オンリー・ロンリー・リリィ・ステップ~ダンジョンにしか居場所がなかった独りぼっちの大剣妖精は、友達が出来たので孤独を孤高に変えて『敵』に抗うことにしました~ 作:北乃ゆうひ/YU-Hi
リリィが天に向かってチカラの
それを見、麗麻は即座に自分のスマホで写真を撮ると、衣乃と善也に画像を送信した。
直後に衣乃から、コメント欄開いた上で、さっきみたいに上空でドローンを旋回しろ――とメッセージが返ってくる。
「そ、そか。見上げてる場合じゃない」
まだ乗り物酔い――というか抱っこ酔いというべきか――が酷いが、言ってる暇はない。
麗麻は、衣乃の指示通りにコメント欄のホロウィンドウを再表示して、ドローンもリリィのビームに飲み込まれないように気をつけつつ上空へ飛ばした。
:元々は遠距離からビームブッ刺す技なんだろうなぁ
:剣士たるものビームくらい撃てないと……っていうのはただの冗談なんやで?
:実際撃てる人いるんだなぁ
:これ直撃したらどのぐらい強いのかな
:そういやこういう屋外型ダンジョンの天井ってどこにあるんだろ?
リリィの撃ったビームの感想ばかり流れてくるが、視聴者たちはコメントを打ちながらもちゃんと画面を見ててくれるだろうという信頼感はある。
:これ違うかな?さっきまでいた砂場とは真逆の方角
:確かにモンスターっぽい影とは明らかに違う動きの人影あるな
:二人かこれ?
:噴水のある辺りから真っ直ぐいったとこにいるな
:いや三人だ。一人がすごい離れてるだけ
:ついて行けないやつ置き去り系かこれ?
:助かりたいのは分かるけどさぁ・・・
「リリィちゃん! 砂場とは真逆の方角! 噴水がある方面から先へいったとこ! 人、見える?」
麗麻が声を掛けると、剣から伸びていた光が消える。
小さな
「……それっぽいの見えた……!」
そう口にすると、リリィは滑り台から飛び降りてくる。
「リリィちゃん。途中で吐くかもだけど、また連れてって!」
「……え? ……吐くの?」
:吐く気まんまんかロゼちゃんw
:いやまぁ正直なのは良いけどさ
:妖精ちゃんがめっちゃ困ってて草
:いやまぁ困るよこの言葉は
ともあれ、ここで問答してても仕方がないと判断したリリィは改めて麗麻を横抱きした。
「いく!」
「うん!」
そうしてリリィは、パルクールの要領で再び駆け抜けはじめた。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
:事件性のある悲鳴の連続に事件性を感じた
:耳ないなった
:耳の在庫あってよかった
:ロゼちゃん真っ青だけど大丈夫か?
:最初のやつより激しかったもんな
:敵を連続して踏みつける配管工みたいな動きも途中あったしな
:途中で残機が10くらい増えそうな勢いだった
:モンスターの頭や背中を足場に移動してたみたいなもんだし
目印にしていた噴水前にやってきたところで、麗麻は下ろされたが、コメント欄が言う通り息も絶え絶えだ。
「……よし、行こう……」
「麗麻さん……ほんとに大丈夫?」
「……うん」
:大丈夫そうな顔してないんだよなぁ
:状況が状況とはいえがんばるな
本人が言うなら良いのかな――なんてことを思いながら、リリィは歩き出す。
「……越えるの初めてだから、ちょっとドキドキするね」
「あたしは、越える前からドキドキしてる、けど……」
「……休んでた方がいいんじゃ……」
「いく」
:ここまで来ると意地って感じがするなw
:でも救助メインだとこういう感じになるよ実際
リリィと麗麻の二人は、エリア端を示すオブジェクトの一つ――ジャングルジムをくぐって、外へ出た。
「――!?」
「……!?」
その瞬間、二人は目を見開いて顔を見合わせる。
「リリィちゃん、今の……」
「うん。なんか……違和感、あった」
:どうしたんだろう?
:越えたら妙な感覚があるのか
:二人とも要救助者助けたらとっととダンジョンエリアに戻ってね
:二人揃ってだと錯覚じゃなさそうだしな
:気をつけろよ二人とも
しばらく歩いていると、明らかに麗麻の顔色が悪くなってきて、リリィは不安げな顔をする。
「麗麻さん、本当に、休まなくて平気……?」
「平気。でも……抱っこ酔いとは違うんだけど、エリア端を越えてから、なんか妙に心臓が痛いというか、冷や汗が止まらないというか……」
「わたしはそこまでじゃないけど……でも、よく分からない恐さはずっと感じてる……。なんていうか、錯覚かもだけど……頭の中とか、心の中とか、覗かれてるみたいというか……」
「わかる。あんまり良い気分しないね……」
:大丈夫なのかそれ
:ダンジョンは人の精神の影響受けるっていうしな
:逆にダンジョンが人の精神に影響与える可能性もあるんだよな
:エリア外ってもしかしてその影響力みたいの双方に強かったりする?
:わからん エリア外の情報なさすぎるし
「長居したくない。すぐに三人連れて帰ろ?」
「……うん。賛成」
:穏やかじゃなくなってきたぞ
:実際エリア端越えたヤツほとんど居ないし映像は無いから貴重っちゃ貴重なんだろうが
:安全第一でいてほしいな
:要救助者は平気なのかここにいて
:気配察知系や、第六感系が超人化によって強化されてたり、それ系のスキル持ってたりする人ほど感じる可能性はあるぞ
:なるほど初心者だと悪寒を感じずにいられるのか
:能力や知識の差による状況に対する温度感のズレ厄介なんだよな。こっちがどれだけ怖くても自分らは怖くないから平気とか言い出すのってどんなシチュエーションにもいるし
二人は足早にエリア外を進み、やがてこちらへと近づいてくる二人組の姿を捉えた。
「……真中先輩だ」
「そう。あれが勝手にダンジョン入って遭難したバカ三人のリーダーね。横に居るのは?」
「……名前は知らない。でも取り巻きさん。前、校門でケンカしたから、覚えてる……」
「リリィちゃんって学校でケンカするんだ?」
「校門の前で動画の撮影してた。邪魔だった」
:注意したり文句言ったりしたらケンカになった感じかな?
:リリィちゃんのこの感じ絶対友好的な関係じゃないな
:あれ?アキラの遊びchのアキラか。あれ?
:知ってるの?
:配信動画のチャンネル主 友達とバカやって笑い合う感じが好きで良く見てる
そうして、お互いに声が届く距離まで近づいて――
「くっそッ、よりによって助けに来たのがお前か
指を差して明らかに顔を歪める
「別に。先輩を助けに来たワケじゃないのでイヤならずっと
熱も感情もない声でそう返してから、リリィは睨むように訊ねる。
「それで。先輩がダンジョンに連れ込んだっていう、わたしのクラスメイトはどこですか?」
「知るか! 逃げるのに邪魔だから置いてきたに決まってんだろ!」
瞬間――リリィよりも速く、麗麻の拳が央の頬を捕らえた。
:こいつ・・・
:要救助者じゃなければ首刎ねてるぞ
:拳一発で済んでよかったな
「痛ってぇ……!? な、何を……!?」
「リリィちゃん。地面に軽いクレーターとか作れる? ある程度離れていても分かるような……目印になりそうな感じの」
「ん」
央の抗議を無視して、麗麻がリリィに訊ねると、リリィは小さくうなずく。
三人から少し離れると――
「やぁぁぁッ!」
――拳にマナを込めて、それを思い切り地面にぶつけた。
それだけで、麗麻の要望通りのクレーターが作り出される。
:すげぇな妖精ちゃん
:できるんだこれ・・・
:息吹に苛立ち籠もってたなぁ。。。
「あんたたちはこのクレーターの近くにいなさい。戻ってきた時にいなかったら放置するから」
「い、いきなり殴りつけて、しかもわけわからねぇ命令しやがって!」
「黙れよ」
頬を押さえてキレる央だったが、次の瞬間には麗麻に睨まれて息を飲んだ。
ちなみに、取り巻きの少年はずっとオロオロしている。
:マジギレロゼちゃん
:キレてるのはロゼだけじゃないだろ
:まぁリリィちゃんもそうだしな
:オレら視聴者も大概キレてんじゃねーの
「お前も、そっちのバカも。超人化適性が多少あったなら、自衛しろ自衛。
ルール無視してダンジョン入って、禁忌といわれるエリア端の柵を越えて、どうしてそんなイキったコト言えるワケ?
遭難して死にかけたのはお前らでしょ? しかも適正があまりなかった子まで連れ回してさ。どういうつもり?」
探索者の放つ本気の殺気に、央は飲まれかける。
それでも自分を奮い立てるように一歩踏み出して、央は叫んだ。
「知るかよ探索者のルールなんて! 救助活動だって配信して、数字稼ぎしようとしてるお前と同じだよ! オレだって数字が欲しくて――」
ドン!
「え?」
だが叫び声は途中で銃声に遮られる。
無言で銃剣を向けた麗麻が、無言のまま
:あーあ
:配信されてるって分かっててあれ言ったの?
:チャンネル登録解除してきたわ
「次にふざけたコトを口にするなら、そっちのお友達ともども
もちろん配信に乗せるわけにはいかないから、一度配信を切った上で、ね?」
「……二人とも、もしかしてこの期に及んで自分たちは死なない、殺されないとでも思ってる?」
リリィが口にする言葉には、温度も感情もない。
仕事だから助けるがそれ以上もそれ以下もない――という様子だ。
「もう一度警告するわね。二人ともこのクレーターから離れないで。戻ってきた時に離れてたら放置するから」
そう言うと同時に麗麻は銃口を空に向けてから、再び弾鉄を引く。
ドンという銃声に、央とその連れの腰が完全に引けるのを確認した上で、さらに告げる。
「探索者のルールやダンジョン内の活動の仕方は知らない? それこそ知ったこっちゃないわ。ここがダンジョンの中よ。知らないやつから死んでいく場所だって理解してないやつ、依頼でなければ助ける義理もなければ義務もない。
法律や探索者のルールが許さないからあなたたちを殺さないだけで、それがないなら今のあたしはお前たちの頭を射貫くのに
言うだけ言うと返事を聞かずに背を向ける。
「行こうリリィちゃん。あなたのクラスメイトを助けに」
「うん」
言いたいことは麗麻が言ってくれた。
だからリリィは、先へ進もうという麗麻に、富鐘の無事を祈りながらうなずいた。