夢の力で青春を手助け 作:ライダー志望
△月∽日 晴れ
このキヴォトスって世界は私の前の世界と違うのだとつくづく思う。
生徒会の権限が国の政治家レベルで高いし、大人が働く企業は学園経営のスポンサーにも関わらず運営には基本的に口出しできないと、上下関係がイマイチ把握できない。普通はそういったものとはまだ無縁である筈なんだけどな。
アリウスの外で他の学園についても可能な限り調べてみたのだが……結論としては表社会への復帰は現状では不可能というものだった。
先ず、そもそものアリウスが秘境のような場所に自治区を築いた理由は、トリニティ総合学園からの弾圧から逃れる為だ。大多数との意見の対立から、最終的には武力衝突に発展したみたいだし。あくまでアリウス視点ではあるが、“ヘイローを壊す”程の弾圧だったとされている。
そんな経緯からか、アリウスの存在は最初からなかったものとして扱われている可能性が高い。書店の歴史書にも、“アリウス”の単語が何処にもなかったし。
そんな経緯を考えれば、アリウスの存在を公表しようとすればトリニティが隠蔽に動く可能性が高い。存在を抹消されている以上、トリニティにとってアリウスはこの上ない汚点だし、その頃から存在していた連邦生徒会も不干渉を貫いたみたいだし。下手したら大昔の二の舞だ。
次にゲヘナ学園だが……此方は様子見、もしくは共倒れを狙いそうというのが私の所感だ。
ゲヘナの校風は《自由と混沌》だそうで、学園の自治区内だけでなく、外でも好き勝手に活動しているそうだ。そんな法と規則に真っ向から喧嘩を売るゲヘナ生と、規則に五月蝿いトリニティ生は遭遇して直ぐに銃撃するくらいに仲が悪い。不倶戴天の敵といっても過言じゃないレベルだ。アリウスもゲヘナの事は態度に出るくらいに嫌っているし。あくまで“何となく”の域ではあるが。
ミレニアムサイエンススクールは、一言で言えばテクノロジーの最先端を走る学校だな。デジタル技術が本当に凄いと感じたし、新興された学校なのにトリニティとゲヘナに匹敵する規模なのだから。
アビドス高校は……かつてのアリウスを思い起こさせる程に酷かった。いや、ある意味アリウスより酷いのかもしれない。
アビドスは昔起きた大規模な砂嵐のせいで、生活を支えるライフラインが致命的な損傷を受けている。特にオアシスの喪失が大打撃だった。そのせいで過疎化が進み、近い将来ゴーストタウンとなりかねない状況だ。本来は連邦生徒会認可の学園だから、何かしらの支援を受けていそうなのだが、その支援がされた事は私の調べた限りではなかった。
これは推測ではあるが……向こうからしたら衰退した方が都合が良かったのではないのだろうか。アビドスは砂嵐で致命傷を負うまでは、マンモス校として一大勢力を築いていたみたいだし。勢力が大きいとそれだけ自分達の意見が通し易いし、本来は中立の連邦生徒会がルールによってアビドス寄りになっていたのかもしれない。あくまで私の憶測だから、もっと複雑な事情があったのかもしれない。
環境の過酷さで言えば、レッドウィンターも似たようなものだろう。あちらは自然の影響に変化はないが。
ただ、学園の空気からなのか、生徒会長がコロコロ変わっている。革命、クーデター、粛清、ストライキ……とにかく毎回毎回、何かに反抗している感じだ。その理由もえ?それだけ!?というレベルの本当に些細かつ、普通に話し合えば解決しそうな域で。ちなみに粛清の内容も子供への罰レベルの本当に軽いものだ。トイレ掃除とか、一週間オヤツ抜きという、痼が残らないレベルだし。
そんな頻繁に問題を起こす学園でも、連邦生徒会が認めていれば学園として存在できる。今のアリウスは連邦生徒会非公認の、“存在しない学園”だ。学園の存在を認知させれば、支援金が貰えるかもしれないが……今の段階では不可能と判断するしかないだろうな。
先ず、この自治区への通り道であるカタコンベが安定して使えないことだ。一定の規則性があることが理解できてはいるが、全容を把握出来ているとは言えないし地図もない。今は私の明晰夢の力で直通ルートを作っているが……私ありきの方法だけだから、自由に行き来出来なければ厳しい判断を下されるだろう。
何より一番の問題は、その前身のトリニティがアリウスの存在を認めない可能性が極めて高いということだ。アリウス自治区はあくまで自称、世間一般の認識としてはトリニティの区画の一部扱いとなる。
帰属はアリウスの誰もが望まないだろうし、強引に帰属しても破綻するのが目に見えている。だから一番角が立たず、適切な距離感を保てるのが“独立”……新たな学園として出発するのが理想的だろう。勢力、規模の違いからかなり困難な道だけど。
そこに加えてベアトリーチェの存在もある。ベアトリーチェは間違いなく、アリウスの存在が公になった混乱を突いて、今度こそアリウスを自身の支配下に置こうとするだろう。もしくは別の勢力に裏から取り入って、アリウスを潰そうとするのかもしれない。
本当に頭を悩ませる案件ばかりで、気が重くなるよ。ある意味仕方ないけど。
後、自己防衛手段の確立という名目で、戦闘訓練が体育の授業として実施される事になった。本当は戦闘とは無縁の生活が一番なんだが、長い内戦の影響か戦闘の癖が抜けず、逆に落ち着かなくなっているそうだ。特にアズサが就寝時の安全確保としてブービートラップを設置しているし。
さすがに銃弾はなしで構えるだけだけど。弾薬の入手は実質不可能だし。
……歴代仮面ライダーの銃火器がゴミ集積所にないかな?あれらなら、弾切れとか気にせず撃ち放題だし。
△月∬日 晴れ
別ライダー作品の武器をガッツリ回収しました。いや、まさか本当に回収できるとは思わなかったけどさ。それも玩具じゃなくて、正真正銘の武器として。
ただ……回収できたのがゼロワンの【アタッシュショットガン】やギーツの【マグナムシューター40】を初めとし、【カイザブレイガン】や【ゼンリンシューター】、【ガンガンハンド】に【スカルマグナム】等とバラバラだったけど。変身を兼任する武器は一つもなかった。そもそも変身アイテムも落ちてなかったけど。あったらディケイド、ジオウ状態だよ。武器単体だから、真価を発揮することは出来ないけど。
本当に使って大丈夫なのか等、諸々の不安はあったが彼女達はそれを気にすることなくフツーに武器として使用した。撃たれても何時もの銃火器や過去の
何にせよ、授業に使う銃火器としては十分過ぎるだろう。そのまま普通に使いそうで不安ではあるが。現にアタッシュショットガンの音声を消せたら主力武器として使えそうと話し合っていたし。
ちなみに訓練場所として、荒廃が酷い場所でやる事にした。建物は基本的に壊して、瓦礫の山を適当に配置しただけだけど。
内戦の時を連想してしまわないか不安だったが、彼女達は活き活きと訓練に望んでいた。一応サオリに達に聞いたら、ヘイローが破壊される心配もなく撃ち合えるから、逆に気兼ねなくやれるのだと。それに弾の消費の心配もないから気にせず撃てるのもありがたいと。これが世界の常識の違いというやつかぁ……
一応、何組かにチームを分けて、色々とルールを設けた。ルールも何もないと収拾がつかなくなるし。後、アタッシュショットガン等のチャージ攻撃は勿論禁止にした。それだと武器の公平さが著しく崩れるし、偏るしね。
その結果は……サオリ達復興委員会が一番だったとだけ書いておこう。他の子達も頑張っていたしね。
後、これらの武器は学校の“備品”として扱い、生徒達の“私物”にはしないことにした。弾切れなしの銃火器なんて、パワーバランス崩壊もいいところだし。非常識を振り撒いている身でも、ちゃんと線引きしないといけないからな。存在自体が最悪の火種へとなりかねないし。
トリニティ総合学園、《ティーパーティ》所属の美園ミカは大いに混乱していた。彼女が調べた限りから導かれた予測では、アリウスはかなり酷い状況と思っていた。
だが、それは思わぬ形で形で覆される事になった。何故なら……
「その羽……トリニティ生だな?一体何が目的だ?」
ショットガンらしき変な造形の武器を携えたガスマスク集団――アリウス生に半ば取り押さえられた形になったからだ。組伏せられているわけではないが、銃口を向けられて何時でも撃たれる状況だ。
そもそも、一番の混乱の原因となったのは彼女達の持つショットガンだ。そのショットガン、どういう訳かリロード無しで撃ち続けられたのだ。おかげでショットガンの嵐に晒され、自身の武器が手元から離れた場所に転がる羽目となったのだから。
それに服装もおかしい。彼女達の服装は白を基調としたセーラー服……綺麗な学生服なのだ。風紀委員の腕章付きで。
武器といい制服といい、色々な事が予想と違っている現状に、ミカは混乱しながらも此処に来た目的を口にする。
「えっと……信じてもらえないかもしれないけど、私は貴女達……アリウスと和解したくて……」
和解。その言葉を聞いたアリウス生達は互いに顔を見合わせている。その場しのぎの嘘なのか、それとも本心なのか、どう判断したらいいのか迷っているようだ。
「……風紀委員長に判断を仰ごう」
誰かの呟きに全員が頷くと、一人がミカから少し離れた位置でトランシーバーを手に話し合う。
「それで連絡を取り合うんだ……スマホも持っていそうな気がしたんだけど……」
「アリウスでは連絡はスマホじゃなくて、トランシーバーが普通なんです。スマホはほら……電波がないと使えませんし、通信費用の問題もありますし……」
ミカの疑問にアリウス生の一人が律儀に説明する。もちろんスマホの存在も知っているし、何ならタブレットとパソコンも記録用として使っている。それでもトランシーバーを使っている理由は、アリウス自治区内で問題なく使える電波だからだ。
「ご、ゴメンね。考えれば当たり前な事なのに……」
「あ、そ、そんなに畏まらなくて大丈夫ですよ!アリウスの環境が変わったのは数年前ですし、困惑するのも当然ですし……」
ミカが本当に申し訳なさそうに謝る姿に、彼女――立木マイアはアワアワしながらも大丈夫だと口にする。事実、昔のアリウスと比較すれば、今のアリウスは本当に恵まれているからだ。
もちろん何でもあるわけではないし、手探りの部分も大きい。それでも、満足に食事も出来ているし、勉強も出来ている。生きることに精一杯だった当時ではこんな未来が来るとは予想できなかったし、制服も着れるとも思っていなかった。もちろんマイアだけでなく、全アリウス生がそう思っているだろう。
二人が話し合っている間にミカの対応が決まり、詳しい話を聞くために校舎へと連れていくことが決まった。風紀委員に囲まれながら、ミカはアリウスの校舎へと向かうのだが……
「鉄道まであるんだ……」
「は、はい。むしろ電車がないと移動するのに不便ですから……」
貨物目的……収穫した麦や米の効率の良い運搬手段が鉄道くらいしかなかっただけなのだが。線路の整備や点検等、やるべきことも多いが、あるとないとでは活動範囲が大きく変わるのだから。
何にせよ、電車で思いの外早く校舎へと着いたミカはマイアの案内で、生徒会の部屋へと向かう。
(……第一生徒会室?他にも生徒会室があるのかな?)
扉のプレートにある《第一生徒会》に、ミカは疑問に思いながらも室内へと案内される。中では五人の生徒が待ち構えていた。
「えっと……貴女がアリウスのトップ?」
「ん。一応私が生徒会長を務めてる」
ミカの質問に少しキリッとした表情で答える生徒会長――アツコは頷く。
「それで、貴女がアリウスと和解したくて来たのは本当なの?」
「うん。トリニティの決定じゃなく、私の独断だけどね」
アツコの質問に、ミカは正直に話す。トリニティの総意ではなく、ミカ個人の願望であることを。
「あくまで個人の判断か……トリニティに関しては少し調べたが、運営は《ティーパーティ》が仕切っているだろう?《ティーパーティ》が反対すれば、その時点で話がなくなるんじゃないか?」
「そこは大丈夫だよ。私、その《ティーパーティ》の一人だから」
サオリの疑問にミカは自身の立場をあっさりと答える。一生徒ではなく学園のトップの一人だったことに、サオリ達は思わず目を見開いて驚いてしまう。
「うぇええええええっ!?ミカさんってトリニティのトップだったんですか!?優雅に紅茶を飲む、上流階級のお嬢様だったんですか!?麦茶を出したのはまずかったんじゃないですか!?麦茶を出した罪で、鞭打ちとかが待っているんですか!?」
……書記のヒヨリはオーバーリアクションで恐れ戦いていたが。さすがに麦茶を出しただけで鞭打ちなんてしないだとう。たぶん。きっと。メイピー。
「いや、しないからね!?」
「でも、似たような事はありそう。陰湿な嫌がらせもあるみたいだし。根も葉もない噂で孤立させたり、吊し上げてからの制裁くらいは日常茶飯事かも」
「そんな事はない!……筈だよ」
「派閥同士の足の引っ張り合いが毎日だと、調べがあるのに?」
「陰湿な小競り合い、も付きますけどね。喧嘩ではなく虐めに近いですし」
「……改めて聞くが、本当に和解が可能なのか?」
「私も少し自信がなくなってきちゃったよ……」
ミカが持ち込んだアリウスとトリニティの和解。これがどのような未来に繋がるのか……誰にも分からない。原作では何だかんだで軟着陸できたが、本筋から大分解離しているから本当に不明なのだ。
その理由の一つは……
「見通せない夢が、過去が増えてきている……それに未来の方にも未知の影響が出始めている上、入り込めない夢も出てきている……この原因を、何としても知らなければ……!」
どこぞの狐が原因不明の、自身の能力が及ばない事態の対処に奔走したからであったと記載する。
ちなみにその原因たる人物は、変わらず夢の中で使えそうな品や知識を得ていたとは知るよしもなく。