夢の力で青春を手助け   作:ライダー志望

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積み上げてきたもの

新たな《守護者》……《ゲマトリア》から奪った秘儀によって生み出された巨大な複製体(ミメシス)が、【色彩】のエネルギーを利用した巨大兵器によって抑え込まれている。

精神的に追い詰める一手が不発同然となり、バニタスは異形な右手で顔を被いながら呻くような笑い声を上げる。

 

「ククッ……まさか、こんな方法で対応されるとはな。人は、自らの能力が高ければ高いと自覚する者ほど決めつけ、“心”を蔑ろにするというのに……」

 

バニタスが知る《ビッグシスター》……調月リオは他者との協力には程遠い人物だ。能力の高さと合理思考故に生じた欠点……誰もが冷徹で傲慢な独裁者と決めつけたことが悪化の原因だと、バニタスは見ていた。彼女自身は不安と責任を抱えて、小心者ゆえに突っ走っているだけとも知ろうともせずに。

 

『否定はしないわ。私も合理と効率も、大事なことを疎かにすると怠惰と怠慢になり得るという言葉……それがなかったら取り返しのつかない失敗を犯していたでしょうから』

「そうか……だが、それでも結末は変わらない」

 

バニタスはそう告げると、改めて相対する者達を見据える。シロコ、シャーレの先生……《ナイトアリウス・ラッシュ》姿の速水恭介を。

 

「この姿はガワだけじゃない。性能も見た目通り……初期フォームで勝てるとは思っていないよな?」

「試してみるか?」

 

バニタスの煽りに恭介は挑発するように言葉を返すと、間髪入れずにランチャーモードの【ブレイカムバスター】で銃撃を放つ。バニタスは体捌きで銃撃を躱すと、右手を振りかぶりながら恭介へと迫る。

 

『カリバーモード!』

 

恭介はすぐに剣の状態へと組み換えて、バニタスが振り下ろした異形の右手を受け止める。初撃を受け止められたバニタスは右手で押し込みつつ【ブレイカムガントレット】を握った左手で殴りつけようとするが、それよりも早く恭介が動く。

 

『スマッシュ!』

『ブレイカムバースト!』

 

【ブレイカムバスター】に【スマッシュカプセム】をセットし、強烈となった剣撃で恭介は強引に振り抜く。一撃の威力としては上位クラスであるその一撃を受け止める形となったバニタスは、強引に後ろへと下がらされる。

 

「チッ!」

 

バニタスは舌打ちしながらも桃色のカプセムを【ブレイカムガントレット】に装填し、直ぐ様回転させる。

 

――ハッハッハッハッ!

――バニタス!バニタス!バニタス!ナイトメアライダー!ガン!

 

異形だった右手が元の形へと戻り、今度は左腕が桃色の銃身へと形を変える。《バニタス・ガン》となったバニタスは左腕の銃を恭介へと向け、機関銃の如くエネルギー弾を放っていく。

 

――グラビティ!

――エンフォース!ナイトシステム!――――グラビティ!

 

恭介は【ナイトインヴォーカーバックル】にセットされていたカプセムを【グラビティカプセム】へと交換し、《ナイトアリウス・グラビティ》への変身を終える。

 

『グラビティ!』

 

恭介はカプセムを回転させて能力を発動。重力操作によってバニタスと、シロコと戦っているシロコ*テラーの放った銃撃を床へと垂直に叩き落とす。シロコが自身のアサルトライフルと携帯していたドローンによる銃撃を放ち、そのタイミングで重力操作を解除する。バニタスは左腕の銃身を、シロコ*テラーは黒い歪みから取り出したシールドでシロコが放った銃撃を受け止める。

 

「この絶妙なタイミングに、的確な連携……これがシャーレの先生の指揮によるものか」

 

彼等の見事な連携に、バニタスはそう評価を下す。バニタス側にもプレナパテス……シロコ*テラーの“シャーレの先生”がいるが、その真価を発揮できるかと聞かれたら否だ。

プレナパテスはバニタスが語った通り、死人。裏で糸を引いていた《無名の司祭》達を排除したことで、【色彩】との繋がりが弱まっている。この【ナラム・シンの玉座】でなければ、その身は灰塵と化している。存在を辛うじて保っていると言っても過言ではない為、今は機械的に動くしか出来ない状態だ。【シッテムの箱】と【大人のカード】があれど、先生本来の力を発揮することはない。

 

しかし、そのシャーレの先生は額に脂汗を流していて、表情には一切の余裕がない。何故ならバニタス達だけでなく、【嵐の星座】と【頂の聖女】との戦いの指揮も取っているからだ。

【嵐の星座】は蒼い稲妻を大量に落とし、光線のような雷撃も放って攻撃を仕掛けている。致命になりそうな一撃は持ち直したホシノがシールドと【アタッシュショットガン】の必殺技を駆使して防いでいるが、その表情は険しい。セリカ達も雷撃を避けながら攻撃を仕掛けているが、【嵐の星座】は特に怯む様子もなく平然と宙に浮き続けている。

【頂の聖女】は花弁のような頭部と掌から赤黒い光線を大量に放っている。モモイ達も抉り取るような光線を避けながら銃撃を放つも、何かしらの障壁が張られているのかその多くが遮られている。

 

シャーレの先生が全体の指揮を取って戦況を保ってはいるが、それは薄氷の上。何かしらの切っ掛けが起きると一気に崩れかねないもの。分断された空間も、合流を許さないかのように何かしらの力で遮られており、それぞれで相対する存在に対処するしかない。

バニタスは左腕の銃身から何度もエネルギー弾を放ちながら、恭介へと近づく。恭介がカプセムの能力でエネルギー弾を落としていくが、バニタスは右手から黒い靄を溢れさせて剣の形を取らせ――実体化させる。

 

『ブレイカムドォーン!』

 

その剣――【ブレイカムドォーン】を振りかぶり、恭介を斬り裂こうと振り下ろす。恭介は【ブレイカムバスター】でその剣撃を受け止めるも、至近距離で放たれた左腕の銃身からのエネルギー弾を受けてしまう。

 

「グゥッ!?」

 

腹部に叩き込まれた銃撃に恭介が怯んだ隙に、バニタスは【ブレイカムドォーン】を上空へと放り投げる。そのままカプセムを交換して派生フォームから基本フォームに戻ると、【ブレイカムドォーン】をキャッチして直ぐにカプセムを窪みへとセットする。

 

『ナイトメア』

 

紫色のカプセム――【シャドウカプセム】がセットされ、バニタスは【ブレイカムドォーン】を大剣モードから双剣モードへと切り替えてからトリガーを押し込む。

 

『ナイトメア!ダブルエッジ!』

 

【ブレイカムドォーン】の必殺音声が流れ、バニタスは十字を描くように振るって恭介を斬る。斬られた瞬間、幾つもの黒い斬線が恭介の周囲を迅り、斬り刻んでいく。

 

「がぁああああああああああっ!?」

『ゲット、ロスト!』

 

大量の火花を散らしながら、恭介は衝撃から宙を舞い上がる。バニタスからも追撃の斬撃を放たれ、転がりながら地面へと倒れる。倒れた恭介は苦悶の声を上げながらもバックルのカプセムを交換し、すぐにピンスイッチを押して回転させる。

 

――エンフォース!タ、ツ、マ、キ、ナイトシステム!――――トルネード!

 

《ナイトアリウス・タツマキトルネード》へと変身した恭介はその機動力でバニタスに攻撃を仕掛けるも、バニタスは【ブレイカムガントレット】で恭介が叩きつけた【タツマキマグナム】の刀身を難なく受け止める。

 

「無駄だ。その程度で私を越えられはしない。切り札なきお前に……勝ち筋は一つもない!!」

 

バニタスは払うように【タツマキマグナム】を弾き飛ばすと、【ブレイカムドォーン】を捨てて殴打を繰り返していく。先程の必殺技のダメージが抜け切っていない恭介は、その殴打を何度も喰らってしまう。

 

「白服!――くっ!」

 

シロコは完全に劣勢な恭介を見て焦燥を浮かべるも、雨雲号まで持ち出して攻撃の手が激しくなったシロコ*テラーの相手に手一杯で、援護に向かうことは出来ない。

シロコ*テラーの猛攻にシロコも苦戦する中、バニタスはまるで苛立ちをぶつけるかのように攻撃を続けていく。

 

「ああ、そうだ!お前達が私に勝てる未来は一つもない!この世界の結末を……確定した破滅を越えられはしない!」

 

膝蹴りを何度も打ち込み、両腕をハンマーのように振り下ろして恭介を地面へと叩きつけるバニタス。完全にサンドバッグ状態となった恭介に対し、バニタスは攻撃の手を緩めない。

 

『スマッシュフィニッシュ』

 

バニタスは【ブレイカムガントレット】の必殺技による蹴撃で、恭介をサッカーボールのように蹴り飛ばす。

 

「何れだけ目先の未来を変えようと、悲劇の下地となった過去がある限り終焉は避けられない!」

『マグネッツ!シュート!――ジ、エンド!』

 

念力のような力で手繰り寄せた【ブレイカムドォーン】から電磁砲のような斬撃が放たれ、蹴り飛ばした恭介を更に吹き飛ばす。

 

「超人が無自覚に舗装した数々の破滅への火種は、取り除けはしない!間近同然の将来で、順番に燃え上がっていく!」

『マシナリーフィニッシュ』

 

左手から放たれたマシンアームの形をしたエネルギー弾が恭介の身体を掴み、振り回されてから床へと叩きつけられる。

 

「なら力があれば解決するか!?いいや!力があれば警戒され、取り除こうと動く!かつての私が、そうだったように!」

『プロジェクション!シュート!――ジ、エンド!』

 

大量の【ブレイカムドォーン】が宙に浮かぶ形で召喚され、一斉に恭介に飛来して爆発する。バニタスから怒涛の攻撃を何度も受け、恭介の変身はついに解除されてしまう。全身がボロボロで、【ナイトインヴォーカーバックル】も破損して火花を上げている。血を流れて満身創痍の恭介に、バニタスは過去の“罪”に焼かれながらも叫ぶ。

 

「幾ら夢を見ようと、良き未来を願おうと……全ては無意味に!虚しく終わる!!キヴォトスの終焉は太古の焼き直しでしかなく、悪夢は繰り返される!あらゆる時空は、滅びる以外の未来はない!!」

 

そんなバニタスの脳裏に過るのは、かつての記憶。“夢”を介して接触し、《明晰夢》の危険性を告げて頭を下げて狭間への退場を懇願した《超人》の姿。

バニタスは彼女の力を借りて懸念事項を片付け、力を一度手放す形で夢の住人と成って現実から去った。《超人》以外から、哀しませないように自身の記憶を抹消して。

その結果……最悪の結末を見ているだけしか出来なかった。見守っていた者達の死を、次々と殺されていく姿を、見ていることしか出来なかった。その慟哭と哀しみ、憎しみが【ブレイカムガントレット】を作り出し……全てが終わった後で、夢の中からシロコ*テラーに引導を渡した。

限定的にしか現実に干渉できず、悪夢を介して世界を渡り歩き、シロコ*テラー以外の手による破滅も目の当たりにし、黒幕ごと滅ぼすことでしか、救済の道はない。本当の望みも叶わない、終わりなき悪夢の世界。

にも関わらず、恭介は立ち上がろうとしている。かつての……あの時のように。

 

「……どうしてまだ立ち上がる?限界でありながら、【ルーラーメアカプセム】も使えない中で、どうして諦めようとしない?」

「まだ、希望を……未来を夢見ているから」

「その“夢”も悪夢で終わる。積み上げてきた過去がある以上、辿り着く未来も同じだ」

「……本当にそうなのですか?」

「……どういう意味だ?」

 

恭介の問い掛けに、バニタスは分かっていながらはぐらかす。そんなバニタスに、恭介は確信を持った問い掛けをする。

 

「この世界と貴方の世界……その過去は本(・)当(・)に(・)同(・)じ(・)な(・)の(・)か(・)と聞いているんです」

「……ッ!」

 

その言葉にバニタスは、不快そうに歯噛みするしか出来ない。何故なら、明確に違う点が目の前にいるのだから。その反応から間違ってないと悟った恭介は、言葉を続けていく。

 

「積み上げてきた過去が違うなら……ゴホッ!未来も、必ず同じとは限らない……全ての過去は現在(いま)と無関係ではないからこそ……見えるものも、答えも違ってくる……」

「……詭弁だ!たった一つの違いで、未来は変わらない!!」

「変わらないかもしれない……だけど、私は違うと信じている。小さな変化でも、積み重なっていけば……大きな変化になると。夢は未来を作り……現在(いま)の希望になると、私は信じています」

 

恭介の未来を、夢を信じる言葉。その言葉がバニタスの琴線に触れ、激情へと駆り立てる。

 

「――なら!その幻想を抱いたまま、消え失せろ!!」

『ロスト』

 

バニタスは【ブレイカムガントレット】を僅かにずらしてから【ロストカプセム】を押し込み、乱暴に一回転させて超必殺技を発動させる。

 

『ロスト、デストラクション』

 

バニタスの背後から青黒い焔を纏う龍が姿を現し、バニタスが拳を空振りさせると同時に恭介へと突っ込んでいく。対する恭介は生身のまま。カプセムをセットする窪みも破損して黒ずんでいる。

龍が顎を広げて迫って来ているにも関わらず、恭介は逃げようとせず……右手に【ラッシュカプセム】を握ったまま拳を振り上げる。

 

「恭介さん!?」

 

明らかに無謀な行動にシャーレの先生は驚愕の声を上げる。本来なら逃げるべき状況ではあるが、恭介にはできない理由があった。

ここで逃げてしまえば……バニタスにぶつけた言葉が、全て無駄になるからだ。これを受け止めずに逃げてしまえば、破滅の未来を変えられないという確信めいた予感が、恭介にはあった。

 

「ぉおおおおおおおおお――ッ!!」

『ラッシュ!』

 

だから恭介は無謀でも、命を投げ捨てるような愚行だとしても、正面から迎え撃った。真正面から向き合う為に。乗り越える為に。

そんな恭介の姿に、シャーレの先生は迷わず【大人のカード】を使って恭介を助けようとする。同時にプレナパテスも【大人のカード】を使い――シャーレの先生の【大人のカード】の力を相殺する。

【大人のカード】の力が相殺され、光の欠片が恭介の周りを舞う。そこへバニタスが召喚した龍が飛び込んでくる。

そのまま恭介は龍に呑み込まれる――と思われた瞬間、予想外の事が起きる。

 

「何……?」

 

相殺された【大人のカード】の力を顕す光の欠片が、恭介が握る【ラッシュカプセム】へと吸い込まれていく事にバニタスは困惑したように呟く。【ラッシュカプセム】が全ての光の欠片を吸い込んで光を放つと同時に、迫っていた龍を吹き飛ばすように霧散させた。

 

「なっ……!?」

 

その光景にバニタスは驚愕の声を洩らし、拳を突き付けた恭介の姿を凝視する。その恭介の突き付けた拳で握っていた筈の【ラッシュカプセム】は姿形を変え――一UFOのような形をしたカプセムとなっていた。

 

「これは……」

 

恭介も驚いた表情で新たなカプセムを見つめる。バタフライポーズのように両腕を広げた、上半身のみの絵柄。レバーのような突起物も付いており、通常とは違うカプセムなのは明白だ。

恭介はまるで導かれるようにそのカプセムを半損しているバックルへとセットする。すると、半損していた【ナイトインヴォーカバックル】は瞬く間に修復……否、カバーパーツの形状が一部だけ変化する。

その変化を感じつつ、恭介はピンスイッチを押し込む。

 

――ホープライズ!

――オンユアマーク!オンユアマーク!オンユアマーク!オンユアマーク!

 

次第に力強くなる変身待機音を聞きながら、恭介は眼前で右拳を作る。そのまま右拳を引きながら親指を突き立てるように開き、告げる。

 

「変身!」

 

その掛け声と共に、恭介はカプセムにあるレバーに親指を当て――躊躇なく腕を下へと伸ばす。下ろされたレバーが上がると同時に件のカプセムは回転し、まるで前に向かって走っているかのような動きを見せる。

 

――オールナイトシステム!アーカイブライダー!アリウス!

 

恭介の周りを無数の光の欠片が囲い、恭介の身体は白い靄に包まれる。白い靄は徐々に形を作っていき、色合いは《ノクスナイト》でありながら、《ゼッツ・エクスドリーム》を連想させるスーツとなっていく。

仮面の造形は《ノクスナイト》の形状をより洗練させた形状となり、緋色の複眼を輝かせる。

 

――ミラクルドリーム!!

 

その音声と共に周囲の光が恭介へと全て吸い込まれ、変身が完了する。

《ナイトアリウス・ミラクルドリーム》……奇跡を紡ぐ、新たな姿がここに誕生したのだった。

 

 

 




【ブレイカムドォーン】
バニタスが使う武器として登場。ガヴの【ヴァレンバスター】や【ベイクマグナム】と同じ扱いとなったが、変身武器が武器として使われるのは仮面ライダーあるある。

【ナイトインヴォーカバックル】?
新たなカプセムをセットした事で変化を起こしたバックル。外すと基本的には元の形状に戻るため、バックルの交換は起きない。
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