金持ち大学生「どうしたん? 大丈夫? 話きこか?」 作:あばなたらたやた
午後のRingは、昼と夜のあいだに漂うような静けさに包まれていた。
ライブのない時間帯。店内には控えめなBGMが流れ、コーヒーの香りがゆっくりと満ちていく。
真我は、睦との待ち合わせまでの時間を窓際の席でカップを傾けながら、外の光をぼんやりと眺めていた。
そして時間潰しに声をかけていた凛々子の姿が見える。
「お待たせ」
聞き慣れた声に視線を上げる。
凛々子が軽く手を振りながら近づいてくる。
「こんにちは」
「こんにちは。待った?」
「いえ、今来たところです」
向かいに座った凛々子はメニューを開きながら、ふっと笑った。
「その台詞、今来た人しか言わないやつだよね」
「事実ですから」
「だよね」
「時間を作ってくれてありがとうございます」
「いいよ、大切なスポンサーさんだし、色々と融通してくれた恩もあるから。開店当初からの付き合いだしね」
「そういってもらえると助かります」
短い会話に、自然と空気が緩む。
注文を終えると、テーブルに小さな沈黙が落ちた。
その静けさの中で、真我が先に口を開く。
「少し、考えていることがありまして」
「うん」
凛々子は視線だけで続きを促す。
「子供たちと接するとき、どこまで意見を伝えるべきか……迷うことがあります」
真我は言葉を選びながら続けた。
「主体性はできるだけ尊重したいんです。選ぶのは本人であるべきだと思うので、管理や指示は避けたい」
一度、カップに視線を落とす。
「でも、何も言わなければ見落とすこともある。逆に言い過ぎれば、その子の選択肢を狭めてしまうかもしれない」
静かに息を吐く。
「伝え方を間違えれば、“考えること”そのものを奪ってしまう気がしてしまうんです。」
凛々子は小さく頷いたあと、肩の力を抜くように笑った。
「なるほどね。でもさ、そんなに気負わなくてもいいんじゃない?」
真我が顔を上げる。
「思ったこと、そのまま言えばいいと思うよ。」
「……そのまま」
「うん。押し付けるんじゃなくて、“私はこう思った”っていう形ならいいじゃない?」
ストローを指で回しながら、凛々子は続ける。
「全部正解の言葉を探そうとするから、苦しくなるんだよ」
「……」
「子供たちだって、意見を聞く経験は必要だし、どう受け取るかは本人が決めること」
一度言葉を切り、穏やかに微笑む。
「だからさ。思ったことを口にするくらい、そんなに怖がらなくていいよ」
真我はその言葉を静かに受け止める。
――もし傷つけたら。
――もし道を狭めてしまったら。
――もし善意が独善に変わってしまったら。
いくらでも悪い未来は想像できる。だから慎重になる。だから言葉を選び続ける。けれど同時に、それはまだ起きていない未来でもあった。
「……そうですね。未来を恐れて何も言えなくなるのも、違うのかもしれません。切り替えましょう。傷つかない道を示すのではなく、共に傷つくことに」
「うん」
「凛々子さんの言う通り、一度やってみます。思ったことを、ちゃんと丁寧に伝えるように」
「それでいいと思う」
凛々子も自然に笑った。
「真我くん、考えすぎるところあるからね」
「自覚はあります」
「失敗したら、そのときまた考えればいいだけだよ。それに子供たちっていってるけど私からすれば、真我くんもまだまだ子供だよ」
「それを言われると弱いですね」
その言葉は、不思議と軽く、そして確かだった。
完璧である必要はない。
間違えたら、修正すればいい。
それもまた一つの在り方だ。むしろ真我とって王道ですらあった。
凛々子はコーヒーを一口飲み、柔らかく言った。
「頑張って」
「ありがとうございます。」
真我は静かに頭を下げる。
そのとき、店のドアベルが軽やかに鳴った。
視線が自然と入口へ向く。
「こんにちは……」
控えめな声。
若葉睦だった。その隣で、燈が小さく会釈をする。
「あ……真我さん」
燈の表情がわずかに緩む。
睦も静かに歩み寄ってくる。
「待った?」
真我は立ち上がり、穏やかに首を振った。
「いえ、ちょうど話が終わったところです」
凛々子は二人を見て、優しく微笑む。
「こんにちは」
四人の視線が交わる。
Ringの静かな午後が、ゆっくりと次の時間へと移っていった。
サブストーリーとして一番交流してほしいキャラは?(メインは祥子と初音
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若葉睦
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椎名立希
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長崎そよ
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高松燈
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野良猫
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祐天寺にゃむ
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八幡海鈴
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モーティス