問題児たちと憑依者たちが異世界から来るそうですよ? 《凍結中》   作:夜明けの月

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さてと、完成したから更新しました!後悔はしていない!

………ちゃんと日曜日も投稿しますのでよろしくお願いします。

それではどうぞ。


新たなギフトゲームの開始だそうですよ?

洞穴の奥で浩也達のギフトゲームは始まった。飛鳥は赤い鋼の巨人"ディーン"を従えるため必死だ。浩也はというと、

 

「……………」

 

目を閉じ、精神を研ぎ澄ましていた。数分後に目を開き、刀に手をかける。

 

「……ッ!!?」

 

ガクン、と全身の力が抜け落ちる。それと同時に精神が乱れる。

 

「(これは……厄介だな……)」

 

精神を飲み込む。群体精霊が言っていたことだ。浩也は持った者を試す、すなわちこの刀自体が己を所持するのにふさわしいか吟味しているのだと予想した。そしてふさわしくないと判断した場合、

 

「(精神が飲み込まれ、死に至る。……これはある意味恐ろしいな)」

 

油断することが許されない、と浩也は判断した。

 

「(この状態が七日間続くのか……?これはーーーー)」

 

面白い、と浩也は口角を上げる。二人のゲームはまだ始まったばかりであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

英太side

 

審議決議から六日経った。審議決議でゲーム再開は一週間後となったため、明日がゲーム再開の日である。だが、

 

「あの馬鹿野郎、いったいどこに行きやがったんだ?」

 

"黒死病の魔王(ペスト)"とその仲間と戦った時以来戻ってきていない。明日がゲーム再開だってのに……。

 

「何かあったのは分かるんだが……くそッ!あの野郎また一人で抱え込んでやがるのか?」

 

俺は知っている。あいつがいつも誰かに心配をかけないように、自分の事は全て抱え込むことを。

 

どんなに辛くても、悲しくても顔には出さず、俺たちの前ではヘラヘラするくせに、陰では弱音を吐いていることを。

 

「……俺が一緒に背負ってやるって言ったじゃねえかよ」

 

俺はそばにある壁にもたれかかり、空を見上げる。

 

「戻ってこいよ司。誰かがお前を否定しても俺は、俺だけはお前の味方でいてやるからよ」

 

そこにはいない不器用で弄りがいのある親友に俺は言った。

 

英太side out

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

耀side

 

………誰かいる?

 

そう思った私は少し痛む頭を起こして周りを見る。そこにはベッドの横で椅子に腰をかけ、本を読む十六夜がいた。

 

「あ……十六夜」

 

「おい何露骨にテンション下げてやがる?俺じゃ不満か?」

 

「いや、別に……」

 

司がいたらよかったのにな、とか全くこれっぽっちも一ミリも思ってないから………ってそんなわけない。ぶっちゃけ司の方が良かった。

 

「……それでどうしてここに?」

 

「ゲーム再開まで暇なんでな。看病ついでに本を読み漁ってたところだ」

 

「それで、皆んなは?」

 

私がそう言うと十六夜は微妙な顔をした。

 

「英太は街を徘徊してる。東雲はクーフーリンと特訓。浩也とお嬢様は連れ去られてから未だ行方不明。司に関してはどこに行ったか、どこにいるかさえ分からねえ」

 

「そう……」

 

飛鳥達も心配だけど、司はどこにいっちゃったんだろ?

 

「それでゲームは解けたの?」

 

「ほとんど英太と俺が解いた。もう"偽りの伝承"と"真実の伝承"も分かってる」

 

「早いね……」

 

「天才が二人もいればあれぐらいは問題ねえよ」

 

「天災の間違いじゃない?」

 

「んだと?俺はいたって普通だぜ?」

 

「……ありえない速度で走る男を普通とは言わない」

 

「ヤハハ!全くもってその通りだ!」

 

と、そんなことは置いといて本題に入らなきゃ。

 

「ちょっと相談があるの」

 

「ん?なんだ?」

 

「私もギフトゲームに参加させて」

 

私の発言に十六夜は目を見開いて驚く。

 

「……本気で言ってんのか?」

 

「本気。じゃないと黒死病にかかってるにも関わらずこんな無謀なことなんて言わない」

 

「…………」

 

十六夜は無言で考える。そして出した答えが、

 

「駄目だ」

 

「で、でもーーー」

 

「というと思ったか?」

 

は?と説得しようとしていた私は固まる。

 

「お前は駄目だと言ってもどうせ参加しようとするだろ?それに俺が判断することじゃねえ。お前自身が判断することだ。それを俺がとやかく言う権利はない」

 

十六夜は椅子から立ち上がって続けた。

 

「お前が何をしたいのかはわからねえが無理はするなよ?それと黒ウサギ達には自分で説得してこい。いいな?」

 

「うん……。ありがと十六夜」

 

「礼を言われるようなことはした覚えはない」

 

そう言って十六夜は部屋を出て行った。

 

私はこんなところで立ち止まってるわけにはいかない。一秒でも早く、司の横に立てるように強くならなくちゃいけないんだ。

 

そう思って私は起き上がり、服を着替えて部屋を飛び出していった。

 

耀side out

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

全てが進行していく中、神野桜花は自分の自室でくつろいでいた。来客が来るまでは。

 

「シェイド、いるのはわかってるのよ?」

 

すると空いている窓に突如腰をかけているシェイドが現れる。

 

「ケケケ、やっぱりあんたは分かったか。それにしてもいつ戻ってきた?シルビアが心配してたぜ?」

 

「ふふ、やっぱりあの子心配してたか……。まあそれはいいとして」

 

「よくない。今シルビアがソワソワしてるからコミュニティのみんな何したらいいかわからなくて困ってるんだよ。オレと零以外」

 

「あら?零もいるの?あの子『絶対このコミュニティを抜けてやるーーッ!』とか言ってなかったっけ?」

 

「それが何をとち狂ったのか、オレを師匠とか呼び出してね〜。討伐の仕事に連れて行ったのが間違いだったのかな〜」

 

「多分それね」

 

笑いながら会話を楽しむ。途端シェイドの雰囲気が真剣なものに変わる。

 

「で、何するつもりだ?」

 

「え?何が?」

 

「とぼけんなよ。司に何させる気だ?」

 

「何というと?」

 

「はぁ……、穏便に済まそうとしたけど無理だなこれは」

 

突如としてシェイドの霊格が肥大化する。

 

「テメェはあいつを殺す気か?」

 

「そんな訳ないでしょ?あの子は私の息子なのよ?」

 

「あくまでシラを切るか…。シルビアたちは気づいてないがオレは気づいてんだぞ?テメェは黒月静流と繋がってる。違うか?」

 

「……へぇ、そこには気づいたのね。だけど先に言っておくわよ。余計な詮索は己の不幸(絶望)を招くわよ?」

 

「チッ、警告ありがとよ。それじゃあオレはもう行くぞ。あとシルビアには会ってやれ。結構心配してたんだからな」

 

そう言い残してシェイドは去っていった。

 

桜花は一人になった部屋で呟く。

 

「……ごめんね司。最悪の事態を回避するにはこうするしかなかったの。お願い司、今は……今だけは……」

 

自分の運命に目を背けないで、と願うのだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

三月side

 

現在、魔王のギフトゲームが始まったばかりだ。私も役割があるからそこに向かってるんだけど…。

 

「あの馬鹿司。結局帰ってこなかった」

 

でもこんなに帰ってこなかったのはなかっーーーいや一度だけあったか。

 

「まったく、一人で抱え込みすぎなんだよ司は」

 

『そういう主人殿はお節介かつ世話焼きじゃないですか』

 

「黙らっしゃい」

 

ツッコミを入れるクーフーリン。まあ間違ってはいないけど……。

 

そんなことをしていると目の前の景色がガラッと変化する。

 

「……!!?何これ!?」

 

『これは……ハーメルンの街ですかね。"ハーメルンの笛吹き"の伝承に出てくる街かと思われます』

 

「解説ありがと!で、目的の方向はどっち?」

 

『面倒なので憑依していただけませんか?』

 

「オーケー。"半人半神の英雄"」

 

私のギフト"憑依者"は司のものとは少し違う。司のは完全に霊格などを自分に宿すことができるが私のは違う。身体能力は飛躍的に上がるが霊格までは宿せない。クーフーリンには『主人殿のただの力不足です』って言われた。……これでも頑張ってるのに。

 

現在私に司と違ってできるのはクーフーリンとの情報共有。クーフーリンは半径十キロメートルもの範囲の情報を得ることができる。これ便利。狙った獲物も見逃さないしね♪

 

「みーつけた」

 

今回の作戦の対象を見つけ、飛んでいく。

 

今回作戦とは、黒ウサギとサンドラがペストを、十六夜がヴェーザーを抑え、レティシアと英太とジンと桜花さんはステンドグラスを割りに行っている。ステンドグラスには偽りの伝承っていうのがあるらしい。

 

それで余った私は以前司が戦っていた黒ローブを任された。

 

「?あれ?おかしいな……」

 

反応が消えた……?いや、そんなことは……?

 

私は反応が消える前の黒ローブがいたところに着いた。そこには思わぬ人がいた。

 

「……え?司?」

 

「お?三月か?」

 

そこには今の今まで行方不明だった司がいた。

 

三月side out

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

時は遡り、ゲーム再開直後。

 

「ヒャヒャヒャ、逃げずに来たか?」

 

「…………」

 

「なんだよ黙りカァ?」

 

愉快そうにバアルは嗤う。

 

「どうしタァ?怖気ずいたカァ?なんなら逃げたってーーー」

 

「……失せろ」

 

突如バアルの目の前に現れた司。そのまま回し蹴りをバアルの腹に叩き込む。

 

「ガァ!!?」

 

「こっちは少しイライラしてんだよ」

 

バアルはよろめく。司は容赦なく追撃する。

 

「"炎を穿つ勝利の剣"。"炎剣:蜃炎閃"」

 

司は剣を横に薙ぎ、バアルを斬ろうとするが、

 

「ケッ、当たるかよそんなもんに!」

 

後ろに飛びかわそうとするバアル。だが、そんなバアルを何かが襲う。

 

炎剣:蜃炎閃。蜃気楼でレーヴァテインを偽装し、不可視化して斬りつけるという剣技。

 

それは見事に当たり、腹を斜めに斬られたバアルは血を吐き出す。

 

「ゲホッゲホッ!テメ…ェ……!」

 

「まだまだいくぞ」

 

その後も司の猛攻撃は続く。左足に氷を纏わせ、回し蹴りを食らわせる。司の狙っていた鳩尾には入らなかったがバアルの腹に直撃する。

 

「ガハァ!」

 

「"荒れ狂う炎龍の顎(インフェルノレイド)"」

 

司の右の拳に膨大な炎が生み出され、炎は龍の顎の形を成す。そしてその拳バアルに叩き込む。

 

「や、らせるかヨォ!!」

 

バアルはそれに対抗するために風で己を守るように纏う。

 

双方がぶつかり合った瞬間、風と炎が吹き荒れる。

 

「おおおおおおおおおお!!」

 

「ケッ、この…程度かよ…がっかりだな全くヨォ!」

 

バアルは左手に風を纏わせ、左手を司の方向に振る。すると纏っていた風は風の刃となり司に直撃する。

 

ーーーーかのようの思われた。

 

「………な!!?」

 

司は両手がふさがっていて、なおかつ攻撃の途中だというのにその刃を防いだ。

 

「すまないクロウ」

 

『構いませんよマスター。それではさっさと終わらせましょう』

 

「ああ」

 

炎龍の顎の力が増す。バアルは長期戦はまずいと思ったのだろう。炎龍の顎に風をぶつけようとするが、司の炎の勢いが強すぎた。バアルの風は押され、炎龍の顎を叩き込まれる。炎龍はバアルに噛みつき炎で包む。

 

「"炎龍の逆鱗"」

 

途端目の前のバアルを包み込んだ炎が弾け飛ぶ。その中から現れたバアルの体はボロボロになっていた。

 

「ガハ…………!!!?」

 

「こんなもんか?」

 

「く…そ……。テメェ……」

 

「次はお前がやってきてもいいぜ?やれるならな」

 

「あ…あそうかよ…。なら次は俺が行かせてもらうゼェ!!」

 

バアルは自分の周りに風を纏う。その勢いは嵐のように強くなり、強風が吹き荒れる。

 

「死ね、クソガキ!!」

 

嵐と化した風は数多の刃となって司を襲う。風の刃を司を取り囲むように放ったため司の姿が見えないが、ズタズタに斬り刻まれているだろうと想像する。するととバアルは堪らず笑い出す。

 

「ヒャ…ヒャヒャ……ヒャヒャヒャ!ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

「何がおかしい?」

 

「ヒャ……?」

 

バアルは歓喜して笑っていたが、その笑いは驚きと恐怖へと変わる。

 

「なんで………なんでだ……!?殺す勢いでやったのになんでお前は無傷(・・)なんだよ!!?」

 

バアルは今まで耐えてきた人物がいない程度の風を放った。そのはずなのに司は無傷だった。バアルの問いに司は答える。

 

あの程度(・・・・)が殺す勢いだと?笑わせるなよ」

 

司は不敵に笑う。バアルにはその笑みにより感情が恐怖で支配される。

 

「(何故だ…何故だ何故だ何故だ?!前までは軽く殺せるような人間だった。なのにどうして殺せない?!)」

 

以前バアルは黒月に言われていたことを思い出す。

 

『一度植えつけられた恐怖は植えつけられた本人の精神が強くなければ払拭できない。それが例え修羅神仏でもだ。覚えとけ』

 

黒月の言う通りだったと歯噛みするバアル。以前まではなんとも思っていなかった司が今では最大の脅威と化している。

 

「ふざけるな……ふざけるナァ!!」

 

バアルはありったけの力を解放する。もう一度体に風を纏う。

 

「殺す……今ここで殺す!」

 

先ほどよりも風が強くなっていく。嵐の勢いを超えている。おそらくこれが本気なのだろうと司は思った。

 

「もういい。これ以上続けても意味ないだろ?」

 

「消え失せろォ!クソガキィィィ!!」

 

先ほどよりも多く、強い風の刃が司に迫る。それを司は、

 

 

 

 

「消え失せろ……ッ!!」

 

 

 

レーヴァテインを一振りし、生み出した炎で相殺した。

 

「…………は?」

 

「これで終わりだ」

 

司がそういった直後、バアルの心臓は司の右手にあるレーヴァテインによって貫かれる。バアルの体が光の粒子となり消え始める。

 

「て……めぇ……」

 

「恨むんだったらお前の行いを恨むんだな」

 

司は皮肉気にそう言った。そしてバアルは司を睨みこう言った。

 

「ケッ、安心…しない事だな…。"絶望"はいつでも…お前に忍び…寄る……ぞ……」

 

そしてバアルは消え去った。その直後、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「………え?司?」

 

「お?三月か?」

 

「お?じゃないよ!一体全体何処に行ってたのさ!?」

 

「い、いろいろあったんだよ。それよりみんなは何処だ?」

 

「ステンドグラス探したり、敵と戦ったりしてる」

 

「なら戦う方に加勢する。みんなの場所まで案内よろしく」

 

「了解!さっさと行こう!」

 

そういって司達は急いでコミュニティの同志達の元へと向かった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

一方、英太とレティシアと桜花と耀は苦戦していた。

 

「チッ、同士討ち禁止とか無理だろあれ!」

 

「まさか"サラマンドラ"の兵士を盾に使うとは……」

 

「これじゃあ黒と白でも無理ね」

 

『すみませんマスター……』

 

「どうすればいいの……?」

 

ステンドグラスを砕いたり回収したりとしていたが、ラッテンが来てしまい戦うことになったのだが、ゲームルールの禁止事項に『自決及び同士討ちによる討ち死に』と記載されているため攻撃ができずにいた。

 

「ふふふ、踊りなさい。好きなだけ、たっぷりと」

 

そんな光景をラッテンは見下ろしながら笑う。

 

「………あーうぜ」

 

流石にこれには英太も頭にきたようで、

 

「火蜥蜴ごとぶっ飛ばす」

 

「ちょ、英太!同士討ちは禁止ってーーー」

 

「『同士討ちによる討ち死に』が禁止なだけであって何も殺さなければ構わない。ってことだ露出魔。今そこからたたき落としてやるから覚悟しやがれ」

 

「あら♪楽しみ」

 

「何処までもバカにする気かあのアマ………」

 

バカにされたことに腹を立てた英太は詠唱を始める。

 

「させるわけないじゃない♪シュトロム、火蜥蜴共、邪魔しなさい」

 

その命令に従い、"サラマンドラ"の兵士達は火を吐き、シュトロムは強風で英太の詠唱を邪魔しにかかる。

 

「………くそッ、"付与(エンチャント)速度(スピード)"!」

 

英太は移動速度を一時的に上げる付与魔法を使う。迫り来る炎と風を後ろに跳び、難なくかわす。

 

「詠唱できさえすれば……!」

 

「無理ね。あれじゃあ攻撃できない。それに攻撃できたとしても、同士討ちをさせようと誘導してくるかもしれない」

 

「どのみち耐えるしかないのか……?ならいつまで耐えればいいのだ!?」

 

レティシアが叫ぶが誰もこの状況を打破できるようなギフトを持っていなかった。最悪、耀ならできるかもしれないが黒死病にかかっているため無理はさせられない。

 

「お困りのようね。手助けして差し上げましょうか?」

 

後ろからそんな声が聞こえてきた。声の主はさらわれていた飛鳥だった。

 

「飛鳥!」

 

「久遠さんか!今まで何処に……?」

 

「それは後よ。それとようやく会えたわね偽りの"ハーメルンの笛吹き"。いえ、本物の"ネズミ捕り道化(ラッテンフェンガー)"」

 

「なっ……貴女今まで何処に、」

 

「そんなことどうだっていいじゃない。それより、私達が今ここにいる理由、分かるかしら?」

 

「………私に捕まりに来たとか?」

 

飛鳥は不敵に笑いこう言った。

 

 

「私達は貴女を倒すためにここにきたのよ、露出魔(ラッテン)

 

 

その言葉の直後、ザシュッという生々しく何かを切り裂く音がした。

 

「ガッ………!?」

 

「背中がガラ空きだね。油断大敵、この言葉知らないの?」

 

そこにはさらわれていた二人のうちのもう一人、浩也がいた。

 

「浩也!?」

 

「ん?ああ、篠宮君お久しぶりだね」

 

「あ、ああ久しぶりってそんなこと言ってる場合か!」

 

浩也は飛鳥達の元に建物から跳躍して降り立つ。

 

「さっきのは……流石に効いたわよ……」

 

「あれで効いてないとか言われたら怖いよ」

 

「まあいいわ。浩也君、後は任せてくれるかしら?」

 

「仰せのままに」

 

そう言って浩也は飛鳥の後ろに下がる。飛鳥は英太達よりも一歩前に出る。肩にはとんがり帽子の精霊がいた。己の真名を偽る怨敵を見つけたラッテンは、背中にはしる激痛に耐えながら艶美な表情を歪ませ叫ぶ。

 

「とうとう姿を現したわね偽物……!捕まえなさい、シュトロム!」

 

「BRUUUUUM!」

 

三体の陶器の巨兵は飛鳥を襲う。飛鳥はそれを一瞥し、悠々とギフトカードを掲げた。

 

「さあ、貴女の力を見せてちょうだいーーー来なさい、ディーン!」

 

ワインレッドの輝きが一面を満たす。

 

「ーーーーーDEEEEEeeeeEEEEEEN!!!」

 

主人の呼び声に、大地を揺らす雄叫びを上げる赤い鋼の巨人。ラッテンはその巨人に驚愕しながらも、シュトロムに命令する。

 

「か、構わないわ、圧殺しなさいシュトロム!」

 

シュトロムは大気を揺らし、周囲の建造物を吸い込み始め、顔面に空いた巨大な空洞を臼砲のようにして瓦礫の塊を打ち出した。

 

「砕きなさい、ディーン!」

 

「DEEEEEeeeeEEEEEEN!」

 

ディーンの重鈍な動きが一気に加速し、打ち出された瓦礫の塊をたたき落とす。

 

「くっ、構わずやれ、シュトロム!」

 

そう言ってシュトロムに命令するが、巨大な岩塊をたたき落とされたように陶器の巨兵の体は、巨躯の剛腕に叩きつけられ砕け散る。

 

あっという間に三体のシュトロムは全て砕かれ敵はラッテンのみとなる。

 

「さてと……、これ俺たち必要か?」

 

「正直に言うわ、必要ないわね」

 

「だったら俺と浩也は黒ウサギのところに行くが、桜花さんはどうします?」

 

「私も行きましょうかね」

 

「私はジン達の元へ向かう。飛鳥よ、相手が一人だからと言って機を抜くなよ?」

 

「分かってるわよ」

 

飛鳥以外の全員が他のところへ行ったところでラッテンに飛鳥はこんな提案をした。

 

「さてと、貴女に提案よ。私とゲームをしましょう。貴女に一曲の演奏を許可し、その一曲で、私に服従しているディーンを魅了してみなさい」

 

「ふ、ふふふ、舐められたものね。いいわ、貴女のゲームに受けて立つわ。一曲で構わないのかしら?」

 

「ええ。いいわよ」

 

「でしたら幻想曲"ハーメルンの笛吹き",どうかご静聴のほどを♪」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ラッテンの奏でる音色は今まで聞いたどの音色よりも美しい旋律だった。そんな音色が飛鳥を夢へと誘う。

 

幼い頃抱いていた籠の外の世界。

 

叶うことのなかった願い。

 

そんな夢に身を委ねていると、ふとある少年のことを思い出した。

 

いつも問題行動を起こし、周りを困らせ、そして飛鳥自身もそれに付き合わされる。しかし、それが楽しかった。今までに感じたことのない感覚だった。彼が籠の外の世界をーーーそれが例え箱庭だとしてもーーー教えてくれたと言っても過言ではなかった。

 

最初は気に入らなかった。だが、次第にそんな気持ちも薄れていき、いつしか心惹かれていた。

 

永遠にできないと思ったものの一つが恋だった。それを彼にしていたのだ。

 

「(私は………)」

 

逆廻十六夜のことが好きだったのだと改めて実感する。

 

ふと捨ててきた世界の残響が耳をくすぐり幻想を見せてくる。だが、

 

「(彼がいない世界なんてつまらないわ………)」

 

そう思い陶酔から目を覚ます。また彼と会い、いつかこの想いを伝えるために。

 

「一曲分……という約束よね。素敵な夢は見られましたか、御客様?」

 

「………ええ、とても素晴らしい夢が見れたわ」

 

するとラッテンが光の粒子となり消えていく。

 

「あーあ、負けちゃったか。じゃあね可愛いお嬢さん。ご静聴感謝します♪マスターによろしくね」

 

「此方こそ。素敵な演奏をありがとう」

 

ラッテンは敗北を認めて風と共に消える。カラン、と落ちた笛を拾い上げる。

 

「さて、私達も黒ウサギの元に向かいましょうか」

 

「DEN」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

十六夜とヴェーザーは先ほどから規格外な戦いを繰り広げていた。戦いの傷跡に地面がところどころ抉れていた。

 

「はぁ……飽きた」

 

「は?」

 

「飽きたんだよ。殴ったり殴られたりするのも新鮮だが、単調でつまんねえ」

 

不変を嫌う十六夜が、パターン化された戦いを嫌うのは自然である。

 

ヴェーザーは呆れたように構えを解き、巨大な笛を肩に担いで問う。

 

「そんなこと言ってもお前……じゃあ、どうすんだよ?」

 

「んーそうだなぁ」

 

瓦礫を蹴りつつ真剣に考え込んでしまうふりをする十六夜。十六夜はさっさと飛鳥を探しに行きたいという気持ちでなぜかいっぱいだった。

 

「(ったく、なんなんだこの感情は?)」

 

不快ではないにしろこの感情の謎を解くためには飛鳥にあった方が早いと十六夜は推測したのだが、

 

「(とりあえずこいつをぶっ潰すのが先決か……)」

 

「おい、さっさと決めやがれ」

 

気づくとヴェーザーが痺れを切らしていた。

 

「ならこうするか。お前の取っておきを、俺が真っ向から叩き潰す!」

 

「はぁ?」

 

「おいおい誤魔化すなよ。懐に飛び込むたびに狙ってた隠し球の事さ」

 

十六夜は表情を消し、

 

「それに気に食わないんだよ。俺の懐に飛び込む時のお前の目が。勝利を確信しているお前の目があぁ気に食わない!」

 

そして史上最大の挑発を行う。

 

 

 

「なあ、ヴェーザー。俺はな。そんなお前を、本気のお前を打ち砕きたい」

 

 

傲岸不遜な言葉にヴェーザーはドッと脱力する。そして、

 

「OK、死ね糞ガキ」

 

己の霊格を全開放し、魔笛を掲げ、頭上で円を描くように乱舞する。それに応じ、激しい地鳴りと振動が襲う。

 

十六夜は腰を落とし、右腕に引き絞るように後ろへ下げ、

 

「よしよしいいぞ………!かなり期待できるじゃねえか……!!!」

 

大地の揺れが収束されると同時にーーー必殺の一撃はぶつかりあった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「……おい坊主」

 

「なんだ?」

 

「お前、本当に人間か?」

 

十六夜はボロボロの体でゆっくり立ち上がり、左手を掲げて続行を促そうとするが、サラリと、ヴェーザーの体が崩れ始める。

 

「チッ、召喚の触媒が砕かれればそうなるか」

 

「……消えるのか?」

 

「ああ。あーくそ、くだらねえ挑発なんて乗るもんじゃねえな」

 

「つれない事言うなよ。こっちは結構楽しかったぜ?」

 

徐々に存在が希薄になっていくヴェーザーに、十六夜は背を向け、

 

「じゃあな。何度も言うが楽しかった」

 

「はっ、そうかよ。それは何よりだ。……ま、達者でな」

 

そう言ってヴェーザーは光の粒子となり崩れ去った。

 

「さて、俺も魔王様の元に行くとするか」

 

十六夜はボロボロの体を動かし、魔王の元へ急ぐのだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

司side

 

今の揺れ……、十六夜達、決着がついたのか……。

 

「も、もう少しで着くよ!」

 

三月が肩で息をしながら言った。

 

「疲れてるなら休んだ方がいいぞ?」

 

「だい、じょうぶだよこのぐらい!みんなが頑張ってるのに私だけ休んでいられない!」

 

「ならいいけど……」

 

そう言っていると目の前の光景が変わる。

 

黒ウサギとサンドラが見える位置にまで来たと思ったらいきなり黒い風が天を衝く。上空から降り注ぐ風は参加者を庇った幾人かの"サラマンドラ"のメンバーを飲み込む。そして、その者達は即座に命を落とした(・・・・・・)

 

途端、頭が激しく叩かれたかのような感覚に襲われ、動きが止まる。

 

「司……?」

 

「…………なん……だよ……。なんで……また………」

 

俺の目の前にはあの時の光景が浮かんできた。俺を庇い死んでゆく人々、目の前に積み上がる死体達。

 

「…………だ……………」

 

なんでまた誰かが死ぬんだ?なんで俺はまた助けられなかったんだ?そんな自分に憤りを感じる。

 

「いや、だ…………」

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 

もうこんなのは嫌だ。誰かが目の前で死ぬなんて。自分が誰も守れないなんて。

 

「………ろす……」

 

目の前が黒い何かで埋め尽くされていく。

 

あいつを、この元凶を………。

 

「『こ、ロス………!!』」

 

バキンッ!と俺の中で何かが壊れて、暴れ出した。

 

「あああアアアァァァぁぁぁあああAAAAAAAaaaaaa!!!!」

 

司side out

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

黒ウサギはサンドラとともにペストの相手をしていた。その途中に"サラマンドラ"のメンバーが命を落としてしまった。

 

「よくも……よくも"サラマンドラ"の同士を……!」

 

サンドラの赤い髪が怒りで燃え上がる。黒ウサギも覚悟を決めたように、白と黒で彩られたギフトカードを取り出した時、一陣の風が黒ウサギの隣を駆け抜けた。

 

「ガッ………!?」

 

次の瞬間、ペストが苦しみの声を上げる。そしてそこには、

 

「つ、司さん!?」

 

ペストの首を握りしめる司がいた。だがどこか雰囲気が違う。怒り、憎しみ、殺意といった負の感情が伝わってきた。

 

「司さん………?」

 

いつもと違うのは見た目から見ても分かることだった。目は真紅に染まり、髪は赤黒くなり少し伸びていた。

 

「な!?はな、せ!」

 

ペストは司の手を話そうと黒い死を与える風を司に纏わせるが、

 

「……う、そ……」

 

司に効いた様子はなく、司は手に力を入れペストの首を締め上げる。

 

「う、が……やめ……」

 

「…………」

 

「う、ぁ…………」

 

そうしているとペストは全身を脱力させ、気絶したかのように思われたが、光の粒子となって消えた。ペストは司の手によって死んだのだ。

 

「あれ、神野様ですよね……?でもなんだか雰囲気が違う……?」

 

「黒ウサギ!どうなってるの?!」

 

「三月さん!いえ、黒ウサギにも何が何だか……」

 

黒ウサギ達があたふたしている。そんなことをしていると、

 

「あああアアアアアァァァぁぁぁAAAAAAAaaaaaaAAA!!!」

 

怒りと憎しみに満ちた、悲しい叫びが辺りを響かせる。

 

途端、上空から黒い契約書類が降ってくる。

 

「………嘘……黒い契約書類……?!」

 

「まさか……そんなことって……」

 

そこにはこう記されてあった。

 

『ギフトゲーム名 血塗られた過去

 

・プレイヤー一覧 ハーメルンの都市に存在する者

 

・プレイヤー側ゲームマスター 篠宮 英太

 

・ホストマスター 神野 司

 

・ホストマスター側 勝利条件

・全プレイヤーの殺害。

 

・プレイヤー側 勝利条件

一、ホストマスターの殺害または打倒。

二、血塗られた過去を受け止め、真なる怒りを鎮めよ。

三、忌々しい過去に終止符を打て。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の名の下、ギフトゲームを開催します。

"    "印』

 

忌々しき過去に終止符を打つための最終戦の幕が、今上がった。




初めてこんなに書いたかも……。

英太「一万字超えたもんな」

あとUAがいつの間にか一万を超えてました!皆様、ありがとうございます!

三月「いよいよここまで来たね」

ですね。次回から特別編では明かされなかった司君の本当の過去が明かされていきます。

浩也「といっても、第二章もあと少しで終わりでしょ?」

まあそうなんですけど。それでは今回はこの辺で。

三月「感想、評価、誤字脱字の指摘、ダメだしなど待ってるよ!」

英太「今回も読んでくれてありがとうな!次回も楽しみにしてくれ!」

浩也「活動報告にてアンケートをしておりますので回答していただければ嬉しいです」

それ僕のセリフ………。

「「「気にするな」」」
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