18回)の簡単なまとめ
・魔女のウィルネリアにクーリは襲われましたが、隙を見て返り討ちにしベッドで分からせました
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「ネリアさんは腰を痛めたそうで、今日は休むそうだ」
翌日。午前8時頃。
喫茶『ルクリエ』のテラス席にて。燦々と降り注ぐ6月の陽気を全身に浴びる俺は、支給されたスマホを使って灯香に業務連絡を入れていた。
「そうなのですか……心配ですね?」
「あぁ、体は大事にしないとだな」
神妙に頷く。楽しくて結局10回戦までやってしまったが、最高の時間だったな。終始反抗的だったネリアさんも最後には素直にさせる事が出来たし、金玉も空っぽだ。
下半身が凄く軽い。良い朝だなと穏やかにコーヒーを一口飲み込む。今の俺なら、大概の事は平然と受け入れる事が出来るだろうな?
「親分親分! 昨日は最高の戦いだったな! またやろう!!」
だが、この褐色馬鹿狼は例外だ。
クソでかい声。タンクトップとホットパンツという露出だらけの格好。背後からやってきたカルラが俺の肩へと野生的に飛び乗り、首筋にガシリと小麦色の足を絡ませてきやがった。
ストレスで脳みそがクラっとする感覚。
というか、なんでコイツはこんなに元気なんだ?? 顔は狙わなかったが、それでも骨の2〜3本は砕いたつもりなんだが…? 1ヶ月は病院に叩き込まれて欲しいと、心の底から神に祈ってしまう。
「というか、親分ってなんだよ…?」
「強い奴好き! クーリはカルラに勝ったから親分だ!」
「灯香、通訳を頼む」
「仲良くしましょうとの事です」
心からお断りしたい。見目は良いしそこそこ乳もあるが、寝技で締め殺してきそうな女はNGだ。
「つーか、なんでここに居る?」
「ん? それはトーカに呼ばれたカラ!!」
「はい、やはり仲直りは必要かと思いまして」
「あんなに派手に殴り合ったのに無理じゃないか…?」
「ヤハハっ、ノーサイド! ノーサイドだぞクーリ!」
満面の笑みで頭をワシャワシャされてしまった。なんなんだコイツは…? いきなり殴ってきた分際で、一体どういう倫理観してるんだよ…?
理解不能である。人妖ってここまで無茶苦茶なのかと、種族全体を疑うレベルだ。人の肩に勝手に乗っかってるが、地面に叩き落としてやろうかなと本気で考えてしまう。
普通に今でも、灯香から貰った着流しを破ったのは許してないからな??
「慣れなれしくするんじゃない」
「なら牛丼行こうよっ! クーリの奢りで!」
「なにが"なら"なんだ? というか何故、奢らなきゃならない?」
「子分の飯の面倒は親分が見る! 常識ダ!!」
「そんな常識知らないが…? というか仕事が」
「仕事なら、取り敢えずは大丈夫ですよ? 何かあれば連絡しますし、同じ部署内、親交を深めるのも大切でしょう?」
予想以上に仲が良さそうで安心しました、と。満足気に言う電話越しの灯香。
「では、少し所用がありますので」
「まってく」
ブツリと電話を切られ、俺は軽く絶望する。
「近くに行きつけあるから! ほらっ、早く早く!」
もはや抵抗する気も無くなった俺は、満面の笑みを浮かべる凶暴人妖少女に引きずられ、強制的に牛丼を奢るハメになった。
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「行きつけってお前、タダのチェーンじゃないか…?」
「何処にもあって何処でも美味い! 最高だ!!」
「そもそも食にあんま興味が無いんだよ……」
牛脂の匂いが染みついた店内。安っぽいスチール椅子に腰掛けながら、隣でキング牛丼を搔っ食らうアホに苦言を呈す。
バクバク、バクバクと。朝っぱらとは思えない食欲で丼をかっ込む様は、まるで大型犬の食事のようだ。口調も態度も男勝りで粗雑そのものだし、俺は散々言いたかった事を口に出す。
「もう少し女らしく出来ないのか…? 見た目は、まぁ、割と可愛いんだし、ちゃんとすればそれなりになるだろ?」
「んあ? トーカみたいなこと言うナ?」
「ほっぺに米粒付いてんぞ?」
「ん!」
取れってか??
無言で顔を突き出されたので、卓上のティッシュで仕方なく取ってやる。手間のかかる奴め…。
「おめかししても強くならない! だからやらない!」
「強くなる事がそんなに大切かよ?」
「強い奴偉い、それが村の掟!」
「人狼の村のか?」
「そう! そこでカルラは1番強かっタ!」
「なら、1番偉かった奴がなんでここに居る?」
「村の長に武者修行勧められた! 世界一強くなるまで帰って来なくて良いって!!」
それ、体良く追い出されてないか??
そうは思ったが言葉を飲み込む。
要は、そういう世界の住人なのだ。幸せそうに牛丼を頬張り褐色のほっぺたをパンパンにするカルラを見て、俺はそう理解する。まぁいい。アホの子ならアホの子である意味やりやすいな。
「だが、こんな所で油を売ってていいのか?」
味噌汁を啜りつつ、そう話題を変えた。
「油?? でも、何かやる事あるのカ?」
「調査とか色々あるだろ? というか今更だがウチの部署は何を主業務にしてるんだ?」
「例の神器探し! あとはヤバそうな霊的事件があったら現場に首突っ込んで、その過程で神器を探してるらしい!」
「そんな感じで探せるのかよ?」
聞いた感じでは、行き当たりばったりにしか思えない。
「知らない! カルラは暴力担当だから!」
「おいおい」
ニパーと屈託なく言われてしまった。
まぁ、頭脳労働が出来そうには見えないが。
「でも、悪くない探し方だと思う! だってここ最近のヤバい霊的事件が起こったときには、結構な確率で例の神器を盗んだと思われるグループの関与が見られるから!」
ほらこれ!と、カルラは何やら『小瓶に入れられた黒い欠片』を見せつけてきた。なんだこれは。そう聞くと『天叢雲剣の破片ダ!』と、端的に答えられる。
ふむ、そんな物があるのか。
マジマジと見やるが、黒曜石の欠片のようにしか見えず、まぁ、正直良くわからんな。
「とにかく、これがそのヤバい霊的事件の現場にあったんだな?」
「そういうこと! トーカ曰く、八岐大蛇の魂が持つ莫大なエネルギーを悪用している。らしい!」
悪用、悪用か…。
魂を利用するとなると相当高度な霊的技術を持たないと不可能だな。まさか、盗人グループに五代宗家の連中が絡んでるんじゃないかと訝しむ。
天皇家である櫛比は流石にないだろうが、他の四家は力の為ならそれくらいは平然とやりそうなもんだ。
「あげるコレ! 近くに他の欠片があったら、魂同士が引かれあって反応するらしいぞ!」
「いいのか?」
「うん! カルラ捜査嫌いだし!」
明け透けな奴め。まぁ貰って損するものでも無いので、有り難く頂戴しておくが。
「聞いたか知らないけど、コレをウィル姉も持ってたらしイ」
「ウィル姉?」
「ウィルネリア、魔女の人間。で、ウィル姉もその怪しい組織に唆されて、欠片貰って、死者蘇生をしようとしたってカルラ聞いタ!」
それは、知らなかった。
事故で死んだ夫と息子を蘇らせようとして失敗したとは聞いていたが、そうだったのか。ネリアさんの顔を思い出し少し考え込めば、ニッと笑ったカルラが楽し気に口を開いた。
「天叢雲剣を悪用する奴ら、そっからどんなバケモンが飛び出してくるか楽しみだ! その為にカルラは、あそこで働いてるんだ!」
「戦い以外に趣味はないのかよ?」
「無い! そういう親分はどうなんだっ?」
「俺は、女とヤル事だな」
「ヤハハ! クーリも中々にカブいてる! なんかカルラ達、似た者同士じゃないカ!?」
バシバシと嬉しげに背中を叩かれた。
俺とお前が似てる? そんな訳ないだろ、俺の方が遥かに知性や品があると、そう反射的に言葉を返しそうになったが……確かに、まぁ、否定もしきれない。
俺もコイツも、普通じゃないのだ。
一般の社会には馴染めない逸れ者。倫理に欠け、自己中心的で、自分の関心事以外に無頓着。そう考えれば、まぁ。
「おぉ…? 急にどうしたんダ親分…?」
「歩み寄り、というやつだ」
社会の逸れ者としてのよしみで、俺の牛丼に付けられていた卵をくれてやった。サービスで紅生姜も乗せてやろう。
「なんだなんダ急に?? 手合わせしたいのか??」
「それはマジで勘弁してくれ、お前みたいなガチンコタイプが一番苦手なんだよ」
「の割には動き良かった! 本当に!!」
「昔取った杵柄だよ。あれくらいは動けないと……」
「死んでた??」
「ま、そういう事だな」
「ふふ、随分と面白い場所に居たんだナ?」
「毛程も面白く無かったぞ、マジで」
無邪気なもんだと、呆れ半分にそう返す。
子供みたいなヤツだ。
乱暴だし女に思えないくらい粗雑だが、言葉の裏を考えなくていいのは楽だな。
「ま、とにかくだ」
牛丼を食べ切って言葉を切る。
「要は、ヤバそうな霊的事件に首を突っ込む。その犯人から欠片が出たら尋問でも何でもする。その窃盗グループの場所が割れたら突っ込んで逮捕して天叢雲剣を回収する。それだけの話だな?」
そう確認を取る。
すると、そういう事ダ!との返事。
灯香から呼び出されるまでは自由行動で良いらしく、本当に国の部署かよ?とは思うが……ま、ユルい分には文句はないな。自由にしていいなら一度ネリアさんの顔を見に行こうと、会計を持って席を立つ。
「ん? クーリもうごちそうさまか?」
「これで十分だ。じゃあ、俺はもう行くぞ」
「分かっタ! また手合わせしようナ!」
「はははっ」
笑って誤魔化す。明言はしないでおこう。そのまま牛丼屋を出てタクシーを拾った。