オンリー・ロンリー・リリィ・ステップ~ダンジョンにしか居場所がなかった独りぼっちの大剣妖精は、友達が出来たので孤独を孤高に変えて『敵』に抗うことにしました~ 作:北乃ゆうひ/YU-Hi
(間に合った……ッ!)
内心でそう叫びながらも、頭の中はクールさを保ち状況を見極める。
(ぬいぐるみが十……違う。九だ)
一匹倒した。
吹き飛ばすだけのつもりだったが、麗麻が吹き飛んだぬいぐるみを射貫いてくれた。
(そしたら――)
チラリと、麗麻を見る。
目が合った時、麗麻が力強くうなずいてくれた。
(よし――)
仲間が一匹やられて警戒を強めたぬいぐるみの群れ。
けれど、リリィはそんな警戒を
(安心できる人とと協力できるのって、なんかいいな――)
そんなことを思いながら、剣を持つ手にチカラを込めた。
浮いているウサギのぬいぐるみの足元へ剣を入れて、大きく上へと振り抜く。
「――!?」
大きく上ぬ吹き飛ばされてパニックになりながら、ウサギのぬいぐるみが
その足掻きの途中、口の中から覗く内臓が麗麻の方へと向いた。
次の瞬間、ウサギのぬいぐるみの口の中身は弾ける。
同じ要領で、ウサギの左右にいた犬と猫のぬいぐるみも打ち上げた。
意を汲んだ麗麻が犬のぬいぐるみを撃ち抜く。
猫のぬいぐるみは麗麻の方を向かなかった。だが、それがどうしたとばかりに麗麻は数度の銃撃で、猫のぬいぐるみの身体を弾くと、無理矢理に口を自分の方へと向けさせて射貫いてみせた。
(道が開いた……ッ!)
ちらりと蓮花を見ると、腰を抜かしているように思える。
(なら……)
やることはダンジョンに入ってきた直後の戦闘と同じだ。
あと、ダンジョン内を駆け抜けた時とも同じかもしれない。
「
扇状に拡散する衝撃波を放ってぬいぐるみたちをまとめて弾くと、即座に剣をSAIを戻す。
「富鐘さん、ちょっとごめん!」
言うやいなや、蓮花を横抱きで持ち上げた。
「え? え?」
戸惑う蓮花を気にせず、リリィは全力で麗麻のところまで駆ける。
「わわわわわわわわわわわ……ッ!?」
悲鳴を上げる蓮花に、「わかるぅ~」という顔をしてうなずきながら、麗麻は愛銃を構えた。
リリィは麗麻の近くに蓮花を下ろすと、即座にSAIから剣を取り出す。
銃声が三度響く。
衝撃波を受けたあと立て直し、リリィを追いかけてきた三匹のぬいぐるみへの攻撃だ。
「ありゃ。一匹外れちゃった」
「ざんねん。でも半分になった」
「だね。とっとと片付けちゃおう」
「行ってくる。援護よろしく」
「まかせて。いってらっしゃ~い」
余りにも軽い調子の二人のやりとり。
それを見ながら、蓮花は――探索者ってすごいなぁ……などとのんきな感想を抱いていた。
自分があれだけ怖がっていたぬいぐるみに対して、二人は微塵も怖がる様子がないのだ。
リリィが剣を振るう。
それを避けたぬいぐるみがこちらを向く。
その瞬間、麗麻がぬいぐるみの口を射貫く。一匹目。
リリィが跳び上がり手近なぬいぐるみを上から踏みつける。
仰向けに倒れたぬいぐるみの腹部に足を乗せて押さえ付けながら、口から覗く内臓のようなものに、リリィは剣を突き立てた。二匹目。
仲間の
だが、そこはリリィが計算して作っておいたスペースだ。
そこを使うと、麗麻の銃の射線が通る。
当然、口の中を射貫かれる。三匹目。
すぐさま残った二匹が同時にリリィに襲いかかる。
しかし、リリィは危なげなくそれを避けると、片方を背後から鷲掴みして、麗麻の方へ向けて投げる。
もちろん、麗麻は見逃すことなくそれを射貫く。四匹目。
最後の一匹は、両手の爪を太く鋭くし、今まで以上に伸ばした。
それを持ってリリィを切り裂こうと動くが――
「遅い」
リリィは大剣の腹を使い、ハエ叩きの要領でぬいぐるみを地面に叩き付けると、即座にその腹部を踏みつけ――その口に目掛けて、剣を突き立てた。
これで全部だ。
「…………」
ぬいぐるみ型モンスターはこれまでの探索ですでに回収しているが、エリア端よりも外で戦った相手というのもある。
そう思って、まだ消滅しないでいる五匹だけを急いで回収してSAIに放り込んだ。
「よし」
一息ついて、麗麻の方へと歩き出す。
「やったね、リリィちゃん」
そんなリリィへと麗麻が向けて手を掲げて出してきた。
「?」
どうすれば良いのか分からず、リリィはその掌の中心を、人差し指でチョンっと触れた。
麗麻は思わず蓮花の方を見た。
蓮花も思わず麗麻の方を見ていて、二人は目が合うなり小さく吹き出す。
「え? え? 何か間違った……?」
やらかしたー……とショックを受けるリリィに、二人は優しく首を振る。
「大丈夫大丈夫。可愛かったからヨシ」
「うん。そうそう。最果さんには、あとでどうすればよかったのか教えてあげるから」
二人が大丈夫だというのであれば大丈夫なのだろうが――自分は本当にモノを知らないな……と、ちょっと落ち込む。
ちなみに、当然ながら配信はまだ続けており――コメント欄ではその可愛いリアクションに大盛り上がりしていた。
それだけでなく、その前の二人のカッコいい連携のあとの、ハイタッチを求める嬉しそうな麗麻と、よく分からずリアクションしたリリィ。
戦闘中と戦闘後のギャップが良いと、そういうのが好きな視聴者が盛り上がっているのだ。
「戦闘終わったし、挨拶するね~。
あたしは、最近リリィちゃんと良く組んでる……んー……今はカメラ回ってるし、ロゼって名乗っておくね。本名は、カメラの外でってコトで」
リリィに本名を呼ばれてはいるが、一応建前ではそういうことにしておく。
「あ、はい。私は富鐘 蓮花って言います。助けて頂いてありがとうございます」
「まだ完全に助かったワケじゃないから、その言葉はとっておいてね。立てる?」
「ええっと……」
蓮花は恐る恐る身体を動かし、うなずいた。
「立てそうです」
「リリィちゃん。あいつらと合流して、ダンジョンエリアに戻りましょう。
今のぬいぐるみの出現の仕方は、あまりダンジョン探索で見たコトのないものだし」
「そう……だね。また急に現れると面倒」
コクコクと首肯して、剣をSAIに戻した。
「富鐘さん。また悲鳴あげちゃうかもだけど……」
「また……お姫様抱っこ?」
「うん。富鐘さん、超人化してるみたいだけど、動きが悪すぎるから……」
リリィの言葉の意味に気づいて、麗麻が補足をする。
「あー……なるほど。蓮花さんの適正は思ってた以上に低いんだねぇ。となると……このまま一緒に歩いてると、ちょっと危ないか」
「うん」
二人の言っている言葉の意味はよく分からない。
だけど、自分の歩く速度だと危険だという意味なのだろう。
「……わかった。酔っちゃいそうだったけど、我慢する」
「ごめんね。そうして」
そうして、リリィは蓮花を抱えると、麗麻とうなずきあって走り出す。
「うひゃぁぁぁ――……ッ!?」
走っている最中にそう悲鳴を上げる蓮花に、リリィと並走する麗麻は「うんうん、分かる分かるぅ」という顔で何度もうなずいていた。