夢の力で青春を手助け 作:ライダー志望
【ウトナピシュティムの本船】のブリッジにて。
「せ、成功したの……?」
「そ、そうみたいです……」
「……はい。ようやく……内部に侵入できました」
モモカの呟きにアユムとリンが頷く。【本船】はアリス達の攻撃で無防備となった【箱舟】の外壁を突き破り、突き刺さる形で内部への侵入を成功させている。
【箱舟】突入の立役者の三人に、シャーレの先生は通信越しで話し掛ける。
「アリス、ケイ、恭介さん……大丈夫?」
『アリスは大丈夫です。ただ、HPとSPが切れてしまっています』
『王女アリスに変わって
『私の方も大丈夫です。ただ……【ルーラーメアカプセム】は力を使いすぎてしまい、暫くの間使えませんが』
三人の無事の様子を確認し、シャーレの先生は安堵したように息を吐く。今回の突入――【箱舟】による多次元バリアの破壊は【本船】による突入が失敗に終わった時の保険であった。何事もなく【本船】だけで突入できれば一番であったが、相手だってすんなり通すわけがない。
だからこその、本来の持ち主がいる【箱舟】によるバリアの破壊。分かっていても防げない、此方側の有利な一手を打った。本来は諸刃の剣であるのだが、恭介が《ナイトアリウス・リジェネイション》による改変――アリスとケイ、念のために【本船】も同一の存在として“再定義”して【箱舟】による介入をノーリスクで敢行した。
その対価で【インフィニティ】ではなかった【ルーラーメアカプセム】はエネルギー切れでダウン。アリスとケイも疲労で休憩が必須。アリスのレールガンを参考にした巨大砲身状の【箱舟】――【光の神剣・ギャラクシーノヴァ】も突入の際に完全に潰れて使い物にならなくなった。
そのシャーレの先生の反応に、ユウカは眉を顰める。
「先生?アリスちゃん達の無事に安心するのは分かりますが、一番心配させたのは先生ですからね?」
「そうだね。分かってはいたことだけど……シャーレの先生が気絶した時は、本当に心配だったからね」
アツコが指摘した通り、《多次元解釈システム》を起動して最初の多次元バリアを無効化した瞬間にシャーレの先生は気絶してしまったのだ。少ししてすぐに意識を取り戻し、後遺症もなさそうなのは幸いであったが、それでも心臓に悪いことには変わりはない。
――■の■択は、■■って■■■ん■■た。
――■■■、■が■■■取■■■し■■■■間■■■■■こ■■。
――先■■ら……■■、■■達■ら、■■■■■■■着■で■■■く、あ■■く■■■■■■点■■――
気絶していた間、シャーレの先生は何かしらの夢を見ていた気がするが、内容は思い出せない。
その間にも、オペレーター達は状況を確認していく。
「多次元解釈システムには問題ありませんが……衝突の影響で中枢システムがダメージを受けていますね」
「エンジンは完全にシャットダウン……再起動シーケンスも動きません……」
「メインコントロールシステムも動作不能ですね……それが安心要素になっているのが複雑ですが……」
アコが心底複雑そうな表情で【本船】のダメージに対してそう呟く。本来であれば不安でしかないのだが、向こうには【本船】をハッキングできるオーパーツがあるのだ。下手に再起動可能にさせて乗っ取られでもしたら、打つ手が事実上ない彼女らからすれば詰みとなってしまうのだから。
そんな【本船】の複雑な惨状を前に、ブリッジ内で警報音が鳴り響く。
「な、何でしょうか!?」
「うわっ、サンクトゥムにいた敵じゃん!?」
ブリッジの窓から外の様子を確認したモモカが、敵勢存在を見てそう叫ぶ。【本船】へと群がるように近づいてくるのは《ユスティナ聖徒会》に《無名の守護者》、幟旗を背負った鶏達だ。
全方向から【本船】を包囲するように近づいてくる防衛機構。本来なら焦る事態ではあるが、戦える人物達がいるので問題はない。
「ここはおじさん達の出番だね~」
「宇宙食への旅路は誰にも邪魔せませんわ!」
「アリスとケイが頑張ったんだから、私達も頑張らないと!」
シロコ救出の為に乗船した《対策委員会》。美食の探求から勝手に乗船していた《美食研究会》。アリスと一緒に乗船した《ゲーム開発部》がこの場にいるのだから。
「うぇへへ……本当に人生は辛いですねぇ……」
「本当に何で私まで……」
「パーフェクトに防衛してみせましょう」
そこに加えてプラスα……ヒヨリ、フウカ、トキも各々に縁のある者達と一緒に参加している。約一名は強制に近いが。
――《ユスティナ聖徒会》勢力。
「いや~。後ろの援護が厚いと、おじさんは楽できて嬉しいよ」
そんな独り言を呟きながら、ホシノは至近距離からの【アタッシュショットガン】で聖徒会を次々と撃ち倒していく。
「本当に凄いですねぇ。こんな弾幕の中をすり抜けるように動き回れるのは、サオリ姉さんくらいですよぉ」
「逆にホシノ先輩以外にも出来る人がいるのが驚きなんだけど……」
【ガンガンハンド】で的確に額を撃ち抜いていくヒヨリの言葉に、【フルボトルバスター】で吹き飛ばしているセリカは呆れ混じりで言葉を返す。ノノミは笑顔のまま、【ホークガトリンガー】と【ウォーターメロンガトリング】で掃射を続けている。
「じゃ、一回吹き飛んでね」
『ブレイキング!カバンショット!』
ホシノがトリガーを引くと、象の足の形をしたエネルギー弾が放たれる。放たれたエネルギー弾は射線上にいた聖徒会達を後ろへと容赦なく押し倒していった。
――《無名の守護者》勢力。
『シンシュク!』
「腕が伸びるから……えーいっ!」
アイテムを拾い上げたモモイは、【ガシャコンキースラッシャー】を握った右腕をゴムのように伸ばして《無名の守護者》を斬り飛ばしていく。
『オンソク化!』
「とても素早く動けるようになりました。なら、こちらの方が良いですね」
スピードが一時的に上がったトキは【ガシャコンマグナム】とは別に借りた備品、【ガシャコンスパロー】を取り出すとAボタンを押して分離させる。弓モードから鎌モードへと切り替えるると、必殺技を起動させる。
『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!』
鎌部分にエネルギーを纏わせたトキは、音速の動きで《無名の守護者》達を次々と斬り刻んでいく。【アビ・エシュフ】があればもっと楽ではあるが、エリドゥのアシスト無しだと操作性が最悪の【零号機】に改造されたせいで使えなくなっている。だからこそ、此方へと回されたのだが。
『チョウハツ!』
『ハッコウ!』
「うわわ。敵の目が私に向いているんだけど!?」
全身を光らせながら、《無名の守護者》達からヘイトを向けられたミドリは【ガシャコンキースラッシャー】で銃撃を続けながら逃げるように通路を走る。その銃撃の一つが《エナジーアイテム》を出現させ、回転しながらユズに向かって飛んでいく。
その《エナジーアイテム》を、ユズはアックスモードの【ガシャコンパラブレイガン】で打ち飛ばしたが。理由はその絵柄が、明らかに混乱を連想させるものだったから。
『コンラン!』
その《エナジーアイテム》が一際サイズの大きい《無名の守護者》にぶつかると、完全なデバフ効果を決定付ける機械音声と共にその《守護者》へと吸い込まれる。混乱と発せられた通りに、《守護者》は触手のような機械の腕を振り回し、周りの《守護者》達を殴り飛ばしていった。
――《舎弟の鶏》勢力。
「色々とおかしくない!?鶏が何で器用に羽で幟旗を振り回しているの!?」
フウカが涙目で自前の銃を鶏達に攻撃を仕掛けるが、鶏達は幟旗をバサバサと振り回して銃弾を弾き飛ばしている。その幟旗には『爆破で食材を駄目にする冒涜者に制裁を!!』と達筆で書かれている。
「食材を爆破などしていません!不出来な料理を提供する美食に相応しくない店を、爆破しているだけですわ!」
『『『『コケー!コケー!コケー!!』』』』
ハルナがその幟旗に対して反論すると、鶏達は怒りを爆発させたかのように鳴いていく。まるで、同じことだろと反論しているかのように。
ちなみに《美食研究会》とフウカは“備品”を持っていない。優先順位の問題と、搭乗した事実すら知らなかった事が理由だ。それでも通常であれば問題なく迎撃できるのだが……
「ちょっ!?痛い痛い!痛いって!」
「うわーん!そんなにつついても、私は美味しくないよー!」
「おや?どうして卵が――」
容赦なく蹴られたり、嘴でつつかれたり、拾った卵が爆発したりと、完全に劣勢に立たされていた。不幸中の幸いと言っていいか疑問ではあるが、鶏達はハルナ達への攻撃に集中して【本船】に対する攻撃は完全に放棄している。
「……《美食研究会》以外は順調に迎撃できてますね」
「完全に対応させる相手を間違えたね」
各戦況を把握していたブリッジ組は、《美食研究会》の大苦戦を前に完全に対応させるべき相手を間違えたと頭を痛めていた。これには全体の指揮を取っているシャーレの先生も苦笑いするしかない。
相性が最悪……いや、最良すぎるとも言えなくもない。本来は機能しなくなっている
「……彼女達は、このまま囮のサンドバッグとして戦況を維持してもらいましょう。《戒律の守護者》と《無名の守護者》を掃討次第、《舎弟の鶏》達を駆逐しましょう」
「彼女達には非常に申し訳ないですが……それ以外に手がないのが現状ですね」
一応は抵抗できている事もあり、尊い犠牲として暫く耐えてもらおうと見守る方向へと決まっていく。キヴォトスの危機にも関わらず微妙な空気がブリッジ内を満たしていく中、何の前触れもなく爆発音が響いた。
「爆発!?一体何処から――」
いきなり船内で起きた爆発に一同が驚いていると、シャーレの先生の正面に黒い歪みが突如して顕れる。そこから優雅に降り立つかのように、瞳を若干赤く光らせたシロコが姿を現した。
「君が、もう一人のシロコ……?」
「…………」
シャーレの先生の問い掛けにシロコ――シロコ*テラーは何も答える事なく無言を貫く。そのまま代わりにと言わんばかりに、左手に持っていたハンドガンをシャーレの先生へと突き付ける。
「先生!」
明らかにシャーレの先生を撃とうとしているシロコ*テラーに周りの面々が各々の銃を構えて発砲するが、シロコ*テラーは撃たれようと構わずにシャーレの先生に向かって引き金を引く。
放たれた銃弾はシャーレの先生を守るバリアによって遮られるも――幾条ものヒビが入る。
『先生!このシロコさんの銃撃は、何度も防げません!!』
驚愕が混じったアロナの警告に、シャーレの先生は思わず身構えてしまう。シロコ*テラーはそのまま発砲――
『バリア!』
『ショック!』
『ブレイカムキャノン!』
し続けようとしたが、シャーレの先生の前に新たに張られた緑色の障壁と、自身に迫る電気が迸る一条の光線を前にして、シロコ*テラーは飛び下がって光線を回避する。回避しながらハンドガンから弾を撃ち出すも、緑色の障壁にヒビを入れるだけで無意味に終わる。
「え?その銃……」
その中で、シロコ*テラーが握っていたハンドガンを視界に収めたアヤネは、動揺したように声を洩らす。何故なら――そのハンドガンはアヤネが使っている銃と瓜二つだったのだから。
シロコ*テラーは着地してすぐ、筒状の物を頭上へと放り投げる。筒状の物――フラッシュグレネードが起爆して、ブリッジ内を強烈な光で満たす。光が収まると……シロコ*テラーはもうその場にはいなかった。残されたのは元からブリッジにいたメンバーと駆けつけた恭介とアリスだけだ。
「……不利を悟って撤退しましたか」
「それより先生!怪我とか負ってないですよね!?」
「大丈夫だよ、ユウカ」
ヒマリがシロコ*テラーが退いたと判断し、ユウカが慌てた様子でシャーレの先生に駆け寄る。そんなユウカに、シャーレの先生は安心させるように大丈夫だと返す。
「まさか、直接乗り込んでくるなんてね……」
『おそらく、次元計算による空間転移だと思うわ。彼女……私達の世界の砂狼シロコが痕跡を残さずに拐われたのも、この空間転移によるものでしょうね』
カヨコの呟きに、リオが憶測で答えを口にする。同時にシロコの誘拐にも利用されたことにも触れて。口にこそしていないが、バニタスが突如現れて消えたのも同様の手口である可能性がある。あくまで現時点で判明している範囲でだが。
「だけど、どうして撤退したのでしょうか?私達の攻撃は当たっても構わずでしたのに」
「アリス、分かりました!ナイトアリウスさんの攻撃は、混乱から立ち直れる攻撃だからです!」
「間違ってはいないな。先程の一撃は、洗脳状態を解くのに適したものだからな」
リンの当然の疑問にアリスが答え、恭介も素直に頷く。【ショックカプセム】による必殺技はショック療法という形で洗脳を解くことが出来るからだ。原作でも洗脳されたノクスがゼッツの【ショックカプセム】による必殺技で正気へと戻ったのだから。
『《戒律の守護者》の掃討が終わったよ。これからあっちの援護に向かうね』
『こちらも《無名の守護者》の迎撃を終えました。これより《舎弟の鶏》の迎撃へと向かいます』
ホシノとトキがそれぞれが相手していた《守護者》の撃退に成功したと報告が上がり、そのまま《舎弟の鶏》の迎撃に向かうと告げる。
「あ、はい。お願いします」
「え、ええ。お願い」
サポートをしていたアヤネとユウカは少し吃りながらも頷き、ホシノ達は《舎弟の鶏》の迎撃へと向かっていく。その数分後、《舎弟の鶏》も迎撃成功で終わるのだった。