夢の力で青春を手助け   作:ライダー志望

52 / 65
あまねく奇跡の夢

――ミラクルドリーム!

 

【エクスドリームライズカプセム】とよく似たカプセムによって、新たな姿となった恭介。そんな恭介の姿を、バニタスは半ば呆れたような雰囲気で見つめている。

 

「最終フォームか?ご都合も良いところだが……その程度で覆せると思うな!」

 

バニタスは大剣モードの【ブレイカムドォーン】を構え直し、恭介へと突撃する。《ゼッツ・エクスドリーム》そっくりのフォームであれば、《明晰夢》を利用した書き換え……不都合を夢オチで片付ける能力を有していると見ていい。

だが、それは非現実である夢の中だからこそ出来ること。【ナラム・シンの玉座】が現実と非現実を内包した空間といえど、時間の巻き戻しといったパラドックスを引き起こすことは出来ない。あらゆる可能性を内包していたとしても、時間をねじ曲げる現象は引き起こせない。

 

『ロスト』

 

さらにバニタスは【ブレイカムドォーン】の柄尻で【ロストカプセム】を押し込み、能力を発動。【ブレイカムドォーン】を振りかぶり、恭介を斬らんとする。

 

『ホープライズ!』

 

それに対し恭介はバックルを掴むように右手を添え、カプセムのレバーを下ろして能力を発動させる。都合の悪い結果を夢オチへと改編する能力を発動させたと察したバニタスは、床に【ブレイカムガントレット】を叩きつけ、その能力を打ち消さんとする。

 

「……何?」

 

だが、バニタスの口から洩れたのは困惑の声だった。あまりにも手応えがなく、能力が空振りに終わったような感覚に訝しんでいると、バニタスの全身に強い衝撃が走る。

 

「グォッ!?」

 

固い何かに殴り飛ばされた衝撃にバニタスは地面を転がりながらも、バニタスは一帯に青暗く光るギロチンの刃を展開。段階的に恭介達へと落としていく。しかし、そのギロチンの刃も紙吹雪と化して舞い散っていく。

 

「ハァッ!」

 

恭介が腕を振りかぶって正拳突きを放つと、腕が伸びると同時に巨大化してバニタスへと迫る。バニタスは咄嗟に武器を盾代わりにして構えるも、衝撃を殺し切れずにそのまま空間の壁際へと叩き付けられる。

 

「何がどうなっている……!?」

『プロジェクション!』

 

予想と違う能力にバニタスは困惑の声を上げながらも、【プロジェクションカプセム】を使ってシロコ*テラーの雨雲号を増幅させる。洗脳状態のシロコ*テラーは自身のドローンを操作するように複製された雨雲号達を操作し、搭載されているミサイルを次々と発射していく。

 

「ん!」

 

そのミサイルの雨を恭介だけでなく、シロコも掻い潜っていく。普段以上の機動力で動き、まるで風が味方についたかのような疾さで回避するシロコは、手持ちのアサルトライフルを連射しながらシロコ*テラーへと迫っていく。シロコ*テラーはシールドとショットガンに持ち変えてシロコを迎撃しようと銃撃を放つが、シロコを捉え切れずにいる。

 

「あれはカプセムの力……!どうして持たずして恩恵が……いや、まさか!?」

 

バニタスはここで漸く、新たなカプセムの能力の正体に辿り着く。あのカプセムは数多の“夢”を内包しているのは間違いない。違うのは、その出力の仕方だ。

【エクスドリームライズカプセム】は全ての夢を統合し、一つの力として運用するのに対し……恭介が得た新たなカプセムは“夢の力”を組み合わせ、複数の能力として同時に運用することが可能なのだろう。それも自身だけでなく、他者にも付与できる形で。

その事実にバニタスが驚愕している隙に、シロコはシロコ*テラーの眼前でグレネードを使用。離脱と同時に爆発し、シロコ*テラーは全身に電流を迅らせながら床を転がっていく。

その爆発――【ショックカプセム】の能力が付与されたと見たバニタスは、【ブレイカムガントレット】に【ファントムカプセム】をセットして派生フォームへと切り替える。先の爆発でシロコ*テラーの洗脳は解けたと見て間違いなく、現にシロコ*テラーは立ち上がらずにうつ伏せで蹲ったままだ。

 

――ナイトメアライダー!ファントム!

 

《バニタス・ファントム》へと変身したバニタスは分身しながら、両肩の帯を触手のように伸ばして恭介へと攻撃を仕掛ける。

 

『ホープライズ!』

 

恭介は再びカプセムの能力を発動させ、背中に翼のようなマントを展開させる。マントの端を掴んで剣を持つように構えると、その場で独楽のように回転して自身に迫っていた全ての帯を斬り裂く。

 

『ブースター!ダブルエッジ!』

 

その隙にバニタスは【PZ(プラズマ)ブースターカプセム】を【ブレイカムドォーン】にセットし、双剣モードの必殺技を発動させて斬りかかる。

音速を、光速を越える幾重もの斬撃。通常であれば手数に圧されて斬り刻まれる結果となるバニタスの猛攻を、恭介は剣のように掴んだマントの鋭利な箇所で次々と受け止め、捌いていく。

 

「フンッ!」

「グハァッ!?」

 

その剣戟の嵐を恭介は制し、両の先端で突きを放ってバニタスを吹き飛ばす。胸部を突かれて後退させられたバニタスは、痛みを覚えながらも笑い声を上げる。

 

「クックックッ……本当に、予想外にも程がある。だが……それでこそ、滅ぼしがいがある!!」

 

バニタスは声高々にそう告げると、【玉座】内の全てのリソースを自身へと集中させる。リソースを回収されて【嵐の星座】と【頂の聖女】は存在を保てなくなって消失するが、バニタスにとっては些事。その回収したリソースを使って自身を強化しつつ、一対一の空間を作り出す。

 

「さあ、来い!速水恭介ぇ!お前の“夢”を、ここで終わらせてやる!!」

「……だったら、私はお前の“悪夢”をここで終わらせる」

 

第三者の手出しが出来なくなった空間で、バニタスと恭介は雌雄を決するべく激突するのだった。

 

 


 

 

恭介とバニタスが最後の戦いへと興じる中、シャーレの先生達は未だ蹲るシロコ*テラーの前に立っている。

 

「……もう一人のシロコ」

「…………何?」

 

シャーレの先生は膝を付いてシロコ*テラーに話し掛けると、少しの間を置いてシロコ*テラーは顔を少しだけ上げる。赤い光が消え、洗脳が解けたシロコ*テラーの表情は能面のような無表情ではなく、人生に絶望したように暗く澱んだ表情だ。そんなシロコ*テラーに、シャーレの先生は問い掛ける。

 

「一体、何があったの?」

「……何で、それを聞くの?聞いていたでしょ?アイツが……あの男が、言っていたことを」

 

シロコ*テラーのその言葉に、シャーレの先生だけでなく他の一同も驚いたように目を見開く。てっきり洗脳されて意識がないと思っていたのだが、シロコ*テラーの口振りからして操られている間も意識があったようだ。

 

「ううん……少しだけ違うかな。みんなを死なせたのは……私だから」

 

シロコ*テラーは涙を零しながら、ポツリポツリと語っていく。まるで懺悔するかのように。

 

「私がいなければ……あのまま、死んでいれば……みんながああなる事はなかった……私がアビドスにいなければ、世界は滅びなかった……先生だって、《色彩の嚮導者》とならずに済んだ……全部、全部、私がいたせいで……!」

「…………」

「寒くて……お腹も空いて……それでも、私は彼処で消えるべきで……!先生にだって銃を向けて……殺そうとして殺せなくて……その半端がアレを招いて……なのに、世界を終焉に導く役割さえも奪われて……こんな事になるなら、あの時……貰うべきじゃなかった……!」

「…………」

「ごめんなさい……ごめんなさい……世界を滅亡させて……役割も全う出来なくて、ごめんなさい……」

 

シロコ*テラーの独白に近い謝罪に誰も、シャーレの先生でさえ何も言うことは出来ない。そんな事はない、違うと否定してもそれは気休めにしかならず、シロコ*テラーの心を救うことは出来ないからだ。

唯一それが出来るのはプレナパテスだけ。そのプレナパテスも沈黙を続けており、A.R.O.N.Aも姿が消えてしまっている。プレナパテスの手から落ちた【シッテムの箱】は不規則な明滅を繰り返しているだけで、満足に起動しているのかすら怪しい。

 

「マフラー……貴女はまだ持っているんだね……凄く、大事な物だったのに……私は何処でなくしちゃったのかな……?ホシノ先輩が死んだ時だっけ……?それとも、セリカが行方不明になった時……?アヤネが自ら生命維持装置を外した時……?アビドスを離れたノノミが“そうなった”と連絡を受けた時……?ああ、あの時……先生の回復の見込みがないと、報道された時だったかな……?」

 

シロコ*テラーはシロコの首もとに巻かれたマフラーに気が付くと、自身のマフラーを何処で無くしたのかと記憶を探るように呟いていく。大切な人達……《対策委員会》の末路を。

バニタスが口にしたアビドスの悲劇……その結末がシロコ*テラー自身の口から零れていき、《対策委員会》の面々は……特にホシノは沈痛な表情で俯いてしまう。

自己犠牲から始まった悲劇……どうしてそのような結末になったのかは不明のままだが、確実に言えることは一つだけある。

 

「……ごめん。大きいシロコちゃん」

「……?何で、ホシノ先輩が謝るの……?」

「私は大きいシロコちゃんの先輩じゃないから、筋違いなのは分かっているけど……それでも、謝らせて。私が馬鹿な行動を……安易に自己犠牲に走ったせいで、みんなに深い傷を作ってしまって……本当にごめんなさい」

 

ホシノはシロコ*テラーに向かって深く頭を下げる。どうして再び自己犠牲へと走ったのかは分からないが、きっとシロコ達の言葉に耳を貸さずに突っ走り、シロコ達も自分を連れ戻そうと必死に追い掛けたのだろう。

唯の気休めでしかないとしても、筋違いだとしても、ホシノはシロコ*テラーに謝らずにはいられなかった。例え違う世界で厳密には自分の後輩ではないとしても、目の前の彼女も自分の後輩なのだから。

重苦しく、哀しい空気が辺りを支配する中、一方の戦いは決着へと向かっていた。

 


 

 

「オラァッ!」

「ハァッ!」

 

恭介――《ナイトアリウス・ミラクルドリーム》と《バニタス・ロスト》へと戻ったバニタスは激しくぶつかり合う。

 

『エクストラ!ダブルエッジ!』

『ア サ ル ト トルネィドバースト!』

 

バニタスは【エクストラカプセム】をセットした双剣モードの【ブレイカムドォーン】を振るい、大量の紫に輝く光槍を恭介へと放つ。対する恭介は【タツマキマグナム・アサルトカリバーモード】の必殺技を放ち、強烈な竜巻で放たれた光槍を悉く打ち払っていく。

 

『ホープライズ!』

 

恭介は【ミラクルドリームライズカプセム】のレバーを下げ、複数のカプセムの力を繋げて自身の機動力を大幅に上げる。音も光も置いていく速度でバニタスへと肉薄し、眼前で容赦なく斬り上げる。

 

「舐めるな!」

『トランスフォームフィニッシュ』

 

バニタスは吹き飛ばされながらも【ブレイカムガントレット】に【トランスフォームカプセム】をセットし、着地と同時に床へと叩きつけて必殺技を発動。床が生き物のように動き、恭介を左右から押し潰さんと迫る。

鈍い音と共にプレスされるように潰された筈の恭介。しかし、その恭介は瞬間移動したようにバニタスの隣にいて、渾身の右ストレートを放っている。

右ストレートを諸に喰らったバニタスは怯みながらも、お返しとばかりに恭介へと殴り返す。そのまま殴り合い、互いに顔面に拳を叩き込んだことで仰け反り、距離を取る。

互いに息を整え、向かい合う恭介とバニタス。まるで鏡合わせのように対面する二人は、雌雄を決するべく動く。

 

「……そろそろ終いと行こうか」

『ロスト』

 

バニタスは【ブレイカムガントレット】を僅かにずらし、【ロストカプセム】を押し込んで超必殺技の準備を完了させる。バニタスが爪先で床を叩くと同時に青暗い龍が姿を現し、バニタスの周囲で旋回していく。

 

「……ああ。これで終わらせる」

 

恭介も同意するようにバックルのピンスイッチを三回押し込み、【ミラクルドリームライズカプセム】のレバーを親指で下げてカプセムを回転させる。恭介を中心に光の欠片が舞い、その全てが右脚へと集っていく。

 

「ぉおおおおおおおおおッ!!」

「そぉらぁああああああッ!!」

『ホープライズ!ビクトリー、フェイタル!』

『ロスト、デストラクション』

 

互いに弾かれたように地面を駆け、渾身の飛び蹴りを放つ。その渾身の蹴り同士が激突し、辺りを白い光で満たしていき――

 

 

 

――――

――

 

「……まさか、本当に乗り越えられてしまうとはな」

「…………」

「念のために言っておくが、これは私も予想外だからな。この場所は、テラシロコちゃんとプレナパテスの為に用意した空間だ。私が敗北した時に自動的に招かれる場所……私達以外にも、何人か招かれてしまっているみたいだが」

「……これで本当に良かったのか?」

「良いも悪いもない。そもそも私は夢の住人だ。現実への帰還は叶わない。それが私の選択の結果であり……甘んじて受け止めるべき結末だ。どこかの誰かさん曰く、大人とは責任を背負う者だからな」

「…………」

「だから……ここが私の終着点だ。そして、お前の終着点は此処じゃない。まだ、先がある……たった一つの違いで、此処まで変わるとはな」

「……ああ。この“夢”は、まだ続いている」

「だったら、精々足掻いてみるんだな。その“夢”が続くように……悪夢に終わらないようにな」

 

……

…………

………………

 

「……で?これはお前の仕業なのか?」

「仕業という程ではないですよ。ただ、お願いしただけです。信じて見守っていてほしいと……何れ会う、信頼できる大人(先生)と巡り会えるようにと」

「別世界の過去の自分自身にか?相変わらずの身勝手さだな」

「そうかもしれませんね。ですが、この気持ちに嘘はありません。バニタス(速水恭介)さん」

「…………」

「私達の世界は捻れ歪んだ終着点で終わってしまいましたが……この世界は乗り越えられると信じています。今日の出来事が……あまねく奇跡の始発点となることを」

「本当に相変わらずだな……最後の言葉にだけは、同意するけど」

 

――

――――

 

 

 

盛大な爆発と共に、突き破るかのように恭介が飛び出てくる。そのまま地面を削りながら着地し――[888]から[AAA]の演出を背にした形で制止する。

未知のエネルギーの観測から始まった今回の一連の騒動……バニタスが倒されたことでその幕は徐々に落ちていくのであった。

 

 

 




オリジナルフォーム紹介

《ナイトアリウス・ミラクルドリーム》
【ラッシュカプセム】が二つの【大人のカード】の力を吸収して進化したカプセム【ミラクルドリームライズカプセム】を使って変身した姿。胸ベルトもカバーパーツが対照となる菱形の形状となった【アリウスドライバー】へと変化している。
全体の造形は《ゼッツ・エクスドリーム》とそっくりであるが、能力は似て非なるもの。あらゆるカプセムの力を複数同時に発動する事ができ、他者への付与も可能。一つだけの場合だと元となったカプセムの力より一割程落ちてしまう為、複数同時発動が前提となっている。
その為、戦闘能力だけを見れば全フォームの中でトップクラス。ただし、反動も相応に強いため多用と乱用は出来ない。
必殺技は【ホープライズ・ビクトリーフェイタル】


【アリウスドライバー】
【ナイトインヴォーカーバックル】に【ミラクルドリームライズカプセム】をセットする事で自動的に変化する専用ドライバー。使用者本人は戦国ドライバーの変化程度の認識なので、ドライバー化した事実を知ることはない。
基本カラーは白のままだが、Aを連想させる溝は金色ではなく鮮やかなオレンジへと変色している。展開ギミックは残念ながらない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。