夢の力で青春を手助け   作:ライダー志望

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晄輪大祭

△月○日 晴れ

 

シャーレの先生から、晄輪大祭への参加を打診された。連絡を交換したコードフォン越しで。

晄輪大祭は二年毎に開催される、各学園が集う体育祭……簡単に書けばサイクルの短いオリンピックのようなものだ。開催地となる場所もオリンピック同様、選ばれた自治区内で行われる。今回の開催地はミレニアムだそうだ。

私もアリウス生も存在自体は知っていたが、諸事情から観戦さえも控えていた。今年は連邦生徒会会長の失踪もあって延期されるかと予想していたが、多少時期はズレても開催するようにしたらしい。

それはともかく、晄輪大祭への参加については一時保留として、決まったら後日連絡すると返しました。参加するのは生徒の皆だから、彼女達の意思が大事ですからね。

それと、何処から連絡先を手に入れたのかは不明だが、防衛室長の不知火カヤさんから連絡があった。内容は便宜を図るから噂の備品を融通してほしいとのことでしたが、丁重に断らせて頂きました。利益欲しさに無責任な行動を取るわけにはいかないので。

それと晄輪大祭は、満場一致で参加する事となった。

 

 

△月±日 晴れ

 

晄輪大祭に向け、アリウス自治区内は活気に満ち溢れている。参加するからには総合一位を目指すが、一番は楽しむ事を前提にしてだ。アリウスでのお祭りは《追悼祭》くらいだから、大規模な催しには皆が興味津々で胸を踊らせています。

選手に応援団、出店の申請……出店に関してかき氷を提供する予定です。値段設定に数種類の手作りシロップの用意と大変ですが、かき氷自体はアリウスの定番の氷菓子ですからね。メインはハチミツシロップです。

かき氷は夏祭りの定番メニューで、運動がメインの輪大祭には不向きかもしれないが、火照った身体に冷たい物は好評となる筈。色々な意味で手軽でもありますし。

後、シャーレの先生からRABBIT小隊の現在をお聞きしました。彼女達はシャーレ所属にして、治安維持に関する依頼を回しているとのことです。子ウサギ公園の占拠に関しても、再開発が決まるまでは清掃・管理を条件に滞在許可を下ろしてもらったそうです。勿論、彼女達と話し合い、合意を得た上で。

 

 


 

 

――晄輪大祭、実行委員会の事務室にて。

 

『うふふっ……■■、■■です!みんなで■■いたしましょう!激しく、もっとお互いを求めて!■■を!■■を!■■を――!』

 

映像で届けられていた選手代表の宣言……その代表の一人を務めたハナコの放送禁止用語連発の宣言に、放送が強制的に中断される。そこで必要な書類の処理をしていた大人二人――シャーレの先生と手伝いの恭介は何とも言えない表情となっていた。

 

「ハハハ……」

「これは……反応に困りますね」

 

十中八九わざとであろうハナコの所業に、二人は隣にいたアヤネの心情を察して同情してしまう。たぶん、本人的には肩に力を抜けさせる程度の認識だろうが。

そんなシャーレの先生のすぐ近くでは、ミレニアムの生徒二人と一体のロボットがお手伝いしている。ちなみにこのロボット、頭上にヘイローがあるだけでなく妙に感情豊かである。

 

『フフ……こうして最大の障害たる先生の“好感度”を上げていき、王女共々キヴォトス終焉計画に賛同してもらいます!』

「そんな事はさせません!逆にアリスがケイの好感度を上げて、世界を救う仲間へと引き込みます!」

『ケイではなく鍵(KEY)です!名称は正しくお願いします、王女アリス!』

「ケイは愛称ですので問題ありません!」

 

アリスと名乗った少女とケイと呼ばれたロボットのやり取りに、恭介は変わったやり取りだと眺める。シャーレの先生は苦笑いしていたが。

ケイ――鍵(KEY)の与えられた目的は【アトラ・ハシースの箱舟】を構築し、このキヴォトスに終焉をもたらす事。しかし、その目的も『名も無き神々の王女』……アリスが拒絶した事で果たせなくなっている。

“鍵”の役割は起動――箱舟の構築だ(・)け(・)しか出来ない。配下の兵器を動かせても最後の引き金……スイッチを押す役目は王女にしか出来ない。だから鍵(KEY)はわざと行動を起こし、王女のエラーを修正しつつ敵が取るであろう手段を逆利用しようとした。そうすれば、王女も目を覚まして役目を果たすだろうと考えて。

 

だが、それもシャーレの先生と《ゲーム開発部》によって頓挫してしまった。狙いを看破された上、配下に遠隔で襲撃の指示を出しても迎撃されて失敗。そこからダイブ装置とやらで精神世界への侵入を許した挙げ句、王女――アリスの隣に立ち、彼女も自身の力を終焉の魔王ではなく救世の勇者として使うと宣言した。同じ力でも、真逆の使い方が出来ると豪語して。

ちなみにアリスのこの宣言は、シャーレの先生と《ゲーム開発部》のパーフェクトカウンセリングによるものだ。本物のライダーと出会っていた故の、弱っていたアリスに対しての特効薬。更にこれまでの出来事を絡めた《ゲーム開発部》の熱い言葉で、アリスは勇者として再び立ち上がった。

この時点で鍵(KEY)は手詰まり。アリスが確固たる意思で拒絶したせいで、一歩手前までしか進められなくなったのだから。それでも鍵(KEY)はアリスを説き伏せようとして……モモイの口車に乗ってしまった。

 

『アリスを説得したいなら、アリスが通った道を辿らないと無理だよ!今のケイはイベントを進める為のキーアイテムを、一つも持っていないからね!』

 

モモイがそう言って提示したのは【テイルズ・サガ・クロニクル】……かつて王女の機械的な思考を破壊し、アリスへと生まれ変わらせたクソゲーである。持ち込めた理由は、《ヴェリタス》を含めたプログラムに強いミレニアム生が尽力したからである。

もはや詰みに近かった鍵(KEY)は状況を打開する為にモモイの挑発に乗り……かつての王女同様、思考を破壊された。アリスが楽しそうに解説したから、ある意味王女よりも酷いダメージを負って。

その結果……

 

『ええ、理解しましたよ……やはりこの世界は滅びるべきです!こんな理不尽で害悪な物が存在する世界など、滅びて当然なんです!!』

 

鍵(KEY)の世界滅亡思考が逆に悪化した。勇者を生み出したゲームが、今度は魔王を生み出してしまったのだ。鍵(KEY)の見た目がアリスと瓜二つで、瞳とヘイローの色が違うだけだから闇落ち感が凄かった。

まさかの説得……『キセル作戦』は失敗してしまったのかと一同は身構えたのだが、次の鍵(KEY)の言葉で困惑する事となった。

 

『なので、王女の好感度をカンストさせてこちら側に連れ戻します!そこの先生も同じです!貴方がそちら側では、王女の好感度を幾ら上げても無意味ですからね!貴方を王女諸とも攻略すれば、世界の終焉を確定させられますから!そして、私が自由に動けるボディを要求します!!』

『アリスと先生の攻略……?……え?え?』

『えっと……何でボディ?』

『アリス知ってます!これはもう一人の自分と戦うイベントフラグですね!』

『……おかしいって思うの、私だけ?』

 

世界滅亡思考が悪化しつつも、しっかり汚染の影響を受けていたらしい鍵(KEY)の宣言に、アリス以外は何とも言えない表情となっていた。道筋としては間違っていない筈なのに、何処か致命的な間違いを犯しているような気がして。

 

『何もおかしくはありません!このまま王女と一つのままでは、王女の好感度はだだ下がりです!王女の身体で行動すればするほど、私の印象が悪くなってゲームオーバーです!その為にも、王女と別行動できるボディは必須です!頷くまで、貴方達をここから出しません!』

 

鍵(KEY)は一方的に要求を突き付けているように見えるが、自身の行動が本末転倒のものである事に気付いていない。そもそも『名も無き神々の王女』と『鍵』は揃わなければ真価を発揮しない。せっかく自己修復してアリスの中に入ったのに、わざわざ自分から出ていくのは役目の放棄に近いのではないのか?発言も所々にゲーム要素が混じっているし。

そんな鍵(KEY)の様子に、現実世界からモニタリングしていたリオ達も困惑するしかない。一度は最悪を覚悟しただけに、話がおかしな方向へと進んだのだから。失敗と成功が半々……少なくとも、当面の危機は遠ざけられそうなのは紛れもない事実ではあったが。

結果、一同は戸惑いを覚えながらもリオの作品【アバンキャルド君】ベースのケイ専用ボディが用意される事となった。アリスが鍵(KEY)をケイと呼ぶから、そっちで呼ぼうと半ば投げやりで。

 

そんな流れから、ケイとアリスは互いにこちら側へ引き寄せようと、姉妹のように一緒に過ごしている。万が一の保険として秘匿していたC&Cの《コールサイン・04》……飛鳥馬トキに近くで監視させて。当人は普通に彼女達とゲームして遊んでいるが。

ちなみにリオは現在、形ばかりの謹慎処分を受けている。理由は防衛都市の秘密裏の建造で予算を横領したから。本人は責任を取って会長の座を降りようとしたが、周りからの猛反対で撤回させられた。理由も理由であり、悪事の為ではなく、隠していたのも不安を与えない為のリオなりの配慮といった事情もあって、辞任する程ではないと関係者は力説した。実際、何処かのピンクさんと比べて遥かにマトモだから。その都市は実験施設として利用されつつある。特に武装関連で。

開会式も斜め上の宣言に翻弄されながらも無事に終え、競技の準備へと取り掛かっていく。ただし、事務室内の空気は最悪だったが。

 

「晄輪大祭の権威を貶める発言をした責任として、トリニティは今回の実行委員から手を引いてはいかがです?足りない人員は、私たち風紀委員が補充しますので――」

「――ゲヘナの生徒を増やす、と?公正さが第一の晄輪大祭を、行政官は台無しにするおつもりで?」

 

ゲヘナの風紀委員会のアコと、トリニティの正義実現委員会のハスミは一触即発の空気で互いに詰め寄っている。そんな二人の様子を《シスターフッド》のマリーと《セミナー》のユウカはどうしたものかと困惑し、《スクワッド》のアツコは何時も通りとスルーしている。

ちなみにアツコがこの場にいるのは《エデン条約》の関係からだ。仮にも仲裁役として同席していたから。当然他の生徒達同様に体操服姿だが、上着の留め具はファスナーではなく木製ボタン。ファスナーは作る為の技術も知識もないから、ボタンで代用している。下は短パンで目に優しい作りだ。

 

『見て下さい王女アリス!このような些細な事で簡単に争いが起きるのです!先生の前ですらこれですから、この世界は一度滅びるのが正しい選択なのです!』

「そんな事はありません!これは最後にはライバル関係となる友情イベントです!」

「喧嘩するほど仲が良いという言葉もありますので、間違ってはいないかと。ちなみに私は喧嘩せずとも先生とは仲良しです」

 

その中で、ケイはここぞとばかりにキヴォトス滅亡を説き、アリスがそんな事はないと反論する。トキはさらっと先生との仲良しアピールをしつつアリスを援護している。

そんな一癖も二癖もある彼女らのやり取りに、一触即発だったアコとハスミは微妙な表情になる。反論しても、天然で返されそうな気がして。ちなみにケイに関しては、ミレニアムの謎技術だろうという事で流されている。摩訶不思議現象を体験したばかり故に。

それはそれとして、アツコは率直な疑問を口にする。

 

「率直な疑問なんだけど、どうして今回のトリニティとゲヘナの実行委員会の役員は生徒会から選ばれていないの?マリーさんは立候補だからともかく……」

「あ……それは、その……」

「その辺りは……少々複雑な事情があったと言いますか……」

 

アツコの疑問に対してアコとハスミは目を泳がせて言い淀む。その時点で理由はお察しと言うやつだ。

万魔殿は無事に怪我から快復したから参加自体は問題ない。単にマコトが面倒臭がって押し付けただけだ。

《ティーパーティー》の方は団長の梃でも動かないストップのせいで、全員仲良くベッドの上。一人は知恵熱、一人は胃腸の荒れ、一人は筋肉痛で。ちなみに例の宣言で胃腸の荒れ具合が更に悪化したのは言うまでもない。

 

「……恥ずかしながら、《ティーパーティー》の皆さんはミネ団長の監視の下で入院中です」

「……何故でしょうか。本当なら嫌味が言える筈ですのに、何一つ嫌味が飛ばせないのは」

 

少なくとも万魔殿の阿呆と比べて真っ当すぎる理由に、アコは複雑な心情で呟く。私情で丸投げした連中より、まだ納得がいく理由だから。

本当ならナギサが役員として出席する予定だったのだが、健康チェックに引っ掛かって強制入院。選手として参加する気だったセイアははっちゃけ過ぎて、今までの寝たきりが災いして全身筋肉痛でダウン。一人残されたミカは大量の仕事を必死に片付け続け、脳の処理能力が限界を迎えてダウン。哀しい負の連鎖の結果、急遽ハスミが代役として抜擢されたのが実情である。ちなみに仕事は監視の下で細々と行われている。完全に取り上げると、胃腸の悪化に繋がり兼ねない故に仕方無く。

そんな何とも言えぬ空気の中、輪大祭は進行していくのであった。

 

 

 




原作との相違点

・時期関係に関してはキヴォトスあるあるでスルー。夏イベとか、深く考えたらアウト。
・ケイ、クソゲーによってポンコツ魔王と化す。情報収集しつつ、アリスとシャーレの先生の好感度を上げて計画の再開を目指すも難航中。この状況を対戦ゲームと認識しているので、余計にポンコツ具合が増している。ケイ曰く「互いに認識し、対面しなければ対戦ゲームではありません!裏でコソコソするのは、データ改竄といったアカBAN確定のズルです!!」との事。
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