夢想は甘き鎧となる~ダンジョン世界でおカシな仮面ライダー!?~   作:妄想めっちゃ代理人

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仮住まいのArcadia、そして初めて決意

 買い物を終えた四人は、夕暮れに染まる住宅街を歩いていた。大通りから一本入ったその一角は静かで、子どもたちの遊ぶ声や夕飯の支度をする香りが風に乗って漂ってくる。

 

「もうすぐ着くよ」

 

 奏がそう言って指差した先、住宅街の角地に一軒の二階建てが建っていた。

 

 白い外壁に、落ち着いたブラウンの屋根。手入れの行き届いた小さな庭には季節の花が植えられ、玄関脇には名前の刻まれた表札が掛けられている。

 

『Arcadia』

 

 その下には、小さく探索者協会認定のプレートが取り付けられていた。

 

「ここが……」

 

 悠斗は思わず足を止める。

 

「アルカディアの家」

 

 想像していたより、ずっと普通だった。高級マンションでもなければ、豪邸でもない。けれど、どこか温かみを感じる家だった。

 

「探索者って、もっとこう……」

 

 悠斗は言葉を探す。

 

「要塞みたいな家に住んでるのかと思ってました」

 

「ははっ」

 

 陽奈が吹き出した。

 

「何それ! そんな家だったら毎日近所で噂になっちゃうよ!」

 

「協会認定のパーティハウスだからね」

 

 奏が笑いながら説明する。

 

「普通の住宅として建てられてるけど、中は探索者向けに少しだけ造りが違うんだ」

 

「そうなんですね……」

 

 悠斗はもう一度家を見上げる。これから、自分はここで暮らすことになる。まだ実感は湧かなかった。

 

 奏が玄関へ歩み寄り、鍵を開ける。

 

 ガチャリ。

 

 扉が開く。

 

「ただいま」

「ただいまー!」

「戻りました」

 

 三人の声が、自然と家の中へ溶け込んでいく。その光景を見ていた悠斗は、一瞬だけ立ち止まった。

 

(……帰る場所)

 

 つい数時間前まで、自分にはもう存在しないと思っていた言葉。

 

 胸の奥が少しだけ熱くなる。

 

 悠斗は深く一礼した。

 

「お邪魔します」

 

 そう言って玄関へ足を踏み入れた。

 

 木の温もりを感じる床。玄関には四人分の靴箱と、壁際には壁にはコート掛けや傘立てが整然と並んでいる。

 

「とりあえず荷物はここで大丈夫だよ」

 

 奏が振り返って微笑む。

 

「今日は疲れたでしょ。まずはゆっくりして」

 

「はい」

 

 悠斗は小さく頷きながら靴を脱ぐ。その瞬間、不思議と肩の力が抜けた。ここは、自分の家ではない。

 

 それでも。

 

 冷たい洞窟ではなく、命を脅かす魔物もいない。安心して帰ってこられる場所。悠斗はそんな当たり前の温かさを噛み締めながら、一歩、リビングへと足を進めた。

 

「とりあえず、荷物はリビングに持って行こうか」

 

 奏が買い物袋を持ち直しながら歩き出す。

 

 悠斗も慌てて両手いっぱいの荷物を抱え直した。

 

「持ちます」

 

「ありがとう」

 

 リビングへ入ると、悠斗は思わず目を見張る。

 

「わぁ……」

 

 広々としたリビングダイニング。大きなソファとローテーブル。壁際には大型テレビ。

 

 ダイニングには四人掛けのテーブルが置かれ、その奥には開放感のある対面式キッチンが続いている。木目を基調とした落ち着いた内装で、派手さはない。

 

 けれど、温かみのある生活空間だった。

 

「すごく……」

 

 悠斗は辺りを見回しながら感嘆の声を漏らす。

 

「綺麗な家ですね」

 

「協会管理だからね」

 

 奏が買い物袋をキッチンへ置きながら笑う。

 

「設備も結構しっかりしてるんだ。一年前に入居した時は何もなくてさ」

 

 陽奈が冷蔵庫を開けながら苦笑する。

 

「家具組み立てるだけで一日終わったんだよねー陽奈が説明書を読まなかったから」

 

 詩織が淡々と補足する。

 

「ベッドを逆向きに組み立てていました」

 

「あー!」

 

 陽奈が頭を抱える。

 

「その話まだ言う!?」

 

「事実です」

 

「うぅ……」

 

 いつものやり取りなのだろう。三人は笑いながら荷物を片付け始める。その光景を見ていた悠斗も、自然と買い物袋を持ち上げた。

 

「これ、どこへ置けばいいですか?」

 

「あ、その野菜はこっちお願い」

 

 奏が冷蔵庫の横を指差す。

 

「分かりました」

 

 悠斗は言われた通りに袋を運んでいく。

 

「牛乳もお願いします」

 

「はい」

 

「それと、お肉は冷蔵庫」

 

「了解です」

 

 気付けば、ごく自然に四人で夕飯の支度を始めていた。

 

 誰かが指示を出し、誰かが運び、誰かが片付ける。そんな何気ない時間が流れていく。一通り荷物を運び終えると、奏がエプロンを手に取った。

 

「じゃあ、ご飯作るね」

 

 慣れた手つきで髪を後ろへまとめ、エプロンを身につける。その姿は探索者というより、どこにでもいる家庭的なお姉さんのようだった。

 

「私、手伝うよ!」

 

 陽奈が勢いよく手を挙げる。奏は少し考えた後、にこりと笑う。

 

「じゃあ野菜お願い」

 

「任せて!」

 

「……包丁は猫の手でね」

 

「わ、分かってるって!」

 

「この前、指切りかけた人が言っても説得力ないですよ」

 

 詩織の冷静な一言に、陽奈が「うぐっ」と言葉を詰まらせる。そのやり取りに、悠斗は思わず笑みを零した。本当に、仲がいい。

 

 奏は振り返ると、悠斗へ優しく声を掛けた。

 

「悠斗さん」

 

「はい」

 

「今日はお客さんだから、座ってて」

 

「いえ!」

 

 悠斗は慌てて首を振る。

 

「そんなわけにはいきません! 買っていただいた上に、ご飯まで作ってもらうなんて……何か手伝わせてください」

 

 その真剣な表情に、奏は少し困ったように笑う。

 

「うーん……」

 

 少し考えてから、小さく頷いた。

 

「じゃあ、お皿出してもらってもいい?」

 

「もちろんです!」

 

 悠斗は嬉しそうに返事をする。

 

「食器棚はこっち」

 

 奏が場所を教えると、悠斗は「はい」と返事をしながら食器棚を開けた。

 

 まだ家のことは何も分からない。それでも、何か役に立ちたい。そんな悠斗の気持ちが伝わるように、リビングには穏やかな空気が流れていた。

 

「悠斗さん、お皿お願いね」

 

「はい!」

 

 悠斗が食器棚から皿を並べている間にも、キッチンでは手際よく夕食の支度が進んでいく。

 

 トントントン。

 

 陽奈が野菜を刻み。

 

 ジュウゥゥ……。

 

 奏がフライパンへ肉を入れると、食欲を誘う香ばしい音がリビングへ広がった。

 

「いい匂い……」

 

 悠斗は思わず呟く。

 

「今日はロックボアのお肉が安かったから」

 

 奏が木べらで炒めながら答える。

 

「野菜炒めにしようかなって」

 

「ロックボア……」

 

 まだその名前には慣れない。

 

 スーパーで見た魔物の肉が、こうして当たり前の夕飯になる。

 

「豚肉に近い味なんだよ」

 

 奏が笑う。

 

「脂に甘みがあって美味しいの」

 

「探索者だと食べる機会も多いですね」

 

 詩織がスープ鍋をかき混ぜながら続ける。

 

「牛肉より少し高いけど、栄養価も高いので」

 

「へぇ……」

 

 悠斗は感心したように頷く。

 

 コンロの隣では、大きな鍋が静かに湯気を立てていた。中にはゴロゴロと大きめに切られた野菜。

 

 ニンジン。

 ジャガイモ。

 タマネギ。

 

 そして、先ほどスーパーで見かけた淡い緑色の葉野菜。

 

「それは?」

 

「マギハーブ」

 

 奏が答える。

 

「煮込むと疲労回復にいい成分が出るんだって。探索帰りはよく使うかな」

 

「そんな効能まであるんですね」

 

「探索者向けの定番食材だよ!」

 

 陽奈が得意げに笑う。

 

「筋肉痛も少し楽になるって言われてる!」

 

「気休め程度ですけどね」

 

 詩織がさらりと付け加える。

 

「でも美味しいので私は好きです」

 

 鍋の横では、奏が小鉢へ鮮やかなサラダを盛り付けていく。

 

 レタス。

 トマト。

 キュウリ。

 

 その中へ、紫色の小さな実が散りばめられていた。

 

「これもダンジョン産?」

 

「うん」

 

 奏が頷く。

 

「ルミナスベリー。甘酸っぱくて、ドレッシング代わりにもなるの」

 

「へぇ……」

 

 悠斗は興味深そうに覗き込む。

 

「探索者って、もっと栄養剤みたいな物ばかり食べるのかと思ってました」

 

 悠斗が率直な感想を漏らす。

 

 陽奈が思わず笑った。

 

「それじゃ楽しみなくなっちゃうじゃん!」

 

「探索者だからこそ、ご飯はちゃんと食べないと」

 

 奏も笑顔で続ける。

 

「体力も回復しないし、気持ちも切り替えられないからね」

 

 詩織も静かに頷く。

 

「高カロリー、高タンパク、高栄養。探索者向けの料理は、その上で美味しさも重視されています。だから魔物の肉も普通に食卓へ並ぶんです」

 

 悠斗は並び始めた夕食を見渡す。見慣れた料理。見慣れない食材。どちらも違和感なく一つの食卓を形作っている。

 

(……この世界の"普通"なんだな)

 

 そう思うと、不思議と胸が躍った。

 

「できたよ」

 

 奏が最後の皿を食卓へ運ぶ。湯気とともに、食欲をそそる香りがリビングいっぱいへ広がった。

 

「わぁ……」

 

 悠斗は思わず感嘆の声を漏らす。

 

 ロックボアと彩り豊かな野菜を炒めたメインディッシュ。

 マギハーブを加えた具だくさんのスープ。

 新鮮なサラダ。

 炊かれた白ご飯。

 

 どれも家庭料理らしい温かさがあり、それでいて見慣れない食材が自然と溶け込んでいる。

 

「すごく美味しそうです」

 

「ありがとう」

 

 奏は少し照れくさそうに笑う。

 

「冷めないうちに食べよっか」

 

 四人が席へ着く。

 

 悠斗は少し緊張しながら三人を見る。

 

 奏が静かに手を合わせた。

 

「それじゃ、いただきます」

「いただきまーす!」

「いただきます」

 

「……いただきます」

 

 悠斗も慌てて手を合わせる。久しぶりに、誰かと囲む食卓だった。

 

 まずはロックボアの野菜炒めを一口。

 

 シャキッ。

 

 野菜の歯応え。続いて、肉の旨味が口いっぱいへ広がる。

 

「……!」

 

 思わず目を見開く。

 

「美味しい……」

 

 豚肉に近い食感。けれど脂はしつこくなく、噛むほどに甘みが広がっていく。

 

「口に合った?」

 

 奏が少し心配そうに尋ねる。悠斗は何度も頷いた。

 

「すごく美味しいです……初めて食べる味なのに、不思議と食べ慣れてる感じがします」

 

「よかった」

 

 その一言に奏もほっとしたように微笑む。

 

 陽奈は早くも二口、三口と頬張っている。

 

「んー! やっぱ奏のご飯最高!」

 

「ちゃんと噛んで」

 

 奏が苦笑する。

 

「慌てて食べると喉に詰まるよ」

 

「はーい!」

 

 返事だけは元気だった。

 

 その横で詩織はスープを一口飲み、小さく頷く。

 

「今日のマギハーブ、いつもより香りがいいですね」

 

「スーパーで新鮮なのがあったの」

 

「なるほど」

 

 料理の感想を自然に言い合う二人を見ていると、この家で積み重ねてきた時間が伝わってくるようだった。

 

 悠斗もスープへ手を伸ばす。優しい味だった。野菜の甘みがよく出ていて、身体の芯から温まる。

 

「これも美味しいです」

 

「本当?」

 

 奏の表情が少し明るくなる。

 

「嬉しい」

 

 その笑顔を見て、悠斗も自然と笑みがこぼれた。食卓には穏やかな会話が流れる。

 

 今日の探索。

 スーパーの特売。

 陽奈が見つけた新作のお菓子。

 詩織が読んでいる魔術理論の本。

 

 どれも他愛のない話ばかりだった。

 

 けれど悠斗には、その一つ一つがどこか眩しく映る。

 

(こういう時間……久しぶりだな)

 

 会社へ勤め始めてからは、帰宅時間も遅くなることが多かった。一人でコンビニ弁当を食べる日も少なくない。子どもの頃も、家族で賑やかに食卓を囲んだ記憶はほとんどない。

 

 だからこそ……笑い声があって、料理を褒め合って、

 

「それ取って」

 

「ありがとう」

 

 そんな何気ないやり取りが、胸へじんわりと染み渡っていく。

 

「悠斗さん」

 

 奏がふと声を掛ける。

 

「どうかした?」

 

「……いえ」

 

 悠斗は少し照れくさそうに笑った。

 

「こんなふうに誰かとご飯を食べるのが、なんだか新鮮で楽しいです」

 

 その言葉に、三人は顔を見合わせる。陽奈がにっと笑った。

 

「じゃあこれからは毎日賑やかだね!」

 

「陽奈」

 

 詩織がすかさず口を挟む。

 

「食べながら喋ると行儀が悪いですよ」

 

「あっ」

 

 口の端っこに米粒を付けて固まる陽奈。

 

 その姿に、悠斗は思わず吹き出した。

 

「ふふっ」

 

 その笑い声につられるように、奏も詩織も笑い始める。

 

 今日一日で経験した出来事は、あまりにも多かった。

 

 命懸けの戦い。

 見知らぬ世界。

 自分が異邦人であるという事実。

 

 それでも今、この食卓には穏やかな時間が流れている。悠斗は改めて料理を口へ運ぶ。温かい料理と、温かい空気。そのどちらもが、少しずつ「帰る場所」というものを教えてくれているような気がした。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 夕食を終え、食器を片付け終える頃には、外はすっかり夜になっていた。

 

「ごちそうさまでした」

 

 悠斗は深々と頭を下げる。

 

「本当に、美味しかったです」

 

「よかった」

 

 奏は嬉しそうに微笑む。

 

「おかわりまでしてくれたし、作った甲斐があったよ」

 

「はい」

 

 悠斗は照れくさそうに笑った。

 

「久しぶりに、こんなに美味しいご飯を食べました」

 

 その一言に、奏は少しだけ目を細める。

 

「また作るね」

 

「ありがとうございます」

 

 穏やかな空気が流れる。陽奈はソファへ寝転がり、「食べた食べたー」と満足そうにお腹をさする。詩織は湯飲みにお茶を注ぎながら、静かに一息ついていた。

 

 悠斗はそんな三人を見つめる。少しだけ息を吸い込んだ。

 

「……あの」

 

 三人が一斉に顔を上げる。

 

「少し、お話いいですか」

 

「うん」

 

 奏が頷く。

 

「どうしたの?」

 

 悠斗は膝の上で両手を組み、ゆっくりと言葉を選んだ。

 

「今日、協会の方から聞きました。職業は、自分で選んでいいと。制限はあるけど、普通に働くことができることも」

 

「うん」

 

「だから、少し考えてたんです」

 

 部屋が静かになる。

 

「俺、この世界のことは何も知りません。常識も、ルールも。探索者がどういう仕事なのかも」

 

 苦笑しながら続ける。

 

「だから、本当ならもっと色々知ってから決めるべきなんだと思います」

 

「……でも」

 

 そこで一度言葉を区切る。

 

「俺、探索者になってみたいです」

 

 三人は黙って続きを待っていた。

 

「理由は、いくつかあります。まず……」

 

 悠斗はリビングに置いてあるカバンと胸ポケットの中で寝ているチョコドンを見る。カバンの中には取り敢えずカバンに仕舞っているヴァレンバスターと変身ベルトガヴがある。

 

「この力を持ってしまったこと。だったら、この力で誰かを助けられる仕事をしたいって思いました」

 

 それは一つ目の理由。

 

 そして。

 

「もう一つ」

 

 悠斗は少しだけ苦笑した。

 

「俺がいた世界では、親に言われるまま大学へ行って、卒業したらそのまま逃げるように就職して……何がやりたいかなんて、ちゃんと考えたことがなかったんです」

 

 淡々と話す。歩んできた道を責めるような口調ではない。ただ、自分の人生を振り返るように。

 

「親が決めた道を、そのまま歩いてきました。早く一人暮らしをしたくて、親から離れたくて……だから就職したようなものだったんです」

 

 三人は何も言わない。静かに耳を傾けている。

 

「会社でも仕事をして当たり前、成果をあげて当たり前、感謝されることなんて殆どありませんでした」

 

 悠斗は小さく笑う。

 

「それが普通だと思ってたんです」

 

 けれど、あの洞窟で。

 

『助けてくれて、ありがとうございました』

 

 奏が言ってくれた。

 陽奈も。

 詩織も。

 

 何度も感謝を告げてくれた。救助隊も礼を言ってくれた。

 

 そして。

 

「配信のコメントも……」

 

 少し照れくさそうに頭を掻く。

 

「正直、あんなに見られてるのは恥ずかしかったです」

 

 陽奈が思わず笑いそうになるが、ぐっと堪える。

 

「でも、『ありがとう』とか『助かった』とか……知らない人たちが、あんなに言ってくれて」

 

 悠斗は少しだけ目を伏せた。

 

「……すごく、嬉しかったんです」

 

 部屋は静まり返る。

 

「誰かの役に立てたんだって思えたのが、初めてだった気がして」

 

 胸へそっと手を当てる。

 

「だから、この力があるなら探索者として人を助ける仕事をしてみたい。そう思いました」

 

 悠斗は立ち上がる。

 

 そして。

 

 深々と頭を下げた。

 

「お願いします! 探索者のことを、俺に教えてください! この世界で生きていく方法を皆さんから、学ばせてください」

 

 長い沈黙が流れる。その言葉には、勢いだけではない覚悟が込められていた。

 

 奏は静かに悠斗を見つめる。昼間、自分たちを助けるために迷わず飛び込んできた青年。そして今、自分の意思で初めて歩む道を選ぼうとしている青年。その姿に、小さく微笑んだ。

 

「……うん」

 

 優しい声が、静かなリビングへ響く。

 

「もちろん。私たちでよければ、いくらでも。探索者のことも、この世界のことも一緒に覚えていこう」

 

 その言葉に、陽奈は大きく頷いた。

 

「大歓迎! 私たちもまだまだ勉強中だけど、一緒に頑張ろ!」

 

 詩織も穏やかに微笑む。

 

「分からないことがあれば、何でも聞いてください。知っていることは、できる限りお伝えします」

 

 悠斗はゆっくりと顔を上げた。そこにあったのは、同情でも義務感でもない。新しい仲間を迎えるような、自然な笑顔だった。

 

 

 

 




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