オンリー・ロンリー・リリィ・ステップ~ダンジョンにしか居場所がなかった独りぼっちの大剣妖精は、友達が出来たので孤独を孤高に変えて『敵』に抗うことにしました~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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037.ぼっち、ぬいぐるみの群れを蹴散らす

 

(間に合った……ッ!)

 

 内心でそう叫びながらも、頭の中はクールさを保ち状況を見極める。

 

(ぬいぐるみが十……違う。九だ)

 

 一匹倒した。

 吹き飛ばすだけのつもりだったが、麗麻が吹き飛んだぬいぐるみを射貫いてくれた。

 

(そしたら――)

 

 チラリと、麗麻を見る。

 目が合った時、麗麻が力強くうなずいてくれた。

 

(よし――)

 

 仲間が一匹やられて警戒を強めたぬいぐるみの群れ。

 けれど、リリィはそんな警戒を嘲笑(あざわら)うような速度で、麗麻と自分の間にいるぬいぐるみへ向かって踏み込んでいく。

 

(安心できる人とと協力できるのって、なんかいいな――)

 

 そんなことを思いながら、剣を持つ手にチカラを込めた。

 浮いているウサギのぬいぐるみの足元へ剣を入れて、大きく上へと振り抜く。

 

「――!?」

 

 大きく上ぬ吹き飛ばされてパニックになりながら、ウサギのぬいぐるみが足掻(あが)く。

 その足掻きの途中、口の中から覗く内臓が麗麻の方へと向いた。

 

 次の瞬間、ウサギのぬいぐるみの口の中身は弾ける。

 

 同じ要領で、ウサギの左右にいた犬と猫のぬいぐるみも打ち上げた。

 意を汲んだ麗麻が犬のぬいぐるみを撃ち抜く。

 

 猫のぬいぐるみは麗麻の方を向かなかった。だが、それがどうしたとばかりに麗麻は数度の銃撃で、猫のぬいぐるみの身体を弾くと、無理矢理に口を自分の方へと向けさせて射貫いてみせた。

 

(道が開いた……ッ!)

 

 ちらりと蓮花を見ると、腰を抜かしているように思える。

 

(なら……)

 

 やることはダンジョンに入ってきた直後の戦闘と同じだ。

 あと、ダンジョン内を駆け抜けた時とも同じかもしれない。

 

武技(アーツ)走牙刃(ソウガジン)扇波(センハ)ッ! でぇぇぇぇ――……いッ!」

 

 扇状に拡散する衝撃波を放ってぬいぐるみたちをまとめて弾くと、即座に剣をSAIを戻す。

 

「富鐘さん、ちょっとごめん!」

 

 言うやいなや、蓮花を横抱きで持ち上げた。

 

「え? え?」

 

 戸惑う蓮花を気にせず、リリィは全力で麗麻のところまで駆ける。

 

「わわわわわわわわわわわ……ッ!?」

 

 悲鳴を上げる蓮花に、「わかるぅ~」という顔をしてうなずきながら、麗麻は愛銃を構えた。

 

 リリィは麗麻の近くに蓮花を下ろすと、即座にSAIから剣を取り出す。

 

 銃声が三度響く。

 

 衝撃波を受けたあと立て直し、リリィを追いかけてきた三匹のぬいぐるみへの攻撃だ。

 

「ありゃ。一匹外れちゃった」

「ざんねん。でも半分になった」

「だね。とっとと片付けちゃおう」

「行ってくる。援護よろしく」

「まかせて。いってらっしゃ~い」

 

 余りにも軽い調子の二人のやりとり。

 

 それを見ながら、蓮花は――探索者ってすごいなぁ……などとのんきな感想を抱いていた。

 

 自分があれだけ怖がっていたぬいぐるみに対して、二人は微塵も怖がる様子がないのだ。

 

 リリィが剣を振るう。

 それを避けたぬいぐるみがこちらを向く。

 

 その瞬間、麗麻がぬいぐるみの口を射貫く。一匹目。

 

 リリィが跳び上がり手近なぬいぐるみを上から踏みつける。

 仰向けに倒れたぬいぐるみの腹部に足を乗せて押さえ付けながら、口から覗く内臓のようなものに、リリィは剣を突き立てた。二匹目。

 

 仲間の(かたき)を討とうとするかのようにぬいぐるみの一匹がリリィに襲いかかる。

 だが、そこはリリィが計算して作っておいたスペースだ。

 

 そこを使うと、麗麻の銃の射線が通る。

 当然、口の中を射貫かれる。三匹目。

 

 すぐさま残った二匹が同時にリリィに襲いかかる。

 しかし、リリィは危なげなくそれを避けると、片方を背後から鷲掴みして、麗麻の方へ向けて投げる。

 もちろん、麗麻は見逃すことなくそれを射貫く。四匹目。

 

 最後の一匹は、両手の爪を太く鋭くし、今まで以上に伸ばした。

 それを持ってリリィを切り裂こうと動くが――

 

「遅い」

 

 リリィは大剣の腹を使い、ハエ叩きの要領でぬいぐるみを地面に叩き付けると、即座にその腹部を踏みつけ――その口に目掛けて、剣を突き立てた。

 

 これで全部だ。

 

「…………」

 

 ぬいぐるみ型モンスターはこれまでの探索ですでに回収しているが、エリア端よりも外で戦った相手というのもある。

 

 そう思って、まだ消滅しないでいる五匹だけを急いで回収してSAIに放り込んだ。

 

「よし」

 

 一息ついて、麗麻の方へと歩き出す。

 

「やったね、リリィちゃん」

 

 そんなリリィへと麗麻が向けて手を掲げて出してきた。

 

「?」

 

 どうすれば良いのか分からず、リリィはその掌の中心を、人差し指でチョンっと触れた。

 

 麗麻は思わず蓮花の方を見た。

 蓮花も思わず麗麻の方を見ていて、二人は目が合うなり小さく吹き出す。

 

「え? え? 何か間違った……?」

 

 やらかしたー……とショックを受けるリリィに、二人は優しく首を振る。

 

「大丈夫大丈夫。可愛かったからヨシ」

「うん。そうそう。最果さんには、あとでどうすればよかったのか教えてあげるから」

 

 二人が大丈夫だというのであれば大丈夫なのだろうが――自分は本当にモノを知らないな……と、ちょっと落ち込む。

 

 ちなみに、当然ながら配信はまだ続けており――コメント欄ではその可愛いリアクションに大盛り上がりしていた。

 

 それだけでなく、その前の二人のカッコいい連携のあとの、ハイタッチを求める嬉しそうな麗麻と、よく分からずリアクションしたリリィ。

 戦闘中と戦闘後のギャップが良いと、そういうのが好きな視聴者が盛り上がっているのだ。

 

「戦闘終わったし、挨拶するね~。

 あたしは、最近リリィちゃんと良く組んでる……んー……今はカメラ回ってるし、ロゼって名乗っておくね。本名は、カメラの外でってコトで」

 

 リリィに本名を呼ばれてはいるが、一応建前ではそういうことにしておく。

 

「あ、はい。私は富鐘 蓮花って言います。助けて頂いてありがとうございます」

「まだ完全に助かったワケじゃないから、その言葉はとっておいてね。立てる?」

「ええっと……」

 

 蓮花は恐る恐る身体を動かし、うなずいた。

 

「立てそうです」

「リリィちゃん。あいつらと合流して、ダンジョンエリアに戻りましょう。

 今のぬいぐるみの出現の仕方は、あまりダンジョン探索で見たコトのないものだし」

「そう……だね。また急に現れると面倒」

 

 コクコクと首肯して、剣をSAIに戻した。

 

「富鐘さん。また悲鳴あげちゃうかもだけど……」

「また……お姫様抱っこ?」

「うん。富鐘さん、超人化してるみたいだけど、動きが悪すぎるから……」

 

 リリィの言葉の意味に気づいて、麗麻が補足をする。

 

「あー……なるほど。蓮花さんの適正は思ってた以上に低いんだねぇ。となると……このまま一緒に歩いてると、ちょっと危ないか」

「うん」

 

 二人の言っている言葉の意味はよく分からない。

 だけど、自分の歩く速度だと危険だという意味なのだろう。

 

「……わかった。酔っちゃいそうだったけど、我慢する」

「ごめんね。そうして」

 

 そうして、リリィは蓮花を抱えると、麗麻とうなずきあって走り出す。

 

「うひゃぁぁぁ――……ッ!?」

 

 走っている最中にそう悲鳴を上げる蓮花に、リリィと並走する麗麻は「うんうん、分かる分かるぅ」という顔で何度もうなずいていた。

 

 

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