべき力を借りれば可能性はあったじゃろう。あれは夢を介して現実を……理を書き換える力じゃ。条件次第では“死”さえ覆せてしまう、使い方次第では世界すら壊しうる力じゃ」
クズノハは何て事のない、世間話のように語っているがその内容は凶悪そのもの。キヴォトスに滅びをもたらしうる存在と同等……否、下手をすればそれ以上の存在が既にキヴォトスにいるのだから。
「安心せい。あくまで本質じゃ。あの者にそんな意思もなければ、可能性にすら気付いておらぬ。そもそも主が見えなかったのは、触れれば耐えきれぬからじゃ。権能があるが故に受け止めれてしまう、許容範囲を優に越えて崩壊してしまう……端的に言えば一種の防衛本能じゃ」
「つまり……あれは妨害でも何でもなく、私の力が及ばなかっただけと言うのかい?」
「――そうじゃ。今のお主が断片とはいえ漸く見えたのは“器”に穴が空いたからじゃ。干渉できずとも、“見る”程度なら然したる支障もないしの」
見えない白い夢の正体が、単なる力不足だったという事実にセイアは思わず脱力してしまう。同時に
もし彼処で素直に助けを求めていれば……もしかしたら助かっていたのかもしれない。しかし、それは後の祭り。残された時間もない以上、このまま消え去るのがセイアの運命――
――リジェネイション!
――運命は覆る。
何処から途もなく音声が響いたかと思うと、セイアの身体が金色の光に包まれる。途端、セイアの身体の黒澄んでいた箇所が漂白されるように消えていき、元の姿へと戻っていく。
「これは……?」
「どうやら、運はお主を見放しておらんかったの」
突然自身の身体が元に戻っていく事にセイアは困惑の声を洩らすも、クズノハの呆れたような声を聞いてある可能性に行き着く。
――サオリにルーラーメアカプセム……あ、これじゃ分かりませんか。とびっきりの回復アイテムを預けて、貴女とミカさんの下へ向かってますから。
アリウスの先生が別れ際に口にした言葉。ソレが事実なら、今のセイアは肉体から彼の力の一端による治療を受けている事になる。そんなセイアに、クズノハは彼女にとっての朗報を口にする。
「今なら本質の一部……“権能”を手放せば侵食から完全に逃れられる。帰り道も、現実からの干渉を辿れば問題なかろう。少なくとも、アヤツの“窓”を介するよりも安全で確実じゃ」
「そうか……なら、そうさせてもらうとしよう」
今までのように夢で過去を、未来を知ることは出来なくなってしまうが、最早今さらだ。見えない白い夢が増えている上、無用の長物となりつつある能力を手放す事に抵抗はない。
セイアはクズノハの提案をすんなりと受け入れ、“力”を手放す。力を手放した途端、白い光景が広がるも何も見えない。セイアは今までの経験から、これが最後の予知夢であると同時に、彼の影響を強く受けて見えないのだと。
「フム……最後の予知夢すら見えぬか。気になるなら、特別に妾が教えてやってもよいぞ?」
「いや。魅力的な提案だが遠慮させてもらうよ。夢は――未来を作るそうだからね」
セイアの返答に、クズノハは微笑む。その反応から、最初から教える気はなかったのだとセイアは察する。
そのまま意識が浮上する感覚へと身を委ねる直前に、クズノハは最後の言葉を口にする。
「そのまま真っ直ぐ帰れん事もないが……お主が望むなら“寄り道”くらいはできるぞ」
「……それは、実に有益だね」
その意図を察し、セイアはイタズラを思い付いたように笑みを浮かべる。全部は語らずとも、伝えたい事は伝わった。
クズノハの言葉を聞き、セイアは“寄り道”してから帰る事にする。お礼参りの為に。
――【スマッシュカプセム】を【タツマキマグナム・アサルトカリバーモード】へとセットする。
『タツマキ、オン!』
『ランペイジワン!ツー!スリー!――フルアクセル!』
素早いレバーアクションでチャージを完了させ、両手で武器の持ち手を握り締める。腰だめ構えたまま、恭介は必殺の一撃を放つ。
『ア サ ル ト タツマキバースト!』
風の唸りを伴った豪快な斬撃がベアトリーチェへと迫る。ベアトリーチェは腕を交差させて受け止め――その衝撃で両者は吹き飛ぶ。
「…………」
『フフッ、だいぶ疲労が滲んでいますわね。速水恭介』
軽い息切れを起こす恭介に対し、ベアトリーチェは――健在。多少の煤けはあるものの、かなりの余力を残している様子が窺える。
前回の時もベアトリーチェのタフネスは異常だったが、今回はそれの比ではない。何度か大技をベアトリーチェに叩き込んでいるが、膝を着く様子が微塵もない。それだけ強大な力を得たという証ではあるが、このままだと遅かれ早かれ恭介の方が追い詰められてしまうだろう。手はないこともないが、今の状況で使っても無意味に終わる可能性が高い。かと言って、このまま戦い続けていたら
一か八かに走るしかないのか………徐々に追い詰められ始めていた恭介はベアトリーチェに視線を向け――黒い物体に気が付く。
部屋の片隅から弧を描くように投げられたソレ。ソレは光を放ち続けているステンドグラスへと向かい――爆発する。
『な――』
突然の背後からの爆発音に、ベアトリーチェは驚いて後ろを振り向く。爆発による煙が晴れると……ステンドグラスが無残にも砕け散っていた。
それを見たベアトリーチェは焦る。何せ、儀式はまだ途中なのだ。儀式の祭壇――ステンドグラスが破壊されれば、儀式は成立しなくなり、異常を来す。
『誰の仕業です!?そもそも、何処からグレネードなど――』
自身の力が大きく削られた事を実感しつつ、ベアトリーチェは周囲を見渡す。今の爆発は間違いなく第三者の手によるもの。この空間はベアトリーチェと恭介では絶対に傷付かない。その法則を強引に押し通した故に、二人以外の手による攻撃には著しく弱い。
もし第三者がいたなら《ユスティナ聖徒会》が動いている筈……そう考えているベアトリーチェの視界に、あり得ない人物の姿が写る。
『……百合園セイア!?何故貴女が此処にいるのです!?貴女の精神は、“外”へと確実に追い出した筈……!そもそも、どうやって此処に――』
「わざわざ君に教える必要があるのかい?まあ、失策くらいは教えるのも吝かではないかもしれないね」
セイアはベアトリーチェにそう返すと、徐々に身体が透明となっていく。それを見て、ベアトリーチェはカラクリに気が付く。
この空間は夢と現実の境界が取り払われている。夢と現実が同時に内包し、現実の理から外れた空間。夢でもあるからこそ自由に干渉が出来――夢の住人からの干渉も受けてしまう。
セイアがどうやって戻ってきたのかは不明だが、彼女はこの空間に干渉し、介入してきたのだ。わざわざグレネードを創造して使うという、ベアトリーチェへのお礼参りの為に。
『……百合園セイアァアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
ベアトリーチェは怒りを露にセイアに襲い掛かるも、セイアの姿が完全に消えたことで振り抜いた手は虚しく宙を切る。そして、そんな致命的な隙を恭介は見逃さない。
『イレイサー、オン!』
『ランペイジワン!ツー!スリー!――フルアクセル!』
【タツマキマグナム・アサルトカリバーモード】に【イレイサーカプセム】をセットし、ベアトリーチェへと駆けつけながら必殺準備を完了させる。音声で恭介に気が付いたベアトリーチェは振り返るも、既に遅い。
『ア サ ル ト イレイサーバースト!』
掬い上げるようにベアトリーチェを斬りつけ、盛大に吹き飛ばす。斬られたベアトリーチェは唯でさえ削られた力が、【イレイサーカプセム】によって更に削られてしまい、その姿を保てなくなっていく。
「ぁあああああああっ!!オノレェ……!」
元の姿へと戻りつつあるベアトリーチェは恭介を睨み付けるも、恭介は武器から取り外した【イレイサーカプセム】をバックルにセットし――素早く変身シーケンスを終わらせる。
――イニシャライズ!ナイトシステム!――――イレイサー!
口に中る部分にシュノーケルのようなボンベ。両前腕と両脹ら脛に、バイクのマフラーのような形状をした三つの小さな装飾物。
《タツマキトルネード》の更なる強化フォーム――《ナイトアリウス・トルネードイレイサー》への変身を完了させる。
「これで終わりだ――ベアトリーチェ!!」
恭介はバックルのピンスイッチを三回押し込み、【イレイサーカプセム】を回転させて前屈みに構えを取る。
「ガァアアアアアアアアアアアッ!!!」
ベアトリーチェは雄叫びを上げながら、最後の足掻きと云わんばかりに瓦礫と光槍を飛ばしていく。
瓦礫と光槍は恭介へと迫り――恭介の姿がぶれる。
『イレイサー!フェイタル!』
一瞬。
まるで弾丸の如く、恭介は水平に飛び蹴りを放ち、ベアトリーチェをすり抜けるように突き進む。
「ァ――」
ベアトリーチェは叫ぶ間もなく、爆発に呑まれる。派手な爆発を背に、恭介は床を削りながら着地するのだった。
オリジナルフォーム紹介。
《ナイトアリウス・トルネードイレイサー》
本作オリジナルカプセム【イレイサーカプセム】で変身する、《ナイトアリウス・タツマキトルネード》の強化版。ゼッツの《プラズマブースター》と近い立ち位置。
必殺技は【イレイサー・フェイタル】。
次回、ベアおば終了。