夢の力で青春を手助け 作:ライダー志望
×月×日 晴れ
シャーレの先生から相談を受けた。解決策を求めた訳ではなく、世話話程度のものだが。
連邦生徒会直属の学園……廃校された『SRT特殊学園』所属の生徒の一年生四人《RABITTO小隊》が現在、子ウサギ公園でキャンプしており、学園の廃校撤回を求めて活動しているとのこと。シャーレの先生も廃棄弁当を融通してコミュニケーションを図ろうとしているが、頑なな態度はまだ解けていないと。
私はあくまで個人的な見解と前置きして、現状の問題点を告げていった。シャーレの先生もあくまで解決への糸口を探しているだけですし。
まず、大前提として廃校の撤回は事実上不可能である事を告げました。仮に撤回できても直ぐに元に戻ってしまうとも。何故ならSRTの指揮権は連邦生徒会会長……行方不明の彼女にしかないからです。戦力を動かせる人が不在の上、事前の対応策もなければ解体せざぬを得なかった側面もあったのでしょうし。仮に代行が振るえるようにしたら、代行の立場を狙う人達が暴走しかねない危険もあったと思います。代行の選定は生徒会長より遥かに簡単でしょうし。
それに、お飾りの現状維持もリスクしかなかったのもあったのだと思います。強力な戦力を保有しているのに動かさない……いえ、実際には動かせないのでしょうが、戦力があるのに“何もしない”というのは不満と不信が燻り、組織の必要性でさえ揺るがしかねないですし。
だから、SRTを廃校して騒動には干渉しないと表明するしかなかったのだと思います。保有し続けるリスクより、戦力を手放した中立を表明するリスクの方が小さいと判断したのでしょう。シャーレの先生も似たような話を聞いたと頷いていましたし。
《RABITTO小隊》の頑なな態度に関しては……居場所がなくなった不安と、シャーレの先生が図らずも“正義”を奪った大人に見えたからかもしれないと答えました。前者はともかく、後者に関しては首を傾げられましたが。
SRTの正義は、端的に言えば国際法を守る為の機関みたいなものですからね。連邦生徒会会長の下で他自治区に対して“正義”を振るう……一定の決まり事の下で問題を解決する組織だったようですから。シャーレの立場……他自治区への自由な往き来と問題を解決へと導いてきたその実績が、無意識な嫉妬に繋がったのかもしれません。真逆の立ち位置で似たような結果を出していることも理由の一つかもしれません。
彼女達のこれからについては……このまま行けば厳しい現実に直面するでしょう。野宿も数日ならまだしも、月単位になれば様々な問題が出てきますし、テント生活も天候次第では簡単に破綻しかねませんから。不安定な住まい程、精神を蝕んでしまいますから。一時寝床にしていた校舎をカプセムの力で直したのも、それが一番の理由ですし。
その話を聞いたシャーレの先生は、何か彼女達に提案できないかと頭を悩ませました。彼女達の望みを叶えるのではなく、その為の猶予くらいは用意してやりたいと。
そこで私は、ネット動画で得た知識……コンテナハウスを基準にしたタイニーハウスを提案しました。大型コンテナを改造して、車輪を下部に取り付けて移動式にすれば、ある程度は改善するのではないかと。
それを聞いたシャーレの先生は盲点だったと口にしました。色々な手続きが必要な上、彼女達の同意等の問題はあれど、テント生活よりはゆとりが出来そうだと。
シャーレの先生は思い付いたが早いのか、直ぐにリンさんや防衛室長の不知火カヤさんに連絡し、確認を取ると言って行動に移しました。この行動力の早さもシャーレの先生の美点かもしれないですね。
×月〒日 曇り
最近、キヴォトス内である噂が広まっているそうだ。その噂の内容は鶏の大群を従え、黒ずくめのスーツとサングラスをしたペロロが徘徊しているそうだ。配下らしき鶏が器用に羽で掲げた旗には『我々を粗末にした者に落とし前をつける』と書かれているとの事。
記事にあった被害にあったらしいヘルメット団とスケバン達によると、突然現れて突然消えたとの事。オカルト染みた話題で少々話題になっているそうだ。
そういえば、アズサが友達と一緒に里帰りした際、ヒフミさんがペロロを布教していましたが。まさかとは思いつつも、モモトークでペロロに関する話題についてお聞きしました。そしたら、見事にビンゴでした。
冗談混じりで、『鶏肉を粗末にしたら、夜中に鶏達の頂点であるペロロ様が部下を率いて襲ってくる』と面白おかしく話題にしていたと。単に食べ物を粗末にしてはいけないという怪談めいたお話が、ヒフミさんのペロロ布教でおかしな方向へと膨らんでアリウス内で話題になったと。
アリウス自治区はオカルト現象が起こりやすい場所だった事で形となり、モモフレンズのペロロの認知が広いこともあって自治区外で動き回っているのでしょう。自治区内では粗末に扱わないように配慮してますから。こういったオカルト現象は自治区内で起きる前提でしたから、自治区外で活動するのは本当に予想外でした。
今回のペロロ騒動がアリウスに原因があると分かり、私は直ぐにシャーレの先生に連絡して事情を説明しつつ解決策を提示しました。制圧し、鶏肉に対して心からの謝罪と感謝を伝えれば無害化できる筈だと。
シャーレの先生も今回のペロロ騒動に対する依頼が出ていたそうで、事情を理解して直ぐに対処に動くとの事。今回の件はアリウスにも責があるので私も解決に同行する事にしました。
肝心の出現場所については……シャーレの先生は子ウサギ公園だと予想を立てていました。先日、RABITTO小隊の様子を見に行ったら、鶏肉弁当を食べずに捨てていたからだと。理由は変な臭いがしたから捨てるのは当然だと敵意丸出しで。
私も事情説明に同席しましたが……私にも露骨に敵意を向けていました。協力も拒否され、出来るのは現場に居合わせるだけとなりました。いざとなったら、無理にでも前に出ますが。
結果は……彼女達にとっては相当な痛手を負う結果となりました。鶏達のボスと化したペロロ……《ドン・ペロロ》と配下の鶏達の前に拠点ごとボロボロとなってしまいましたから。彼女達が頑なにこちらの手助けを拒否した結果とも取れますが。
RABITTO小隊の皆も最初こそ抵抗出来ていましたが、数の暴力とドン・ペロロの力の前に次第に圧されていき、持ち出した装備のほとんどが駄目となってしまいました。彼女達がリンチされる直前で割って入りましたが。
何とか調伏に成功し、無害化する事は出来ましたが……RABITTO小隊の皆さんの雰囲気はとても暗かったです。最低限の寝床だけは建て直しましたが、終始暗い表情のままでした。
今回はシャーレの部屋で泊まり、明日もシャーレの先生と一緒に様子を見に行く事にします。大人としての、最低限の責任を果たす為に。
早朝。子ウサギ公園にて。
「……やっぱり、夢じゃないんだよね」
弱々しく、ポツリと呟いたミユの言う通り、あの夜の出来事は夢ではなかった。昨日の夜の惨状が……ズタボロとなった幾つものテントと、使い物にならなくなった装備が散乱しているのだから。
幾つもの幟旗を掲げた鶏の集団に、それを率いるマフィアのボスのような格好をしたペロロ……そんなふざけた集団を相手に拠点を破壊され、地面に倒れ伏した。シャーレの先生の指揮を拒絶し、自分達だけで対処した結果だった。
シャーレの先生が連れてきたもう一人の大人……ドン・ペロロ達を生み出した自治区の関係者に助けられた事で怪我こそなかったが、心はへし折れる寸前だった。
「装備も幾つも駄目になったし、通信機器まで……」
「……本当に私達、何をしているんだろうね?」
SRT閉鎖前に持ち出した装備の多くが駄目となり、サキとモエも失意に沈んでいる。そんな状況でも、ミヤコは諦めないと言わんばかりに口を開く。
「とにかく、まだ使える装備を回収しましょう。テントも何とか修繕して建て直して――」
「建て直して……どうするんだ?」
「どうするって……決まっているじゃないですか、サキ。SRTの名を守――」
「どうやってSRTの名を守るって言うんだ!?」
ミヤコの言葉を遮るように、サキが感情を爆発させたかのように叫ぶ。その感情のまま、その場にいる皆に現実を突きつけていく。
「もう装備だけの話じゃない!治安維持どころか、食料品を探すことしか出来ていない!正義がどうこう以前に、自分達の行動すら分からなくなってきているんだ!その上、あんな意味不明な存在に完封なきまでにやられて……!SRTの名を守るどころか、逆に泥を塗って……もう、全部が終わりなんだよ!」
「うん……野宿生活だって、こんなに長引くなんて考えてなくて……どんどん辛くなってきて……」
「……結局、私達の行動は全部無駄だったって事かな?最初から最後まで」
サキの叫びにミユとモエも諦感を漂わせて呟く。そんな諦めの境地の三人に、まだ諦めていないミヤコは信じられないと言いたげな表情をする。
「サキ……?ミユ……?モエ……?みんな、何を言っているんですか……?最初に言っていたじゃないですか。私達が諦めない限り、SRTの名前は――」
「ミヤコも本当は気付いてるんでしょ?こんな馬鹿な真似は、何時までも続けられないって。昨日の出来事に関係なく、限界が来るって」
――だから、ここで諦めよう。もう、楽になろう。
口に出さずとも纏う雰囲気でそう告げる三人に対し、ミヤコは頷くことはせずに装備の回収を始めていく。
「まだ続けるつもりなのか!?こんな惨状なのにか!?」
サキが信じられないと叫ぶも、ミヤコは言葉を返さず無言で散らばった装備を拾い集めていく。一つ一つ確認し、簡単な仕分けをしながら回収を続けていく。
拾った装備のほとんどは使い物にならなくなっており、無事と言える装備が少ない。ミヤコ自身も現実を前に折れそうになっているが……
「……それでも、諦められない……!諦め、たくない……!」
涙声で呟きながら装備を回収していると、不意に視界の隅に二つの影が写る。ミヤコが誰なのかと視線を向けると……そこにいたのは嫌いな大人二人だった。
「……貴方達ですか。今度は何の用で来たのですか?冷やかしなら帰って――」
ミヤコは弱気を隠して強気に追い払おうとするも、シャーレの先生と恭介は構う事なく散乱した装備を拾い集めていく。
「ミヤコ、これはまだ使えるかな?」
「……え?あ、いや、確かにそれはまだ使えそうですが……」
「私達が集めますから、ミヤコさんは選別をお願いします」
「え、あの……」
困惑するミヤコに構わず、シャーレの先生と恭介は散らばった装備達をせっせと拾い集めていく。そんな二人の行動に、ミヤコは我に返ったように問い掛ける。
「一体何が目的なんです?そちらの先生だけでなく貴方まで……私に恩を売ろうとでもしているんですか?」
「そんなつもりはないのですが……強いて上げるなら、責任ですね」
「責任?責任って、何の責任ですか?」
「昨日の騒動に対して、ですね。あれは元を辿ればアリウスが原因ですから」
「…………」
恭介の言い分に間違いはない事は理解できる。ただ、それだけではない気がミヤコにはある。
「……本当にそれだけなんですか?強いてなら、他にも理由があるのではないですか?」
「……一番の理由は、ちゃんと話をしたいからですね。ちゃんと話をしないと、助言も何も出来ませんから」
「助言……助言なんて必要ありません。私た……私だけでも――」
「一人では限界があります。一人ですと、一人でできる以上のことはできませんから」
ミヤコは拒絶しようとするも、恭介はやんわりとした声で限界があると告げる。その言葉に、限界を迎えかけていたミヤコは反論できずに口をつぐむしかできない。
「彼の言う通りだよ、ミヤコ。それに、聞くだけならタダだよ」
「……仮に聞いたとして、SRT特殊学園がすぐに再建できますか?出来ませんよね?ですから話すだけ――」
「確かに直ぐに再建は出来ませんね。ですが、
シャーレの先生の言葉にミヤコは突っぱねようとするも、恭介の言葉につい口を止めてしまう。そして、恭介の言葉の意味を図ろうと問い掛ける。
「再建への道程を考える……?それはどういう意味ですか?私はすぐにでも――」
「シャーレの先生から、君達の学園の閉鎖の経緯は聞きましたが……仮にミヤコさんの言葉通りに学園がすぐに再建されても、それだけではまた閉鎖になってしまいます。指示を出せる人間が、不在のままですから」
「それは……」
恭介の指摘に、ミヤコは反論できずに押し黙る。実際、学園の閉鎖を取り消して……その後の事を一切考えていなかったのだから。三人の会話に耳を傾けていたらしいサキ達も、後の事に思い至って俯いている。
「もちろん、自分達の思い入れのある場所が問答無用で取り上げられてしまって、不安と混乱が勝った面もあるでしょう。いきなり学園を閉鎖されて、冷静ではいなれなかったでしょうし」
「そうだね。やり方は褒められたものじゃないけど……ミヤコ達は自分達に出来る事を考えて、デモを起こしたのは確かだよね?」
「……ハイ。デモで連邦生徒会に訴えかけるしか、私には思いつきませんでした。結果はご覧の通りですが……仮定の話として、お二人ならどんな方法を思いつきますか?」
「私だったら、何とか話し合いの場を設けようとするかな?恭介さんは?」
「私の場合ですと……ヴァルキューレへの編入時に、メンバー全員を同じ部署に配属してもらいますかね?一方的な閉鎖ですから、それくらいは融通してくれそうですし……そこから、学園の再建計画を煮詰めて行きますね。出来ることから少しずつ……アリウス自治区の復興も、そうして進めて来ましたから」
実体験も交えた恭介の方法に、シャーレの先生は現実的な意見だと納得する。同じ部署なら時間も合わせやすいし、治安維持に貢献しつつ学園の再建にも動き易い。時間と装備の質に目を瞑れば、一番現実的かもしれない。
しかし、それも後の祭り。デモを起こした挙げ句、ここまで反抗し続けたのだ。自分達の要望はもう通らないだろうとミヤコ達は思う。それに、譲れない一線もある。
「……お二人の意見は分かりました。ですが、SRTとしての質は落としたくありません。それに、ヴァルキューレに編入したら、SRTの名前が完全に消えてしまいそうで……我儘なのは理解して――」
「じゃあ、その路線で考えようか。そうなると現状維持だから……コンテナ製のタイニーハウスなんてどうかな?」
「「「「??」」」」
あっさりとミヤコの意見を尊重した上で、シャーレの先生は元々考えていた案を出す。簡単に意見を受け入れた上、何かしらの案をすぐに出したシャーレの先生に、ミヤコだけでなくサキ達も首を傾げている。
「うん。これは恭介さんのアイディアなんだけど……コンテナを住居に改造して、車輪も取り付けて移動可能にした家だよ。解決すべき条件はあるけど……そこはシャーレが責任を持つ事で何とかなるよ」
「コンテナ……移動式……」
「コンテナの中で生活……けど、テント生活よりは安心できる……のか?」
「うーん……少なくとも、通信機器が雨で水浸しになる危険性は格段に落ちるよね」
ミユ、サキ、モエの三人はコンテナの中での生活を想像し、今のテント生活より快適になりそうだと考えを巡らせていく。その中で、ミヤコはコンテナハウスの問題点を口にしていく。
「……この公園に持ち込めるコンテナのサイズは小型になります。それに、移動式となると車も不可欠でしょう。今の私達では車も用意できません」
「その辺りは電気駆動の三輪車で代用できないかなって考えているけど……どうかな?」
シャーレの先生の提案に、ミヤコは目を閉じて考えを巡らせていく。少しして結論が出たようで、目を開いてシャーレの先生を見やる。
「……分かりました。少なくとも、通信機器と装備の管理はやり易くなりますから。それと……ありがとうございます」
こうして。
RABITTO小隊のテント生活は、小さな移動式コンテナハウスも加わったテント生活へと変化したのであった。
原作との相違点
・RABITTO小隊の拠点被害が水害ではなく、《ドン・ペロロ》と呼ばれるアリウス自治区が原因で生まれたオカルト的存在によるものとなる。
ちなみに《ドン・ペロロ》は鶏肉を粗雑に扱った者へと制裁を与える存在。配下の鶏達も同じオカルト的存在で、鶏肉に感謝も敬意もない者に対して圧倒的に強い。RABITTO小隊も仕方ないと特に惜しむ事なkj鶏肉弁当を捨てた事で、制裁対象に認定された。
・RABITTO小隊の拠点に小型の移動式コンテナハウスと電気駆動の三輪車が追加される。このやり取りを経て、RABITTO小隊はシャーレの先生に心を開き始める。破壊された装備と機器は【リカバリーカプセム】で修復され、結果として精神的な余裕が生まれる。