ラーハルトに渡した竜神王の素材で作られた装備を、とても羨ましそうな目で見ていたバランへと、深紅の巨竜と化した時に自然と剥がれ落ちた鱗や、脱皮した後の皮を用いて「竜神の胸当て」と「竜神の手甲」や「竜神の具足」を作成してプレゼントしておくと喜んでいたバラン。
装備したのか、俺以外の武器を、という感じにならないように、意思を持つ武器である「真魔剛竜剣」に配慮して、バランには防具だけを提供しておいたが、並みの防具よりも頑丈な竜神王素材の防具は、バランの防御力を格段に上げていたようだ。
竜神装備でバランの防御力を向上させてから数日後、いつものようにアルキード国内でチーズの布教を行っていた私に、勇者の家庭教師を名乗ったアバンという青い髪がカールした男性が「貴方がオージンさんですね」と話しかけてきた。
弟子だという少年を連れていたアバンから詳しく話を聞いてみると、どうやらアバンはロカの友人であったそうで、ロカの命の恩人である私に感謝したいと思い、直接お礼を言う為にアルキードまで来たようだ。
「親友であるロカを助けていただき、ありがとうございました」
そんなアバンの心からの感謝を受け取った私は、アバンにもチーズを布教してみることにして、ドラクエ8の各種チーズを幾つかアバンに食べてもらう。
「うん、とてもデリシャスな味わいのチーズさん達ですね。特にこの淡い緑色でハート型のチーズは、味わったことのない風味ですが、優しい味で美味しいですし、元気がモリモリ湧いてきますよ」
元気なったことを表すようにコミカルに力こぶを作るように腕を動かしたアバン。
「それは「ベホマラチーズ」だな。ベホマラー風味と呼ばれる風味がするチーズで、状態のいいカビと名水で作られた高級チーズだ」
アバンが特に気に入っていた「ベホマラチーズ」について説明しておくと、目を輝かせていたアバンは魔法のような効果を持つチーズには、興味があるみたいだ。
「ヒュンケルもどうですか?とっても美味しいですよ」
アバンは弟子であるヒュンケルという少年にもチーズを薦めていたが、当のヒュンケルはチーズには興味が無さそうであったな。
「オレはいいです、美味しいといってもたかがチーズでしょう」
ひねくれたような少年であったヒュンケルは、アバンに薦められたチーズから顔を背けて、そっぽを向いていた。
そんなヒュンケルの口内に迷わず「いやしのチーズ」を突っ込んで強引に食べさせてみた私を睨んできたヒュンケルだったが、吐き出したりはしないでちゃんと食べていたので、食べ物を粗末にしない子なのは確かである。
文句を言いたげな顔をしていたヒュンケルに「お味はどうかな」と聞いてみると、悔しそうに「美味しかった」と言ったヒュンケルは、美味しいものを素直に美味しいと認めることもできるらしい。
「ヒュンケルに食べさせたのは「いやしのチーズ」だな。身体の疲れが取れただろう」
「確かに疲労感は抜けてる。まるで魔法だ」
「いやしのチーズ」の効果に驚いていたヒュンケルを見ながら、頷いていたアバンが口を開く。
「食べると回復魔法と同じような効果があるチーズは、素晴らしいチーズですね」
「今は私だけにしか用意できないこのチーズを、どうにかこの世界でも再現できないか試してはいるんだが、あまり成果は出ていないな」
私がアルキードでチーズの布教を始めるようになってから、アルキードでも各種チーズの再現に挑戦した者達は沢山居たが、誰1人として再現に成功した者は居ない。
「なるほど、それならわたしもお手伝いしましょうか?これでも料理には自信がありますよ」
そう言っていたアバンにドラクエ8のチーズの再現を手伝ってもらうことになり、此方のチーズ袋の中に入っていた各種チーズから、それぞれのカビなどを採取して「あかいカビ」や「みず草のカビ」に「ごくじょうのカビ」を培養して、増やすことに成功したアバンは只者じゃなかった。
料理上手では済まない位には優秀だったアバンの全面的な協力もあって、チーズ作りには欠かせない「レンネットの粉」も作られていき、一気にチーズ作りが盛んになったアルキードという国。
私が知っているドラクエ8のチーズのレシピを、この世界に合わせてアバンが改良していった結果、各種チーズが持つ特殊な効果までは再現できなくとも、それぞれのチーズの味だけなら完全に再現することに成功したアバンは、間違いなく天才だった。
アバンのお蔭で、アルキード国内では様々なチーズが作られていき、それらのチーズが名産品となるようになったアルキードは、チーズの美味しい国とも呼ばれるようになっていたみたいだ。
ドラクエ8の美味しいチーズ各種がアルキードでも作られるようになったとするなら、アルキードでのチーズの布教は完了したということになるだろう。
しばらく滞在していたアルキードから立ち去る日が来たのかもしれないと考えて、顔馴染みとなったアルキード国王にもアルキードを出ると伝えた私は、テランに居るバランとソアラやラーハルトに会いに行くことに決めた。
数ヵ月の短い付き合いであったアバンとヒュンケルにも別れを告げて、テランに向かおうとしたんだが、旅をしているというアバンとヒュンケルもテランに向かう用事があったようなので、どうせなら「ルーラ」で一緒に行った方が早いかと判断し、私の「ルーラ」でアバンとヒュンケルも一緒に連れて移動することになる。
テランでバラン達が住まう一軒家に「ルーラ」で移動すると、バランがラーハルトに稽古をつけていたところで、剣と槍を交えていたバランとラーハルトを見ていたアバンとヒュンケルは、槍を使いこなすラーハルトを容易くあしらう強者であるバランの強さに驚いていたようだ。
その後、バランに剣で勝負を挑もうとしたヒュンケルに対し、ラーハルトが怒って、ヒュンケル対ラーハルトの少年対決が始まり、ラーハルトの圧勝で終わったが、ヒュンケルはとても悔しそうにしていたな。
現在はラーハルトの方が圧倒的にヒュンケルより強かったりしますが、竜神王な主人公と、竜の騎士バランに稽古をつけられているラーハルトは、かなり強くなってます