ルーシィが無意識に出た言葉が聞こえてきた。それは小さな声だった。
「ウルの氷は溶けて水になっちゃって、そして海へと流れていく。それでもウルは生きてるんだ。グレイはそう言ってた。あたしもそんな気がするな、海になったウルは二人の弟子をずっと見守るの。もうケンカしないでねって。」
エピローグ的な事を喋っていた。思い出として刻み込むように。
ここは、聞かなかったことにしよう。
俺が首を突っ込むところではないな。
そうして、気が緩んだ空気の中でナツが大きな声で話し出した。
「いあーー!!!おわったおわった!!!」
「あいさー!!」
「本当、一時はどうなるかと思ったよ、すごいよね、ウルさんって。」
「これでオレたちもS級クエスト達成だー!!!」
「やったー!!」
「もしかして、あたし達も2階へ行けるのかな!?」
「はは…。」
だいぶ気が緩んでるな。俺とエルザが何故ここにいるのか忘れているんじゃないか?横を見たら般若がいた。
「そうだ!!お仕置きが待ってたんだ!!!」
「その前にやることがあるだろう。悪魔にされた村人を救う事が今回の仕事の本当の目的ではないのか?S級クエストはまだ終わっていない。」
「だ…だって、デリオラは死んじゃったし、村の呪いだってこれで…。」
「いや、あの呪いとかいう現状はデリオラの影響ではない。」
そうなのか、俺もこれで村の呪いは解けたと思い込んでいた。
エルザの見解だと儀式によって発生した膨大な魔力が村の呪いの原因なのだとか。
知識のない俺は力になれないだろう。ならば黒子に徹していよう。
「んじゃ、とっとと治してやっかー!!!!」
「あいさー!!!」
「どうやってだよ…。あっ。」
グレイが振り向いた。離れた場所で休息しているリオンがいた。
「オレは知らんぞ。3年前、この島に来た時に村が存在することは知っていた。しかし、オレたちは村の人々には干渉しなかった。奴等から会いに来ることもなかったしな。」
「3年間一度もか?」
「そういえば、遺跡から毎晩のようにムーンドリップの光がおりていたはずだよね?なのにここを調査しなかったのはおかしな話だよね。」
「んー、すまない。知識の足りない俺の疑問だから見当違いなのかもしれないが、いいか?」
「そんなに遠慮しなくていい、気になるなら何でも聞いてくれ。」
「ありがとう、もし村人の呪いとやらの原因が儀式により発生した膨大な魔力の光ならば、なぜリオン達は何も影響がないんだ?」
「たしかに、オレもそれは疑問に思っていた。3年間、オレたちも同じ光を浴びていたのだからな。」
リオンが俺の疑問に対して同じことを思いついていたようだ。
見当違いな考えじゃなくてよかった。間違っていたら恥ずかしいからね。
「気をつけな、奴等は何かを隠している。まぁ…ここからはギルドの仕事だろう。」
これ以上はリオンも話す気はないと顔を背けてしまった。
エルザが村に向かおうとギルドメンバーに声をかけて歩き始めた。
「何、見てやがる。」
「お前もどっかのギルドに入れよ、仲間がいて、ライバルがいて、きっと新しい目標が見つかる。」
「フッ…くだらん、さっさと行け。」
村に近づくにつれて、不思議な現象が起こっていた。
それは、俺とエルザが来る前に破壊されたはずの村が元通り綺麗になっていたのだ。
村に到着して、村長と話すために息子の墓の元は向かった。
村長がいつ月を破壊するんだ、的な事を訴えてきたのだが、エルザがその前に確認したい事があるからと、村人達を広場に集めるよう指示を出した。
村人全員が集まって、エルザは全体を見るために歩きながら話し始めた。
「整理しておこう、君たちは紫の月が出てからそのような姿になってしまった。間違いないか?」
「ほがぁ、正確にはあの月が出ている間だけこのような姿に…。」
「話をまとめると、それは3年前から、と言うことになる。」
村人達は、それくらい経つかも?と、周りと確認しながらざわざわし始めた。
エルザは気にせず続けた。
「しかし…この島では、3年間毎日、ムーンドリップが行われていた。遺跡には一筋の光が毎日のように見えていたハズ。」
だがその瞬間、エルザは「きゃあ!?」と、悲鳴をあげながら落とし穴に落ちていった。
ハッピーは落とし穴も復活したことに驚き、ナツとグレイはエルザの反応にかわいいとドギマギして、ルーシィは私のせいじゃない!と言い訳を続けていた。
だがエルザは何事もなかったかのように登り、話を続けた。
メンタル強いな。
「つまり、この島で一番怪しい場所ではないか。なぜ調査しなかったのだ?」
「そ…それは、村の言い伝えであの遺跡には近づいてはならんと…。」
「でも、そんな事を言ってる場合じゃないよね、死人も出てるし、ギルドへの報酬額の高さからみても。」
「本当のことを話してくれないか?」
村人達はざわざわとしていたのだが、村長は声を出した。
「そ…それが、ワシらにもよく…わからんのです。正直…あの遺跡は何度も調査しようと思いました。しかし、近づかないのです。遺跡に向かって歩いても…気が付けば村の門、我々は遺跡に近づけないのです。」
近づけないと言う村長の言葉にグレイ、ルーシィ、ナツは三者三様の驚き方はしていた。たしかに、不思議な事だ。でもそれは本当のことなのか?俺には判断がつかない。エルザは何かわかってるようだし、黙ってよう。
「やはり、か。」
そう言って、先ほどまで着用していた鎧から、ごつい鎧に変わった。
「ナツ、ついてこい。これから月を破壊する。」
エルザ、ナツの2人は村の物見櫓に上がっていった。
「エルザ、月を壊すならあの遺跡の方がいいんじゃね?ここより高いし!」
「十分だ、それに遺跡へは村人は近づけんからな。」
どうやら、鎧は巨人の鎧で投擲力を上げる装備、槍は破邪の槍といい、闇を退けるものらしい。
めっちゃかっこいいな。俺も専用装備とか欲しいな。
それはさておき、月を壊す方法は、先ほどのエルザの装備の力と槍の石突きをナツが全力で殴り、ブーストして壊すみたいだ。
それでも、月まで届かないと思う。何をする気なのだろうと月を見た。そういえばこの島に来て初めて空を見上げた気がする。なんか違和感を感じる。何か圧迫感のような?空が低く感じる。そこで俺は何かに気づいた。何かはわからんが、上空に何かがあるんだろう、エルザはそれに気づいたからこそ、これで壊せると考えているようだ。
すごいな、おれも知識をつけるべきだろうか。
エルザが槍を構えて、ナツに声をかけ、ナツは呼びかけに応じて殴りつけて、エルザは投擲した。ミサイルのように高速で上空へと飛んでいき、空を割った。
どうやら上空に儀式によって発生した邪気の膜が様全体を覆っていたようだ。それが破壊されて、真の月が顔を出して、村の呪いは解けた。
村人達は光に包まれ、収まったが、姿が変わらなかった。
「元に、戻らねぇのか…?」
「いや、これで元通りなんだ。邪気の膜は彼等の姿ではなく、彼等の記憶を冒していたのだ。」
「記憶?」
「夜になると悪魔になってしまう、という間違った記憶だ。」
なるほど、彼等は元々悪魔だったというわけか。
エルザ以外の全員が驚き、村人達はまだ混乱している。
リオン達が無事なのは人間だから、この邪気の膜による記憶を冒すのは悪魔のみらしい。
背後から何者かが来た。声をかけてきてから、ナツ、グレイ、ルーシィが驚いていた。どうやら顔見知りのようだ。
しかも、その背後から来た者は村長の死んだはずの息子だったらしい。
なんやかんやで解決したみたいだ。
村長の息子が生きて戻ってきた。それからグレイ達の治療をして休息をして、完治した。
だが、グレイの顔に傷が残ったようだ。
それをルーシィが四つん這いで、胡座をかいてるグレイに顔を近づけて傷を見ていた。
この距離感、ルーシィの無防備さ。この2人は付き合っているのだろうか?
「キズなんてどこに増えようがかまわねぇんだ。目に見える方はな。」
「お、うまい事言うじゃん。」
「ルーシィは随分グレイと距離感が近いな。無防備だし。グレイもその距離感に違和感を感じていない。お前達は付き合っているんだな。いつからだ?」
「え!?付き合ってないわよ!?距離感とか無防備な部分とかは意識してなかっただけよ!!!」
「そうだ!!オレとルーシィは付き合ってないぞ!」
「そうなんだ、街で見かける恋人のような距離感だから勘違いしていたよ。だけど、2人して顔を赤らめて否定していると、意識し合ってるみたいで初心みたいだ。おもしろい2人だな。」
そんな雑談をしている時に、エルザと村長が話している。
内容は、報酬は受け取れない、ギルド側で正式に受理しているわけではないからだ。追加報酬の鍵だけを貰うらしい。
行きに頼った海賊船でみんなとマグノリアの港に帰ってきた。
鍵は黄道十二門の鍵だったらしい。帰り道みんなで話していた。
エルザがギルドに戻り次第、ナツ、ハッピー、グレイ、ルーシィの処分を決めるらしい。しかもアレとやらが罰らしい。ルーシィと俺は皆が怯えるアレが気になるところだ。
そんなこんなでギルドへ向かってるのだが、なにやら街が騒がしい。
ギルドが見えてきた。だが、明らかにおかしい。
謎の鉄柱が突き刺さって、破壊されたギルドが見えてきた。
なにがあったんだ?