STARWARS――銀河の悪意を纏う薔薇   作:鉅鹿

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【お詫びと訂正】
22BBY時点のため、ドラヴェナは16歳です。前話の「14歳」は作者の記述ミスです。申し訳ありません。
【表記について】
今後は数字(算用数字)表記を基本とします。※文脈上、漢字(漢数字)の方が自然な箇所は例外とします。


7話 紫電の騎士と、砂塵に咲く毒華

ジオノーシスの照りつける太陽は、すり鉢状の巨大な闘技場を不気味な熱気で満たしていた。ドゥークー伯爵に連れられ、バルコニーの特等席へと移動したドラヴェナ。彼女は眼下に広がる広大な砂舞台を見下ろして、歓喜に胸を躍らせていた。

 

そこには、3本の巨大な石柱に鎖で繋がれた『生贄』達がいた。ジェダイ・マスターのオビ=ワン・ケノービ。その弟子であり、無謀にも救出に現れて捕虜となったアナキン・スカイウォーカー。そして、ナブーの元女王であり現議員のパドメ・アミダラ。

ドラヴェナの琥珀色の瞳が、中央のパドメを捉えて、いっそう厭らしく歪む。

 

10年前のナブー侵略事件において、通商連合のドロイド軍を壊滅させた張本人。当時、その敗北によって捕虜となり、共和国の最高裁判所にかけられたはずのヌート・ガンレイ総督が、今こうして五体満足で特等席の自分達の隣にいる。

 

(大方、あの最高裁判所の強欲な連中に、通商連合がクソデカい賄賂を掴ませて無罪にさせたのでしょうね。共和国の法など、金次第でどうとでもなる紙クズ以下の存在ですわ。実に見苦しくて、素晴らしい腐敗っぷり!)

 

周囲の観客席からは、地響きのような大歓声が巻き起こっていた。処刑劇を見物するために集まった大勢のジオノーシアン達だ。獰猛な昆虫型戦士である彼らにとって、他者が無惨に引き裂かれる処刑劇こそが、最大にして最高の娯楽であった。

 

「あはっ! いいですわね、この羽虫共! 実に話が分かりますわ!」

 

ドラヴェナはドレスの裾を揺らしながら、醜く鳴き交わすジオノーシアン達を珍しく高く評価した。平和の守護者などという、反吐が出るような偽善を謳うジェダイ共が、悲鳴を上げながら猛獣に食い殺される光景を楽しめる。その一点において、ドラヴェナとこの未開のエイリアン達の感性は完全に一致していた。

 

特等席を見回せば、ジオノーシアンの大公ポグル・ザ・レッサーと、件のヌート・ガンレイ総督がふんぞり返っている。こんな血腥い砂漠の劇界にガンレイがいる理由は、言うまでもない。憎き怨敵アミダラが、無惨に肉を貪られる瞬間を特等席で見物するためだ。ガンレイは両手を擦り合わせ、醜い顔をほくそ笑ませながら、彼女の処刑を今か今かと待ちわびている。

 

そしてドゥークーの背後には、マンダロアの装甲を纏ったジャンゴ・フェットが微動だにせず控えていた。そのジャンゴの更に斜め後ろには、1人の幼い少年が立っている。ボバ・フェット。かつてセレノーでジャンゴが語っていた、彼の息子だ。

 

ボバはドラヴェナの視線に気づくと、小さく首を傾げて会釈を送ってきた。だが、一言も喋ろうとはしない。闘技場を包む圧倒的な熱気と殺戮の予感に当てられて緊張しているのか、あるいはジャンゴの言う通り、人との関わり合いに慣れていないのか。

 

どちらにせよ、ドラヴェナにとっては取るに足りない弱者に過ぎず、何の興味も湧かなかった。やがて、ポグル大公が不快なクリック音を鳴らして処刑執行の合図を下すと、鉄格子が開き、3匹の獰猛な猛獣――リーク、ネクスー、アクレイが砂煙を上げて入場した。

 

通常の人間であれば、成す術もなく噛み千切られ、内臓をぶちまけて死ぬ。だが、そこからの展開は、ドラヴェナの期待を大きく裏切るものだった。

 

「――なんですの、あれは!?」

 

ジェダイの2人は、猛獣の圧倒的な突進力を驚異的な身体能力で利用し、自らを縛る鎖を石柱ごと引きちぎって自由の身となったのだ。そればかりか、ライトセーバーを持たない状態でありながら、フォースと体術を駆使して猛獣達の攻撃を受け流し、逆に圧倒し始める。

 

更に驚くべきはパドメ・アミダラだった。彼女はただの議員であるにも関わらず、鎖を素早く登って石柱の頂上へと避難した。そして襲いかかるネクスーの顔面を、千切った鎖で激しく殴打して撃退してみせたのだ。

 

「そんな馬鹿な!ジャンゴ! 今すぐあの女を撃ち殺せ!」

 

予想外の反撃に激昂したガンレイ総督が、泡を飛ばしてジャンゴに命令する。

 

「落ち着かれよ、ガンレイ総督」

 

ドゥークーが冷徹な声でそれを制した。直後、闘技場の各入り口から、球体から人型へと変形する数機のデストロイヤー・ドロイドが入場。強力な偏向シールドを展開し、逃げ場を失ったオビ=ワン達の周囲を完全に包囲した。

 

これでチェックメイトだ。ドラヴェナは、再び残忍な笑みを浮かべようとした。――だが、その瞬間。背後から忍び寄る、あまりにも強大で洗練された気配に、彼女のフォースが過敏に反応した。

 

「……っ!」

 

ドラヴェナがバッと振り返ると、バルコニーの入り口、逆光の中に一人の黒人男性が立っていた。その手には円筒形の金属器――ライトセーバーが握られており、一目でジェダイの最高幹部だと知れた。

 

だが何よりも、ドラヴェナの目を引いたのは、その頭部だった。

髪の毛が、一本も無い。完全に滑らかなそのスキンヘッドを見た瞬間、ドラヴェナは沈黙を破るかのように、お腹を抱えて盛大に大爆笑した。

 

「ギャハハハハハ! またツルピカ頭ですの!? しかも今度は黒バージョン! ジェダイの幹部になるには、頭を丸めなきゃいけない決まりでもあるんですのー!?」

 

その極めて無礼で品性を欠いた嘲笑を、黒人男性――ジェダイ・マスターのメイス・ウィンドゥは、一瞥もせず無視した。彼の鋭い眼光はドゥークーだけを見据えている。

 

「パーティーは終わりだ、伯爵」

 

ウィンドゥの低く重い声が響いた直後、闘技場の観客席のあちこちから、一斉に光刃が立ち上がった。その数、およそ200名。密かに潜入していたジェダイの騎士達が一斉に姿を現し、オビ=ワン達を救うべく、咆哮を上げて闘技場へと乗り込んでいったのだ。

 

不測の事態に、バルコニーの分離主義者達が悲鳴を上げて狼狽する。しかしドゥークー伯爵だけは、不敵な笑みを崩さなかった。彼は隣の養女を見つめ、静かに、だが絶対の信頼を込めて命じた。

 

「ドラヴェナ……やれ」

 

「――仰せのままに、お義父様ぁっ!!」

 

ドラヴェナの琥珀色の瞳が狂気の色に染まる。シャキィィィン! と、彼女の両手から2本の真紅のライトセーバーが起動し、不気味なハミング音を鳴らした。16歳の少女の体から放たれたとは信じがたい、ドス黒いフォースが爆発する。

 

対するメイス・ウィンドゥもまた、自身の精神の闇を光へと昇華させる独自の戦術『ヴァーパッド』の使い手。彼の手から、銀河でも極めて珍しい紫色の光刃が放たれた。

 

──ギィィィィィィィン!!

 

赤と紫の刃が正面から激突し、激しい火花がバルコニーを白く染めた。ドラヴェナは天性の嗜虐性と圧倒的なフォースを乗せ、目にも留まらぬ速度で2本の刃を縦横無尽に叩きつける。狂気的な笑みを浮かべ、罵声を浴びせながらの、獣じみた猛攻。

 

(――な、何だ、この少女は……!?)

 

激しい剣戟を交わしながら、メイス・ウィンドゥの内に驚愕が広がっていた。『ヴァーパッド』というダークサイドの淵を歩む独自の型を極めた自分を相手に、僅か16歳ほどの少女が互角、いやそれ以上の力で渡り合っている。

 

彼女の刃から伝わってくるのは、憎しみでも大義でもない。ただ純粋に、目の前の強者を「痛めつけ、引き裂きたい」という底なしの悪意と、それを可能にする底知れぬフォースの奔流だった。

 

「あはははは! 楽しいですわ、ツルピカおじ様! 貴方のその綺麗な紫色の刃ごと、私がズタズタに引き裂いて差し上げますわ!」

 

砂塵の舞うジオノーシスの空の下。狂咲する悪魔の令嬢と、ジェダイ最強の騎士による、銀河の命運を賭けた壮絶な死闘が幕を開けた。

 




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