オンリー・ロンリー・リリィ・ステップ~ダンジョンにしか居場所がなかった独りぼっちの大剣妖精は、友達が出来たので孤独を孤高に変えて『敵』に抗うことにしました~ 作:北乃ゆうひ/YU-Hi
昼休み――
2年B組。教室。
教室の片隅で、黒髪の少女は、友人の席へと向かう。
適当な椅子を借りてその向かいに腰を掛け、お弁当を開けながら男っぽい仕草の似合うウルフカットの友人に声を掛けた。
「あれ? 真中くんたちは?」
「ん? あいつらなら、外行ったよ」
ウルフカットの少女も自分のお弁当を取り出してあける。
普段からパンク趣味全開だし、今もパンク趣味を思わせる小物なんかを身につけているこの友人が取り出すお弁当の中身は、少女趣味全開の可愛らしいものだ。
母親や姉妹が作ったものではなく、本人が作ったものである。
「今日って校門とこにキッチンカー来てたっけ?」
「そうじゃくて。午後サボるとか言ってた。配信用の動画とるんだってさ」
「ふーん。そっか」
学食や購買もある学校だ。
昼休みになると、どの教室も人がまばらになっていく。
そんな中で話題になるのは、ある意味でクラスの中心人物とも言える
「お前、最近あいつに冷たいじゃん?」
ウルフカットの女子生徒の問いに、黒髪の女子生徒は面白くなさげに肩を竦めた。
「イケメンだし配信も人気だからミーハー気分だったけどさ、この間の校門前のアレ見ちゃうと千年の恋もさめるわ。そっちだって興味なくなってるでしょ」
「だって純粋に動画が面白くなくなってるじゃん?」
その言葉に、黒髪の女子生徒は思わず納得の顔を浮かべる。
「あー……わかる。なんか仲間内で盛り上がってるのがすごい楽しそうで、みてるとこっちまで楽しくなる動画が多かったのに、最近は数字取るのに必死になってるっていうかさ、面白くないよね」
お茶で喉を湿しながら黒髪の女子生徒が同意すると、ウルフカットの女子生徒は話を続ける。
「そうそう。数字狙うのコト自体は悪くはないんだろうけど、学校で調子に乗ってるしさ、そのくせ必死すぎて動画が過激になりすぎて、正直ついていけねぇ」
「それ! 今までは学校サボってまでなんてやらなかったのにね」
「一年のチビに嫉妬心メラメラらしいし?」
「ああ。リリィちゃんね。まぁ可愛いし、校門の時はカッコよかったから、人気になるのは分かる」
「そのリリィちゃんとやらが話題を
「えー……土俵違うじゃん」
黒髪の女子生徒は思わず目を
日常系あるいは、日常の中で友達と馬鹿騒ぎする動画がウケているアキラと、ダンジョン配信――しかも本人が望んだものではなく偶然映り込んだり、明らかに無許可で撮影されたりしてバズっているリリィだ。
素人からしても、比べる方が間違っているのでは――と思わなくない。
「あいつダン配アンチなとこあるし。ダン配は全部やらせ、ドラゴンなんて実在しないとか未だに言ってるタイプだよ。だからダン配で話題になる一年が気に食わないんしょ」
「じゃあ何年か前に大騒ぎになった海岸の巨大浮遊クラゲとか、ラストダンジョンとまで呼ばれた空飛ぶ黄金の船とかなんなのよって話になるじゃん」
特に関東と九州の海岸に現れた空飛ぶ大クラゲ。
関東は被害最小限に倒されたものの、九州においては対応できる探索者が少なかったのもあって、大きな被害が出た。
死者も多数、建物の倒壊も多数。
ネット上では自己犠牲美少女ネキなんていう本気で言ってるのかおちょくっているのか分からない名前で呼ばれている探索者が、自分の命と引き換えにして被害を押さえたくらいだ。
それすらもやらせだなんだと言うのであれば、いくらイケメンのアキラであったとしても、幻滅どころの話ではない。
「だから、ダン配アンチなんだって。現実に人死にが出たはぐれモンスターや、世界中のマスコミが取材していた船が実在してるのは分かってるし、ダンジョン産の宝石だのなんだのを使って生活必需品が作られてる――みたいなのは理解してるの」
「意味わかんない。なにそれ。ようはダン配を理解したくないだけじゃん? なんか、幻滅っていうか? 完全に冷めちゃうわ。そういうの聞くと」
そう言ってペットボトルのお茶をあおった。
お茶を飲む友人の姿を見ながら、ウルフカットの女子生徒が思い返すような様子で話を続ける。
「真中が一気に人気出た時あるじゃん? あの時にそれをチヤホヤしてるとさ、渋い顔してるオタクくんたちいたじゃん? あれ、周囲から嫉妬してる……とか言われまくってたけど、違ったわ。あの時のオタクたちは正しかった。いや、それは今もか」
「うーん、なんとなく言いたいコトは分かる気がするけど、実際それってどういう意味なの?」
問われ、ウルフカットの女子生徒はお弁当のたこさんウィンナーを口に放り込み、少し考えてから答えた。
「あー……配信の閲覧数とかブックマークみたいな数字に対してさ、例えるならオタクくんたちはプロ野球それもメジャー級の選手を基準にして、真中をすごくないって言ってたワケ。
んで、何も知らないアタシらは田舎の草野球を基準にしてすごいって言ってた。そんな感じで通じる?
だから、そもそもお互いに見ていた『すごい』の基準が違ったんよ」
「それで例えると真中くんは地元じゃ負け知らず的な? 外を知らないからそれでイキれるって感じ?」
「近いかも。でもあいつは外を知らないってよりもさ、見て見ぬ振りじゃないかな? そんで地元しか見てない的な、ね? その地元も一年のちびっ子に脅かされている、と」
「だからテコ入れに必死なんだ。でもテコ入れの仕方間違ってない?」
「それだよなー! もうオワコンだろあいつ」
「なーんであんあのチヤホヤしてたんだろ、あたしたち……」
「ほんとになー」
二人はそう笑ったあと、ふと教室に居ないと思っていた女子がいるのに気づいて、ウルフカットの少女は声を掛けた。
「……あれ?
「はッ、隠す気もなく嫌味ぶつけてくるじゃん。ま、いいけど」
ハデな格好をした長乃と呼ばれた女子生徒は、軽く肩を竦めてから自分が広げていたお弁当を手に、こちらの近くの席に移動してきた。
「ガッコさぼってまでやる気ないっていうか? メンドクセーってなっただけ。
それに、最近のアキラたち。なーんか、ついて行けなくってさ。特に今日の企画とか、ちょっと調べたら犯罪に抵触しそうだったんよ。一応、あーしは止めたんだけどねぇ……それでも行っちまったから、あーしはもう知~らネ」
本気で呆れたように手をひらひらさせる長乃に、声を掛けた二人は流石に顔をしかめた。
長乃をからかってる場合ではなさそうな気配がある。
「え? マジ? そんなヤバそうな企画したのか?」
「そりゃあ長乃さん一緒に行かなくて正解だよー」
でしょー……と、長乃は笑ってから、二人の方へとずずいっと身を乗り出す。
「それより二人ともさ、一年のリリィって子について教えてよ。アキラくんの前で名前だすとすーぐブチギレちゃうから、気になってても調べたりしづらくってさ~」
「
ウルフカットの女子生徒がケラケラ笑うと、「マジでな!」と長乃も笑った。
「この間の校門の時。リリィちゃんがさ、アキラくんのおかげで調子乗れてるだけの脳筋に、すっごい怖いガンをつける感じがめっちゃカッコ良くってさ! 正面から見ててマジヤバだったんだけど!
自分が睨まれてるワケじゃないのに超怖かったし、でも超怖かったのに、なんか恐さとは違うドキドキを感じるくらいにカッコ良かったワケよ! もう一回睨まれてぇ! みたいな?」
はたで聞いていた、先の話題でオタクくんと
「お! むしろその話気になるし! ちっちゃいのにガッツある感じいいよな!」
「小動物みたいに可愛いのにマジな時のあのカッコいい感じのギャップいいよね~! この動画とかもそうなんだけど……」
三人の話題からアキラの気配はすっかり消え去り、メインの話題はリリィへと移り変わっていく。
そんな状況こそアキラがもっとも怖がっていた状況だ。
だが、三人からしてみればアキラが気にしていようともどうでもいい。自分たちがしたい話題を話すだけだ。
三人の様子を横目に見ていたオタクくんは、ぼんやりと思う。
(真中のやつ――この程度のコトで話題を
ドラマでイケメンが活躍したり、
あいつ……そういうの全部に嫉妬するつもりなのかね?)
だから自分たちは、ちょっと配信に成功しただけでイキるアホ呼ばわりしているんだと気づいて欲しいものだ――と息を吐く。
ただそんな感情と共に昼食を口にするのは昼食に失礼だ。
だからオタクくんは、意識を元の女子三人の方へと向け直す。
クラスの美人どころ三人が