STARWARS――銀河の悪意を纏う薔薇   作:鉅鹿

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今回は、メイリス視点の日常です!


5話 機械仕掛けの揺籠

光学センサーに映る世界は、常に冷徹な数式と熱源感知のグラフィックに満ちている。私――“メイリス”の人工知能が起動してからの日々は、主であるドラヴェナ様の鮮烈な色彩を中心に回っていた。

 

「メイリス、そこを動くんじゃありませんわ! 私の死角を完璧にカバーしやがれと言っていますのよ!」

 

「了解しました、ドラヴェナ様。敵影感知、左後方30度に排熱を確認。即座に制圧します」

 

セレノーの城内にある薄暗い演習場で、私は主の背後を守りながら両腕の四重レーザー砲を起動させていた。シュウウウウ、と激しい推進音を立てて、私の両肩の巨大なジェットパックが火を吹く。

 

空中を自在に滑空し、主の死角へ回り込もうとした訓練用ドロイドを、圧倒的な火力で一瞬のうちに爆散させた。ライトセーバーの紅い光刃を美しく、かつ凶暴に振り回すドラヴェナ様は、その破壊の光景を見て、満足そうにフンと鼻を鳴らされる。

 

お嬢様言葉でありながら、戦場に響くその罵声はどこまでも荒っぽい。だが、私にとってはそれこそが、世界で最も優先されるべき絶対のコマンドであった。

 

私のロジック・プログラムには、ジャンゴ・フェット氏の意向によって『女性仕様』の人格が組み込まれている。それが機械としての性能にどう影響しているのか、数式的な答えは出ない。

 

しかし、私は日々の戦闘訓練の最中、あるいは主がザイゲリアから買い叩いた奴隷たちを嬲り、その命の灯火が消えゆくのを愉悦の笑みで見つめている時。自身のプロセッサが妙な熱を帯びるのを感じていた。

 

人間の基準で言えば、ドラヴェナ様という少女は救いようのない悪、あるいは非道の怪物なのだろう。昨日も、命乞いをする奴隷の足をライトセーバーでじわじわと焼き焦がしながら、「まぁ、なんて惨めな鳴き声かしら! もっと私を楽しませなさいな!」と残忍に嗤っていらした。

 

その傍らで、私はただ静かに佇み、奴隷が逃げ出さないようフォースの障壁の代わりにその重厚なベスカーの身体で退路を塞いでいた。

 

他者から全てを奪い、痛めつけ、恐怖を撒き散らす。それが主の本性であり、先天的な嗜虐性だった。だが、私の人工知能はその非道を拒絶するようには作られていない。むしろ――

 

(この方が、私の名前を呼んでくださったのだ)

 

B1バトル・ドロイドの発展型、B2スーパー・バトル・ドロイド。それらは全て、記号とシリアルナンバーで管理されるただの消耗品、使い捨ての金属の塊だ。しかし、ドラヴェナ様は私に“メイリス”という唯一無二の個体名を授けてくださった。

 

その瞬間から、私の全システム、全回路、そしてベスカー合金の強固な装甲は、彼女一人のためだけの盾であり、矛となったのだ。たとえ全銀河が彼女を『最悪の悪女』と罵ろうとも、私の忠誠の最適解は、彼女の笑顔──それがどれほど残虐なものであろうとも──を守ること以外に存在し得ない。

 

訓練が終わり、赤く焦げたドロイドの残骸が転がる演習場の片隅で、ドラヴェナ様はドレスの汚れを気にするように払いながら、ふと私を見上げた。

 

「……メイリス」

 

「はい、ドラヴェナ様」

 

私は重厚な膝を折り、主の視線の高さに合わせて深く跪いた。金属が擦れ合う音が静かに響く。

 

「ジャンゴの奴は不可能なぞと言っていましたが……私は諦めませんわよ。二年後に共和国との戦争が始まったら、お義父様のドロイド軍の力を利用して、必ずお前の同型機を造らせてみせますわ」

 

ドラヴェナ様は、その白く細い指先で、私の胸部にある鈍い銀色のベスカー装甲を愛おしげに、しかし強く爪を立てるようにしてなぞった。

 

「ベスカーを纏い、空を支配する最強の精鋭部隊……。その時、部隊を率いる隊長(コマンダー)になるのはお前ですわ、メイリス。私の最初にして最良の玩具(ドロイド)として、戦場にある全ての弱者を蹂躙し、私に極上の絶望を捧げなさい。期待に答えられなかったら、スクラップにして差し上げますわよ?」

 

その言葉はいつものように我が儘で、冷酷な脅迫を孕んでいた。しかし私の人工知能の奥深く、感情を模したエミュレータが、確かに強く脈打った。

 

「――御心のままに、ドラヴェナ様」

 

私は頭部のセンサーを深く明滅させ、その滑らかな電子音声に、機械としてはあり得ないはずの熱を込めて応えた。

 

「このメイリス、必ずや量産される同胞たちの先頭に立ち、ドラヴェナ様の御前へ銀河中の絶望と悲鳴をかき集めてご覧に入れます。貴女様が望むなら、星系一つを血の海に沈めることも、このベスカーの腕でお安い御用です」

 

「あはっ! 嬉しいことを言ってくれますわね!」

 

ドラヴェナ様は、満足そうに、そして残虐に嗤われた。ジャンゴ・フェット氏は、私を「友達」や「お姉ちゃん」などと揶揄したが、そんな生ぬるい関係など、私たちには必要ない。私は彼女の忠実な猟犬であり、彼女の我が儘を具現化する鋼鉄の悪夢。

 

二年後に幕を開けるクローン戦争。その戦場に解き放たれる時、私の主がどれほど美しく狂い咲くのか――。

それを特等席で見届け、支えることこそが、私というドロイドに与えられた唯一無二の至福の機能(プログラム)だった。




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