夢の力で青春を手助け   作:ライダー志望

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注意!注意!
この先には『過ぎ去りし刻のオラトリオ編』のネタバレ要素が含まれています。ネタバレが嫌な方はブラウザバックを推奨いたします。


ポルタパシス※ネタバレ要素あり

¶月○日 曇り

 

食料問題が徐々に解決に向かい始めたアリウス自治区。自給自足が軌道に乗り始めているが、まだまだ引き締めて続けないといけない。

それに麦に米……穀物の栽培も順調だ。一部は育苗用に残すとしても、その為の準備を始めないといけない。

そう、稲刈り機の改造をしなければいけないのだ。この稲刈り機を電気のみで動かせるようにしなければ、手作業による重労働作業が待っているからな!

サオリ達は私のその宣言に不思議そうに首を傾げていたが、これもちゃんと説明しないと理由すら分からない。だから、今後の展望も交えて説明する事にした。

 

先ず、大前提として稲刈り機は勿論、照明や等には動かす為のエネルギーが要る。私達も食事というエネルギー補給がなければ体を動かすのが辛くなっていくように、活動にはエネルギーが必要となる。当然ながら、必要なエネルギーも違っている。電気ではお腹が膨れないように。

そしてこの稲刈り機を動かすエネルギー源はガソリン……閉鎖空間のアリウスには存在しない資源であり、外から持ち込む以外に入手する手段がない。そして、その為にはお金を払って購入しないといけない。外に対するお金は本当に限りがあるから、使わずに済む手を優先的に試すのが一番だからな。

それに電気なら太陽光発電に風力発電、排水路を利用した水力発電で一定量を確保できているしね。大量の蓄電池を夢の中で回収したし。

 

加えて作業が効率化すれば、時間のリソースも自然と少量となる。使えるリソースが増えれば、それだけ出来ることが増えていく。更にこうして学んでいけば出来ることが増えるし、楽しみも増えていく。勿論それに伴って苦労も増えるし、疲れることも多くなるだろう。それでも、希望に溢れる日々になるだろう。

そして、アリウス復興計画の一つのプランとして……大浴場の建設を考えていることも明かした。その一番の目的は衛生面……身体を洗う場所と、その消耗品の作製についても。

今のアリウスで身体を洗う方法は水洗いだけ。身体に染み付いた臭いは残るし、汚れだって十分に落とせない。それに、湯船に浸かるのは健康面からも重要だ。

 

大きさや場所は相談しながら決めていくことになるが、一日の疲れを洗い流す場があるとないとじゃ気の持ちようが変わってくる。それに清潔にした方が、今後においても有効だしね。

その為の道具も知識も、夢の中から入手し続けないとな。人生、死ぬまで勉強という言葉もあるし。

後、【トルネードカプセム】という、久々のオリジナルカプセムが出てきた。夢の中で変身したら、ゼッツのプラズマに近いフォームだった。

 

 

¶月△日 晴れ

 

稲刈り機の改造も、大浴場の建設も、やはり難しい。最初から上手くいくわけがないと分かっていたけど。

先ず、稲刈り機の改造は電気自動車のエンジンに取り換える形で試した結果、見事にショートした。バッテリーが爆発したし、燃えもした。一緒に作業していた彼女達も巻き込まれて、軽く咳き込んでいたし。

こういった危険な作業をミサキが率先してやっているから、生傷が絶えない。下手したら事故で大怪我を負いそうで不安だが、サオリ達が近くで見守っているからまだ大丈夫だと思う。サオリ達の苦言にソッポを向きながらも、ちゃんと耳を傾けてくれているし。

大浴場の建設は、排水の仕組みから作らないと駄目だし、そのまま放流したら大問題だ。そういった水はある程度処理してからでないと、悪影響が大きかった筈だし。素人のうろ覚え程度の知識だけど。

建物作り自体が始めての試みの上、既にある建造物の再利用でもない。本当に手探りだから、私も含めて誰もが頭を悩ませている。浴槽の作り方すら躓いてるし。

 

粗雑な作り方としては石材とセメントなんだが、石材はまだしもセメントをどうやって作ればいいんだろうな。今日の夢はセメントについて勉強しないと駄目だな。

セメントの材料自体はこのアリウスでも手に入れることが出来る筈。修復した校舎や廃墟化した建物等の存在から、建築に必要な材料は現地調達だった筈だ。弾圧から逃れる為にこの地に逃げて来た昔の彼女らが、そういった資材まで持ち込める余裕なんてなかっただろうし。

だから、サバイバル部と地図作製部に粘土を入手できる場所の捜索をお願いした。役割分担は大事だからね。畑の作業だってあるし。

 

 

¶月⇔日 曇り時々雨

 

雨が降るとどうしても外でやる作業は中断しないといけない。体調を崩したら、本当に元も子もないし。傘もカッパもないし。

だから、雨が降る日は勉強メイン。簡単な算数と理科くらいしかできないけど。読み書きは本と紙がないとさすがに難しいし。

そうやって勉強を教えていると、何人かからどうして勉強をしないといけないのかという質問が飛んできた。それに対して私はありきたりな言葉ではあるが、出来る事を増やす為だと答えた。

例えば計算を知らないと、一つ一つを数えることでしか数を把握できない。重量も重さの定義を知らなければ、どれだけ重いのかも理解できない。理解できないと、どれだけ苦労するか判断することが出来ない。

 

今出来ない読み書きもそう。文字を知らないと情報を共有できないし、中身も理解できない。文字に対して盲目……文盲状態だと、ただの落書きとしか認識できない。

私がそう説明して納得させたら、アツコから二人きりで話したいことがあると伝えられた。サオリ達にさえ秘密みたいだから、皆に断りを入れてから別室で話を聞いた。

詳しい事は書けないが、禁足地には本があり、ロイヤル・ブラッドのアツコなら“許可”を出せば利用できるかもしれないと。

明日は私とアツコ、念のために数人でそこへと向かう事にした。

 

 


 

 

「ここが【ポルタパシス】……」

「ああ。私も含めて、誰も疑問を抱かず、近づくことすら避けていた場所だ」

「えっと……姫さんが“許可”を出したら、本当に入っても大丈夫なんですか……?」

「うん。おそらく、がつくけど」

 

アリウスで生まれ、暮らしていたなら誰もが知る立ち入り禁止の禁足地……その事実を知らなかったのは速水恭介だけだ。退学処分で追い出したベアトリーチェが知っていたかは不明だが。

その禁足地――【ポルタパシス】と呼ばれる建物は異様な雰囲気が漂っている。空気も何処か重苦しい。

 

「それじゃあ、此処に宣言するよ。――私、《ロイヤル・ブラッド》の秤アツコは、その権限を以て、ポルタパシスへの立ち入りと、一部書物の持ち出しを許可する」

 

アツコが建物の入口前でそう告げるも、重苦しい空気は消えない。

 

「……念のため、バックルを装着して構わないか?」

 

恭介の問いかけに、異質さを肌で感じているアツコは無言で頷く。それが肯定だと正確に受け取った恭介はナイトインヴォーカーを胸へと装着する。

何時でも変身できる状態にし、恭介はアツコ達と共に建物の中へと足を踏み入れる。

 

「うぇええええ……さっきよりも空気が重く感じられますぅ。本当に大丈夫なんでしょうか?」

「……さぁ。でも、足を踏み入れる前から感じてたけど、変な違和感がある」

「ええ。私も近くを通ったことはありますが……ここまで空気が重かった事はなかったです。まるで、この地で何かが起きようとしているかのように……」

 

廊下を進む間も感じられる違和感。それはヒヨリにミサキ、スバルだけでなくその場にいる全員が感じていることだ。

そんな違和感を感じながらも、恭介達は奥を目指して進んでいく。目的はこの建物の中にある、勉学に使えそうな数冊の本の借り出しだ。

建物を道なりに進み、恭介達は目的の場所へと辿り着く。そこには何十冊の本が棚に納められており、端から見れば図書館のような場所だった。

 

「け、結構な数の本が並んでますね……」

「ああ。口伝で歴史が伝えられてきたアリウスにおいて、まさかこんな場所があったとは……」

「アツコはどこまで知っているんだ?」

「皆よりは知っているよ。戒律があるから教えられることは少ないけど」

 

昨日、恭介はアツコからある程度はこの場所、【ポルタパシス】について聞かされている。本当は誰にも教えてはいけない決まりではあるのだが、“先生”であれば少しだけなら大丈夫と判断して話してくれたのだ。

【ポルタパシス】はかつての支配者が立ち入り禁止とするまでは、アリウスの歴史を記録する書庫として使われていたとのこと。そんな歴史書しかなさそうな場所だが、一応は図書館でもあったから読み書きの教材として利用できる本程度ならある筈とアツコは言っていた。

 

だから、その支配者――《ロイヤル・ブラッド》の血筋であるアツコが許可を出せば、少しの間なら問題ないと結論付けてこの地に踏み込んだ。

ただ、何れが勉学に使える本か分からない為、一冊一冊中身を確認する必要がある。

アツコ達が使えそうな本を探す中、恭介も使えそうな本を探して適当なページから本を開く。そこに書かれていた内容に、恭介は目を奪われた。

 

――ゲヘナと共存できるという思想こそ、異端である。

――その思想を掲げ、あらゆる教派を弾圧し、取り込もうとする。

――そんなトリニティもまた、異端である。

――栄光にあると自称する者たちよ。全てを知ると驕る者たちよ。

――謙遜は初めから、お前たちの美徳ではなかった。

――全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。

 

(これって、ベアトリーチェが口にしていた言葉……?)

 

偶然の一致かと恭介は思ったが、それにしてはあまりにも似すぎている。もしかしたら、ベアトリーチェは此処に足を踏み入れ、これを読んでいたのではないのだろうか。

単純な洗脳教育ではない、アリウスの教えに基づいた理屈。いや、都合よくアリウスを利用できる言葉として引用したのだろう。本当に基づいた理屈なら、言い負かされていた筈だから。

予想外の可能性に恭介は複雑な気持ちになりがらも、念のためにその本を読み進めていく。

 

――目は見ても飽くことはなく、耳は聞いても満ち足りることはない。

――かつて起きたことは、また起きる。かつて成されたことは、これからもまた成される。

――日の下に、新しきものなど何一つとして無い。

――全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。

――この世は屍を喰らう者なり。喰われし者、すなわち死に至る。

――されど、真理は命を養う者なり。真理により育まれし者、死に至ることなし。

――言うなれば、天使とは、汝ら自身を象徴する存在に過ぎぬ。

 

(……これって知識に対する解釈か?それとも、思考についての考察?宗教だから、指針とか道筋について講釈を垂れるのは当たり前――)

 

その瞬間、強烈な目眩が恭介に襲い掛かった。同時に様々な光景がテレビの画面が切り替わるかのように流れ込んでくる。いや、光景だけでなく声も脳に直接響くかのように流れ始める。

 

――公会議の決議をここに宣言する。アリウスに、今より永劫の破門を言い渡す。聖なる魂の名において。

 

――道はなかった。故に我らは、傷だらけの手で進む先をこじ開けた。光は我らから去り、こだまする慟哭の中に身を沈めた。天の最も高きところから、地の最も低きところに至るまで――トリニティは、私たちを『存在しなかったこと』にしようとした。

 

――多くの者が消えた。消える必要のない者が消え、憎み合う必要のなかった者たちが、憎しみ合った。その果ては――

 

全ては虚しい。どこまで行こうとも、全ては虚しいものだ。

 

 

「これは……アリウスの過去の出来事?何で急にこんな……」

現在(いま)は、過去を礎にした建築物だ。すべての過去は、現在と無関係ではない。過去に――公会議で少しでも違う結論が下されていたのなら。「異なる解釈」などという理由で、アリウス(我々)が追放されていなかったのなら。現在……アリウス(我々)はどんな生き方をしていただろうか。アリウスは、考え続けねばならなかった』

 

まるで過去を悔いるかのような声。現在(いま)の苦労を押し付ける結果になり、形なきもしもの未来に馳せるかのような声。その声の主に、恭介は語りかける。

 

「あなたは一体……それに、何で私に声が……?」

アリウス(我々)は、我々(アリウス)に残された、アリウスを守る存在。そして――速水恭介(あなた)我々(審判者)に相応しい器だからだ』

 

声がそう答えた瞬間、恭介の目の前に黒い靄で全身を覆った人物が滲み出るように姿を現す。

 

速水恭介(あなた)は“外”から来た、異端たる者。だが、その行動はアリウス(我々)を守るもの。アリウスに生きる者を見捨てず、手を差し伸べた。そして、アリウスに害する者を廃する“力”もある』

 

人型の黒い靄はその場から動かず、恭介を見据えるように理由を語る。その言葉が紡がれる度に、胸部分に相当する黒い靄が徐々に大きくなっていく。

 

『然れど、権能(ちから)を授けるには異端。アリウス(我々)でありながら我々(アリウス)ではない。故に――』

 

胸の黒い靄が激しく揺れる。その揺れは徐々に形となり、色が変わり――恭介の装着しているナイトインヴォーカーバックルとなる。

否、ナイトインヴォーカーバックルだけでない。バックルに覆い被さるように、小型ドローンのような白い物体も一緒だ。細部こそ違うがその形状は――【デュアルメアカプセム】に瓜二つであった。

 

――インフィニティ!

 

『器として、拝借させてもらう。ゲヘナにトリニティ……アリウス(我々)を消し去ろうとした異端者に、報いを与える為に』

 

――オンユア、マーク……オ、オ、オンユア、マーク……

 

憎悪が籠った声と共に、黒い靄のナイトインヴォーカーから待機音声が流れていく。それは元となった【カタストロム】と非常に良く似ている。その音声を気に止めることなく、黒い靄は腕らしき部位でデュアルメアカプセムの変身ボタンを殴るように押し込む。

 

――エクスキューショナー、ナイトシステム――――インフィニティ!

 

黒と白の旋風が巻き上がり、黒靄は実体を得ていく。見た目こそナイトアリウスに似ているが、全身の色は銀ではなく黒。胸にはバックルだけでなく白い胸当てが追加されている。例えるなら、ノクスのミッドナイトシャドウフォームの簡易版だ。

明らかに普通ではない異常事態。痛烈に嫌な予感を感じる恭介は、自身のバックルに一番強力であろう青と緑が混じり合ったカプセム――【トルネードカプセム】をセットする。

 

――トルネード!

――オ!オ!オンユアマーク!オンユアマーク!!

 

「変身!」

 

ゼッツのプラズマカプセムの変身待機音と同じリズム感覚の待機音声を聞き流しながら、恭介は右手で払うようにカプセムを回す。

 

――エンフォース!タ、ツ、マ、キ、ナイトシステム!――――トルネード!

 

どこまでもプラズマフォームを連想させる音声で、銀色をメインに青と緑のラインが走った姿――《ナイトアリウス・タツマキトルネード》へと変身する。

黒と銀のナイトアリウス……原作のゼッツダークネスとの激突を彷彿とさせるように、二人のライダーも互いに弾かれたかのように激突した。

 

 

 




オリジナルカプセム
【デュアルメアカプセム・A】
見た目はゼッツのデュアルメアカプセムのリデコ。左右パーツが天使の羽を連想させる造形で、基本カラーは白。ちなみにAはアリウスの略称。
基本スペックは現時点では不明。ただし、元となったアイテムからしてヤバい変身アイテムであることは確定。

【トルネードカプセム】
青と緑のグラデーションが入ったオリジナルカプセム。絵柄は竜巻の中からライダーが現れるもの。
ゼッツのイナズマプラズマに相当するカプセムで、専用武器もある。
どこぞの不遇フォーム扱いにならない事を祈るばかりである。
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