遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity 作:NONAME0195
NONAME0195です
今回は前話そして前前話とデュエル中心で
作者がちょっと休憩がてら、日常編を書きました
(デュエル回って書いてて死ぬほど疲れるんすよ)
文字数少なめですけど、お許しください(笑)
追伸、いつでもコメント待っております
激闘の中間ランキング戦から数日──
季節は五月
いつもの休日
平和な土曜日のはずだった
……しかし
この日、後にデュエルアカデミア史上もっとも恐ろしい事件が幕を開けることになる
その朝
某人気洋菓子店で数量限定のプレミアムプリンが発売された
開店前から長蛇の列
その列の中には、小さな紙袋を抱きしめる一人の少女の姿があった
神崎小町
朝早くから並び、ようやく手に入れた限定プリン
「ふふっ……今日の夜が楽しみ」
大事そうに持ち帰った小町は、冷蔵庫の一番奥へそっとしまう
本当は、お兄ちゃんの分も買ってあげたかった
だけど、一人一個までの数量限定
二個買うことはできなかった
だからせめて
「一口くらいなら、あげてもいいかな」
そんなことを考えながら、小町は笑みを浮かべる
──だが
その優しさを、兄はまだ知らない
そして事件は起こる
……いや
起こってしまった
同日の夜──
「……なんか甘いもの食べたいな」
仕事を終え、少し疲れた様子で帰宅した雄輝は、いつものように冷蔵庫を開ける
ガチャ──
「何か入ってないかなぁ……」
飲み物
作り置きのおかず
調味料
そして
棚の奥に、ひとつだけ残されたプリンを見つける
「おっ」
思わず表情が明るくなる
「糖分発見」
疲れた身体には、甘いものが一番
特に深く考えることもなく
誰のものか確認することもなく
雄輝はプリンを手に取る
パキッ
何の躊躇いもなくフタを開け
スプーンを差し入れ
ひとくち
「……うまっ」
あまりのおいしさに思わず笑みがこぼれる
「糖分が染みるう!」
そんなことを口にしながら、二口、三口……
スプーンは止まらない
もちろん
そのプリンが、朝早くから並んでようやく手に入れた
神崎小町の宝物だとは夢にも思わずに──
この何気ない行動が
数分後
神崎家へ一柱の鬼を降臨させることになるとは
まだ、誰も知らなかった……
「プリン♪ プ・リ・ン〜♪」
夜のお楽しみを胸に、小町は鼻歌交じりで冷蔵庫へ向かう
ガチャ──
「さてさて♪」
一番奥へ手を伸ばす
……あれ?
「ん?」
もう一度、奥を見る
右を見る
左を見る
「……あれ?」
冷蔵庫の中を見回しても
あるはずのプリンが、ない
「……えっ?」
一瞬、思考が止まる
そして次の瞬間
「な、ないいいいいっ!?」
思わず神崎家に絶叫が響き渡る
「私のプリンがぁぁぁぁぁぁ!!」
慌てて冷蔵庫の中をもう一度探す
野菜室
上の棚
ドアポケット
──ない
どこにも、ない
その時だった
リビングの方から
「ワッハッハッハ!」
テレビを見ながら豪快に笑う、聞き慣れた声が聞こえてきた
神崎雄輝
その笑い声を耳にした瞬間
小町の中で、一本の線がつながる
「……まさか」
ゆっくりと…本当にゆっくりと
小町はリビングへと顔を向けた
そして
探しものは、あった
リビングのテーブルの上
神崎雄輝の目の前に
小町の表情が固まる
そこにあったのは
プリンの容器
──中身は、空
スプーンまできれいに添えられている
「…………」
部屋が静まり返る
テレビの音だけが、妙に大きく聞こえる
雄輝はまだ気付かない
テレビを見ながら、満足そうにお茶を飲んでいる
一方、小町はというと
瞳の中から
光が完全に消え失せていた……
雄輝は、ぼへ〜っとテレビを見ていると
背後から、とてつもないプレッシャーを感じた
「……ん?」
ゾクッ
背筋を冷たいものが駆け抜ける
な、なんだ……この戦慄は!!
歴戦のデュエリストとして数々の強敵と戦ってきた
世界大会でも、命懸けのデュエルでも
こんな悪寒を味わった記憶は……
いや
ある
過去に、一度だけ
脳裏によみがえる苦い記憶
たしかあれは……
小町のケーキを、一人で全部食べた時だったか……
「……ま、まさか」
首から”ギギギギ……“という音が聞こえてきそうなほどぎこちなく
雄輝は恐る恐る後ろを振り返る
そこにいたのは──
絶賛、瞳のハイライトが休業中の神崎小町だった。
「こ、小町……さっ」
「お兄ちゃん……」
「ぴえっ!?」
底冷えするような小町の声
怒鳴り声ではない
むしろ静かだった
だからこそ
雄輝は声にならない悲鳴をあげる
歴戦のデュエリストですら
この”鬼”だけは
どうにも勝てる気がしなかった
「そのプリン……私が買ってきたやつなんだけどなあ」
口調は静かだった
怒鳴っているわけでもない
責め立てているわけでもない
それなのに
雄輝には、その一言が死刑宣告のように聞こえた
間違いない
ここで言葉を選び間違えれば
俺の命はない!!
考えろ……俺!!
生き抜くために!!!
「すいませんでした!!!」
気付けば雄輝は床へ頭を擦りつけていた
考えた
必死に考えた
そして導き出した答えは──
全面降伏。
ほかに、生き残る道はなかった。
「……あのね、お兄ちゃん」
小町は静かに口を開く
「私は謝ってほしいわけじゃないの……」
その穏やかな声色が
雄輝には魔王の宣告のように聞こえた
「なんで食べたのか、聞いてるんだけど?」
「ひぃっ……!」
言い訳を探そうとする
だが
何も思い浮かばない
食べた理由?
そんなものは決まっている
甘いものが食べたかった
ただ、それだけだ
……あまりにも最低すぎた。
「私はね、お兄ちゃん……」
小町は静かに目を伏せる
怒りに震えているはずなのに
その声は不思議なくらい穏やかだった
「お兄ちゃんのことは大好きだし」
一拍置き
ゆっくりと言葉を続ける
「尊敬もしてる……」
雄輝は小さく息をのむ
た、助かった……?
そう思った
ほんの一瞬だけ
「でもね」
絶 対 に 許 さ な い
雄輝は脂汗を一筋流す
その表情はかろうじて平静を装っていた
だが、その頭の中では──
ま、まずい!!
これは……かつてないほどにキレてしまっているううううう!!
普段の癇癪の方が何倍も可愛く思えてくる!!
そうだ……!!
ケーキの時も、こんな感じだった!!
あの時、俺は……
半殺しという言葉の意味を、身をもって理解することになった……
いや、待て!!
どうやって半殺しで済んだ!?
思い出せ!! 俺!!!
………………
そうだ!!
あの時は両親が止めてくれたんだった!!
だが、現在
両親は二人そろって海馬コーポレーションで長期出張中
副社長・海馬モクバのもとで、多忙な毎日を送っている
あんんの!! クソ弟副社長がァァァ!!
……いや、違う!!
完全に八つ当たりだこれ!!
つまり!!
今、この家には俺を助けてくれる人間が……いない!!
……俺の人生、ターンエンドかもしれん……
現実では
雄輝は一言も発していない
ただ、小町を前に
冷や汗を流しながら固まっているだけだった
「お兄ちゃん……聞いてる?」
小町の声のトーンが
少しずつ
少しずつ
低くなっていく
まずいまずいまずい!!
このままでは粛清が始まってしまう!!
ここは……逃げ──
「今、逃げようとか考えてるよね?」
のわああああああああっ!?
なんで分かるんだよおおおおお!!
こわえぇぇぇぇぇ!!!
雄輝は思わず飛び上がりそうになる
もちろん
実際には一歩も動けていない
完全に足がすくんでいた
ゴキン……
普段の小町の手からは聞こえるはずのない音が響く
雄輝の頬を、一筋の冷や汗が伝う
「お兄ちゃん……」
ゆっくりと
小町は一歩、前へ出る
「覚悟は……できてるよね?」
その瞬間
雄輝は悟った
──ああ
終わった
人生、ターンエンドだ……
次の瞬間――
「ぎゃあああああああああああああああああああああっ!!」
その日
神崎家から聞こえた男の悲鳴は
住宅街中に響き渡ったという。