それでも大丈夫なら読んでください。
小澤千秋
上伊那ぼたんの幼なじみ。両親は海外で仕事をしているため、マンションに一人暮らしをしていたが隣の部屋が火事になり、急遽ぼたん達が居る寮に入居する事に。一人暮らしが長い為家事全般得意。実は人気小説家(Chiaki)として活躍しているが、寮の皆には教えていない。元は高校を卒業したら小説家を本業にするつもりだったが千秋の担当者から「小説にいい影響になるから」と大学に入学する事に。小説のネタ作りの為登山やバイク、キャンプ等様々な趣味を持っている。
ちなみに猟銃免許も取得している。
小さい頃にぼたんと共に参加していたサマーキャンプの時に倒木から彼女を庇い、出来た大きな傷跡が右腕にある。
愛煙家で状況に応じてアメリカンスピリッツとマールボロのソフトパックを吸い分けている。
(事実は小説よりも奇なり)なんて言葉が存在する。
人生は想像で創られたフィクションより驚く事がある的な意味だが、俺の人生もそんな言葉のようになってしまっているのかもしれない。
「あぁ…俺の部屋…」
緊急車両のサイレンや消防士や警察、野次馬の声がこだまする空間を赤く照らす火災現場。
燃えているのは俺が住んでいた部屋の隣で、夢なら覚めてとその場で立ち尽くす俺。
「危ないから下がって!」
馬鹿みたいに開いた口が塞がらない俺は消防士に押され安全な場所まで誘導され、ゆっくり思考が動き出す。
「参ったな…」
火災に早めに気づけた事や日頃から貴重品はすぐに持ち出せる様にしていた事が幸いし無傷かつ印鑑スマホや商売道具のPC云々は無事で、失ったと言えば住んでた場所が無くなった事くらいだ。
「さてどうしよう…」
両親は海外で仕事で姉貴は世界中飛び回り写真を撮っている為家族は無事、つまり頼れる家族も近場にいない事になる、
「まぁ何とかなるかぁ…てか大学に寮あるじゃん!手続き終わって入寮できるまでネカフェ暮しだな!」
細かい事は気にしないのが長生きの秘訣らしいし、知らんけど。とりあえず大学や親等に連絡する事を優先しネカフェに向かった。
《数日後》
「おー、綺麗な寮じゃん!」
火災事故が落ち着き、大学側から紹介された寮に到着した。
別に金には困っていないが火災保険がおり、ちょっといい家具や酒、寝具を買い揃え新たな生活に胸を躍らせ、ドアを開ける。
「あっ!千秋君だ!」
「ん?…あっぼたん!?」
「名前聞いてもしかしてって思ってたんだ!火事大丈夫だった?」
ドアの先にいたのは幼なじみの上伊那ぼたんだった
。
「同じ大学だって聞いてたけど会うの久しぶりだな!まぁ部屋はダメだったけど俺は無事さ」
「怪我がなくて良かったよ。あ、私が寮内を案内してあげようか?」
「ありがとう、よろしく頼むよ!」
(事実は小説よりも奇なり)なんて言葉が…以下省略。
住んでた部屋が火災に巻き込まれ、新しく住む寮がなんと…
「あのさ…ぼたんさんや…」
「なぁに千秋さんや」
「この寮…俺以外女性ってマジ?…」
「うん、あれ説明されなかったんだ?」
衝撃の事実に寮の共有スペースのテーブルで頭を抱える。
まさかアニメや漫画のような展開に自分が体験する事になるとは思っても見なかった。
「されてない!!されてないよ説明!!」
膝から崩れ落ちる。
「だ…大丈夫だよ千秋君!寮の皆んなには私の幼なじみかもって伝えてあるから!」
「…いや…アクシデントで怒らせてSNSに挙げられて特定されたら炎上して顔とか晒されて人としても小説家としても人生が終わる…」
「ちょっと考えすぎだよ…皆そんな事しないし、私の知っる千秋君は変な事しないでしょ?、ね!」
「あぁ、誓ってそんな事しない!したら色々終わるし…なっ!?」
「あっ…」
優しく宥める様に微笑みながら手を差し出されたぼたんの手を握り立ち上がろうとした時彼女がバランスを崩し、まるで俺が押し倒した体勢で転倒してしまった。
「大丈夫かぼたん!?」
「あはは…ごめんね大丈夫だよ」
頭を打たない様に右手を彼女の頭と床の間に滑り込ませ、何とか怪我を回避する事ができた。
「本当におっちょこちょいなんだか…あ…」
「ぼた〜ん、玄関の靴誰…の?…」
ぼたんに怪我が無いことに安堵していると運悪く寮の住人であろう小柄な女性が共有スペースのドアを開け、誤解を産むであろう体勢の千秋と目が合う。
「ふ…不審者!ぼたんから離れろ!!」
目が合って数秒、小柄な女性の膝で視野が埋まる。
「ま…待って寮長!この人は!!」
「ちょ!!誤か…グハッ!?…」
静止する声を聞かず、寮長と呼ばれる彼女の飛び膝蹴りが千秋の顔面にめり込む。
「うくっ…」
「お…思い知ったか!不審者め!」
「きゃぁぁぁ!!千秋君!!」
(あぁ…最悪だ…誤解なのに…)
床に大の字に倒れ、千秋は意識を失った。
「…君!!ちあ…く…」
(この声…あぁ、ぼたんか。てか俺どうしたんだっけ?…)
暖かい光に包まれ水の中に漂う感覚、自分が上を向いているのか?目を開けているのかも分からない。
(確か…あ…)
考え込んで数分徐々に記憶が鮮明になってくる。
(寮長とか言う人に飛び膝蹴りを食らって…え…俺死んだ!?…マジか…変質者に間違われて死ぬとか…てか原稿どうしよう…まだ提出出来てないし…)
「千秋君!!」
「はい!!…あれ?」
「あ!千秋君起きた!良かったぁ」
死後?の後悔をしていると先程より鮮明にぼたんの声が聞こえ反射で返事を返し目を覚ましたようで、目に涙を浮かべたぼたんと寮長が俺の顔を覗き込んでいた。
「ぼたん…それに寮長さんも…てかここ何処?」
「私の部屋だよ、千秋君の部屋まだ荷解き終わってないからとりあえず連れてきたんだ」
「そうだったんだ、ありがとうぼたん…えっと…寮長さん?」
もしかして好戦的なのではと少し警戒しながら身体を起こし、ぼたんの横でシュンとしている寮長を見つめる。
「…あの…勘違いしてすいませんでした…」
「え?…」
好戦的だと思っていた彼女からの謝罪に呆気にとられ、間抜けな声を出してしまった
「だから…その…変質者と勘違いして膝蹴りしてすいませんでした…全部ぼたんから聞きました…」
「あ…い…いや…俺も誤解させる様な事してたし、こっちこそごめんなさい」
先に頭を下げる寮長に続くように、こちらも頭を下げ謝罪し、唯一頭を下げてないぼたんがポカンとその状態を眺めていると言う謎な空間が出来上がった。
「いぶき〜上伊那さん〜高良さん起きた?」
「寮長やっぱり病院行きます?」
「勘違いして顔面に膝蹴りなんてマジヤバっすね」
数回のノックの後、三人の女性が部屋のドアを開け顔を出す。どうやら他の寮の住人のようだ
「あら小澤さん目が覚めたのね、具合はどう?」
長髪の大人びた女性がぼたんや寮長の隣に座り、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「あ、は…はい大丈夫です…えっと…」
「あぁ私は郡上かなで、修士1年よ。後ろにいるちょっと気怠げなのが遊佐あかねさんで、その隣が北森やえかさん、2人とも2年生よ」
「どうもっす」
「どうも」
「俺は3年の小澤千秋です、よろしくお願いします」