夢の力で青春を手助け 作:ライダー志望
《虚妄のサンクトゥム》が存在する、閉鎖された廃墟の遊園地にて。
「……この遊園地をしらみ潰しで《守護者》を探すの?」
「中で蔓延っている配下達を相手にしながら、ね」
【ガシャコンキースラッシャー】を手にモモイとミドリは若干遠い目で呟く。それは二人だけではない。
「この広い場所から《守護者》を見つけ出すのは、パーフェクトメイドの私でも難しいですね」
「これは狩猟クエストですね!討伐クエストの一種だと、ユズに教えてもらいました!」
「間違ってはないけど……間違ってはないんだけど……」
ほぼ兼部状態の《C&C》所属のトキは今回の任務の難易度を意識しながら、ライフルモードの【ガシャコンマグナム】の調子を確認する。アリスはハンドガンモードの【ガシャコンマグナム】を手に万歳するように両手を掲げ、人見知りのユズは【ガシャコンパラブレイガン】で顔を隠している。
ちなみにアリスは《光の剣》――レールガンがあるから“備品”は本来必要ないのだが、チャージ時間の穴埋めとして持たされている。後、《エンジニア部》が謎の改造を施したのも理由の一つでもある。
そんな《ゲーム開発部》を一瞥したミヤコは、後方支援部隊にインカム越しで確認を取る。
「……本当に此処にいるメンバーだけで捜索するのですか?」
『ああ。本当に申し訳ないが、君達だけで攻略してもらうしかない。各自治区の防衛もそうだが、その遊園地一帯に通信速度を妨害する電波が流されているからね』
『今のような音声だけの通信ならまだしも、ドローンやロボットの遠隔操作の方は完全にラグが生じるレベルだからね。下手をすれば自動切断で停止しかねないしね』
後方支援の《エンジニア部》が伝えている通り、廃墟と化している遊園地一帯に遅延目的の妨害電波が流されているのだ。音声のみの連絡自体は問題なく行えるが、それ以外の電波通信は軒並み影響を受けてマトモに使えなくなっている。おそらく、例の映像の後に施されたのだろう。
その為、アバンギャルド君は自治区の防衛にしか使えない事態となっている。せっかくのMK.3もお蔵入りである。
そのやり取りを聞いていたサキは、不満げに作戦担当のモエにインカム越しで話し掛ける。
「モエ、本当に《守護者》の位置を特定できないのか?」
『んー……やっぱり反応が歪だね。エネルギー反応は膨大なのに、《守護者》の方の反応は曖昧だね。まるで、エネルギーの中に潜んでいるみたい』
モエがサキに返した通り、この地の《守護者》――忘却の射手の反応が他の《守護者》と違って曖昧なのだ。《虚妄のサンクトゥム》の近くにいる事は間違いないのだが、肝心の位置情報が特定できなくなっている。
故に、《ゲーム開発部》と《RABBIT小隊》はこの遊園地の中から忘却の射手を見つけないといけない。向こうが圧倒的に有利な状態で。
攻略組は意を決して遊園地へと足を踏み入れ……早々に配下のマスコット達からの手厚い洗礼を受ける。
「サキ、ミユ。私が前に出ますので、後方からの支援をお願いします」
ミヤコはハンドガンモードの【マグナムシューター40X】を構えて突撃しながら、マスコット達を撃ち抜いていく。ミヤコの指示を受け、【火縄大橙DJ銃】を構えたサキと【ガンガンハンド】を構えたミユが援護に回っていく。
「えっと……確か、ここを動かして……」
サキは【火縄大橙DJ銃】の円盤部分をスクラッチするように動かし、法螺貝のような音を確認してからトリガーを押す。ツマミ部分を右側に回していた事もあり、マシンガンのように素早い連射による銃撃がマスコット達へと放たれる。ミユは特別な動作をする事なく、【ガンガンハンド】でマスコット達の頭部を撃ち抜いていたが。
「……何で法螺貝のような音色が流れるんだ?確かに性能は申し分ないが、隠密行動には不向きだろ。ミユの方は発砲音だけだし」
サキは借り物とはいえ、【火縄大橙DJ銃】に対して文句を口にする。そんなサキに対し、ミユがおろおろしながらも口を開く。
「サ、サキちゃん……幾らなんでも失礼だよ。自分で選んで、借りてるのに……」
「うぐっ。た、確かにそうだが……もっと実用的な仕様の武器があってもいいだろ!?アタッシュケースがガトリングガンやショットガンになる武器のように!」
『いや、ちゃんと実用的な仕様のもあったよ?【カイザブレイガン】とか【ゼロガッシャー】、【トリガーマグナム】に【イクサカリバー】とかさ。グレネード、マシンガン、ライフルの切り替えが出来るからって、ソレを選んだのはサキじゃん』
「うぐぐ……!」
モエからの予想外の正論に、図星を見事に突かれたサキは反論できずに唸る。その間に、《ゲーム開発部》もマスコット達を倒していく。
『『ズキュキュキューンッ!』』
「本当にゲームをしてるみたい……」
「思わずテンションが上がっちゃうね!」
ガンモードのエンターキーを押したモモイとミドリは、流れるように同じ色のアタックキーを連打し、グレネードランチャー並みの銃撃を放つ。爆発と共にマスコット達は吹き飛び、消え去っていく。
『一!二!三!四!――四!連鎖!』
ユズもガンモードの【ガシャコンパラブレイガン】のBボタンを連打し、連射攻撃を仕掛ける。その表情はゲーマーのUZQueen時のものとなっている。放たれた四連射の光弾は熊のマスコットと周囲の瓦礫を吹き飛ばして土煙を上げ――マッスルポーズが描かれた、マンホールの蓋くらいの大きさのある円形物が二枚も飛び出てくる。
「これは何でしょうか?」
「アリス、予想します!これは強化アイテムです!」
ライフルモードの【ガシャコンマグナム】で応戦していたトキが首を傾げている間に、アリスは強化アイテムだとその円形物――【エナジーアイテム】を二枚ともキャッチする。
『マッスル化!』
『コウテツ化!』
そんな機械音声が響くと、二枚の【エナジーアイテム】がアリスの身体へと吸収される。その謎現象にその場にいた一同は目を見開く。
「え?アリスの中に入った!?」
「だ、大丈夫なの!?」
「問題ありません!モモイ!ミドリ!今のアリスは、力が漲っています!」
アリスは双子の姉妹にそう力強く宣言すると、片手
空いた片手で【ガシャコンマグナム】を握って、異なる二丁の銃で乱射を続けるアリス。そのアリスが、堅い音と共に軽く後ろへと仰け反った。
「アリスちゃん!?」
「大丈夫です!今のアリスは、防御力も上がっていますから!」
ユズが心配げに声を掛けるが、額から軽く煙が上がっているアリスは大丈夫だと返す。見た限り、本当に大丈夫のようだ。しかし、アリスが無事とはいえ奇襲を受けたのは事実。その方法にも、当たりが着いている。
「ミヤコ。今のは……」
「狙撃、ですね。どうやら此処の《守護者》は狙撃主のようです。各員、狙撃に注意――」
ミヤコが狙撃への警告を飛ばそうとした瞬間、すぐ近くの施設が爆発する。爆発の規模は決して大きくないが、その爆発によって損壊が進んでいた施設はバランスを崩し――巨大な瓦礫となってミヤコ達に迫る。
「これ、マズくない!?」
『ゾンビ タクティカルブラスト!』
自分達へと落ちてくる瓦礫にモモイは焦りの表情を浮かべるも、ミヤコが【マグナムシューター40X】の下部――バックルの装填部分を握って周囲を守るイメージで地面へと撃ち込んだ事で必殺技が発動。物々しい両手がミヤコ達を包んで瓦礫の直撃を防ぐ。
「た、助かった……」
「いえ、まだです。直ぐに瓦礫を吹き飛ばさないと……」
「なら、私の出番だな!」
ユズの安堵に対するミヤコの返しに、サキが自分の役目だと名乗りを上げる。サキは【火縄大橙DJ銃】のツマミ部分を目一杯下げてから円形部分をスクラッチし、グレネード系の銃撃で頭上の瓦礫を吹き飛ばした。
「……やっぱり法螺貝の音色が気になる」
「そこは我慢してください。それよりも、先程の爆発の方が重要です」
「それもそうだな。あれはおそらく、遠隔操作で起爆したんだろうな」
備品からメロディに本当に微妙な表情をするサキであるが、ミヤコの指摘ですぐに表情を引き締める。
「ええ。おそらくその爆破装置は、他にも仕掛けられていると見るべきでしょう」
「た、たぶん、《守護者》も別方向に動いていると思う。少なくとも、アリスちゃんが撃たれた方向には……」
「本当に厄介な《守護者》ですね。狙撃主の危険性は理解していたつもりでしたが、実際に相対すると認識の甘さを痛感しますね」
攻撃は配下に任せて、《守護者》自身は後方からの狙撃と遠隔による破壊工作。実に嫌らしく、厄介な戦い方だ。おそらく遅延性の電波の妨害も、その一環なのだろう。
『こっちでも範囲外から探っているけど……遠方からの拡大だからどうしても画質が荒くて居場所が特定できないよ。いっそ、遊園地全部を爆破して吹き飛ばした方が早いんじゃない?むしろ、そうした方が……キヒヒッ』
「お前が爆破したいだけだろ!?そもそも、今からそんな量の爆薬を持ち込めないし――」
モエの悪癖が発動しそうになり、サキが怒鳴って静止しようとする。だが、そんなサキを何かを思い付いたようなミヤコが遮るように口を開く。
「……いえ。遊園地を更地にする案は悪くないかもしれません。ここは閉鎖された場所ですし、倒壊しても問題ありません」
「……ミヤコちゃん?」
「正気か、ミヤコ?第一、そんな爆薬は――」
「爆薬は使いません。それが出来る銃火器は
『ライフル!』
ミヤコは【マグナムシューター40X】をライフルモードに切り替えて構え直す。施設の一角に銃口を向けて。
『マグナム タクティカルブラスト!』
【マグナムシューター40X】から六発の光弾が同時に発射され、派手な爆発と共に配下と損壊が進んでいた施設を吹き飛ばす。連射より威力を重視した一撃を放ち、ミヤコは《守護者》を見つけるまでは徹底的に破壊し回ると周りに暗に伝える。
「確かに効果的かもしれないが……それは何度も撃てないだろ?」
「それなら回復アイテムも探します!」
「確かに!さっきの強化アイテムがあるなら、回復アイテムがあっても不思議じゃないよね!」
サキは効果的な案と認めつつも苦言を呈するも、アリスとモモイの謎理論によって返される。二人は言うが早いか、備品の方で周囲の瓦礫を撃って粉砕していく。
「いやいや。お姉ちゃん、それはさすがに……って、ホントに出た!?」
ミドリが半ば呆れたように止めようとしたが、本当にそれっぽい絵柄の【エナジーアイテム】が飛び出てきて驚きの声を上げる。
「さあ、ミヤコ!それを拾って回復してください!」
「アイテムは拾った者勝ちだからね!早くしないと敵に取られちゃうよ!」
完全にゲーム思考に突入しているアリスとモモイにミヤコは少し微妙そうにしながらも、地面に落ちた目的の【エナジーアイテム】に触れる。
『カイフク!』
触れた途端に回復という言葉が響き、【エナジーアイテム】がミヤコの身体へと吸い込まれる。緑色の光がミヤコの身体を被い、少々感じていた疲れが薄まっていく。
「……本当に回復しました」
「「「「…………」」」」
「それではどんどんアイテムを発掘しましょう!発掘クエストです!」
「よーし!このまま攻略を進めるよ!」
「では文字通り、アイテムを集めましょう」
【ガシャコンウェポン】の予想外の恩恵に約三名以外は戸惑いつつも、ミヤコの更地作戦が決行される。
『ブースト タクティカルブラスト!』
『カチドキチャージ!』
『オメガスパーク!』
『ハンター!クエスト!クリティカルフィニッシュ!』
『コンバット!シューティング!クリティカルフィニッシュ!』
『マイティー!クリティカルフィニッシュ!』
『パーフェクト!クリティカルフィニッシュ!』
『バンバン!クリティカルフィニッシュ!』
辺り一面を吹き飛ばすかのように、《ゲーム開発部》と《RABBIT小隊》は絨毯爆撃のように必殺技を放っていく。普通は連発すればガス欠を起こして倒れるのだが、今の彼女らにはその心配はない。
「回復アイテム、発見です!」
「このアイテムは……」
「それは拾わない方がいいよ。絵柄からしてデバフ系だと思うから」
「ミユの姿が……」
「わわわ私、本当に消えちゃった……!?」
「と、トキさんが増えた……!?」
「「「「パーフェクトな私が増えました。ピースピース」」」」
「本当に何でもアリだね!」
《ゲーム開発部》が吹き飛ばす度に、【エナジーアイテム】が落ちてくるのだから。中には透明になったり、ゴムのように身体が伸び縮みしたり、分身したりと様々であるが。
「あ。分身のアイテムがまた出たよ」
「アリス!」
「分かりましたモモイ!これはアリスが回収します!」
分身効果の【エナジーアイテム】が再び落ちたことで、モモイの指示で今度はアリスが回収する。アリスが分身の【エナジーアイテム】を拾い、七人へと分身する。
「「「「「「「それでは行きます!――大いなる光よ!!」」」」」」」
『『『『『『『オーバーバースト』』』』』』』
分身したアリス達は強化された《光の剣》……リミッターが完全解除された挙げ句、過剰出力によるオーバーキルな“必殺技”を放つ。勿論使用には《エンジニア部》が承認解除し、特定の音声で起動するというプロセスを踏まないと駄目であるが。ちなみに《光の剣》からの音声は“備品”の影響を受けたロマンからだ。
地面と施設も抉り飛ばされ、文字通り光となって消えていく。一発だけでもヤバい光線が、七発同時に放たれているのだ。それも運がいいのか悪いのか、射線上に《守護者》が狙撃体勢に入っていたというオマケ付きで。
忘却の射手は想定外の射程距離と威力に慌てて移動しようとするも、時既に遅し。忘却の射手は隠れていた建物の壁ごと光に呑まれてしまう。
――私、最後までみんなから忘れられたまま……
忘却の射手は最後まで彼女らと直接対面することなく、その正体さえも誰にも気付かれないまま消滅していった。
忘却の射手
廃墟の遊園地にある《虚妄のサンクトゥム》の《守護者》。狙撃主としての能力がとても高く、妨害工作にも秀でている。本人の戦闘能力は決して高くないが、隠密能力と長距離狙撃によって無二の強さを有している。ある意味、一番厄介な《守護者》。
その正体はテラー化した霞沢ミユ。小隊の瓦解とミヤコに訪れた不幸、他の二名も似たような末路を辿った挙げ句、SRTが“テロリスト”の代名詞となってしまった事で心が折れて反転へと至った。