ラノベ転生 ―底辺社畜、昔好きだったラノベの世界に転生するも転生先は暗黒系鬱ラノベの世界だった件―   作:哀原正十

67 / 67
エピローグ 終わる物語。終わらない世界

 人類軍の勝利の凱旋は盛大に行われた。

 

 ヴァルハラ学園にて3日3晩昼夜問わぬパーティが開催され、人類の勝利は派手に祝われた。なにせ魔王軍との戦争が終わったのだ。後はもう祝うしかない。世界のありようはこれから否が応でも変わっていくことになるだろう。アミューズメント施設の建設なども解放されるかもしれない。まぁ、それはともかく。

 

 僕たちは3日3晩のパーティをうんざりとする程味わった。何せパーティーの主役だ。窮屈な程に祝われ、労われ、3日経つ頃には普段の学園生活が恋しくなる程だった。3日3晩のパーティーが終わると、人類軍は解散され、各々の所属へと皆は戻って行った。そして普段通りの日常が戻ってきた。

 

 魔王がいなくなってもまだ魔物は存在する。故に対魔学園は未だ必要なのだ。僕たちの日常は終わらない。対魔学園の一員としてこれからも僕は活動し続けるのだった。

 

 

 

「うーん。やっと日常が戻ってきたわね。これでこそ対魔学園って感じ」

 

「そうだねー。授業があって、休みがあって、たまに実習があって、実に対魔学園って感じだ。うんうん。対魔学園はいいねぇ」

 

 ある日の昼休み。

 

 僕はキサラちゃんと学校の日の当たる場所の庭のベンチで学園生活を満喫していた。魔王がいなくなっても僕たちの日常は続く。僕はうーんと背伸びをして、それから言った。

 

「幸せだぁ」

 

「ふふ。アキラ君は本当に学園生活が好きですねぇ」

 

「あ、会長」

 

 そうしているとルナ会長がやってきた。ベンチに後ろからもたれかかって、僕の頭に顎を乗せながら言ってくる。

 

「私も学園生活大好きです。お揃いですね」

 

「はい。お揃いです」

 

「むむ。私だってお揃いなんだから」

 

 キサラちゃんが言ってくる。そして身を寄せてくる。なんだかすごく近い。幸せだ。これは幸せだぞ。

 

「あー、幸せだー」

 

「そうですねー。ところでアキラ君」

 

「はい」

 

「そろそろ誰か選んでもいいんじゃないですか」

 

 ……。

 

「誰かって?」

 

「とぼけるんじゃないわよ。女の子よ」

 

 ……。

 

「さて、自販機でジュースでも買ってくるか」

 

「あ、逃げた!」

 

「待ちなさいアキラ君。それはいけないことですよ!」

 

 僕は2人に追われる。逃げなければならない。これは逃げなければならない状況だ。そうしていると、

 

「あ、キョウ君」

 

「あ、アキラ」

 

「待ちなさい。アキラ君。誰か選びなさい!」

 

「キョウ、そいつを捕まえて!」

 

「……はい」

 

「うっ。キョウ君?」

 

「いい加減選ぶべきだと思うぞ。アキラ」

 

 キョウ君が裏切った。僕はキョウくんに捕らえられた。2人が僕に追いつく。

 

「はぁ、はぁ。アキラ選びなさい。私を」

 

「いいえ。私を選ぶべきです。それが当然の摂理というものです」

 

「アキラ!」

 

「アキラ君!」

 

「……ぼ、僕は」 

 

 その時僕はふと気づいた。いつも一緒にいてくれた、最後まで共に戦ってくれた、そんな存在が2人以外にもいたことを。気づけば僕はその存在の手を握っていた。

 

「キョウくん。キョウ君を選」

 

「アキラ」

 

「アキラ君」

 

「あ、はい」

 

 2通りの殺意に黙らされた。しかし選べる訳がない。だから僕はこう言っていた。

 

「選べる訳がないよ。2人とも僕にとっては大切な人だから」

 

「……全く」

 

「アキラ君は」

 

 2人は嘆息し、それから笑って言った。

 

「分かったわ」

 

「もう少し待ってみますね」

 

「う、すいません……」

 

「いいのよ。あっ」

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 気づけば授業開始間近のチャイムが鳴っていた。僕たちは走る。

 

「いけない。授業だわ。急いで戻らないと」

 

「本当です。私としたことが。アキラ君、また放課後」

 

「あ、はい」

 

「帰ろうかアキラ。僕たちの教室へ」

 

「キョウ君……そうだな。帰ろうか」

 

 そして僕は。

 

 僕が僕であれる場所へと帰還する。

 

「僕たちの教室へ」

 

 

 

 

 ……僕たちの最も大きな戦いは終わった。

 それでもこれからも人生は続く。小さな選択も、大きな選択も、これからも無数にしていくことになるだろう。

 それでも、きっと最後には希望が勝つ。僕は今は心からそう信じ切れた。それは、この世界で出会ったいくつもの大切な出会いがもたらした心の宝物。それを大切にしてこれからも生きて行こうと思う。

 そうさ。きっと最後には。

 希望が勝つ。

 だからそう信じて生きて行こう。

 それが僕がライトノベルに求めていたものだから。

 そう信じて。

 これからもこの世界で大事な人と大事な時間を育んでいくのだろう。

 

「アキラ!」

「アキラくん!」

 

 そしていつかは。

 いつかはこの2人と。

 ……僕はそう思いながら。

 僕の物語の最後の1ページを閉じるのだった。

 

 ラノベ転生 完

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【悲報】ビビリの俺、ホラー漫画に転生してしまう(作者:青ヤギ)(オリジナル:現代/ホラー)

モブに厳しい過酷なホラー漫画の一般人として転生してしまった。▼隣の家にちょうど主人公である「孤高で銀髪赤眼の美少女霊能力者」が住んでいたので怪異から守ってもらおうと近づいたら……物凄い勢いで依存されてしまった件。▼尚、原作は美少女たちの友情をメインにしたお色気要素がかなり強めの作風である。▼小説家になろう様、カクヨム様とのマルチ投稿です。


総合評価:29983/評価:8.85/連載:127話/更新日時:2026年10月02日(金) 20:52 小説情報

同人ゲーに転生したけど、肝心の主人公が死んだ(作者:自分探しの旅袋)(オリジナル:現代/恋愛)

ハーレム♡スクールライフ▼ ▼有名な商業作品ではなく、個人の同人サークルから販売されていたエロゲ-▼特に、そこの同人サークルに詳しいわけでもないし、購入したのも社会人になる前だった。▼イラストが綺麗、評価が良い、エロい 多分当時の自分が買った時の理由は、そんなありふれた理由だった。▼ ▼何の因果か、そんな世界に転生した。▼※カクヨムでも掲載開始


総合評価:341/評価:6.13/連載:35話/更新日時:2026年09月18日(金) 19:00 小説情報

ようこそ原作主人公抜きで頑張る教室へ(作者:灰色の)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼よう実の世界に転生した青年、しかし物語の鍵となる原作主人公がいなかった。▼自分の能力も分からない中、彼は必死に足掻いて行く。


総合評価:3867/評価:7.95/連載:43話/更新日時:2026年08月14日(金) 21:23 小説情報

白髪褐色狂剣少女は俺を立派な人斬りに育てたい(作者:フォン・デ・ペギラパギラ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

かわいそうに、本物の加湿器系ヒロインを食べたことがないんだな。この小説を読んでください。本物の湿気びちゃびちゃ美少女を食べさせてあげますよ。▼feat.主人公は近未来のVR剣戟ゲームの世界チャンプで、異世界で普通に暮らしてたけどどうしても異彩を放つ感じで。▼※執筆補助でAIを利用有り。▼資料調査、壁打ち、名称ブレストのみです。


総合評価:421/評価:7.5/連載:17話/更新日時:2026年06月09日(火) 22:56 小説情報

欠損奴隷を治したら、俺を崇める宗狂団体が設立されてた(作者:破滅)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

日本でしがない派遣社員をしていた谷川 治太郎(25歳)は、気が付くと異世界に召喚されていた。▼勇者として召喚された彼に与えられたのは『治す』という、どんな呪いも解除し、死んでさえいなければどんな大怪我でも治してしまえるというチート級の回復スキルだった。▼勇者召喚をした王族たちは禁呪を使った代償で死んで、自由の身となったジタローは奴隷を買うことに。▼ジタローは…


総合評価:479/評価:7.14/連載:28話/更新日時:2026年07月28日(火) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>