人生は詰んでいたと思っていましたが間違いでした。ダメ人間はチートスキルで無双します。   作:燈夜4649

74 / 74
おこちゃま

「鎧、鎧、ドラゴンメイル!」

 

 シグがニッコニコしてリンゴを齧っている。

 おっちゃんから鎧を作ってもらったのがよほど嬉しかったらしい。

 シグの体は鎧なんて必要ないぐらい防御力が高いのだけれど……ああ、可愛い服の一枚ぐらい王都で買ってやれば良かったな。

 そうか、そういうお年頃なんだ、シグは。

 女の子だものね!

 

「アレフ、アレフ! ありがとうな、アレフ!」

「シグちゃん、良かったね」

「なのだ!」

「シグルデちゃん、ご機嫌ね?」

「なのだー! アレフが色々とおっちゃんにデザインの話をしてくれた鎧なのだー!」

 

 ガラゴロガラゴロ、パカラパカラ。

 

「空気が湿って来たわね」

「雨ですかね?」

「さぁ、どうかしら。どちらにしても、この馬車にはホロがあるから大丈夫よ」

「それもそうですね」

「すーすー」

 

 お? お子ちゃまが騒ぎ疲れて寝てるぞ?

 さっきまではしゃいでいたのに。

 よっぽど鎧が嬉しかったんだな……。

 俺は毛布を取り、シグにそっとかけてやる。

 

「アレフ……アレフ……吾(われ)の騎士よ、何処にも行っちゃ嫌なのだ……むにゃむにゃ」

 

 ドキッとした。

 俺はシグに相当気に入られているらしい。

 

「あらあら。シグちゃん眠っちゃったね」

「そうだな。ジュリアも一休みしておくか?」

「私は良いよ。それよりも、今日一日無事に旅ができますように、女神ライア様にお祈りをね!」

「全くジュリア真面目だよな」

「ふふふ。でも、祈り疲れて私も眠っちゃうかもしれないから、その時は私にも毛布をお願いね!」

「え? ジュリア?」

「シグちゃんだけ特別扱いはずるいもの」

「はいはい。そういうことにしておくよ」

「あはは。アレフったら照れてる」

「照れてない!」

「ウソウソ。それじゃ、お願いね」

 

 そしてジュリアは目をつぶり、両手を合わせてお祈りのポーズに入る。

 全く。ジュリアまで何を言い出すんだか。

 

「アレフ君、閉めてくれない? 雨が降って来たわ」

 

 御者をしていたファラエルさんが荷台に飛び込んで来た。

 

「ねぇ、アレフ君」

 

 気づけばファラエルさんの銀髪が俺に触れている。

 近い、近い近い近い!

 

「あのねアレフ君。お姉さんからお願いがあるんだけど」

「な、何ですか?」

「お姉さんね、雷が怖いの」

「は?」

「ほら、ゴロゴロ言ってるでしょ? 遠くで」

 

 ピカッツ!

 

「きゃっ……ほら、光った」

 

 ズドーン、バリバリバリバリ……。

 ザー……。

 

 雷鳴の音を合図に、雨が降ってきた。

 

 柔らかな感触。

 気づけば俺はファラエルさんに抱きしめられていて。

 

「ね、お姉さん、これでも結構可愛いところあるでしょ?」

「あ、はい」

「お願い、ちょっとだけ、ちょっとの間だけこうしていてね?」

 

 ドキドキドキドキバクバクバクバク。

 

「ねぇアレフ君、緊張してる?」

「(コクコク)」

「参ったわね……お姉さん、誰に甘えれば良いのかしら? えーと、こんなときはジュリアちゃん?」

「はい!?」

 

 ジュリアが目を開ける。

 

「あー! ファラエルさん、それにアレフ! 何二人してそんなにくっついてるんですかー!」

 

 ピカッツ!

 

「きゃっ!?」

 

 ファラエルさんがまたも可愛い声。

 

「きゃー!」

 

 ファラエルさんに巻き込まれ、俺とともに抱きしめられたジュリアが悲鳴を上げる。

 

 ズドーン、バリバリバリバリ……。

 

「ジュリアちゃんは怖くないの!? あたしは怖いわ雷……」

「わ、私は平気です! で、ですからそんなに締め付けないで離してください! 私のアレフからも離れて!」

「ごめんなさい。あたしとした事が。ごめんなさいね、ジュリアちゃん」

「いえ」

 

 と、やっとファラエルさんから解放された。

 柔らかな肉の感触が離れてゆく。

 

「うーん、それにしてもシグルデちゃんはこんなときにも良く寝てるわね……」

 

 すごい雷が鳴り、外は大雨だと言うのに身動き一つしないシグ。

 

「すかー、すぴー、すかー、すぴー」

「うーん。シグルデちゃんにはリンゴさえ与えておけば大丈夫なのかしら」

「何変なこと言ってるんですファラエルさん!?」

「ほら、サンダードラゴンっているじゃない? あれ手なずけるにはやっぱりリンゴなのかしらって、一瞬あたし、閃いたのよ」

「はぁ?」

「やっぱりあたし、天才?」

「いや、バカでしょ」

「ちょっとアレフ!」

 

 ジュリアの大声で気づいた。おっと、心の声が漏れていたぞ!?

 

「ふーん。アレフ君は今までお姉さんの事をそんな目で見ていたわけね?」

「違う、違います! ファラエルさんは天才、なぜなら前人未到の氷の魔術を極めた偉大なる人!」

「そうね。でもそれは控えめな表現ね! なぜなら私は天才! 優秀! 偉大なる稀代の氷の魔術師なんですもの!!」

「「はぁ」」

 

 俺とジュリアの声がハモった。

 さすが幼馴染。

 

 ピカッツ!

 

「光った!?」とはファラエルさん。

 

 ドーン、バリバリバリバリ……。

 

「近い!?」とも、ファラエルさん。

「ぎゃぁあああああああああああ、光ったのだ地鳴りなのだ何事なのだアレフアレフ!?」

 

 あ、お子ちゃまが起きた。

 

「ふぁ、ファラエルは魔術師なのだろう! 外で何が起こっているのだ! 怖いのだー!!」

「雷よ、シグルデちゃん。シグルデちゃんも雷怖い?」

「ん、なんだ、雷か。悪いドラゴンの襲撃かと思ったのだ」

 

 ピカッツ!

 ドーン、バリバリバリバリ……。

 

 辺りが一瞬白くなる。

 

 悲鳴を上げたのは二人。

「きゃぁーーーーーー!」

「ぎゃぁああああああ!」

 

 ファラエルさんと、シグ。

 

「なんだ、シグも雷怖いのか」

「黙れアレフ! 吾は怖くなどない! 雷が怖いのはお子様なのだ! 吾は大人! 立派なレディ! だから怖くない! 怖がるファラエルはでかい乳と尻をしておるのにまだまだ子どもだな! はっはっ──」

 

 ピカッツ!

 ドーン、バリバリバリバリ……。

 

「ぎゃぁああああああ!」

 

 雷鳴と共に、シグがやっぱり悲鳴を上げた。

 

「やっぱり怖いんだ? だろ? シグ?」

「そんなことは無いのだ!! 怖がりはファラエルだけで充分だ!」

 

 いやいやシグ。充分怖がってるぞお前……。

 で、ファラエルさん。

 いい加減に雷に慣れたのかな?

 いつもの可愛らしい悲鳴を上げなかったぞ?

 

「あれ? ファラエルさん今度は大丈夫なんですか──って、白目剥いてるーーーーー!!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

あと1年で漫画家になる。新人賞30回落選のあたしを、消えかけの稲荷神が鍛える(作者:鳳 雛)(オリジナル:現代/コメディ)

「一ヶ月間、神社に参拝しなさい。▼そうしたら、あなたの夢は叶うわよ」▼25歳の少女漫画家志望・長鳴実門は、新人賞に30回落選。▼担当編集者も受賞歴もないまま、零細企業で働きながら漫画を描き続けていた。▼そんな彼女に助言をくれたのは、同僚であり、副業で占い師もしている年上の女性だった。▼半信半疑で毎晩、廃れた稲荷神社へ参拝する実門。▼そして一ヶ月目の満月の夜―…


総合評価:11/評価:-.--/連載:40話/更新日時:2026年10月23日(金) 11:04 小説情報

デスイズザヒーロー!~悪の組織の怪人候補だった俺は亡き師匠の力を継承して最凶ダークヒーローとして無双する〜(作者:蠱毒成長中)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

「何が正義で何が悪なのか。▼ ヒーローとヴィランの差とは何なのか。▼ その『呪い』を、男は血反吐と共に受け継いだ」▼東映特撮・昭和から初期平成ライダーの「生々しい改造人間の悲哀」と「泥臭い暴力」を▼徹底的な独自解釈で構築した、設定過多のオリジナル特撮アクション。▼悪の組織の「怪人候補」だった男が受け継いだのは、亡き師匠の呪われた『死神の力』。▼たとえこの手が…


総合評価:11/評価:-.--/連載:77話/更新日時:2026年10月22日(木) 18:00 小説情報

"せいすい"って、なあに? (作者:鯣 肴)(オリジナル:現代/恋愛)

聖水と聞いたとき、何を思い浮かべますか? ~近所の小学4年生の問い~▼夏休み最後の一週間。少年は焦っていた。夏休みの宿題は全部終えた筈だった。しかし、一つ残っていたのだ。それは自由研究。『手っ取り早く、でも手抜きじゃない感じで終わらせる方法ないかなあ?』▼そう考えた彼の脳裏に浮かんだのは、アンケート調査だった。ちょうどリビングのテレビで町の人にアンケートする…


総合評価:12/評価:-.--/完結:21話/更新日時:2026年07月18日(土) 21:08 小説情報

【合体ロボ】死んだはずの幼なじみが、隣の世界から俺の名前を呼んだ(作者:シラヌイ321)(オリジナル:SF/冒険・バトル)

「レン!」▼七年前、俺をかばって死んだ幼なじみが、隣の世界から名前を呼んだ。▼青い空の下で、アカリを失ったレン。▼赤い空の下で、レンを失ったアカリ。▼十歳で離ればなれになった二人は、互いのいない七年間を生きてきた。▼十七歳の夜。世界を隔てる亀裂から、届くはずのない声が漏れる。▼けれど、再会を確かめる間もなく、二つの街が消えようとしていた。▼青の機神アズールと…


総合評価:12/評価:-.--/連載:18話/更新日時:2026年10月23日(金) 10:00 小説情報

異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。(作者:帰途灯)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

▼異世界へ転移した高校生、早瀬アオイ。▼元の世界へ帰る方法も分からないまま冒険者となり、見知らぬ世界での生活を楽しんでいた。▼そんなある日、アオイは自分と同じく日本から転移し、三十年ものあいだ帰還方法を探し続けてきた一人の男と出会う。▼男から手紙と調査記録を託されたアオイは、異世界で気楽に生きるつもりだったはずが、自らも日本への帰還を目指すことを決意する。▼


総合評価:15/評価:-.--/連載:29話/更新日時:2026年08月11日(火) 09:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>