ステータス『0』の観測兵 ~転移したクラスを離れた少年は、砲火と魔法の異世界で昇進させられる~   作:ハルキーノ

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六章三話 先に飛び込むもの

《王録》 六章 三節

『先に飛び込むものは、軌道を変える代わりに火の名を受ける。』

 

2376- ノエホ要塞 三郷弦視点

 

 ワイバーン一体で五百キロ三発を抱えている。三発全部落とされたら結界の第二層も消えるから、空中で邪魔する。飛行ルートに割り込んで、一発でも外させる。

 

 馬鹿な戦い方だ。でも俺がやらないと誰がやる。

 

 ……そういうことだ。そう言い切ると、少し楽になる。逆に言うと、それぐらいの言葉がないと、たぶん足が止まる。

 

 

 一機目は、翼を二度打ってから機首を下げた。腹の下で爆弾が揺れ、留め具が開く。

 

 切り離す場所は読めた。俺は落下線の下から先に上がった。ワイバーンが俺を見て首を振り、右翼を持ち上げる。爆弾は修正前の角度で離れ、要塞壁の外へ落ちた。

 

 二機目は同じ場所へ入らなかった。高いまま横へずれ、俺を避けてから降下する。

 

 それでも、爆弾を落とすには腹をこちらへ向ける。その瞬間だけ、逃げる方向が一つ減った。俺が正面を横切ると、ワイバーンは翼を畳みかけて避けた。二発目も壁から外れた。

 

 上から見ると地上が見える。機関銃が東側の班を釘付けにしているが、動いている人間もいる。ちゃんと戦えてる。下の連中はよくやってる。俺は上をやる。

 

 

 地上では小林が動いていた。

 

 空から見ると、小林がどこにいるか分かる。建物の影を移りながら、毒ガスを使っていた。あいつらしい戦い方だ。正面から戦うなんてしなくていいのさ、が口癖のくせに、結局いつも危ないところにいる。俺が言うことでもないけど、言いたくなる——言ってやりたくなる。いや、言ってる場合じゃない。

 

 三機目が降下へ入る。さっきの二機を見ていたのか、爆弾を離す直前まで俺へ顔を向けなかった。

 

 なら、見える場所へ行く。俺は翼の下を斜めに抜けた。影が腹を横切り、ワイバーンの後脚が反射で縮む。爆弾は揺れたまま外れ、城壁の手前へ落ちた。

 

 よし。三発目。

 

 

 四発目が来た。想定外の数だった。

 

 三発目を外した後、俺は上昇の途中にいた。そこへ四機目が来た。こちらの下を抜け、もう留め具を開いている。

 

 降り直しても間に合わない。俺は上昇の力を横へ折り、ワイバーンの首の付け根へ肩からぶつかった。

 

 骨と鱗の硬さが、腕から胸へ返ってきた。ワイバーンの頭が振れ、片翼が沈む。爆弾は城壁へ向いていた線から外れた。

 

 でも、近すぎた。地面へ当たった爆弾の火が下から追いつき、衝撃が背中を持ち上げた。

 

 落ちながら思った。俺がやったから外れた。合ってる。合ってる、ってことにしておく。そうじゃないと、途中で誰かの顔が浮かんで、次の動きが鈍る。

 

 地面が近い。

 

 

 走ってきた足音が聞こえた。

 

 あいつだ、と分かった。小林のことだから、来ないと思っていた。正面から戦うなんてしなくていい、って言う人間だから、こういう時は合理的に動くと思っていた。でも来た。

 

 目を開けたら、小林が隣でしゃがんでいた。競馬の話でもしようとしたみたいに、口が少し開いていた。でも何も言わなかった。

 

 手を握った。握り返してきた。

 

 一人ではなかった。

 

 上から地上を見ていた時、ずっと小林の位置が分かっていた。来てくれるとは思っていなかったけど、どこにいるかは分かっていた。そういうことだったのかもしれない。

 

 四発の爆弾を外した。四発外したから、第二層は消えなかった。第二層が消えなければ、後ろの守備が持つ。

 

 計算は合っていた。

 

 それでも、息が浅いままだった。

 

 小林の手が、まだ離れなかった。

 

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