オンリー・ロンリー・リリィ・ステップ~ダンジョンにしか居場所がなかった独りぼっちの大剣妖精は、友達が出来たので孤独を孤高に変えて『敵』に抗うことにしました~ 作:北乃ゆうひ/YU-Hi
中沢池ダンジョンでブラックカルゴという、リリィの身長と同じサイズの黒く輝く殻を背負ったカタツムリを討伐。殻を回収した。
黒というより濃い紫色をした本体も、モヤになる前に回収して、ギルドで報告する。
納品された殻四つで、報酬は6万円だ。綺麗だから後日、報酬の増額があるかもと言われた。
さらに本体の方も査定に出したが、こちらは殻の状態を保つのを優先にしたのもあって、お世辞にもいつもより綺麗とは言えなかったようだ。
それでも、素材としては使えなくもないとかで、四匹合計で2万円となった。
間に宮囲が入らなかったからか、想定してない額を渡されてビックリだ。
しかし、嘘偽りなくこれが適正価格だから受け取って大事にしなさいと太巻に言われてしまった。
ともあれ、これでご飯に迷わずに済む――そんなホクホク気分で帰路につく。
道中、コンビニでおにぎり1個とチータラを買った。しかも、見たこともないイカスミ味とかいう真っ黒いチータラだ! とても楽しみである。
着替える為に使ってる秘密の場所で、着替えついでに豪勢な夕食だ。
満足いくまで夕飯を楽しんだら、いつものように筋トレをして、秘密の場所をあとにした。
いつもより遅くなってしまったが、どうせ何も言われない。実際、何も言われなかった。
昨晩、衣乃に送り届けられたのを見た時は文句言ってきたくせに、今朝も今夜も、リリィのことを気に掛けたりもしない。
結局、母にとって大事なのは世間体や自分のキャラクターイメージだけであって、
家に両親の姿がなかったので、これ幸いとばかりにシャワーをちゃちゃっと浴びてスキッリしたところで、自室に戻る。
お腹も切なくないし、身体もすっきりしている。
寝るにはまだ早いけれど、やることもないので布団の中に潜った。
ずいぶんと久しぶりに、リリィは気持ちよく眠りにつけた気がする。
翌朝、いつものように目覚ましが鳴るより早く目が覚める。
「……お? おお~?」
妙に身体が軽い。
ちゃんと夕飯を食べて、シャワーを浴びて寝ると、翌朝は気持ちよく目覚めるのかもしれない。新発見の事実だ。
部屋を出て、リビングに両親がいないのを確認。リビングを通って洗面所へと向かい、さっさと顔を洗って部屋に戻る。
人の気配そのものはするので両親はいるのだろう。寝てるのか、部屋で何かしているのかは知らないが。
部屋へと戻ってきたら、とっとと準備をして家を出る。
駅に向かう途中、コンビニで梅おにぎりを一つ買った。
酸っぱかったけど美味しかった。食べたら逆にお腹が空いてきた気もする。
朝ご飯をちゃんと食べると元気がでる。これも新発見だ。
ともあれ、なにあれ、向かうは学校。
その前に秘密の場所へと行って、探索者用のコートを取り出すとそれを羽織ってフードを目深に被る。
顔を隠すのに無いよりマシだろう――とやってみた。
そろそろ春も終わる時期なので暑くはあるが、背は腹に変えられない。
結果として、妙な視線は半分くらい減った気がする。
ただ、やっぱりまだまだ話題にはなっているようで、電車の中でちょいちょいこちらを見て何か言ってる人たちはいた。
学校の最寄りに着いたら、昨日の帰宅の時にもやっていた気配消しモードで、そそくさと教室に向かう。
自分の席にカバンをおいたところで、盛大に息を吐いた。
「おはよ。最果さん」
「あ、うん……おはよ」
声を掛けてきた蓮花に返事をする。
「その格好、暑くない?」
「暑いけど……注目、されるより、いい」
なるほど――と、蓮花は納得。
「あのさ、最果さんにちょっと相談だんだけど」
「?」
「……えっと、うちのアパートね、山というか森の中みたいな場所にあるんだけど。
その正面にある道路を挟んだ向こう側に鬱蒼とした木々に囲まれた公園があるんだ」
なんだかロケーションにすごい覚えがあり、リリィが思わず声を上げた。
「……あ。突発の、極小、ダンジョン?」
「あれ? 知ってる?」
「うん。把握は、してる……」
「どうにかなりそう?」
「……今日、ギルドから、そこの調査依頼……受ける、予定……」
リリィがそう口にすると、蓮花は安堵したように息を吐く。
「一応、見つけた時点で近隣の保育園とかには言ったんだけどさ。
あまり人が寄りつかない公園とはいえ、近所の幼稚園や保育園が時々お散歩に使うから」
その言葉に、リリィの顔つきが少し変わる。
「確かに、急いだ方が……いいね」
「うん。無理しちゃいやだけど、よろしくね。最果さん」
そう口にする蓮花に、リリィは力強くうなずいた。
放課後――
「あれ? 最果さん、今日もすでにいない……」
昨日と同じようにリリィの姿を探すも、すでに教室からは出てしまっているようだ。
一緒に帰りたくはあったが、極小ダンジョンの話を聞いてカッコイイ顔をしてたことを思うと、急いで対処するべく動いてくれたということだろう。
それはそれとして――
「あ、安藤くん」
「ん? なんだ、
――リリィ以外の探索者資格持ち……つまるところ、安藤 善也にも声を掛けておきたい。
「あのね、最果さんがギルドに依頼を受けて調査する予定みたいなんだけどさ――」
突発の極小ダンジョンの話をすると、善也は小さくうなずいた。
「なるほど。了解した。彼女のホームは多摩センターだったよな?
そこからの距離を思うと……最果が来るまでは、見張りでもしようか?」
「見張り?」
あまり探索に関して詳しくない蓮花は首を傾げる。
それに対して、善也は「ああ」と相づちを打つ。
「今日は特に予定はないしな。人気の少ない公園とはいえ、近所に幼稚園や保育園があるって聞くと、安全策くらいはとっておいてもいい」
そう言うと、善也は教室を見回して、自分の友人を見つけると声をかける。
「田中」
「ん? どしたの、あんどー?」
クラスメイトと談笑していた田中 計悟は話を切り上げてこちらへとやってきた。
「帰り、少しダンジョンの入り口の見張りがしたいんだ。協力してくれ」
「いいけど、おれは資格持ってないよ?」
「調査担当が最果なんだ。彼女が来るまで、他のやつが入らないように入り口で待機してるだけでいい。そもそも調査依頼も受けてなければ調査資格も持ってないオレも、エントランスまでしか入れない」
善也の言葉に、計悟は少し目を
「ケンカ強いやつが欲しいの?」
「そういうワケじゃないんだが、そういうヤツの方が助かるって話だ」
「ダンジョンの外でのケンカなら、超人化ってやつは関係ないんだっけ」
「ああ。だから運動神経の良いやつがいると助かる。未登録、未発見の極小ダンジョンを敢えて報告しないで悪用するヤツや、イタズラに使うヤツも少なくないからな。強引なヤツを追い返す手段はいくつあってもいい」
「人手があった方が万が一の伝言係も増えるもんな」
「そういうコト。お前のその頭の回転と理解力の高さは助かる」
そんなやりとりをしたあとで、善也は改めて蓮花に向き直る。
「――そんなワケでこいつと二人で行くよ。道案内頼めるか?」
「あれよあれよと決まってついていけてないけど、うん。でもよろしくお願いするね」
クラスメイトたちがそんなやりとりをしているとはつゆ知らず。
リリィは朝と同じようにコートを羽織り、気配消しモードで学校から出ると、急いでギルドへと向かう。
とはいえ、ダンジョンの中ではない。気配は薄くなるかもしれないが、それも申し訳程度。
気温の高い日にフード付きコートを羽織っていることが逆に目立つ要因となってしまったのだろう。本人は気づいていないのだが、好奇の視線はやや向けられるようになってしまった。
(……あ、あれ? 注目、されてる……?)
駅の改札入る前に、やたらと見られている気がして落ち着かなくなってきた。
こうなってしまうとリリィはいたたまれなくなってしまう。
(……ば、バス……に、する?)
人目から避けるようにバス停に向かうが、こちらでも妙に見られてしまう気がする。
(バスもダメ、そう……)
そう判断したリリィは駅前から離れていく。
(あ……ギルド行くなら、こっちの道じゃない方がはやかったかも……)
とはいえ、駅前を抜けて反対側の道に出るのは、なんかもう嫌だな――と思ってしまったのだ。
(まぁ、行けなくもないから、こっちから行こう……)
こちらの道に気乗りしないのは、多少遠回りになるというのもあるが、一番の理由は、人通りも車通りも多い大通りだから――というのが一番の理由である。
寄り道もせず早足で――とはいえ、ダンジョンの外でのリリィはあまり体力がない。
昨日以上にヒィヒィ言いながらギルドについた頃には、学校を出てから一時間以上経っていた。
複合商業施設の前を通る時とか、すごい注目されてしまったのだ。
それを怖がって遠回りとかしているうちに、想定以上の時間がかかってしまった。
(すぐに太巻さんから依頼を受けて、すぐに出発しよう)
何かあってからでは遅いのだ。
でもギルドに入ると、妙なざわつきとピリつきがあった。
その雰囲気は昨日の比はない。
「あー、リリィちゃん。バッドタイミング」
「え?」
良く見るおじさん――