奇械姫と騎士 作:水氷(ばっかり手に入る)
フォンテーヌにウサギ放出して、マリーに自分の無事を知らせる為に動き出すと決めてから、次の目的地である璃月へと向かった
はじめてのおつかいメモには、璃月では唯一璃月港または絶雲の間etcと複数の内どこかに放てと書いてある。他の国はひとつなのに、どうして璃月だけ複数なのかと聞いてみたら
「岩神が統治する璃月は3000年以上も歴史のある国で、最も古い国です。そこら中に神(岩神)関連のモノがありますので、正直場所とかはどこでもいいです」
との事だった。ならフォンテーヌから最も近い沈玉谷でもいいはずと思ったが、国境付近で放つのは出来るだけ止めて欲しいとの事だった
という感じで人がわんさかいるであろう璃月港ではなく、地元の人でもなかなか行かない絶雲の間で放つ事に決めた。そして無事に到着したはよかったんだが...問題に遭遇してしまった
「ま・さ・か。仙人でもなければ璃月人でもない人がここ、絶雲の間にいるなんてね〜♪ン〜、実に面白いわボーイ」
「...ハハッ」
ヤバイ奴だ...
喋り方が凄くキ...特徴的な人?と出会ってしまった。なんで人気を避ける為に来たらヤバそうな奴と会うんだ
「ボーイ!パッと見たところだと、璃月に来たのは最近ね?しかもこの国に来たのも初めてかしら?」
「え、あっはい」
「初めて来た国というにも関わらず、こんなところに来るなんてね〜。ここは地元の人間もそうそう立ち入ることはない。立ち入るのは一部の蛮勇な人間か、ただ自暴自棄となった憐れな人間なのよ」
「はぁ...」
「ボーイはどっちも違いそうね...何しにここへ?」
「俺にはとある恩人がいて、その人の手伝いの為に来たんだ。そういうあんたは?見るからに蛮勇でも自暴自棄でもなさそうだが?」
「ンフフ!恩人に恩を返す、仁義ある行為ねぇン。そしてワテシは、そうねぇ...とある仙人に会いに来た強面で細マッチョのオカマかしらァん」
「オカマの自覚あったのかよ」
「そりゃあそうヨン♪好きでやってるんだから...それに、オカマだからって甘く見てはダメよ?」
「あぁ、そんな感じがするな」
このオカマ...巫山戯てるように見えてその実、相当の手練れというのがパッと見でもわかる。これはヌヴィレットさんの気迫に─いや、どちらかというとアーガスの気迫と似ている...
「あんた、ただのオカマじゃないな」
「ヤァねぇ!ワテシは普通のオカマよ?でも...」
「でも?」
「ンフフ...おと─?」
「ん?」
俺が問い詰めても飄々とするオカマは何か言おうとした直前に突然黙り込んだ後、何故か戸惑ったかのように周囲を見渡し、目を見開き何かを思い出したような顔をした
「そうだったわ!いまワテシひとりだったわネ!」
「いや今更か!?」
「ンフフ、悪いわねボーイ!この先を言いたいのは山々なのだけれど、かんちゃんがいない時に言うのは調子が狂うのよォン。それに時間もないから、そろそろ行くわねェ〜...アン・ドゥ・トロワ!!」
「いや、かんちゃんって誰だよ...ってなんで回りながらだっていうのにそんな速いんだよ!?」
前振りもなく突然現れたかと思ったら、よく理解も出来ずに回り去ってしまった変質者─ではなくオカマ。彼?の去った方向は奇しくも俺の進行方向と同じだ。もしかしたら、また出会うかもしれない
「...出来れば会いたくないな」
初めて璃月に来てからしっかりと会話した最初の人物がオカマとか、数奇なもんだな...璃月港でマリーの目撃情報の聞き込みとかしようと思ってたけど、璃月にはあぁいうヤツばかりだったら聞き込み疲れそうだな
俺は謎の疲労感を負いながらも周囲の確認は怠らずに、何事もなく無事にウサギを放ったのだった
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「すみません。巨体を連れている少女を見かけませんでしたか?変わった子で、背中にゼンマイをつけてるんですけど」
「えぇっと...あ、確かに前に見かけましたよ」
「前って、どれ程ですか!」
「多分、十年ほど前だったでしょうか」
「あぁ...因みに、その後どこに行ったかとかは」
「すみません、そこまでは...私もすぐに仕事へ向かったものですから」
「まぁ、そうですよね」
ウサギ放出した後、マリーの目撃情報を探る聞き込みをする為に璃月港に来たものの、あまり芳しくはない。今まで声をかけた人の内殆どが見かけたと言ってくれたが、それはどれも随分前のことで現在はもちろん、見かけた彼女のその後の行動まではわからないようだった─まぁ赤の他人の行先を把握してる方がおかしいか。把握してたらストーカーと断定して処罰する
あ、あと朗報だ。俺が聞き込みをした人全員オカマじゃなかったから璃月はオカマが蔓延る国ではなかったみたいだ。よかったよかった、国中が強面で<あら、ごきげんよう>とか<今日もいい天気ねェん>とか話してたら即出国するところだった...
「─いやオカマはどうでもいいんだよ」
「はい?」
「あ、すみません。こっちの話です」
「オカマ...あっ」
不意に出た独り言を情報提供してくれた女性の前で言ってしまった。それを聞いた彼女は不思議そうな目で見ていたものの、なにか思い当たったのか喜色の声を混じらせながら俺に話しかけてきた
「もしかして紅雨さんに会われましたか?」
「こうう?それって強面の高身長細マッチョで黒髪で金のメッシュが入った人のことですか?」
「はい、それは間違いなく紅雨さんですね!私の同僚なんですよ!」
「同僚...因みに、あなたの職業は?」
「璃月七星の秘書を務めています」
「...」
璃月七星っていえば、確かこの国を統治する商業組織だったか?え、つまりあのオカマは国のトップ勢力の1人だということか?只者ではないとは思っていたが、まさかトップ勢力だったとは
「ふふっ、驚かれてるみたいですね」
「あ、すみません。同僚の人に対して」
「いえ、構いませんよ。今まで似たようなことが数え切れない程ありましたけど、本人も気にしていないと言っていますから」
「そうですか...数え切れない程あるのか」
「はい、新人さんが入ってくる度にですね」
「素であんな感じなんですか?」
「いいえ、人前じゃなければ─」
「んもう!人のプライベートを詮索しちゃダメよ♪」
「「っ!?」」
紅雨という人物について話していると突然横から苦笑を浮かべている人物が現れた。誰であろう?本人である
コイツさっき気配なかったのにいつの間にこんな近くにいたんだよ!神出鬼没すぎないか?
「お疲れ様です紅雨さん!」
「えぇお疲れ様かんちゃん。ワテシのプライベートをポンポンと話さないでねェ?恥ずかしいンだからァ」
「すみません、この方が紅雨さんと出会ったと言ったものですから、つい話し込むところでした」
「はぁ、まったく...気をつけてねェン?コホンンン!さて、また会ったわねボーイ!」
「意外と早い再会で驚いてるわ」
「あらその口調、ンフフ!ボーイもワテシのようになりたいのかしら?」
「誰がなるか!そんな意図でさっきの口調にしてねぇんだよ!!そのつもりならもっとオカマっぽく喋るようにやるっつーの!?」
「ンーそうなのねェ、残念。でも気が変わったらいつでも言ってちょうだい!」
「あぁ、メリットがあるならな」
「メリット?ンフフ、そんなの当然あるわ!」
「そのメリットとやらは?」
「ワテシを見て、人が恐れ戦くわ」
「それはデメリットだ」
誰が好き好んで他人が自分から避けるようになる立ち振る舞いをしないとならないんだよ
「ンフフ、安心して。半分冗談よ」
「半分事実かよ」
「仕方ないわよ、人は最強を前にした時、恐れ戦くものなのだからね。つまり─」
「─!」
そろそろ疲れてきたし言葉巧みにこの場から去ろうかなー、と思っていたら紅雨というオカマとかんちゃんと呼ばれた女性がアイコンタクトをしていた。最後言葉を途中で切ってたが、なにかあるのか?
「─男は度胸!」
「─お、女は愛嬌!」
「そして─
─オカマは最強!!」
「...」
「...ンフフ」
「...〜っ」
方や両手をハートの形にして可愛らしいポーズをして両目を瞑って恥ずかしがっている女性、方や両手をそれぞれ左右斜め上へ掲げ片足を曲げてキリッとした顔をしているオカマ...
「それじゃあ色々教えてくださりありがとうございました。ご縁があればまた会いましょう。では─」
「まぁ待ちなさいボーイ」
「...」
引き留められてしまった。正直、なるべく早めにここからというかこの人から離れたい。別に嫌いとかではないんだが苦手な部類ではあるんだよ。個性が強すぎて接しているだけでも疲れるから...この人と同僚の彼女も大変だろうなぁ
「話は聞かせてもらっていたわ。クロックワークのガールを探しているのよね?それならひとつ、とっておき♪の情報があるわよ」
「ナチュラルに盗聴してんじゃねぇ...とっておき?」
「イェス!ただし、絶雲の間で何をしていたのかを具体的に答えること。ノーなら、とっておきはなかったことにするわ」
ただで情報を渡す訳にはいかないってわけだな。まぁ当たり前か、にしてもどうするか...マリーの居場所がわかるかもしれない情報、おそらく嘘ではないだろう。トップ勢力が嘘をつくなんて信用問題にも繋がってくるしな。相手が身分を偽ってる可能性もない、何故なら今いる場所はこの国の重鎮が集まり会議とかする施設がある玉京台だ。一般開放されてはいるが警備はあるし、こんなところで身分を偽れば即お縄だろう
長々と思考したが、要は一番マリーの手かがりを手に入れられそうなチャンスって訳だ。ただアーガスの手伝い内容を教えてもいいものか...あ、そうだ
「わかった。絶雲の間で何をしたか教えよう」
「えぇ、お願いするわねェ」
「簡潔にいうと、ウサギを放った」
「ウサギですか?」
「いったい何のために?」
「世界にウサギの可愛さを広める為だ」
「「...?」」
「俺には恩人がいてな。その恩人に恩返しをする為に頼まれたのがウサギを放つことだった。俺は思った、その人はウサギ好きでその愛くるしさを広めようとしているのだと」
「えっと...?」
「なるほど、可愛いは正義ということね」
「紅雨さん!?」
「あぁ、俺も恩人に対して詮索をするのは気が引けて詳しくは知らないがおそらくそういうことだ」
「ンフフ、わかったわ。教えてもらったことだし、約束通りとっておき♪の情報を教えましょう」
「いいんでしょうか...」
「いいのよ♪それにそこまで重要性はないもの」
なんか、わざわざ問い詰めてくるんだから俺の事を相当怪しいんでるのだろうと思ったから、こんなことで誤魔化せるのかと思っていたんだが何とかなったらしい。まぁ嘘は言ってないさ、ウサギ好き云々も本当に思ってたし─半分ふざけているのもあったが
「じゃあこっちも簡潔に教えるわァン。ボーイの探してるガールは<ファデュイ>にいる可能性が高いわァ」
「ファデュイ?それってスネージナヤの組織で最近各国で見かける軍人みたいなやつか?」
「その通り、氷神が代替わりした後に設立された軍事・外交組織。ワテシたちは国を統治している関係上、外部の組織や情報については目を光らせているのよン。今はその組織に注視していてね、そんな中で<巨体を連れた少女>も情報に入ってきたの」
「ファデュイ、そこにマリーが...」
今までの聞き込みが霞むほど─というか霞んだ─有力情報に今すぐにでもその組織がある国に出向きたいところだが、まずはウサギの愛らしさを広めなくちゃならんし、その後に行くにも凄く距離があるしで焦れったいな...
「もしファデュイと関係を持つなら、1ヶ月後くらいにモンドへ行くことをオススメするわァン」
「モンド?」
「そのくらいの時期になると、風花祭っていうイベントが開催されるのよォ。なんでもここ数年、ファデュイの幹部であろうひとりが毎回その祭りに参加してるらしくてねェ」
「なるほどな...」
わざわざスネージナヤに行って色々手続きを踏んで組織と関わるより、その組織の幹部と関わりを持った方がなにかと手間が省けるって訳か。それに1ヶ月後っていうことで、その間に稲妻へ行ってウサギ放ってからモンドに行くこともできる。そしたら可愛いは正義作戦(違う)の手伝いも完遂できて時間を無駄に浪費することもない
「ベストタイミングってことか」
「そういうことよン♪」
「ありがとう、おかげで助かった!」
「いいのよ♪ワテシは約束を守っただけだもの」
よし、そうと決まれば稲妻に行ってウサギ放って、そして即モンドに入国だ!
これからの旅路予定を決めた俺は、オカマの<紅雨>と後半は黙って会話を聴いていた<かんちゃん>と呼ばれていた女性に別れを告げて港の方へ歩いていった
──AnotherView──
二人のもとから離れていくアスターを見送りつつ、かんちゃんと呼ばれた少女は、先程までニコニコとしていたのが幻だと思ってしまうほどにしかめっ面となっている紅雨に話しかける
「本当に教えてよかったんですか?」
「あぁ?そんなに重要性はないっつったろ。それにその少女がそこにいるかもしれないって教えただけで、組織の構成だとかは話してねぇよ。それに念の為に情報を教えていいか事前に相談してるしな」
「随分と用意周到ですね」
「まぁ、胡散臭いウサギの恩返しのためだ」
「胡散臭い...?」
「あぁ...受けた恩は早めに返さねぇとだからな。それはそうと<甘雨>。休憩はあとどんくらいあるんだ?」
「誰かさんが効率的に同僚や部下の人達に仕事を分配してくれたおかげでまだ数十分ありますよ」
「そうしねぇと何徹するかわかんねぇヤツがいるからな。効率的にやるに決まってんだろ」
──AnotherView2──
スネージナヤ ファデュイ本部
本部施設内の一室にて、2人の女性と部屋の隅に待機している巨体がいた。女性たちはお茶菓子が置かれたテーブルの傍に備え付けられた椅子に座って、優雅にお茶を嗜みながら世間話をしていた
「そういえば、そろそろ風花祭の時期ね」
「え?...あぁ、もうそんな時期なのね」
「今年も私は行ってくるけど、あなたは?」
「行かないわよ...そんな資格ないもの」
「...そう。好きにしなさい」
最後まで読んでいただきありがとうございます
オカマキャラってホントに扱いやすい。真面目にもバカにもそれほど違和感なくなれるから。因みにオカマの口調が変わってたのは誤りではないです。表向きはオカマで素は荒々しい感じのキャラです
さぁ、次はモンド!!稲妻?地文枠です