遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity 作:NONAME0195
ヤツらをぶちのめす。
そう誓った俺を、シルヴィは静かに見つめていた。
その瞳に浮かんでいたのは、迷いでも不安でもない。
俺の覚悟を測るような、真剣な眼差しだった。
やがて、小さく口を開く。
「ユウ……」
一拍置き、静かに問いかける。
「今のあなたは、あの頃のユウなの?」
その問いの意味が、すぐには分からなかった。
「……どういう意味だ?」
シルヴィは俺から目を逸らさない。
「ユウ……実戦を離れて、どれくらいだった?」
その言葉で、シルヴィが何を確かめようとしているのか理解した。
「もし今のあなたが、あの頃より弱くなっているなら、この件はワタシが引き受ける
あなたの代わりに戦うわ」
確かに俺は、ガチのデュエルからはしばらく離れている。
だが、それでも……
「俺は俺だ……弱くなってなんかいない」
それだけは、断言できる。
シルヴィは小さく頷いた。
「……分かった」
その表情は変わらない。
「なら明日、ワタシとデュエルしましょう
あなたの言葉が本当か、この目で確かめるわ」
◇◇◇
「ふあ〜……」
眠い……
せっかくの夏休みなのに、いつも通りに起きちゃったなあ
そういえば昨日、お兄ちゃん帰ってきたのかな?
私が寝る頃には、まだ帰ってきてなかったけど……
……まさか、朝帰り!?
一瞬そう思ったけど、すぐに首を振る。
……ないな
お兄ちゃんだし
眠い目をこすりながらリビングへ向かう。
ドアを開けた瞬間、焼きたての朝食の香りがふわりと広がった。
「……いい匂い」
だが、そこには――
エプロン姿で朝食を作るお兄ちゃん。
そして、その隣ではシルヴィアさんが優雅に朝食を食べていた。
…………え?
いや、え?
なんで?
「おー、おはよう小町
コーヒーとココア、どっちがいい?」
お兄ちゃんは、まるで何事もないかのようにいつも通り聞いてくる。
「あっ、ココアで……」
反射的に答えかけて――
「……って違う!!なんでシルヴィアさんが普通に朝ごはん食べてるの!?」
「なんでって……昨日泊まったからな」
いやいやいや!
お兄ちゃん!?
なんで普通なの!?
そんな当たり前みたいに言われても!?
「しばらくよろしくねえ、小町ちゃん♪」
シルヴィアさんは、にこにこと手を振る。
「よろしくじゃなーーーい!!」
そんな私の叫びを、お兄ちゃんは完全にスルーした。
「シルヴィ……なんで小町のこと知ってたんだ?」
「何言ってるのよ?」
シルヴィアさんは、きょとんとした顔で首をかしげる。
「ユウがことあるごとに妹自慢してたからじゃない♪」
「……ソンナコトシテナイヨ」
目が泳いでる。
めちゃくちゃ泳いでる。
……あ、これ図星だ。
「ごほん」
お兄ちゃんはわざとらしく咳払いを一つ。
「さて、小町。
俺とシルヴィはこれからデュエルしてくるわ」
……。
…………。
なんかサラッとすごいこと言ってない?
「えっ!? ホントに!?」
眠気なんて一瞬で吹き飛んだ。
「見たい見たい! 絶対見たい!」
お兄ちゃんは少し笑う。
「なら早く準備しろ」
「うん!」
返事をすると同時に回れ右。
私は自分の部屋へ全力疾走した。
◇◇◇
「やれやれ……」
元気よく走っていく小町の背中を見送り、思わず苦笑する。
朝から元気なやつだ。
すると、隣からシルヴィが静かに口を開いた。
「あのことは、小町ちゃんたちには伝えるの?」
「ああ」
少しだけ間を置く。
「あいつらは、こんなこと知らなくていいさ」
俺は立ち上がり、食器を片付け始める。
「さて」
シルヴィも立ち上がった。
「約束通り、デュエルしましょうか」
「ああ」
俺は時計へ目を向ける。
「場所はデュエルアカデミアのデュエルフィールドでいいな?」
「もちろん」
◇◇◇
夏休みのデュエルアカデミア。
普段は生徒たちの声で賑わう校舎も、今は静けさに包まれていた。
そんな中、俺たちは中央デュエルフィールドへと足を運ぶ。
澄み切った青空。
照りつける夏の日差し。
フィールドに吹き抜ける風だけが、静かに二人を迎えていた。
少し遅れて、小町たちも姿を現す。
「間に合ったー!」
息を弾ませながら、小町が勢いよく手を振る。
「危ない危ない! デュエル始まっちゃうかと思った!」
「もう少し落ち着きなさいよ……」
隣では瑠奈が苦笑し、その後ろでは黒機が腕を組んでフィールドを見据えていた。
「先生のデュエルか……」
その声には、期待がにじんでいた。
私たちは観客席へ腰を下ろす。
目の前に立つ二人。
世界ランキング十五位、シルヴィア・エミリー・カーター。
そして――
私のお兄ちゃん。
「ユウと最後に戦ったのは1年前かな」
シルヴィが周囲を見渡し、小さく笑う。
「ああ」
俺はデュエルディスクを腕へ装着する。
カチッ。
起動音が静寂に響いた。
シルヴィも静かにディスクを展開する。
その表情から、先ほどまでの柔らかな笑みは消えていた。
今、目の前にいるのはモデルでも旧友でもない。
世界ランキング十五位のデュエリストだ。
俺も自然と息を整える。
久しぶりの実戦。
それでも、不思議と緊張はなかった。
「シルヴィ……準備はいいな?」
「ええ……いつでも」
「「デュエル!!」」
1ターン目 シルヴィア LP4000
「私のターン! ドロー!」
さて、ユウ……
今のあなたを見定めさせてもらうよ。
「《D-HERO ダイヤモンドガイ》を通常召喚!」
────
《D-HERO ダイヤモンドガイ》
闇属性
レベル4
【戦士族/効果】
ATK1400/DEF1600
①:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。自分のデッキの一番上のカードをめくり、それが通常魔法カードだった場合、そのカードを墓地へ送る。違った場合、そのカードをデッキの一番下に戻す。この効果で通常魔法カードを墓地へ送った場合、次の自分ターンのメインフェイズに墓地のその通常魔法カードの発動時の効果を発動できる。
────
シルヴィは静かにデッキへ手を伸ばした。
「《D-HERO ダイヤモンドガイ》の効果を発動」
デッキトップのカードをゆっくりとめくる。
現れたのは――
《おろかな埋葬》。
シルヴィの口元に、わずかな笑みが浮かぶ。
「通常魔法ね」
カードをそのまま墓地へ送る。
「これで次の私のメインフェイズ、この《おろかな埋葬》の効果を発動できる」
続けて、一枚のカードをフィールドへ掲げる。
「フィールド魔法《幽獄の時計塔》発動!」
カードが輝いた瞬間、巨大な時計塔がフィールド中央に姿を現す。
まるでロンドンの街並みにそびえ立つような古い時計塔。
鐘の音が静かに響き渡り、フィールド一帯を闇夜へと染め上げていく。
────
《幽獄の時計塔》
フィールド魔法
相手ターンのスタンバイフェイズ時に時計カウンターを1個置く。
時計カウンターが4個以上ある間、このカードのコントローラーは戦闘ダメージを受けない。
時計カウンターが4個以上乗ったこのカードが破壊され墓地へ送られた時、手札またはデッキから《D-HERO ドレッドガイ》1体を特殊召喚する。
────
さらにカードを一枚伏せる。
「これでターンエンド」
シルヴィは静かに雄輝を見つめる。
「さあ、ユウ――あなたのターンよ」
◇◇◇
「えっ……!?」
思わず声が漏れた。
「シルヴィアさんのデッキもヒーローなの!?」
「その反応……知らなかったのか」
腕を組んだ黒機が、静かに口を開く。
「先生が使うのは《E・HERO》――エレメンタル・ヒーロー」
黒機の視線がフィールドへ向く。
「対して、あっちが使うのは《D-HERO》――デステニー・ヒーローだ」
一度言葉を切り、小さく息をつく。
「どっちも”HERO”だが、戦い方はまるで違う
《E・HERO》は融合を軸に戦う正統派
《D-HERO》は墓地利用や展開力に長けた、トリッキーなデッキだ」
「HERO対HEROのデュエル……」
瑠奈がぽつりと呟く。
黒機は静かに頷いた。
「ああ……同じ名を持つ二つのデッキのぶつかり合いってわけだ」
2ターン目 雄輝 LP4000
「俺のターン! ドロー!!」
スタンバイフェイズ。
《幽獄の時計塔》の効果により、時計塔へ時計カウンターが1つ置かれる。
カチッ……
時計塔に最初の時計カウンターが刻まれる。
時計カウンター:1
……D-HEROは墓地を利用しながら戦うデッキ。
時間をかければかけるほど、あいつのペースになっていく。
……ならば!!
勝負は序盤から仕掛ける!
「《融合》を発動! 手札の《E・HERO バーストレディ》と《E・HERO フェザーマン》を融合!」
炎が渦巻き、疾風が吹き荒れる。
二人のHEROは一つとなり、新たな英雄が姿を現す。
「現れろ! 《E・HERO フレイム・ウィングマン》!!」
炎の翼を広げ、風をまとったHEROが雄々しくフィールドへ降り立った。
────
《E・HERO フレイム・ウィングマン》
風属性
レベル6
【戦士族/融合/効果】
ATK2100/DEF1200
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
①:このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
────
フレイム・ウィングマンが大きく翼を広げる。
炎がその全身を包み込み、灼熱の熱風がフィールドを駆け抜けた。
「バトル!!」
右手を前へ突き出す。
「《E・HERO フレイム・ウィングマン》で《D-HERO ダイヤモンドガイ》に攻撃!
フレイム・シュート!!」
炎をまとった蹴りが《D-HERO ダイヤモンドガイ》を貫く。
ダイヤモンドガイは一瞬で光の粒子となり、フィールドから消滅した。
「くっ……!」
シルヴィは戦闘ダメージを受け、小さく表情を歪める。
そして――
「《E・HERO フレイム・ウィングマン》の効果!」
フレイム・ウィングマンの右腕に炎が渦巻く。
「戦闘で破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」
放たれた炎の衝撃波がシルヴィを直撃した。
シルヴィア LP4000 → 1900
フレイム・ウィングマンが雄輝の前へ降り立つ。
「カードを一枚伏せる」
静かにカードをセットし、シルヴィを見据える。
「ターンエンドだ」
◇◇◇
「いきなり、お兄ちゃんが融合!?」
フレイム・ウィングマンの姿を見つめたまま、思わず声が漏れた。
「序盤から、いきなり融合モンスターを出すの!?」
瑠奈も驚いたように目を見開いた。
「いや……これでいい」
腕を組んだまま、黒機が静かに口を開く。
「相手は《D-HERO》だ…
墓地を利用してアドバンテージを稼ぐデッキ」
視線はフィールドから離さない。
「時間を与えれば与えるほど、シルヴィアさんのペースになる」
一拍置き、黒機は静かに頷く。
「だからこそ、リソースが揃う前に攻め込んだ
先生の判断は正しい……と思う」
◇◇◇
3ターン目 シルヴィア LP1900
「私のターン! ドロー!」
……さすがユウ。
《D-HERO》の特性を理解して、序盤から融合モンスターで攻めてきた。
でも――
それだけで攻め切れるほど、ワタシは甘くない!
「前のターン、《D-HERO ダイヤモンドガイ》の効果で墓地へ送った《おろかな埋葬》の効果を発動」
────
《おろかな埋葬》
通常魔法
①:デッキからモンスター1体を墓地へ送る。
────
「デッキから《D-HERO ディアボリックガイ》を墓地へ送る」
墓地へ送られた《D-HERO ディアボリックガイ》を確認すると、間髪入れず次のカードを掲げる。
「さらに、《デステニー・ドロー》発動!」
手札の《D-HERO ドリームガイ》を墓地へ送り、二枚のカードを引き抜く。
────
《デステニー・ドロー》
通常魔法
①:手札から「D-HERO」カード1枚を捨てて発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。
────
そして――
ここから攻める!!
「《D-HERO ドリルガイ》を通常召喚!」
甲高い駆動音を響かせながら、両腕に巨大なドリルを備えたHEROがフィールドへ姿を現す。
────
デステニーヒーロー ドリルガイ
《D-HERO ドリルガイ》
闇属性
レベル4
【戦士族/効果】
ATK1600/DEF1200
①:「D-HERO ドリルガイ」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ「D-HERO」モンスター1体を手札から特殊召喚する。
②:このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
────
ドリルガイの足元から立ち上る黒い光が、人影を形作っていく。
「《D-HERO ドリルガイ》の効果を発動! 手札から《D-HERO ディシジョンガイ》を特殊召喚!」
────
デステニーヒーロー ディシジョンガイ
《D-HERO ディシジョンガイ》
闇属性
レベル4
【戦士族/効果】
ATK1600/DEF1000
①:「D-HERO ディシジョンガイ」の①③の効果はそれぞれデュエル中に1度しか使用できない。このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。このターンのエンドフェイズに、自分の墓地の「HERO」モンスター1体を選んで手札に加える。
②:レベル6以上の相手モンスターはこのカードを攻撃対象に選択できない。
③:このカードが墓地に存在し、自分にダメージを与える魔法・罠・モンスターの効果が発動した時に発動する。このカードを手札に戻し、その効果で自分が受けるダメージを0にする。
────
……ユウ。
悪いけど、
フレイム・ウィングマンには退場してもらうわ。
「魔法カード発動!《融合解除》!!」
「なっ!?」
《E・HERO フレイム・ウィングマン》が眩い光に包まれる。
炎の翼は霧散し、その巨体は光の粒子となってエクストラデッキへと還っていく。
代わって、融合素材となっていた《E・HERO フェザーマン》と《E・HERO バーストレディ》が守備表示でフィールドへ舞い戻った。
「いくよ! バトル!!
《D-HERO ディシジョンガイ》で《E・HERO フェザーマン》を攻撃!!」
ディシジョンガイの鋭い一撃がフェザーマンを切り裂く。
フェザーマンは戦闘破壊され、その姿をフィールドから消した。
「さらに!
《D-HERO ドリルガイ》で《E・HERO バーストレディ》に攻撃!!」
高速回転する巨大なドリルが一直線に突き進む。
バーストレディはその一撃に貫かれ、衝撃が雄輝を襲った。
「……くっ!」
雄輝 LP4000 → 3200
「リバースカードオープン!
《ヒーロー・シグナル》!!」
────
《ヒーロー・シグナル》
通常罠
①:自分フィールドのモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。手札・デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する。
────
「来い!
《E・HERO フォレストマン》!!」
深い森の気配をまとったHEROが、雄輝のフィールドへ守備表示で姿を現した。
「……エンドフェイズ
《D-HERO ディシジョンガイ》の効果を発動」
墓地から淡い光が立ち上る。
光は一枚のカードへと姿を変え、シルヴィの手札へ収まった。
《D-HERO ダイヤモンドガイ》。
……さすがね。
タダではやられてくれない。
「ターンエンドよ」
◇◇◇
4ターン目 雄輝 LP3200
「俺のターン! ドロー!」
スタンバイフェイズ。
すると――
シルヴィのフィールドにそびえる《幽獄の時計塔》が、静かに鐘を鳴らす。
カチッ……
時計塔へ二つ目の時計カウンターが刻まれる。
時計カウンター:2
「《E・HERO フォレストマン》の効果を発動!」
デッキから《融合》を手札へ加える。
────
《E・HERO フォレストマン》
地属性
レベル4
【戦士族/効果】
ATK1000/DEF2000
①:1ターンに1度、自分スタンバイフェイズに発動できる。自分のデッキ・墓地から《融合》1枚を選んで手札に加える。
────
……俺の手札で、現状を打開できるカードはない。
なら――
今は耐えるしかない。
「カードを2枚伏せて……ターンエンドだ」
◇◇◇
「カードを2枚伏せるだけ?」
瑠奈が首を傾げる。
「おそらく、展開できるカードがなかったんだろう」
黒機くんの言葉に、瑠奈が小さく頷く。
「つまり……今は守りに入ったってこと?」
……あのお兄ちゃんが、守りに。
そこまで追い詰められてるってことなんだ。
「先生がこの状況からどう出るのか……
あの人のことだから、このままやられっぱなしってことはないと思う」
私も、黒機くんの言う通りだと思う。
お兄ちゃんが、このまま負けるわけない……
そうだよね……
お兄ちゃん。