夢の力で青春を手助け 作:ライダー志望
⇒月♭日 晴れ
シャーレの先生と連邦生徒会の支援により、今後のアリウス自治区における重要プロジェクトが遂に始動した。
そのプロジェクトは、ダム建造計画です!ダムの有無で水の安定供給は勿論、水害のリスクもグッと減らせますからね。ダムへの往き来する線路に水力発電施設、自治区への水路に送電線の設置……作るべきものが多いですが、自治区の発展と安定した生活の為には必須ですからね。水は生活に本当に必要不可欠なものですし。
現場の主力は卒業生が中心となって行います。信頼できる技術者の指導の下、自治区内で管理・修繕できるように技術を学びながら建造していきます。カイザーは当然論外です。絶対に搾り取る為に悪知恵を働かせるでしょうし、土台も向こうが圧倒的に優位ですからね。感情云々抜きにしても、対応仕切れずに呑まれるのが目に見えて明らかですからね。
実習目的で在学生も補助として参加しますが、あくまで学生の本分は勉強です。ダムの建造は工期も長いですし、人間に毎回左右されると工事も満足に進みませんからね。作業には【パワードスーツカー】を使っています。重機は燃料の関係もあって使えないですからね。外部の発注も、資材も機材もカタコンベを通れない物は運べませんから現実的ではありませんからね。カタコンベの入口を拡張目的で崩しても、いつの間にか元に戻るので無駄な労力ですし。
本当に必要な時だけ《明晰夢》で構造を変えていますが本当に一時的ですし、個人の能力在り来では将来苦労してしまいますからね。本当に自治区の開発は大変です。
レッドウィンター連合学園の《工務部》にも、技術指導として参加してもらう予定ですが……先ずは建造予定地までの線路を引いてから、改めて計画の段取りを進めていくつもりです。大型車両もないですし、長距離移動の手段は鉄道しか今はないですからね。
肝心の線路は《鉄道開発部》と《森林管理部》が協力していく方針です。どうしても樹木を伐採し、切り株も取り除かなければ整備すら出来ませんから。【ゾンビブレイカー】に仮面ライダービルドの初期の武器【ドリルクラッシャー】で取り除いてますから、問題はないでしょう。
ちなみに鋼材は夢の中から持ち込んだ鉄屑を再利用による鋳造からの鍛造で一から作っています。最初は炉の作製から始まり、小規模の施設でノウハウを手探りで習得していたのが懐かしいですね。熱不足で鉄が溶けなかったり、煮え滾った溶解した鉄が容器から溢れ落ちたりとてんやわんやでしたが。その介もあって、製鉄所モドキと言えるくらいの規模の施設の運用が出来るようになったので、結果オーライです。
⇒月∈日 曇り
《スクワッド》と《ティーパーティー》との協議が開かれました。高級ホテルの中で。
現ホストのミカさんが一頻りの挨拶を交わした後で、学力テストをしよう!と宣言しました。そのミカさんの宣言に私と《スクワッド》はポカンとし、ナギサさんとセイアさんは話を飛ばし過ぎだと呆れられていました。
ナギサさんの説明では、アリウスが名ばかりとはいえ“分校”という立場の為、“本校”が学力を把握出来ていないのは今後の問題になってしまうと申し訳なさそうにしていました。その為、トリニティの学力試験をアリウスの生徒達にも受けてほしいと。
試験会場はトリニティ自治区内の、廃校となって使われていない校舎を利用するとも語っていました。これは単純に、試験の為の教室が足りないからだそうです。その提案に関しては、むしろありがたいくらいでした。無理に同じ教室で試験を受けてもお互いに気まずいでしょうし、過去の遺憾も完全に払拭は出来ませんからね。適度に距離感を保たなければ、些細な切っ掛けで喧嘩する事になりますからね。配慮しても、喧嘩へと発展する場合はありますが。
その後は軽い談話に興じましたが。主に《救護騎士団》の教えからによる《救命部》の変化に。救護の為なら物理で黙らせるのも辞さない方々の教えにより、《救命部》も説得に物理を用いるようになったと。スタンバトン片手で救護作業をするようになりましたから。
その事実に《ティーパーティー》の皆さんは何とも言えない、渇いた笑みを浮かべていました。ミネ団長の悪い部分まで学んでしまっていると。それに対して私は、チェーンソーで切断しようとしないだけまだマシだとしか返せませんでした。いくら身体が頑丈なキヴォトス人でも、切断からの縫合は普通に完治に時間が掛かりますし。
⇒月Ω日 曇り時々晴れ
アリウス自治区内は怪奇現象が起きやすい。カタコンベやポルタパシスといった例がありますからね。
今回の怪奇現象が発生した建物は、資材倉庫として利用していた建物です。壁のない、純粋な資材の置き場だった倉庫内が急に迷路のような空間へと変質したと何人もの生徒から報告がありました。同時にライフルを携えた“審問官”も徘徊していたとも。
変異した資材倉庫を《ニコメディア》とFOX小隊が共同で調査した所、内部の広さにも影響が出ているとのことでした。倉庫の大きさと中の広さが噛み合っておらず、耐久性も異常な程に上がっていると。所持していたクラスター系の爆弾でさえ傷どころか焦げ痕さえ残らなかったと。カタコンベのように内部構造が一定間隔で変化していないのは、ある意味幸いでしたが。
相対した“審問官”もFOX小隊の評価では特殊部隊の隊員クラスに匹敵する実力だったそうです。四人一組で常に行動しており、連携も思わず称賛しそうになった程だそうです。この事から、FOX小隊――特にユキノさんは、自分達が原因で生まれたんじゃないかと気まずそうにしていました。それに対して私達は、過去にも似たような事は何度もあったと返しました。四六時中夜中の森林区域とか、ブルドーザー戦車とか、茸の怪獣とか、牛の頭部を模した蒸気機関車とか、空を泳ぐ鯨とか、階数が無限のように続いた建物等が、実際に出てきましたからね。蒸気機関車については、私自身の影響が有りすぎる存在でしたが。
この話を聞いたFOX小隊は何とも言えない表情をしました。カタコンベの件でも感じていた事のようですが、アリウス自治区は何でもアリなのかと心底呆れていました。主にクルミさんとオトギさんが。
今回の資材倉庫の変質は建物内部だけで他に影響が出ていない為、スバルは緊急性は低いと判断してゆっくり調査していく方針だと報告しました。同時に後輩達に経験を積ませられるいい機会だとも。
報告書等を見た限りではありますが、中の資材そのものには影響はありませんし持ち出しも問題なく出来たそうです。彼処には鉄屑に石材、外で買った工業用のオイルと再利用可能な廃材がコンテナの中に収められていましたからね。実害も今の所はありませんから、一時的な訓練施設としても利用させてもらおうと思います。
⇒月∨日 雨
変異した資材倉庫が、限定的な《明晰夢》のゴミ集積所として活用できそうなレベルでした。
切っ掛けは工業用のオイルが入った容器を、変異した資材倉庫から幾つか持ち出した事からです。オイルは油圧式プレス機を使うのに必要なものですし、自治区内では採掘もできないですからね。別の油圧式プレス機の為に再び工業用のオイルを持ち出そうとした所、本来は減っていた筈の容器の数が持ち出す前の数に戻っていたそうです。念のために中身も確認したら、中身もしっかりとあったそうです。
この事から、資材倉庫の中にあった鉄屑のコンテナの中身を半分以上を外に持ち出して様子を窺うことにしたそうです。ご丁寧にそのコンテナに目印も付けて。
そうしたら、数日後に確認したら中身が減っていた筈の鉄屑のコンテナの中が鉄屑で再び一杯となっていたそうだ。念のために他のコンテナの中も確認したそうですが、他のコンテナの中の物が減った様子はなかったとのことです。
その持ち出した鉄屑も消えた訳ではなかったですし、鍛造し直して一つの鋼材として造り直しましたからね。急に脆くなった気配もなく、重量にも変化はありませんでしたから。
工業用のオイルと鍛造目的の鉄屑が無料で手に入る可能性が出たことから、資材倉庫の怪異は無理に解決せずに様子見をしながら利用しようと話が纏まりました。“審問官”の存在がありますが、それを加味しても利用価値が高いと。上手くいけば銃弾も自治区内で量産可能になるかもしれないと、嬉々としていました。鋼材よりも銃弾が先に来る辺りが、銃が鈍器扱いの世界なのだと改めて認識させられましたね。
ただ、外から持ち込んでから持ち出しても変化はなかったそうですから、元から資材倉庫にあった物だけが対象となっているそうです。それでも工業用のオイルがタダで手に入るだけで十分すぎる気もしますが。
「苦しい……苦しい……」
格子付きの小さな窓からの光に照らされた先に、浮浪者のような見た目の人物が頭を抱えてぶつぶつと小声で同じ言葉を繰り返している。牢屋のような空間――中からは決して開けられない、世界から隔離された文字通りの牢獄。その牢獄に、一人の人物が足を踏み入れる。
「お前の苦行は終わりだ。地下生活者」
「……この声。匿名の行人、貴方ですね……」
「今はフランシスだ」
匿名の行人と呼ばれたフランシスは、旧友である《ゲマトリア》から追放された元同志――地下生活者に対し、今の呼び名で今後は呼ぶようにという意味で言葉を返す。そんなフランシスの要求に頷く価値すらないと言いたげに、地下生活者はもう自分に構うなと力なく言葉を返す。
地下生活者の情緒は基本的に不安定であり、自己愛が明後日の方向に強いといっても過言ではない。そんな地下生活者の態度などフランシスには関係なく、自身が考える“変化”の為に地下生活者が興味を抱く言葉をぶつける。
「《ゲマトリア》が壊滅した」
「?それはどういう……」
「ゲマトリアはもう存在しない。解体、もしくは解散と見ていいだろう。その原因の一つは、シャーレの先生が居たからだ。あの者が、因果とジャンルを率先して捻じ曲げた」
フランシスはどこか忌々しそうにそう告げる。勝手に物語の結末を決めて静観しておきながら、思い描いた結果にならなかったからと不満を露にする。そこに排除しようという思考まであるのだから、研究者や探究者としては落第なのかもしれない。研究とは本来、不測の事態でさえも受け止めて究明に動くのだから。
「なるほど……コデックスが更新されたのですね?新しい世界……ええ、感じます。この世界の異物感を……書が変更されルールが変わったのなら、これは……また新しいキャンペーンが始まったということで……」
地下生活者はフランシスの言葉で今のキヴォトスに興味を抱いたのか、先程までの弱々しさが嘘であるかのように世界を観測していく。勝手に納得し、自己完結で済ませようとする地下生活者に、フランシスはもう一つの原因を告げようとする。
「もう一つの原因は――」
「しっ!……静かに」
フランシスはシャーレの先生の次に厄介であり、捉え方次第では最も警戒すべき原因を告げようとするも地下生活者の静止の声によって遮られる。フランシスはその言葉に一旦は従って黙りとなり、地下生活者は今のキヴォトスの観測を続けていく。
「学園都市……それに、先生?ン、ンン……?こ、これは!思ったよりも難易度がた、高いじゃありませんか……!し、しかし、万物に攻略法は存在する……!どれ、どれ……盲点、弱点……欠点……何だっていい……!」
地下生活者は更なる観測・調査の為に意識を【混沌の領域】へと繋げ、シャーレの先生の弱点を探ろうとする。しかし、それも見かねたフランシスによって中断させられる事となる。
「地下生活者。お前がこの世界をどう認識しているかなど、興味はない。しかし、いつまでもボードゲームかなんかだと思っていては、正しい勝利にはたどり着けないだろう。何より、今のお前の行動は
「…………」
「何故なら、あの者た――」
「邪魔をするなァアッ!!クズがッッ!!!」
フランシスが肝心な情報を告げるよりも早く、地下生活者は激昂したように声を張り上げながらフランシスへと近づき、
「“死”を知らない貴様ごときがア!ええッッ!?小生の苦しみ、孤独を……恐怖を、理解できるのかア!?」
それらは全て、地下生活者の自業自得の結果ではあるのだが、自身が絶対だと無自覚に考えている彼には省みるという発想すらない。顔に幾つもある時計のような瞳でフランシスを睨み付けながら、今までの鬱憤を晴らすかのように足蹴を続けていく。
「匿名の行人のクセに出しゃばるなァッ!これは小生のキャンペーン!!苦行を通じて小生が、どんな気付きを得られるかがッ、それが重要なんだよォ!それを貴様がッ、邪魔をするんじゃねぇええッッ!!!」
その後も苛立ちをフランシスにぶつけ続け、絵画が完全に壊れたことで地下生活者は漸く落ち着きを取り戻す。重要なのは勝利ではなく過程だと口にし、元同志達のことも悪し様に罵っていく。一頻り吐き出してから《ゲマトリア》の壊滅に漸く思考が向いた地下生活者は、自身こそが真の《ゲマトリア》だと宣言し、追放した同志達を罵倒しながら観測を続けていく。
「……アビドス。太古の“神秘”らが誕生したあの帝国……果たして、今回のコデックスではどんな形になっているものか……ヒヒッ、ヒヒッ……!」
地下生活者は不気味な笑い声を洩らしながら、現在のアビドスの調査とシャーレの先生の攻略法を見つける為に【混沌の領域】へと向かう。自身の“勝利”を微塵も疑うことなく。
だが、地下生活者は気付いていない。フランシスを排してしまったことで、一番知るべき情報を知る機会を自ら手放してしまったことに。
その情報を知らない故に、これから集める情報が間違ってしまう事に。見たい部分と知りたい部分しか観測できない故に、結論と事実が解離しているのだと気付けない事に。
そのせいで地下生活者が想定している難易度より遥かに高く、安全圏など存在しなくなっている事にも気付いていない。進行次第では、直接殴り込まれる可能性すらある事にさえ。
攻略の為の