皇帝の妹   作:ベアグミの妖精

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もうちょっとで序盤の書きたいところが描き終わります。

もしかしたら明日も投稿するかもです。


別の道

春。

 

柔らかな風が、シンボリ家の庭を吹き抜ける。

 

「それじゃあ、行ってくる。」

 

制服姿のルドルフは、少しだけ大人びて見えた、

今日からトレセン学園中等部、夢への第一歩。

 

幼い頃から目指してきた舞台だった。

 

「お姉ちゃん!」

 

ゼータは駆け寄る。

 

「頑張ってね!」

 

ルドルフは優しく微笑み、妹の頭へ手を乗せた。

 

「ああ、ゼータも元気でいるんだぞ。」

「うん!」

 

ゼータは大きく頷く。

 

その笑顔を見て、ルドルフも安心したように笑った、父と母に見送られ、ルドルフは家をあとにする。

 

その背中が少しずつ小さくなっていく。

 

ゼータは見えなくなるまで、その背中を見つめ続けていた。

 

「……。」

 

胸の奥が少しだけ寂しかった。

 

でも、それ以上に。

 

(かっこいいな……。)

 

その姿が眩しくて仕方がなかった。

 

 

数週間後。

 

ルドルフから一通の手紙が届く。

『毎日が充実している。』

『全国から集まった仲間と走る日々は、本当に刺激的だ。』

『皆それぞれ違う強さを持っていて、一緒に学ぶことがとても楽しい。』

『私はもっと強くなりたい。』

『そして、皆と最高のレースをしたい。』

 

その文字を追いながら、ゼータは自然と笑みを浮かべる。

 

「……お姉ちゃんらしい。」

 

何度も読み返す、紙からは何も光らない。

 

けれど、その文字の一つひとつから、ルドルフの真っ直ぐな想いが伝わってくる気がした。

 

(楽しそう。)

 

その四文字だけが、胸に残った。

 

 

長期休暇で帰省したルドルフは、以前より少し日に焼けていた。

 

「お姉ちゃん!」

「ただいま。」

 

笑顔で飛びつくゼータを、ルドルフむまた笑顔で抱き留めた。

 

夕食の席では、自然とトレセンの話になる。

 

「毎日走ってるの?」

「トレセンってどんなところ?」

 

ルドルフは一つひとつ丁寧に答える。

 

「毎日ではないな、休むことも大切だからな。」

「朝は早いのが辛いな、トレーニングも厳しい。」

 

「でも。」

 

少しだけ笑った。

 

「みんな、本気だから。」

 

「一緒に走るだけで、自分も強くなれる気がする。」

 

その表情を見た瞬間。

 

ゼータの胸が熱くなる。

 

(そんな場所が、あるんだ。)

 

夢だけを追い掛ける場所、誰もが本気で走る場所、そこへ行ける姉が、誇らしかった。

 

そして、羨ましかった。

 

 

 

その夜。

 

ルドルフは持ち帰ったレース映像を家族と一緒に見る。

 

画面の中では、トレセンの生徒たちが懸命に走っていた。

 

ゼータの瞳には、いつものようにウマソウルが映る、一人一人違う輝き。

 

努力。

 

悔しさ。

 

憧れ。

 

夢。

 

どの光も、真っ直ぐだった。

 

(みんな……。)

 

(本気なんだ。)

 

その中に、ルドルフの光もある、誰よりも力強く、気高く、まっすぐ未来へ伸びている。

 

ゼータは思わず画面へ手を伸ばした。

 

(私も。)

 

その言葉が、喉まで出かかった。

 

だが、次の瞬間。

 

画面いっぱいに映る無数のウマソウルを見た。

その光景を見た瞬間、胸が締めつけられ頭を振る。

 

(違う。)

 

(私は。)

 

(私は、あの中へ入ってはいけない。)

 

手をゆっくり下ろす、画面から目を逸らす。

 

胸の奥では、まだ走りたいという想いが叫んでいる、それでも。

 

(私は、この子たちの夢を壊したくない。)

 

(私が……)

 

(ウマソウルを持たない私が、あの舞台に立ってはいけない。)

 

そう何度も心の中で繰り返す自分自身に言い聞かせるように。

 

 

ーーーー

 

ある日ゼータはあるレースを見ていた、ウマソウル燃えたぎり激しくぶつかり合いそれでもなお輝きは増していきやがてレースが終わる。

 

勝ったウマ娘が泣きながらトレーナーへ飛び込む。

 

「やりました!」

「おめでとう。」

 

トレーナーは笑いながら、その頭を優しく撫でる。

 

一方では、敗れたウマ娘が俯いている。

 

「ごめんなさい……。」

 

するとトレーナーは首を横に振る。

 

「謝るな。」

「今日のお前は、本当に格好良かった。」

「次は、一緒に勝とう。」

 

涙を流しながら頷くウマ娘。

 

その二人の間には、言葉では表せないほど強い絆があった。

 

ゼータは、その光景から目を離せない。

 

勝敗ではない、ウマソウルでもない。

そこにあったのは、互いを信じ、支え合う二人の姿だった。

 

「……素敵だ。」

 

自然と零れた言葉だった。

 

走ることへの憧れとは違う、誰かと一緒に夢を追いかけるその姿に、心から憧れた。

 

(私も……。)

 

その言葉が浮かぶしかし、すぐに首を横に振る。

 

(私は、あの子たちと競うべきじゃない。)

 

その日から、「トレーナー」という存在は、ゼータの中で少しずつ特別なものになっていく。

 

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