攻殻機動隊 THE BLUE ARCHIVE 作:H2O(hojo)
原作:ブルーアーカイブ
タグ:R-15 残酷な描写 アンチ・ヘイト 性転換 クロスオーバー 攻殻機動隊 ブルアカ 攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL
国家や民族が消えてなくなるほど情報化されていない近未来───
その世界の大部分を占める奇妙な学園集合体連邦
キヴォトス…
全身義体のサイボーグ・草薙モトコは、バトーをはじめとする精鋭部隊を指揮するなかで、犯罪を未然に防ぐことを目的とした特殊部隊の設立を望んでいた。新設されるシャーレにおける実働部隊を構想していた連邦生徒会首席行政官の七神リンはモトコたちをスカウト。モトコたちは超法規的機関となる連邦捜査部S.C.H.A.L.E専属の特殊部隊“攻殻機動隊”としての活動を始める。
企業のネットが星を覆い、電子や光が世界を駆け巡っても、
国家や民族が消えてなくなるほど情報化されていない近未来───
その世界の大部分を占める奇妙な学園集合体連邦
キヴォトス…
『連邦生徒会長失踪から数日。DUどころかキヴォトス全土は大混乱に陥っています。我々は業務もままならない有様でして…』
『それはそうでしょうなぁ。サンクトゥムタワーの行政制御権を持っていたのは連邦生徒会長のみ。貴女の不安はよく分かりますよ、伊東さん*1』
『分かっていただけますか…』
連邦生徒会長の失踪が明らかになってから数日が経ち、サンクトゥムタワーの行政制御権が空白になったことでキヴォトスは混迷を極めていた。そんななか、DUの某ビルでは、連邦生徒会の制服を着た生徒と、高そうな服を着たロボ市民が密談を開いていた。
『2班、住民の避難は?』
『市民の避難終了です』
『この辺はノイズだらけで機圧が高いな…』
そしてそんな2人の様子を公安局長の尾刃カンナ*2はモニターしており、公安局の部下たちに無線で指示を出していた。
『七神首席行政官、突入準備完了です』
『了解いたしました』
さらにカンナの横には連邦生徒会の首席行政官にして、現連邦生徒会長代行である七神リン*3がいた。
『少佐、公安が準備完了したぞ』
「うるさいなぁ、分かってるって…。暗号変換AI任せだと、ネコにもネズミにも聞かれるわよ?」
そんな彼女たちの様子を建物の配線が通る区画で盗聴している者が1人いた。彼女は群青色の髪色で真っ黒な特殊スーツを着ており、うなじからコードを出して配線に繋いでいた。
『よし、ビルの防電磁シールドを切れ!全班無線オープン!突入しろ!!』
そして、カンナは突入の指示を公安局の生徒たちに出した。
「理事…」
「何っ!?」
カンナが突入を指示したところで、ロボ市民の部下らしき人物が耳打ちでそのことを伝える。それと同時に部下たちが鞄を銃に変形させ*4、扉の前へと駆け寄った。
「な、何だ何だ!?」
「公安ごときに囲まれたのか!?バカめ!!」
公安局は彼らのいる部屋まで近づいており、一同の緊張感が高まる。理事と呼ばれたロボ市民は公安に易々と嗅ぎ付けられたことに悪態をついていた。
「クソォ!!」
「ぎゃっ!!」 「うわっ!!」
「やめんか!誰が撃てと命じた!?」
部屋に迫る公安局の生徒に対し、部下は銃を発砲する。それにより公安局の生徒が数人撃たれてしまった*5。そしてロボ市民は部下が発砲したことを咎めていた。
「動くな!!ヴァルキューレ公安局だ!!」
「貴様が責任者か?」
「いいえ。残念ながら今回の責任者は私ではありません。ですので、いつものような言い訳は通用しませんよ。カイザーインダストリー*6の理事」
「ふんっ…!!」
そしてカンナは公安局を率いて部屋へと突入する。商務室の伊東と密談をしていたのは、カイザーインダストリーの理事であった。彼は札付きのワルで、カンナは何度も彼を逮捕できずにいた。だが彼は今回も公安局から逃げ切るつもりのようで、カンナの言葉に鼻を鳴らしていた。
「お初にお目にかかります。カイザーインダストリーの理事殿」
「七神首席行政官…貴様か」
「この様子は防衛室*7や他の行政委員会も見ています。これようやく貴方を逮捕することができます」
「だがその前に召還状が届くだろう。我々カイザーと連邦生徒会との関係に配慮してな」
さらに公安局の生徒に連れられ、リンも部屋に姿を現す。理事の姿を見て、リンは彼のことを睨みつけた。だが理事はどこ吹く風、既に逮捕から逃げ切るつもりであった。
「商務室の伊東副室長には審問に出ていただきますよ?貴女には企業と裏で手を組んで不正を働こうとした疑惑がありますので」
「終わりだ…」
リンはソファの下で怯えて頭を抱えている伊東に、審問に出てもらうと言い放つ。悪事がバレた彼女は、顔面蒼白であった。
「それは無理だな。彼女は私と共にカイザーインダストリーに来てもらう。彼女は離職を希望し受諾され、契約書にもサインしている」
「いつ!?」
「答える義務はないな」
しかし理事はリンに彼女が審問に出ることは不可能だと答える。2人の間では既に密約が交わされており、企みが露呈した場合にはカイザーインダストリーに転職する手筈を整えていたのである。
「では連邦生徒会テロ防止法に基づき伊東元副室長の身柄引き渡しを要求します!」
「書面が送付されたらカイザーコーポレーション本社と検討し、返答してやる。因みに関係書類はインダストリーの本社にある…後日コピーを転送してやろう。まぁ、必要ならだがな」
((コイツ…))
理事の言葉に、リンは連邦生徒会が定めた法律を持ち出して、伊東の身柄の引き渡しを要求する。しかし、それも理事は検討すると曖昧な答えを述べ、リンとカンナを苛立たせた。
「いいのか?消されるぞ」
「何を失礼な…わが社は奉仕主義の優良企業*8だ」
カンナは怯えている伊東にそう言うと、理事は不満そうにそう返す。
“あらそう”
「ぐわっ!!*9」
そして次の瞬間、どこからか声が聞こえ理事が撃たれて気絶する。
「窓の外だ!!撃て!!」
「探知機に出てないぞ…」
カンナは銃弾が窓の外から飛んできたことに気付くと、部下たちに窓の外を撃たせる。公安局の持っている探知機にも探知できなかった奇襲に、一同は騒然としていた。
「フッ…」
「京レの隠れ蓑*10か!!」
「マーカを!!」
「もう遅い…」
カンナたちが窓の外を覗くと、そこには光学迷彩で姿を消しながらビルの下に落下していく女性がいた。彼女は不敵に笑いながら、都市の影に同化していくのであった。
翌日、その女は連邦生徒会の首席行政官の机に座っていた。彼女は失踪した連邦生徒会長の命令文書を持っていた。そしてその文章は連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの設立に関する文章であった。
彼女の名は草薙モトコ*11。キヴォトスでは珍しい全身義体の『少女』である。
『仕事です、草薙モトコ。連邦生徒会のオフィスに来てください』
「命令書も出てないのに?やなこった、へへ~ん!!」
それから数日後モトコはDU郊外の仔ウマ公園で仲間たちと集まって、各々好きにくつろいでいた。リンから連邦生徒会のオフィスに来いと言われているにも関わらず、彼女はふざけた態度でそれを拒否していた。
『貴女が要求していた予算と権限は通しました。仕事してください。それと…お忘れですか?本日は例の先生がキヴォトスへ来る予定の日です』
だがリンはモトコの言う通りにしたのだから仕事をしろと迫る。さらには先生なる人物がキヴォトスに来る日だと言い、彼女たちを連邦生徒会のオフィスに呼び寄せようとしていた。
「フチコマ*12!
「y.yes,sir!」
「ボンヤリするな!」
モトコはフチコマという名の思考戦車にリンの言っていたことが本当か確認させる。フチコマは慌てて確認を始めた。
「少佐、ちょっと耳貸しな」
「ん」
そんななか、モトコの仲間の1人が彼女の元へ近寄ってくる。彼女はバトー*13と名乗る大柄な女生徒である。彼女はうなじからコードを引っ張り*14、同じくモトコのうなじにある穴へと接続した。
「うんッ…♡」
「イヤらしい声出すなよ…気色悪い」
「この前埋め込んだ聴覚
コードを接続した際にモトコの聴覚素子が異常をきたし、彼女は変な声を出す。その様子を見て、バトーは気色悪いと顔を顰めた。
『で?』
『首席行政官の七神リンはキレモノのクソ女だ。取引*15に賛成は3、反対は2、棄権1』
『正式な特殊部隊の設立には、行政室の
『ヤツは我々に独立より
『だったらなおさら退けない事くらい、ヤツも計算づくよ』
バトーはリンのことを警戒しており、彼女が自分たちに約束した特殊部隊の設立が本当かどうか疑っていた。だがモトコは部隊の設立にはリンの協力が不可欠と考えており、退くことのできない状況であった。
「第327期連邦審議会に予算通過のレポートあり再度確認」
「よし!桜の24時間監視*16は中止!シャーレの先生とやらの顔を拝みに行くぞ!!」
「つまんね~」
フチコマはモトコの指示通り、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの予算が通ったことを報告する。それを聞いた彼女は、立ち上がり一同を率いて連邦生徒会のオフィスに向かうのであった。
「遅れんなよ、新米!!」
「新米、新米うるさいですよ!私にはトグサ*17って言う名前があるんですから、ちゃんとそう呼んでください!!」
「そうやって反発するからいつまで経ってもルーキーなのよ」
発進の遅れた新米ことトグサのことを気にかけているのは、爆弾処理のスペシャリストのボーマ*18である。しかしトグサは新人扱いされることに不満を持っているようで、彼女に反発していた。そんなトグサの様子を見て、パズ*19は呆れていた。
「そこ、うるさい!!」
「あーあ、イヤだイヤだ。オババはインケンだねぇ~」
そんな彼女たちのじゃれ合いを叱ったのは、部隊の最年長であるイシカワ*20であった。だがそんな彼女のことを、部隊の凄腕スナイパーであるサイトー*21は鬱陶しがっていた。
「数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました」
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」
連邦生徒会のオフィスでは痺れを切らした各学園の代表者*22たちが、リンに詰め寄っていた。その横でスーツを着た青年らしき人物*23が、彼女たちの言葉を聞いてギョッとしていた。
「おーおー、やってるやってる。そろそろ押しかけて来てる頃だと思った」
「ちょっと!?私たち今大変なの!!冷やかしなら帰って!!」
「ヤッベ、聞かれてたわ」
そんな彼女たちの様子を後ろで見ていたバトーだったが、ユウカに気付かれ冷やかしだと思われていた。
「七神首席行政官!!約束通り来てやったぞ!!」
「遅いですよ、草薙モトコ。貴女のせいでこのうるさい方々の相手を私がする羽目になりました」
「アンタら本人を前にしてぇ…!!」
“まぁまぁ、落ち着いて…”
モトコは囲まれているリンが気付くように、声を張り上げて彼女のことを呼ぶ。リンは来るのが遅いことを不満に思っていた。なお、その横でうるさい方々と言われたユウカは、拳を握りしめており、青年に窘められていた。
“彼女たちは?”
「あの方々は今後先生の部下として、手となり足となり働いていただく人たちです」
“部下?彼女たちも生徒じゃないの?”
「いいえ。彼女たちは自主退学しており、現在どの学園にも所属していません。よって彼女たちは生徒ではありません*24」
青年はいきなりオフィスに現れたモトコたちが何者なのかリンに尋ねる。リンは青年を『先生』と呼び、モトコたちを部下になる存在だと言った。先生はモトコたちをユウカたちと同じく生徒だと思っていたようだが、リンは彼女たちは学園に所属していないため生徒ではないと否定した。
「へぇ~アンタがアタシらのボスになるっていう『先生』?」
“よ、よろしく…”
「連邦生徒会長サマ*25はこんな優男にキヴォトスの命運を託したっての?」
“何かすみません…”
モトコは先生に近づき顔を覗き込む。そして彼女はこれから上司になる人物を優男呼ばわりし、連邦生徒会長の見る目を疑っていた。
“モトコ、私に君の仲間を紹介して欲しい”
「右からパズ、サイトー、トグサ、バトー、イシカワ、ボーマ、以上」
「「「「「よろしく~」」」」」
“が、頑張って名前覚えるね”
先生は気を取り直してモトコに仲間を紹介して欲しいと頼むと、彼女は右から並んでいるメンバーの名前を羅列していく。名前を呼ばれた彼女たちは各々先生に愛想よく手を振った。
「私たちは『攻殻機動隊』*26。キヴォトスに蔓延るクソ野郎共を一掃するための攻性の部隊よ」
モトコはトグサとバトーの間に入り、腕を組む*27。そして彼女は自分たちのことを攻殻機動隊と名乗った。
「で、麗しの先生様と感動のご対面。これからみんなで仲良くお仕事頑張っていきましょう!!ってわけにはいかないんでしょ?」
「相変わらず察しがいいですね。まったく…」
「窓から下の様子眺めてりゃ誰だってそう思うわよ」
軽い自己紹介が終了したところで、モトコはリンに次に自分たちが何をするのかを尋ねる。彼女の察しの良さにリンは、ため息をついて呆れるも、本人はDU周辺の騒ぎを見れば誰でも分かると答えた。
「貴女たちにはこれから先生と共にここから30km離れたシャーレのオフィスに向かってもらいます。そこで連邦生徒会長が用意した『とある物』を回収して先生に渡してください」
「ソイツを手に入れればこのバカ騒ぎが収まるってワケ?」
「その通りです」
リンはモトコたちにここから30km離れたシャーレのオフィス先生と共にに向かい、そこで『とある物』を渡すよう指示した。そうすればこの混乱がおさまるそうだ。
「いいわ。私たちがアンタをシャーレに連れてってあげる」
“よろしくね”
「さぁ、仕事だお前たち!!」
「「「「「「はーい」」」」」」
リンの指示を聞いてモトコはニヤリと笑い、先生をシャーレへ連れて行くと宣言する。そして彼女は部下を引き連れ外へ出るのであった。
「別にアンタたちまでついてこなくったっていいぜ?」
「そう言うわけにはいきません。乗りかかった船ですので、私たちもお供させていただきます」
「あっそ。邪魔だけはすんなよ」
未だ自分たちと一緒にいる4人を見たサイトーは、わざわざついて来なくてもいいと彼女たちに伝える。だがハスミは乗りかかった舟だからついて行くと言うので、バトーは邪魔だけはするなと釘を刺した。
「『太もも』は?さっき文句垂れてたけど?」
「行くに決まってるでしょ!!アンタたちみたいな怪しい集団に任せておけないもの!!というか誰が『太もも』よ!!」
「まったく、喧しいわね…」
そしてボーマは4人の中で唯一文句を言っていたユウカのことを『太もも』と呼ぶと、本人からクレームが入る。その横でパズは目を細めて、彼女たちの口論を鬱陶しがっていた。
「先生は危険ですのでフチコマの中にいてください」
“この中へ入ればいいの?”
「はい。フチコマ、後は頼みましたよ?」
「りょーかいでーす」
イシカワは銃弾1発で致命傷になってしまう先生をフチコマの中へ入るよう誘導する。彼は彼女の言う事を聞いて、素直にフチコマの中へ収まるのであった。
『全員電脳活性*28をチェック』
『『『『『『問題な~し』』』』』』
モトコの指示で一同は電脳活性をチェックする。チェック後彼女たちは問題無いと返した。
「この人たちまさか全員電脳化してるの?」
“電脳化って何?”
「電脳化とは脳内にマイクロマシンを注入し、脳とネットを接続する技術です。脳に異物を入れることの忌避感から、実際に電脳化を施す者は少ないですが、まさか全員電脳化しているとは…」
ユウカはモトコたちが電脳通信をしているのを見て、彼女たちが全員電脳化していることに気が付く。チナツは電脳化のことを知らない先生に、医療従事者の観点から説明していた。
『よし、行くぞ!!』
一同はモトコを筆頭にシャーレのオフィスへと向かった。
『全員、
『無線だと枝が付かないか?*30』
『状況説明しておいて欲しいでしょ?それに枝祓いに
モトコはフチコマに搭乗しながら*33、電脳空間で今回の作戦を説明するためにメンバーに脳潜入するよう促す。バトーは通信に枝を付けられないか心配していたが、モトコはその対策に高性能の攻性防壁を用意しており、心配は無用だと示した。
『チリチリする辺がゴーストラインだ。それ以上は潜るなよ』
『『『『『ブクブクブクブク…』』』』』
6人はモトコの電脳へと潜った。
“アハハ…ウフフ…!!” “この予算案を通せと…?” “ハンッ…小娘風情が”
『お前の脳、ノイズが多いな…』
『生理中なんだよ』
『少佐、義手が痛みますわね』
『何ですこのニガいの?鎮静剤ですか?』
彼女たちがモトコの脳に潜ると、彼女の断片化した記憶が電脳を漂っており、浮遊感に襲われる。それを本人は生理中だからと誤魔化した。
『さあ、情報は仕入れただろ。2秒で出ていかないと脳細胞焼くわよ?』
『『『『『は~い』』』』』
(揃いもそろってゴースト近くまで潜ってきやがって…これだからデリカシーのない奴らを脳に入れるのは嫌なんだ…クソッ!!)
メンバーから口々に言われモトコは不機嫌になる。彼女たちは脳を焼かれたくないのか、そそくさとモトコの電脳から退散した。
“何だかみんな楽しそうだね”
「そうですかぁ?単にバカ騒ぎが好きなだけでは?」
「そこ、振り落とすわよ?」
「何で聞こえるのよ…」
先生は電脳化をしていないため彼女たちの会話の内容をフチコマのスピーカで聞いており、楽しそうだと感想を漏らす。それにユウカは単なるバカ騒ぎが好きな集団だと返すと、モトコに振り落とすと脅され、その地獄耳に引いていた。
「連邦捜査部S.C.H.A.L.Eまで残り3kmです、少佐」
「チンピラや不良共が大挙してやがるな。それにヤツも暴れている」
シャーレまであと3kmというところで、一行は足を止める。ここからはさらに多くの障害が横たわっており、フチコマで一気にオフィスまで抜けるのは不可能である。さらにはワカモという犯罪者が脱獄しており、あちこちに火の手があがっていた。
「ヒャッハー!!」 「我が世の春が来たー!!」 「汚物は消毒だぜー!!」
「何てこと…!?」
「ひ、酷い…」
不良たちが狂ったように暴れ回る姿を見た、ハスミたちは各々ショックで口を覆う。数日前までは銃撃戦はあっても、こういった大規模な暴動とは縁遠かったDUが今は世紀末の様相を呈していた。
『なぁ、一つ気になるんだが…』
『何だバトー?』
『連中が持ってる武器、ありゃカイザーPMCが正式採用している新型だ。連中がカツアゲした金かき集めたって買えるシロモノじゃない。それにワカモだ。アイツは何故こんな所で破壊活動に勤しんでいる?』
『つまりこの暴動は何者かの意思が介在しているってこと?』
『そうは考えられないか?』
その横でバトーは不良たちの持つ武器が分不相応であることに気づき、モトコへその事を伝える。彼女たちはこの暴動が偶然ではなく何者かによって起こされたものであると気づき始めていた。
『まさか…あのクソ女の罠か?』
『わざとワカモの脱獄を手引きして、シャーレのオフィスの目の前で暴れさせたっての?何のために?』
『私たちを始末するためさ。ワカモにやられればそれでよし。よしんば作戦が成功してシャーレに突入しても、令状も指示書も発行されていない私たちは罪をでっち上げれば簡単に始末できる』
バトーはこの状況を、リンが仕組んだ罠だと推察する。彼女は自分たちを始末するために、リンがわざとワカモや不良たちをけしかけたと思っていた。
「・・・・・・」
“な、何かな?”
バトーの意見を聞きながら、モトコは先生の下へ歩み寄る。先生はその赤い目で見据えられ、たじろぐ。
「先生は何があっても私たちの味方でいてくれますか?」
“もちろん。私は常に生徒の味方だよ”
「そう、ありがとう。せ・ん・せ・い♡」
モトコは先生にそう尋ねると、彼は間を置かずに返答する。先生の返答を聞いて、モトコは満足したのかわざとらしい声で感謝を述べ、自分の搭乗するフチコマの元へ戻る。
「全員突入用意!!いつの時代も我々のような部隊は必要だ。だから失うものはない。スキャンダル工作に学園や企業内外の足の引っ張り合い、子供の洗脳、そういうクソ野郎共を一掃するためにあの女と取引したんだ。やってやろうじゃないの!!」
モトコは覚悟を決めたのか、メンバーに突入用意の号令をかける。そして彼女は腰に付いているスイッチを押して、特殊スーツを膨らませた。
「そうしろと囁くのよ、私の『ゴースト』*36が…」
モトコのその言葉と共に、彼女たちは行動を開始した。
「イシカワ、トグサ、サイトー、ボーマ、パズは暴れているチンピラ共を片付けろ!!訓練されてない素人とは言っても、持ってる武器はカイザー製の新型だ。気を抜くなよ!!」
「「「「「ラジャー!!」」」」」
「その隙に私とバトーでワカモのヤツを叩く。行くぞ!!」
「おっしゃ!!」
モトコは部隊を二つに分けて、チンピラとワカモの両方を処理しようとしていた。7人はフチコマに乗り込み、不良や犯罪者たちが跋扈するシャーレの前へ突入していった。
“行っちゃった…”
「まるで嵐のよう…」
「本当に彼女たちだけに任せていいのでしょうか…?」
“私はあの子たちを信じるよ。たとえ学園に所属していなくても、私にとっては大事な生徒だから”
一方モトコたちを見送った先生とハスミたちは、彼女たちの疾風怒濤の素早さに舌を巻いていた。モトコたちにキヴォトスの命運を委ねることを心配するユウカに対し、先生は彼女たちを信じると言って、教師としての強い意志を見せた。
「「「「「やっほぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
「どけッ、邪魔だ!!」
「な、何だコイツら!?」
「少佐、バトー、今のうちにワカモの元へ急いでください」
「助かった!!」 「サンキュー!!」
シャーレへと続く幹線道路を猛スピードで突き進むフチコマに、チンピラたちは驚いて逃げ惑う。イシカワたちはモトコとバトーが突っ切った後、道路をフチコマたちで塞ぎ、2人をワカモの元へ素通りできるようにした。
「やっちまえ!!」
「おらぁ!!くたばれ!!」
「痛って!?コイツ…HP弾*37使ってやがる!!」
フチコマから顔を出したサイトーが不良に応戦すると、彼女たちのうちの一人が?HP弾を撃ってくる。サイトーはHP弾の威力に、たまらず頭を下げた。
「これでも喰らいなぁ!!」
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」
「どんだけ性能のいい銃を持ってようが、私の爆弾にかかればまとめてドッカーンだぜ」
その横でボーマは手持ちの爆弾を不良たちに向かって投げつける。爆弾が爆発すると、彼女たちは散り散りに吹き飛んでいった。
「どうしますイシカワ、少佐たちを助けに行きますか?」
「新米さん、私たちの任務は『先生』をシャーレへ送り届け、シャーレにあるとある物を渡すことです。つまり先生がいなければ始まらない。先ほど少佐が脳潜入で説明したはずですが?」
「わ、分かってますよ!先生と合流でするでいいんですよね?」
「はいその通り」
不良たちを片付けたところでトグサはこの中で一番の年長者であるイシカワに、今後の行動について尋ねる。イシカワはトグサの問いに対し表面上は丁寧に返答するも、眉を吊り上げており、新人の迂闊さに怒りを覚えているのは明白であった。それに気づいたトグサは即座に態度を改めた。
「ったく、これだから新米は…」
「
「うぅう…すみません」
さらにトグサはその不用意な発言によって、針の筵に晒されていた。
「で、肝心の先生は?」
「こちらの応急処置、完了いたしました」
“ありがとう。もうこんなことしちゃダメだよ?”
「あらあら…お優しいことで」
サイトーたちがトグサを詰めている間に、先生とチナツたちは怪我をした不良たちに治療を施していた。その様子を見たイシカワは、彼の慈悲深さに呆れていた。
「うふふ…あはは…あーはっはっはー!!」
「チッ…あの女狐、どこからあんな物持ってきやがった?」
「巡航戦車*38か…ふざけやがって!!」
シャーレの建物の目前まで迫ったモトコとバトーであったが、そこにいたのは巡航戦車の上に立ち、高笑いをしながら破壊活動を続けるワカモであった。
「バトー、お前は私のフチコマと一緒に巡航戦車の注意を引け。私はその隙にアレに飛び乗って女狐を抑える」
「1人で大丈夫か?相手はアイツらが4人がかりでようやく捕まえた相手だぞ?」
「白兵戦に持ち込めば何とかなるさ」
モトコは巡航戦車とワカモの両方をどうにかすべく、バトーに指示を出す。全身義体のモトコは白兵戦にそれなりの自信があるため、ワカモを1人で倒せると思っていた。
「行くぞ!!」
「おうっ!!」
バトーはフチコマに乗って、モトコは光学迷彩を発動してワカモに立ち向かっていく。
「そこまでだ、狐坂ワカモ!!」
「そこまでだー!!」 「投降しろー!!」
「フフ、連邦生徒会の子犬たちが現われましたか。お可愛らしいこと」
「あぁん?誰が連邦生徒会の犬だって!?」
バトーはフチコマを巡航戦車の進路を塞ぐと、まずは投降を呼びかける。だが、ワカモに子犬と言われたことに憤り、彼女に銃口を向け始めた。
「くたばれ女狐!!」
「あははははッ!!いいでしょう、このクルセイダーの餌食にして差し上げます」
「フチコマァ!!お前らもあの女狐を攻撃しろ!!」
「「イエッサー!!」」
バトーはフチコマに載せていたガトリングを取り出し、ワカモに向けて掃射する。すかさずワカモは戦車から飛び降り、車体の影に隠れる。彼女の行動を見て、バトーはフチコマに攻撃を命じた。
「戦車の影に隠れてないで出て来いオラァ!!」
(チッ…バトーのヤツ先走りすぎだ)
ワカモを追いかけ回すバトーに、モトコは心の中で舌打ちをする。彼女のせいで、モトコはワカモに接近する機会を失っていた。
『…ったく。強制的に落ち着かせるしかないわね』
「ぐへぇ!!」
「…?」
モトコは興奮するバトーを落ち着かせるため、彼女の電脳をハックして自分で自分を殴らせる*39。突然奇怪な行動をはじめたバトーを見て、ワカモは首を傾げていた。
『落ち着けバトー』
『なによッッぶつ事ないじゃない!!』
モトコはバトーに落ち着くよう言い聞かせる。彼女にぶん殴られたバトーは、やり過ぎだと訴えていた。
『そら、さっさと巡航戦車を引きつけろ』
『へいへい…』
(まったく人使いの荒い…)
そしてモトコは息つく暇を与えず、バトーに仕事に戻れと発破をかける。彼女の人使いの荒さに、バトーはうんざりしながら再び戦車の元へ向かって行った。
「さっきは不覚を取ったが、今度はそうはいかないぞ!!」
「鬱陶しい…操縦士、ヤツを狙いなさい」
『ラジャー』
バトーはモトコの指示通り、戦車に狙いを定め、ワカモを牽制する。それを鬱陶しく感じたワカモは、戦車の操縦士にバトーを狙うよう指示した。
(私はその隙に、あのビルの中に入って彼女*40の言っていた『とある物』を破壊して差し上げましょう。ウフフフフ…)
ワカモはバトーを巡航戦車に任せ、自身はシャーレのオフィスにある『とある物』を破壊しようと動きだした。
(人の気配…?)
「何奴ッ!?」
「チッ…耳付き*41の察知能力を侮り過ぎたわね」
モトコはワカモに近づき不意打ちを狙おうとしたが、彼女は何者かが近くにいることを察知し、銃剣で虚空に切りかかる。彼女の近くに潜んでいることがバレてしまったモトコは仕方なく光学迷彩を解いた。
「まさか連邦生徒会の犬が、思考戦車を操り光学迷彩を使うとは…私が収監されている間にキヴォトスも随分と様変わりしたようですね」
「別に連邦生徒会の犬に成り下がった憶えはない。どの組織に所属していようと私の部隊は攻性であり続ける。それに、私が欲しいのは連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの超法規的な権限だ。それさえ手に入れば連邦生徒会も『シャーレの先生』もどうだっていい」
「フフフ…アナタ、私なんかよりよっぽど悪党ですわね」
ワカモは連邦生徒会の配下に思考戦車や光学迷彩といったハイテクノロジーな装備を扱う特殊部隊の出現に驚いていた。しかし、モトコは自分は連邦生徒会にもシャーレにも大人しく従うつもりはないと述べ、ワカモに自分以上の悪党だと感じさせた。
「アンタももう一度矯正局に叩き込んでやるわ」
「やれるものなら…」
こうして二人は互いに銃*42を向け、ニヤリと笑いながら殺気を出し始めた。
「喰らえ…ッ!!」
「くぅ…!?」
(何て正確な射撃…まるでカイザーPMC*43の兵士のよう)
先に攻撃を開始したのはモトコのほうである。彼女は電脳内にインストールした射撃制御ソフトを使用することにより、正確にワカモの身体に銃弾を撃ち込むことができる。さらには生徒特有の神秘を保持しているため、その威力も通常の攻撃より高くなっていた。
「ですがっ…!!」
「チッ…!!」
(あの銃剣、飾りかと思っていたが…そうなると厄介ね)
すかさずワカモも銃剣の先をモトコに突き出し応戦する。それによりスーツの肩の部分が切れ、モトコは面倒だと舌打ちした。
「しょーじきあまり気は進まないけど、仕方ないわね…」
「片手で銃を持ち、もう片方はナイフですか。そんな付け焼き刃な戦法が私に通用するとお思いですか?」
「とーぜんでしょ」
モトコはため息をつきながら、左手でナイフを取り出し、右手で無理矢理銃を構える。ワカモはその体勢を無理な戦法だと揶揄するが、本人は自信有り気に笑っていた。
「はぁッ…!!」
「ウフフフフッ…!!」
「逃げんな!!」
「アハハハハハハ!!」
モトコはまず銃で牽制してワカモに近づこうとする。しかし、彼女もそれを理解しているため一定の距離を保って銃剣で応戦していく。
「さぁ、貫いて差し上げましょう!!」
「くッ…!!」
そして今度はワカモが攻勢に出て、銃剣をモトコに突き刺そうと突進してくる。それをモトコは紙一重で避けるが、髪が何本か切っ先に当たり切れてしまった。
「くたばれ!!」
「うぐッ…!?」
その直後、モトコは接近したワカモに蹴りをおみまいする。彼女蹴りはワカモの腹にめり込み、後ろに吹っ飛んだ。
「けほっ…自信家なだけあってなかなかやりますね」
「お前もな」
ワカモは息を整えて立ち上がると、モトコの実力を認める発言をする。そしてモトコも同様にワカモの強さを認めていた。
「「行くぞッ!!」」
“待った!!”
「「…!?」」
2人は再び対峙すると、互いに銃を構え戦闘を再開しようとする。しかしその瞬間追いついた先生が待ったをかけ、2人は彼のほうへ振り向いた。
「オイ、邪魔するな。今いいところなんだよ」
“ダメだよ、モトコ。もう暴動は皆で鎮圧した。だから彼女とこれ以上戦う必要なないはずだよ?”
「チッ…分かったわよ」
モトコは先生に凄んで不満を訴えるが、彼はこれ以上の戦闘は必要ないと言って彼女を諭す。結局モトコは先生の言う事を聞いて、銃とナイフを収めた。
「あ、あわわわわわわ…」
“君がワカモかな?”
「は、はい…」
そして先生はワカモに近づき、会話をしようと試みる。しかし、彼女は先ほどの態度とは打って変わってしおらしくなり、慌てているように見えた。
「し、し…」
“大丈夫…?”
「失礼しましたー!!」
“あ、あれ…?”
ワカモは顔を下に向けて、恥ずかしそうにもじもじする。先生はワカモを気にかけて、顔を近づけると、彼女はいきなり顔を上げ目にも止まらぬ速さでその場から離れてしまった。
“何か気に障ることをしちゃったかな…”
「フッ…その優男顔も少しは役に立ったみたいね」
“え?何?どういう事?”
ワカモが慌ててその場からいなくなってしまったことで、先生は彼女に不快な思いをさせたのではないかと心配していた。なおモトコはワカモが逃げた理由に心当たりがあるようで、彼のその何も気付いてない態度を面白がっていた。
「ご苦労でした皆さん。おかげで無事、先生をシャーレへ送り届けることができました」
「お前はごゆるりと我々の後を追って、手柄だけは自分のものにしようってとこか?」
「まったく貴女は…!!」
そんなことをしていると、一同に遅れてリンがシャーレのオフィスの前へと現れる。遅れてやって来たリンにモトコは嫌味を言うと、彼女は青筋を浮かべて憤慨した。
「はぁ…私が遅れた理由はこれから貴女たちが活動していく連邦捜査部S.C.H.A.L.Eについて、必要な準備を整えていたためです」
「どうだかな…?」
「私たちを法廷で叩く準備じゃないでしょうね?」
「まったく…少しは私のことを信用してください」
リンは自分が遅れたのは、シャーレの活動を開始するにあたって必要な準備を進めるためだったと説明する。しかし、バトーやパズからは懐疑の目で見られており、少しは自分のことを信用して欲しいと嘆いた。
「草薙モトコ。貴女が申請した約3倍の規模の予算で連邦捜査部S.C.H.A.L.Eが設立されます」
「・・・・・・」
「そして、予算の8割は『攻殻機動隊』の創設資金となります。上はここにいらっしゃる先生だけ、階級なしの実力主義…最優先ライン。貴女の望んだ超法規的な攻性の組織です」
「「「「「……ッ!!」」」」」
リンはモトコたちに、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの概要について説明する。シャーレの組織構造にはモトコの意向が盛り込まれており、彼女の望む攻性の組織となっていた。リンの説明を聞いて、モトコたち7人のメンバーはそれぞれ歓喜の表情を浮かべていた。
「明朝6時にこの誓約書に目を通して、サインしてこの場所へ来てください。8時には先生と共に組織の立ち上げを宣言します」
「それでは私は先生と共に、『とある物』を回収に参りますので…行きましょう、先生」
“うん。それじゃあ、また明日ね。待ってるよ”
そしてリンはモトコに一枚の紙を手渡し、それにサインして明日6時に持って来るようにと伝える。その後リンは先生を連れ、シャーレの建物の中に入っていった。
「やりましたわね、少佐。これでようやく私たちの悲願が達成いたします」
「独立愚連隊も今日で終わり…明日からは晴れて公僕か」
「うぅぅ…長かった根無し草生活もこれで報われますね」
『攻殻機動隊』の設立を聞いたイシカワやパズやトグサは、喜びを口にしたり、これまでの日々を感慨深く感じたりしていた。
「やったな少佐!!ってあれ?」
「おいどうした?固まっちまって…」
「えへへっ」
((((案外可愛い笑い方をするん(ですね)だ…))))
サイトーとバトーがモトコに声を掛けるが、彼女はその場で固まっていた。その直後モトコは我に返って、笑みを浮かべた。その可愛らしい笑みを見て、ユウカたち4人は意外に思っていた。
「よし、これから一杯付き合え」
「「「「「やっほーい!!」」」」」
「バトーは報告書が先だ」
「ゲロゲロ…」
翌日、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの設立が正式に発表され、その実働部隊としてモトコたち7名の名前がリストアップされていた。
この日からモトコたち『攻殻機動隊』のキヴォトスでの活躍が始まったのである。
完
攻殻機動隊っぽく注釈を沢山入れてみました。すげぇ大変でした。
読みづらかったらごめんなさい。
現状続きは考えてません。
こっちはSACの少佐が先生やってる話です。
https://syosetu.org/novel/389895/