遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity   作:NONAME0195

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第15話 忍び寄る闇

酒を飲みながら、他愛もない話を続ける。

 

昔話で笑って。

 

近況を話して。

 

気付けば、テーブルの料理はほとんど空になっていた。

 

俺は何気なく腕時計へ目をやる。

時刻は午後九時を回っていた。

 

思った以上に話し込んでいたらしい。

 

「そろそろ帰るぞ」

 

空になったグラスをテーブルへ置き、立ち上がる。

 

「えーーー……もう出にゅのーー?」

 

……。

 

俺はゆっくりシルヴィを見る。

 

頬はほんのり赤く染まり。

 

目はとろんとして焦点が合っていない。

 

「……お前」

 

「ん~?」

 

「酔ってるだろ」

 

「よってにゃいもーん♪」

 

……完全に酔ってやがる。

 

なんだ。

 

“出にゅの”って。

 

思わずため息が漏れる

 

めんどくさい。

 

こうなったこいつは、大体こう言う。

 

「ユウ、おぶって〜♡」

 

……ほーらな。

 

そうなると思ってたよ。

 

毎回このパターンだ。

 

そして俺は知っている。

 

どうせ、こいつ──

 

「お前、今日の寝床は?」

 

シルヴィは人差し指を立て、にこっと笑う。

 

「ん〜? ユウの家♡」

 

……はい、知ってたー。

 

なんとなく察してたもんねぇ。

 

だって。

 

そこにキャリーケースあるもんねぇ。

 

ホテルにチェックインしてないもんねぇ。

 

思わず額を押さえる。

 

「お前……最初っから、そのつもりだっただろ」

 

「えへへ♪」

 

否定しねぇ。

 

こいつ、確信犯だ。

 

はぁ……。

 

俺がどれだけ抵抗しようが、最後に折れるのは結局俺。

 

分かってる。

 

長年の付き合いだ。

 

無駄な抵抗は、精神衛生上よろしくない。

 

……時には諦めも大事なんだよ。

 

とりあえず会計を済ませるとしよう……。

 

俺は伝票を手に取り、レジへ向かう。

 

会計を済ませ、戻ってくると──

 

「ほら、帰るぞ」

 

「おぶってー♡」

 

……まだ言うか。

 

「歩け」

 

「やだぁ〜」

 

「……」

 

やっぱり、こうなるのか。

 

これ以上言い合っても無駄だ。経験上、分かっている。

 

悟りを開いた俺は、黙って背中を向け、その場にしゃがみ込む。

 

「えへへ〜♡」

 

待ってましたとばかりに、シルヴィは嬉しそうに俺の背中へ飛び乗った。

 

「よっと♪」

 

そのまま首へ腕を回し、ぎゅっと抱きついてくる。

 

「苦しい」

 

「えへへ、ごめんごめん♪」

 

……絶対、反省してねぇな。

 

俺は小さくため息をつき、そのまま立ち上がる。

 

「おっとっと♪」

 

背中でシルヴィが楽しそうに笑う。

 

「落ちるなよ」

 

「ユウが落とさなければ大丈夫♡」

 

なんで俺の責任なんだよ……

 

そんな他愛もないやり取りを交わしながら、俺たちは居酒屋を後にした。

 

店の外へ出ると、夜だというのにジメッとした暑さが肌にまとわりつく。

 

勘弁してくれよ。

 

このクソ暑い中、お荷物を背負って帰るのかよ。

 

……お荷物?

 

もちろんシルヴィのことだ。

 

……キャリーケース?

 

「後で取りに来るから置いといて〜♪」

 

なんて言うもんだから、そのまま店に預けてきた。

 

……。

 

あれ?

 

よく考えたら、取りに来るの俺じゃねぇか。

 

……めんどくせえええ!!

 

「くふふ〜♡ らくちーん♪」

 

……この酔っぱらい、どうしてくれよう。

 

今すぐぶん投げたい衝動に駆られる。

 

……が、なんとか押さえ込む。

 

「ぎゃあああ!!」

 

突然、夜の静寂を切り裂くような悲鳴が響いた。

 

同時に、路地裏の奥から不自然な光が夜空を照らす。

 

「シルヴィ!!」

 

振り返るまでもなかった。

 

さっきまで酔っていたはずのシルヴィは、もう笑っていない。

 

無言で頷く。

 

それだけで十分だった。

 

俺たちは同時に駆け出した。

 

そして、路地裏を曲がると──

 

一人の男が道路に倒れていた。

 

周囲には、無数のカードが散乱している。

 

手からこぼれ落ちたデッキは、アスファルトの上へ無惨に撒き散らされていた。

 

「おい、大丈夫か!」

 

俺は男のもとへ駆け寄る。

 

シルヴィは周囲へ鋭い視線を走らせる。

 

……だが、犯人らしき姿はどこにも見当たらなかった。

 

「ユウ! その人は!?」

 

俺は倒れている男の容態を確認する。

 

……呼吸はある。

 

外傷も見当たらない。

 

だが。

 

目を見開いたまま、まるで反応がない。

 

焦点の合わない瞳は、何も映していないようだった。

 

……まるで、魂だけを抜き取られたような。

 

◇ ◇ ◇

 

「では……他にも被害者がいるってことなんですか?」

 

「ああ」

 

海馬社長は即答した。

 

「貴様が発見した現場を含め、同時刻に三件発生している」

 

三件……。

 

つまり、三人も犠牲になったということか。

 

「そのいずれも意識を失ったまま倒れている」

 

海馬社長は一拍置き、静かに続ける。

 

「……まるで、魂だけを抜き取られた抜け殻のようにな」

 

三幻魔のカードは三枚。

 

そして、犯人も三人。

 

……つまり。

 

三人が、それぞれ別の場所で。

 

同時刻に襲撃を仕掛けたということか。

 

「いずれにしても、貴様も用心しておけ」

 

「分かりました」

 

「何か動きがあれば、すぐに連絡しろ」

 

「はい」

 

通話が切れる。

 

携帯を下ろした瞬間だった。

 

「ユウ……」

 

振り返ると、シルヴィが真剣な表情で俺を見つめていた。

 

「あなた……何に巻き込まれてるの?」

 

……どうする。

 

話せば、こいつは絶対に「協力する」と言い出す。

 

できることなら……

 

シルヴィも。

 

小町たち生徒も。

 

危険に巻き込みたくはない……。

 

だが。

 

シルヴィに隠し事を隠し通せた試しがねぇ。

 

黙り込む俺を見つめるシルヴィ。

 

その声は、さっきまでの酔っぱらいとはまるで別人だった。

 

「ワタシはユウに守られるだけの人ではないよ?」

 

ああ……そうだったな。

 

お前は、そういうやつだった。

 

俺は小さく息を吐く。

 

「……分かった」

 

そうして俺は、シルヴィに全てを話した。

 

昨夜、海馬コーポレーションで起きた事件。

 

三幻魔のカードが盗まれたこと。

 

そのカードが、現実に影響を及ぼす危険な力を持っていること。

 

そして――

今夜、この街で起きた魂を抜かれたような事件との繋がり。

俺の知ってることを全て話した

 

「ソリッドビジョンが現実に影響を及ぼす……」

 

その言葉を反芻するように、シルヴィは小さく息を吐く。

 

「とても信じられないことね……」

 

まあ、そりゃそうだ。

 

俺自身、目の前で起きたことだって、いまだに信じ切れていない。

 

シルヴィはしばらく黙り込んでいた。

 

やがて、小さく息を吐く。

 

真っ直ぐ俺を見つめる。

 

「でも……ユウがそう言うなら、本当なんだね」

 

突拍子もない話だ。

 

信じろと言う方が無茶だ。

 

それでも、シルヴィは信じてくれた。

 

……助かる。

 

そんなこと、口にはしねぇけどな。

 

「それで? ユウはどうするつもりなの?」

 

その問いに、俺は静かに考える。

 

……決まってる。

 

放っておけば、被害者は増える。

 

小町たちのところまで危険が及ぶ前に。

 

奴らを探し出す。

 

そして――

 

ぶちのめす。

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