私が貯め込んでいた竜神王素材を用いて、凄腕の鍜冶師であったロン・ベルクが完成させた「星皇剣」という2振りの剣。
形状は長剣で、深紅の巨竜と化した私の角や牙をふんだんに使用して作られた2本の剣は、並みのドラゴン素材とは比べ物にならない強度を持つ竜神王素材により、竜の騎士の武器である「真魔剛竜剣」にも引けを取らない武器と化していた。
2振りの「星皇剣」を二刀流で構えたロン・ベルクを相手に、背の鞘から「真魔剛竜剣」を引き抜いたバランが上段に剣を構えて、ロン・ベルクの動きを待つ。
「それが神が作りし最強の剣「真魔剛竜剣」か、オリハルコンで作られているのは間違いないようだな」
「その通り、この「真魔剛竜剣」こそが、竜の騎士の力に耐えうるオリハルコンの剣だ」
「挑ませてもらうぞ。その「真魔剛竜剣」と竜の騎士にな!」
握る2刀を閃かせたロン・ベルクが放つ斬撃。
形式のある試合ではない為、始まりの合図等はないロン・ベルクとバランの手合わせは、ロン・ベルクからの初撃により始まったようだ。
流れるような2刀での連撃を1本の剣で防いだバランは、攻撃を受け止める瞬間にだけ竜の紋章の力を強めて、必要な時にだけ蛇口を捻って水を出すように竜闘気を高めており、バランが竜闘気を無駄遣いすることはない。
闘気を流しやすい竜神王素材を用いて自作した「星皇剣」に闘気を纏わせて振るうロン・ベルクは、2刀を巧みに操り、鋭利な「星皇剣」の刃を「真魔剛竜剣」の刀身へと打ち込み続けていた。
ロン・ベルクの攻撃は、竜闘気と「真魔剛竜剣」の強度を確かめるようなもので、バランの防御は、ロン・ベルクの剣士としての腕前を確認するかのようであったが、両者共にまだまだ本気ではない。
「準備運動は終わりでいいか?」
2刀を構え直すロン・ベルクの問いかけに、剣を中段に構えたバランが口を開く。
「そうだな、そろそろ本格的に動くとしよう」
バランがそう言い終わると同時に、再び激突した「真魔剛竜剣」と2振りの「星皇剣」は、幾度も激烈にぶつかり合い、激しい金属音を連続で鳴らした。
左右の腕に握るそれぞれの剣を、まるで別々の生き物であるかのように動かし、縦横無尽な2刀流を見せるロン・ベルクは、まさしく剣の達人である。
大瀑布の如く流れ落ちる斬撃の滝を、1本の剣で迎え撃つバランの身体には、竜神の装備で覆われていない部位に浅い斬り傷が幾つか刻まれていたりもしたようだ。
竜闘気の防御を突破する攻撃力を持つロン・ベルクの「星皇剣」には、集束された闘気が纏わせてあり、竜の騎士の竜闘気すらも斬り裂く、凄まじい斬撃を放てる剣士であったロン・ベルク。
竜の騎士に代々受け継がれてきた戦いの記憶というものは、戦闘を有利に進めることを可能とするそうだが、そんな竜の騎士のバランが明らかに圧される程に凄腕の剣士であるロン・ベルクは、剣技でバランを上回っていた。
単純な剣の勝負では分が悪いと判断したバランは、後方に跳躍してロン・ベルクから一旦距離を取り、最上段に「真魔剛竜剣」を構えて呪文を唱える。
「ギガデイン!」
天高く構えられた「真魔剛竜剣」へと降り注いだ強力な雷撃。
この世界では竜の騎士だけが使用を可能とする魔法剣。
「ギガデイン」の雷を纏わせた魔法剣を構えたバランは「竜の騎士最強の魔法剣に挑む気はあるか?」とロン・ベルクへと問いかけた。
「挑ませてもらおう星皇剣の奥義でな!」
問いに答えたロン・ベルクが構える2刀に集約されていく凄まじい闘気。
恐らくは次の両者の攻撃で、決着となる今回の戦い。
「ギガデイン」の魔法剣を構えたまま突撃するバランを、立ち止まったまま迎え撃つロン・ベルク。
「ギガブレイク!」
強力な雷撃の魔法剣と竜闘気を一気に解放する竜の騎士の必殺剣。
それに対し、ロン・ベルクが繰り出したのは「星皇剣」によって描く十字。
「星皇十字剣!」
集約された凄まじい闘気を纏う「星皇剣」で瞬時に十字を描くように2刀を動かし、剣を振るった対象を十字に斬り裂く奥義。
竜の騎士の必殺剣、魔族の剣豪の奥義、どちらも並み外れた威力を持つ必殺の技であったのは確かだ。
両者の必殺が真正面からぶつかり合った結果、奥義によってバランの「真魔剛竜剣」は見事に折れてバランの身体に深々と刻まれた十字の傷、ロン・ベルクの方は「星皇剣」は無事でも「ギガブレイク」のダメージでロン・ベルク本人が倒れていた。
両者痛み分けで終わったバランとロン・ベルクの手合わせは、予想通り負傷者が2名となったな。
とりあえずひたすらバランとロン・ベルクに「祝福の杖」を幾度も使用して、治療を施しておいたが、怪我した本人達だけは満足気だ。
どうやら全力を出し切ったことで、気持ちがスッキリしていたらしい。
ロン・ベルクに至っては「真魔剛竜剣を折ったぞ!」と喜んでいた。
まあ、本人達が納得しているのなら、私からは特に言うことはないが、バランはソアラに怒られておくんだな。
バランはソアラに物凄く怒られました