夢の力で青春を手助け 作:ライダー志望
室内に火薬の臭いが漂い、発砲音が響き渡る。
狭い室内にも関わらず、爆風が吹き荒び、熱風が薙いでいく。
「ロケットランチャーを撃っているのに、この部屋に損傷らしい損傷が入らないな。棚の本も焦げ跡一つ付いていない」
「たぶん、特異な力が働いているんだと思う。原理は分からないけど」
アズサがミサキのロケットランチャーで周りの損害が全く出てないことに疑問を口にし、アツコが自身の推測で返す。そもそも、アツコが知る限り、ポルタパシスは百五十年は放置されていた。にも関わらず、本に損傷も損耗もなく綺麗な状態だった。“何か”が記録保管庫の状態を維持していた……そんな推察が浮かぶくらいには異常が起こり続けたのだから。
その発端――未だ黒い靄に覆われたまま倒れている恭介を背にして囲うように、サオリ達は目の前の天使達に銃撃を浴びせていく。銃撃が素通りしない点から見て、実体として顕現しているのは確かだ。これで素通りでもしていたら、完全に打つ手無しであった。
「で、でもでも!向こうの天使さん達にも効いてなさそうなんですよ!?これじゃ先に弾がなくなっちゃいますよぉ!!」
「確かに……このままだとじり貧ですね」
ミサキの泣き言にスバルも苦い表情で同意する。当たりはするが、天使達はやたら頑丈なのか倒れる気配がない。こうなるなら、備品も持ってくれば良かったと内心で悪態を突く。だが、こんな状況になることすら予想できなかったのだからどうしようもない。
「でも、コイツらを放置するのも駄目なんでしょ?」
「ああ。姫が言うには、七体の天使が一つになると世界が滅ぶらしいからな」
ロケットランチャーの残りの弾数を確認しながらのミサキの問い掛けに、既に説明を聞いたサオリが頷きながら言葉を返す。
今サオリ達の目の前にいる天使は六体。おそらく残りの一体は未だ倒れたままの恭介の中にいると見ていいだろう。
誰がどう見ても詰みに近い状況……その状況でも、サオリ達は天使達を近づかせまいと攻撃を続けていく。恭介を……アリウスを良き方向へと変えてくれた先生を守るために。
「うわぁああああああああん!もうおしまいです!先生やみんなと一緒に、私も消えちゃうんですぅ!!」
「縁起でもない事言うな!」
ミサキは思わずヒヨリに怒鳴ってしまうが、状況は最悪の一途に向かっている事が嫌でも理解できてしまう。ヒヨリのスナイパーライフルの弾が、尽きてしまったからだ。
ミサキもロケットランチャーの弾は残り二発。サオリ達もマガジンが残り一個。それに対して天使達は多少のダメージこそ入っているだろうが、健在。勝敗は火を見るより明らかだ。
抵抗虚しく……サオリは悔しげに唇を噛んだ――その直後、自分達のものではない銃声が響き渡った。
「「「「「「!?」」」」」」
その銃声にサオリ達は驚き、音がした方向へと顔を向ける。その先にいたのは、学校の備品である武器を構えた他のアリウス生達だった。
「先輩たち、大丈夫ですか!?」
「ヤバそうだったからつい撃っちゃいましたけど、撃っても大丈夫ですよね!?」
駆けつけた二人のアリウス生はサオリ達の安否を確認しながらも、【アタッシュショットガン】から銃撃を放つ。他のアリウス生達も【スカルマグナム】や【火縄大橙DJ銃】、【ウォーターメロンガトリング】でサオリ達を囲う天使達にこれでもかと言わんばかりに銃撃を浴びせていく。
本当に撃っていいのかという不安もあるが、それ以上に恭介とサオリ達が大事という思考が強いため、不安がりながらも天使達に容赦なく銃撃を浴びせていく。
「どうして此処に……?」
「ご、ごめんなさい!先生と先輩達の帰りが遅かったから……心配になって全員で来ちゃったんです!それに勝手に備品まで持って来てしまい、本当にごめんなさい!」
「……いえ、謝らなくて大丈夫です。むしろ、本当に助かりました」
アタッシュショットガンを手に涙目で此処に来た理由を謝罪混じりで告げるマイアに、スバルは苦笑したような表情で返す。
全員で禁足地に踏み入ったのは、それはそれで問題があるのだが、そのお陰で危機的状況から脱することが出来たのだ。それを棚に上げて怒るのは今回ばかりは筋違いだし、感謝こそすれ怒るなどあり得なかった。
「それと、皆さんがよく使う備品も持って来ました!」
サオリとスバルの同学年に位置する生徒の一人が、持ってきた備品の銃火器をサオリ達へと放り投げる。一つ、投げたら危ない武器が混じっていたが。
自分達が好んで使う備品まで持ってきていた事にサオリ達は苦笑しつつも、サオリ達は地面に転がった備品――弾切れの心配が一切ない銃火器を手に取る。
サオリは【ギーツバスターQB9】、アツコは【カイザブレイガン】、ミサキは【アタッシュアロー】、ヒヨリは【ガンガンハンド】、アズサは【ゼンリンシューター】、スバルは【マグナムシューター40X】を。
しれっと銃剣と弓が混ざっているが、射撃武器に入るから問題ない。問題ないと言ったらないのだ。
弾切れの心配がなくなったサオリ達は、他のアリウス生達と共に天使達に銃撃を浴びせていく。幾ら戒律によって優位に立てると言っても、
加えて、チャージ技までバカスカ撃ちまくるのだ。どんな存在でも堪ったものではない。
『ブーストチャージ!』
『バースト』
『フルチャージ!』
『ダイカイガン!』
『ヒッサツ!』
『チャージ!』
そこにサオリ達は“神秘”を注ぎ込む形で、武装必殺技を発動させる。【ガンガンハンド】と【ゼンリンシューター】は本来のプロセスを踏まないと使えないのだが、本人達曰く「念じたら出来た」との事。【カイザブレイガン】に至ってはブレードが展開できる始末である。
『ブーストタクティカルビクトリー!』
『カバンシュート!』
『オメガスパーク!』
『フルスロットル!』
『タクティカルシュート!』
故に、通常よりも高い火力をバカスカ撃ち込まれる事になる。他のアリウス生達もサオリ達同様に撃ち込むから、天使達が幾ら頑丈でも流石に耐えきれない。
科学反応?を起こしたライダー武器、実に恐るべし。
ナイトアリウス・インフィニティが恭介に一撃を加えようとした瞬間、不意に流れた電流によって腕が止まった。
『……何?』
突然走った電流にナイトアリウス・インフィニティは訝しむも、今度は全身に電流が走ったことで困惑していく。
『一体、何が……!?何故急に……!?』
恭介から手を離し、突然訪れた自身の不調に困惑しながら後退るナイトアリウス・インフィニティ。だが、その理由を直ぐに気付く。
『まさか……
口調が安定せず、怒り狂ったように叫ぶナイトアリウス・インフィニティ。身振り羽振りで怒りを露にする中、地面に転がっていた恭介が震えながら立ち上がっていく。
『……速水恭介。何故、そんな目で
「……違い、ますよね。それが、本当の望みではない筈です」
トリニティへの、ゲヘナへの制裁が本懐ではないと、恭介は身体を震わせながらも断言する。その言葉に、ナイトアリウス・インフィニティは逆上する。
『望みではない、だと?ふざけるな!
「でしたら、どうして“追放されていなかったら”という“もしも”を口にしたんですか?」
『――――』
恭介のその質問に、ナイトアリウス・インフィニティは言葉に詰まった。“追放されていなかった未来”……トリニティへの報いだけが“本懐”であるならば、口にする必要も考える必要もない。むしろ、報いを与えた後のビジョンを語るのが普通の筈だ。
「貴女達の“本懐”はアリウスの良き未来……アリウスの“幸せ”を願うからこそ、生まれたんじゃないんですか?勿論、怨みも憎しみもあるでしょうが……決してそれだけじゃない筈です」
『何を根拠に――』
「
恭介が確信を持って口にした言葉。その言葉は、決して無視してはならない――存在否定に繋がる言葉なのだから。
「彼女達は……アリウスを復興させようと、手を取り合って協力し合っています。明日に怯えていた彼女達は、どんな明日になるのかと期待を胸に宿しています」
『詭弁だ!
その問い掛けに、恭介は首を横に振る。恭介のその態度にますます意味が分からない。分からなくなる。
「過去があるからこそ
人は過去から学ぶもの。過去の人の経験が形となって残り、
「もし、私が口出ししてもいいのなら……
サオリ達が恭介の手助けで作ろうとするアリウスがどうなるのか、今はまだ分からない。再び意見の対立で内戦時代に戻るのか、隔絶した空間としてひっそりと在り続けるのか。
――“外”と繋がり、和解へと至るのか。【
『あ……ァァアアアアアアアアァァァァアアアアッ』
蓄積された想いが、アリウスの守護で纏まっていたものが、支えを失ったことで崩壊し、暴走していく。ナイトアリウス・インフィニティは再び黒い靄となり、我を忘れたように暴れていく。
その余波で恭介は吹き飛ばされ、地面を転がっていく。それでも恭介は立ち上がろうとして――目の前に落ちていたデュアルメアカプセム・Aに気が付く。
「…………」
恭介は無言のまま、デュアルメアカプセム・Aを掴み、立ち上がる。
「……手伝ってくれますか?」
掴んだことで、このカプセムはアリウスの“想い”が宿っていると理解した恭介はそう問い掛ける。その問い掛けに対し、デュアルメアカプセム・Aは頷くかのように光を明滅させる。
「ありがとうございます。ええと……」
恭介はお礼を告げようとして、口ごもる。このカプセムのことを何て呼べばいいのかと。見た目がデュアルメアカプセムそっくりだから、その通りに呼んでいいのかとも思ったが、丁度よく思い付いた名前がある。
「……ルーラー。【ルーラーメアカプセム】。それが貴女達の新しい名前です。嫌なら考え直しますが……」
デュアルメアカプセム・A――否、新たな名前を得たルーラーメアカプセムはその名前が気に入ったのか、強い光を放って細部を更に変化させる。
サイドパーツがより天使の翼を連想させる造形となり、十字架の意匠も加えられて。
同時にインフィニティの時と同じ絵柄である腕を広げた青暗い絵柄が、中央の外輪と呼べる部位が切り替わるかのように回転したことで、腕を抱き締めるように交差させた金色の絵柄へと変化する。
――リジェネイション!
その音声を聞き、恭介はルーラーメアカプセムを自身のナイトインヴォーカーへと装着する。
――リジェネイション!
――オンユアマーク♪♪♪オンユアマーク……
ゼッツの不遇フォーム【オルデルム】の変身待機音とよく似たリズムと音楽で、変身待機音が流れる。恭介は胸元で掲げるように右手を握り締めて告げる。
「変身!」
その言葉と共に、右拳でルーラーメアカプセムのスイッチを殴るようにして押し込む。その瞬間、白と黒の奔流が恭介を包み込む。
――レイジング!ナイトシステム!――――リジェネイション!
ナイトアリウス・インフィニティとは真逆のカラーリングに、胸当ての代わりに肩当てと手甲、脛当てが追加された姿――ナイトアリウス・リジェネイションとなった恭介は黒い靄――《審判者》の成れの果てを見据える。
「過去を呪いではなく祈りにする為に……
恭介は出し惜しみはしないと言わんばかりに、軽快な手付きで変身スイッチを三回押す。そのエネルギーを右足へと集中させ、《審判者》に向かって走り出す。
『ォオオオオオオオオオオ――ッ!!』
《審判者》は黒い靄を弾丸のように飛ばすも、恭介はスライディングして躱すとその勢いのまま、天高く飛び上がる。
『リジェネイション、リスタート!』
無数の光の粒子が右足に集中し、まるで流れ星と化したように恭介はライダーキックを放つ。《審判者》は黒い靄を火炎放射の如く放って迎撃を試みるも、勢いを殺すことすら出来ずそのまま蹴り抜かれてしまう。
貫通するように蹴り抜いた恭介はそのまま滑るように着地し、蹴り抜かれた《審判者》はその存在を保てなくなったのか、消えるように霧散していく。
「……どうか信じて見守ってほしい。彼女達が築き上げようとしている、これからのアリウスを」
その言葉が届いたかは分からない。だが、《審判者》はどこか安堵したかのような雰囲気を残して消えていった。
ナイトアリウス・リジェネイション
デュアルメアカプセム・A改めルーラーメアカプセムを使うことで変身できる強化フォーム。
ゼッツの【オルデルム】に相当するフォームであり、条件次第ではリカバリー以上の修復能力を持つ。理論上は存在の再定義も可能。
必殺技は【リジェネイション・リスタート】。