07/13:一部修正しました。
その日も、いつもと変わらないはずだった。
アクシオンゲートの面々がいつもの喫茶店で、今日も任務終わりに1テーブルを占領して談笑をする。
騒がしくも平和な日常。
誰もが、それが明日も続くと信じていた。
「おや、そういえばレヴォルは?」
誰かが何気なく口にする。
すると別の誰かが肩を竦めた。
「知らねぇよ。またどっかで寝てんじゃないか?」
「あり得るな」
「任務終わった瞬間消えるからな、あの人」
小さな笑いが起こる。
それもいつものことだった。
レヴォル=アルトル。
アクシオンゲートKINGであり、最強やら戦略兵器やら災害やら、様々な呼び名を持つ男。
だがその実態は、面倒やら眠いやら帰るやら、そんな言葉ばかり口にするやる気のない青年だった。
もっとも、その青年が一度剣を抜けば誰も文句など言えなくなるのだが。
「シオンさんや」
丁度通りがかった猫耳の少女が、呼び止められて振り返る。
「うちのKING見なかった?」
ブレイドラインのKNIGHT、シオン=ランヴェルスは首を振った。
「任務が終わってからは見てない。話したいことあるのに、こまた」
「だろうなぁ」
「毎回毎回よく消えるよな」
「逆にあの人が真面目に帰還報告してるところ見たことあるか?」
「ない」
「ないな」
「ないですね」
即座に返ってくる同意に、テーブルから笑いが漏れる。
「この前なんて任務終わった瞬間、煙みたいに消えてたぞ」
「煙じゃなくて本人だろ」
「似たようなもんだろ」
「違いねぇ」
再び笑いが起きる。
レヴォルはそういう男だった。
勝手に消える。
勝手に戻ってくる。
気付いたら寝ている。
気付いたら戦場にいる。
そして気付いたら全部終わらせている。
それが当たり前だった。
だから誰も心配していない。
今日もどこかで寝ているのだろう。
あるいは適当に街を歩いているのだろう。
「そういや今朝も眠そうだったな」
「いつも眠そうだろ」
「確かに」
「むしろ起きてる方が珍しいまである」
「じゃあ今頃どっかのベンチで寝てるんじゃね?」
「起こしに行くか?」
「嫌だ」
「即答かよ」
「起こしたら面倒」
「それはそう」
また笑いが起こる。
誰も気付かなかった。
その笑い声が。
その時間が。
その席が。
後になって二度と戻らないものになることを。
その頃。
レヴォル=アルトルは、一人だった。
人気のない路地裏。
月明かりだけが落ちる静寂の中で、彼はゆっくりと目を閉じる。
脳裏に思い浮かぶのは今までのGARDENの皆との思い出。
笑い声。
馬鹿話。
見慣れた顔。
気付けば随分と長い時間、あの場所にいたらしい。
目を開く、そして小さく息を吐く。
その足取りは、先程より少しだけ速くなっていた。
皆のいる街から離れるように。
皆のいる日常から遠ざかるように。
レヴォルは振り返らない。
振り返ってしまったら、足が止まる気がしたからだ。
徐にレヴォルは端末を取り出し、メッセージを打ち込む。
『飽きた』
送信。
削除。
……送信。
今度はメッセージを消さず、しばらく画面を見つめていた。
「まぁ……いいか」
夜の中へ。
誰も知らない旅路へ。
誰にも告げられない理由を抱えたまま。
そしてその夜。
アクシオンゲートKING、レヴォル=アルトルは、GARDENから姿を消した。