遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity   作:NONAME0195

23 / 24
第17話 夏だ!プールだ!

夏――

 

それは、日本の四季の中でもっとも気温が高い季節

 

こんな暑い日は、クーラーの効いた部屋でソファに座り、映画鑑賞でもする

 

それが俺の過ごし方だ

 

決して――

 

雲一つない青空

 

照りつける太陽

 

楽しそうにはしゃぐ声

 

バシャバシャと響く水の音

 

そんなものとは縁遠い生活を送っているはずだった

 

「……なんで俺はこんなところに」

 

というわけで俺は今――

 

プールにいます

 

どうしてこうなった……

 

そして話は、本日の朝まで遡る

 

◇◇◇

 

「お兄ちゃん! 今日暇?」

 

唐突に小町が俺に聞いてきた

 

だいたい、こういう時は何かしら面倒なことに付き合わされる

 

それを経験上わかっている俺は、当然――

 

「いや、忙しいな、色々」

 

学生たちは夏休みかもしれないが

 

教師という社会人に、夏休みなんてものは存在しない

 

生徒いねぇんだから休みにしろっつの!

 

……だが、あいにく本日は土曜日

 

普通に休みである

 

つまり、予定はない

 

が!

 

ここは「忙しい」と言って、しっかり嘘をついて休みを満喫!

 

クーラーの効いた部屋で引きこもるのだ!

 

しかし――

 

俺は失念していた……

 

現在、我が家には

 

俺をおちょくることに特化した奴が居候していることに!!

 

「ユウ? 色々って、例えば?」

 

シルヴィのばかやろーーーー!!

 

余計なことを聞くんじゃねぇ!!

 

まずい!

 

ここで選択をミスると、俺の休みが……!

 

「……色々は、色々だよ」

 

俺のばかーー!!

 

もっとなんか捻り出せよ!!

 

「つまり、暇なんだね?」

 

シルヴィは、確信を得たような悪い笑みを浮かべていた

 

くそったれ!

 

居候の分際でええええ!!

 

「よかったー! 暇なんだね!」

 

小町が嬉しそうに声を上げる

 

そして――

 

「お兄ちゃん、プール行くよ!!」

 

「は?」

 

「準備して、今すぐ!」

 

「ちょ、待て待て待て!」

 

俺の休日が!!

 

俺の平穏な休日があああああ!!

 

◇◇◇

 

というわけで――

 

俺はほぼ強制的に、プールにいます

 

現在はというと

 

黒い海パンに黒いラッシュガードを羽織り、女性陣が更衣室から出てくるのを待っていた

 

えっ?

 

なんでラッシュガードなんて着てるのって?

 

んなもん、日焼けしたくねぇからだ!!

 

だって痛いんじゃん

 

シャワー浴びる時とか

 

そんなことを一人でボケっと考えていると、隣から不満そうな声が聞こえてきた

 

「それで? なんで俺までプールに連れてこられたんですか、先生?」

 

そう、黒機である

 

小町が朝比奈も誘うっていうから

 

俺は黒機を脅し……

 

……お呼び出ししたのである

 

「なんでって……」

 

俺は少し考える

 

そして――

 

「あっ、ナンパ避けにちょうどいいかなって」

 

「先生……今、『あっ』って言いましたよね?」

 

黒機がジト目を向けてくる

 

「本音はなんです?」

 

ふむ

 

本音か

 

そりゃあ――

 

「俺がクソ暑い思いするのに、クーラーの効いた部屋に黒機がいると思ったら癪だった」

 

「最低じゃないですか!!」

 

「安心しろ、俺もそう思う」

 

「自覚あるなら連れてこないでくださいよ!!」

 

「なにおう!? こいつ!」

 

思わず黒機へ食ってかかる

 

「やかましい! むしろ感謝しろ、こら!」

 

「どこに感謝する要素があるんです!!」

 

「貴様!」

 

俺は黒機を指差す

 

「こんな機会がなければ、同級生とプールなんて行けねぇだろが!!」

 

「いや、だからって先生が無理やり連れてくるのは違うでしょう!!」

 

「うるさい!」

 

さらに俺は追い打ちをかける

 

「貴様! せっかくの夏休みだぞ!」

 

「だからって――」

 

「この思春期男子のインテリすけべが!!」

 

「なんで俺が怒られてるんですか!?」

 

「だまらっしゃい!入場料も漏れなく俺のポケットマネーで!タダで青春謳歌できるんだ!むしろ崇め奉れ!!」

 

「それでも教師ですか!!」

 

「残念でした! 今は休日なんで、先生モードもお休みでーす!」

 

などと、しょうもない口喧嘩を黒機としていると――

 

「ユウ、お待たせー」

 

シルヴィたちが着替えを終えて、俺の前に姿を現した

 

「……っ」

 

俺はシルヴィを視認した瞬間――

 

「そおおおおい!!」

 

「おわっ!? いきなりなにっ!?」

 

俺は自分の着ていたラッシュガードを脱ぎ――

 

0.5秒でシルヴィの顔面へ投げつけた

 

「ユウ!? 何するの!?」

 

何するのって!

 

こいつはアホなのか!!

 

「アホが!! 自分のスタイルを自覚しろ!! モデルだろうが!!」

 

そう、この女

 

もう素晴らしいくらい、黒のビキニが似合っていた

 

だが――

 

上に何も羽織っていない!!

 

おかげで、周りの野郎どもの視線が釘付けになっている

 

黒機なんて、口を開けたまま目を見開いてやがる

 

「おい」

 

俺は黒機の頭をどついておいた

 

「痛っ!? なんで俺が!?」

 

「うるさい!!」

 

そんな俺の反応を見て――

 

シルヴィはニヤッと笑った

 

「なあにぃ?」

 

楽しそうに俺を見る

 

「ワタシの水着姿を、他の人に見られたくないんだ?」

 

「…………」

 

「もしかして、嫉妬?」

 

「違う!!」

 

即答した

 

「じゃあ、なんでラッシュガード投げたの?」

 

「それは……」

 

なんでだ?

なんか条件反射でやったけども

 

俺が首を捻って唸っていると――

 

生徒たちは――

 

こいつ、マジか……

 

みたいな顔をしていた

 

なんだ!

その顔は!

 

「無自覚なんだ……」

 

「無自覚なんですね」

 

「無自覚なんだね」

 

三人が同時に呟く

 

なにがだ!!

 

小町が呆れた顔で口を開く

 

「はいはい、バカやってないで泳ぐよー

せっかくプールに来たんだから」

 

そう言って、小町はシルヴィアに向き直る

 

「シルヴィアさんも大変ですねー」

 

すると――

 

「んーん」

 

シルヴィアは楽しそうに笑う

 

「でも、ちょっと可愛いじゃない♪」

 

「…………」

 

なにがだっ!!

 

◇◇◇

 

あー……あづい

 

太陽が憎い……

 

地球温暖化、なんとかしてくれよ

政治家諸君

 

そんなことをぼけぇっと考えながら、俺は浮き輪に身体を預けてプールに浮かんでいた

 

さながら――

 

島流しである

 

ぷかぷか浮かびながら、俺は昨日の海馬社長との会談を思い出していた

 

昨日――

 

 

俺はまたしても海馬社長に呼び出しをくらった

 

ほんっと、唐突に来るんだよなあ

 

いきなり今すぐこいだぜ?

 

まあ、このタイミングなら

 

おそらくは三幻魔の件だろうな

 

俺は今回は粘らずにドアをノックする

 

すると部屋から短い返事がくる

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

俺はドアを開け、バカ広い社長室へ入室する

 

そこには――

 

無駄に豪華な椅子に座り、窓の外を見ている海馬社長

 

「…………」

 

いや

 

社長といえば、みたいなことしてるな、おい

 

なんだよ、その無駄に完成された社長ムーブ

 

……くそ

 

絵になってるのが腹立つ!!

 

いや、褒めてないからな!?

絶対に褒めてないからな!!

 

俺が心の中で少々、敗北感に打ちひしがれていると

 

海馬社長は早速、本題に入った

 

「貴様を呼び出したのは、例の三幻魔の件だ」

 

やはり……か

 

なんとなく予想はしていたが

 

「すでに被害報告は、貴様が遭遇した件も含めて30件に上っている」

 

「30!?」

 

思わず声が出る

 

俺が遭遇した、あの事件だけじゃない

 

すでに、それだけの事件が起きているってことか

 

「なら……30人も犠牲になってるんですか!?」

 

海馬社長は、静かに俺を見る

 

「そうだ」

 

その一言に、背筋が冷える

 

「30人全員が昏睡状態となり、我が海馬コーポレーションが経営する病院に秘密裏に入院している」

 

「……」

 

30人……

 

俺が遭遇した、あの男も

 

その30人のうちの一人だったのか

 

「公表すれば、パニックになることは間違いないからな」

 

それはそうだ

 

ソリッドビジョンが現実に作用する

 

それだけでも大騒ぎになる

 

ましてや――

 

デュエルに負ければ昏睡状態になる

 

その正体が「魂を抜かれた」なんて話を、公言できるわけがない

 

そんなことを発表したら……

 

世間が大混乱するのは間違いない

 

「だが、ここ最近

奴らのターゲットに偏りが出てきた」

 

「偏り?」

 

俺は眉をひそめる

 

30件もの被害が出ている

 

その中で、狙われる相手に共通点が出てきたということか

 

「具体的には?」

 

俺が尋ねると

 

海馬社長は一枚の資料を取り出した

 

「最近の被害者を見てみろ」

 

そう言って、資料を俺へ差し出す

 

中身を拝見する

 

そこに並んでいたのは、これまでの被害者たちの情報

 

俺は一人ひとりの名前と戦績に目を通していく

 

そして――

 

あることに気づいた

 

「これは――」

 

「気がついたようだな」

 

海馬社長が口を開く

 

「そうだ」

 

資料へ視線を落としながら、続ける

 

「ここ最近の被害者は、どれもデュエリストとして実力者ばかりが狙われている」

 

大会の優勝経験者から、果ては日本のプロデュエリストまでが被害に遭っている

 

なぜ、奴らは強い奴を狙う?

 

俺の疑問を察したように、海馬社長が口を開く

 

「奴らが強い者を狙う理由は、まだ分からん」

 

そこで一度、言葉を区切る

 

「……だが、用心しろ」

 

海馬社長が俺を見る

 

「貴様もターゲットにされる可能性が出てきたということだ」

 

「……」

 

昨日の会談は、そこで終わった

 

そして――

 

「……暑い」

 

現実に戻った俺は、浮き輪に身体を預けながら空を見上げる

 

昨日の海馬社長との会談を思い出していたわけだが……

 

「それにしても、なんで俺はこんなところにいるんだ」

 

そんなことを考えていると――

 

!!!?

 

いきなり足を引っ張られた!!

 

「かぼぼぼぼっっ!!?」

 

何が起きた!?

 

俺の身体は、そのまま水中へ引き摺り込まれていく

 

ちょっ、待て!!

 

息が!!

 

誰だ!?

 

必死に水面へ手を伸ばす

 

だが――

 

ぐいっ!!

 

さらに身体を引っ張られる

 

「かぼっ!?」

 

くそっ!!

 

このままじゃマジで溺れる!!

 

俺は必死にもがきながら、なんとか足を振りほどく

 

そして――

 

「ぷはぁっ!!」

 

勢いよく水面から顔を出した

 

「はぁ……はぁ……!」

 

一体、何が――

 

そう思って周囲を見回すと

 

少し離れたところで、シルヴィが水面から顔を出していた

 

「ふふっ♪」

 

「…………」

 

その笑顔を見た瞬間

 

すべてを察した

 

「お前かぁぁぁぁぁ!!」

 

「あははー、油断してる方が悪いのよーー!」

 

水面から顔を出したシルヴィが、悪びれる様子もなく笑っている

 

「てめえええ……」

 

俺は拳を握りしめる

 

こいつ……

 

よりにもよって、人が海馬社長との会談を思い出してる最中に――

 

「今日という今日は、絶対許さん!」

 

「えっ?」

 

シルヴィの笑顔が、一瞬だけ固まった

 

「ちょ、ユウ?」

 

「逃がすかぁぁぁぁ!!」

 

「きゃーーー!!」

 

◇◇◇

 

またしても追いかけっこが勃発した二人を、私たちは少し離れたところから見ていた

 

すると、瑠奈が私に声をかける

 

「あの二人、またやってるよ」

 

完全に呆れた口調だった

 

「いつものことだ、ほっとけほっとけ」

 

黒機くんは、もう慣れた様子で二人を眺めている

 

……まあ

 

確かに、いつものことなんだけどね

 

すると瑠奈が突然、黒機くんに向き直った

 

「ところで、黒機?」

 

「ん?」

 

「私たちに言うことないの?」

 

「…………」

 

黒機くんの動きが止まる

 

「……ナンノコトデスカ?」

 

瑠奈はジトッと黒機くんを見る

 

「水着」

 

「…………」

 

「感想」

 

「…………」

 

「何かないの?」

 

「いや……その……」

 

黒機くんは明らかに困った顔をしている

 

そこへ私もイタズラ心が芽生えた

 

「黒機くん、ちゃんと女の子の水着見たなら感想くらい言わないとダメだよ?」

 

「いや、だからって神崎まで乗っからないでくれよ!!」

 

「だって、瑠奈の言う通りだもん」

 

「お前まで……」

 

黒機くんは完全に逃げ場を失っていた

 

「……似合ってると思う」

 

「声ちっさ」

 

瑠奈が即座にツッコむ

 

「聞こえないんだけど」

 

「だから……!」

 

黒機くんは顔を赤くしながら、もう一度口を開く

 

「……二人とも、似合ってると思う」

 

「よし!」

 

瑠奈は満足して頷いた

 

「なんなんだよ、この茶番……」

 

でも瑠奈はさらに追い込みにかかった

 

「ちなみに誰が1番好み?」

 

「ノーコメントだ!!!」

 

◇◇◇

 

それから私たちは、ウォータースライダーに乗ったり

 

なぜか設置されていた飛込台を使って、誰が一番綺麗に着水できるか競ったりした

 

ちなみに、お兄ちゃんの前方三回転宙返りからの着水が一番綺麗だった

 

……いや!

 

なんでできるん!?

 

ほんっと、変なところで高スペックを発揮するよね、お兄ちゃん!

 

そんなこんなで一日が過ぎ――

 

気がつけば、すでに夕方になっていた

 

流石に私も疲れてきたなあ……と思っていたところで

 

「もう夕方だ、そろそろ帰るぞ」

 

お兄ちゃんがそう言った

 

「えー、もう帰るのー?」

 

シルヴィアさんは、名残惜しそうに不満を漏らす

 

すると、お兄ちゃんは呆れたようにシルヴィアさんを見る

 

「お前の無尽蔵の体力と一緒にするな!」

 

そして――

 

「黒機を見ろ! グデグデになってるだろが!」

 

「…………」

 

お兄ちゃんに指を差された黒機くんは――

 

プールサイドで完全に燃え尽きていた

 

「……もう……無理……」

 

「ほらな!」

 

「誰のせいだと思ってるんですか……」

 

「知らん!」

 

「理不尽すぎる!!」

 

……最後まで、元気だなあ

 

お兄ちゃんと黒機くん

 

◇◇◇

 

そんなこんなで帰り支度をすることになり

 

それぞれ更衣室で着替え、入り口で待ち合わせして帰路についた

 

「はぁー……今日は楽しかったあ!」

 

私は大きく伸びをする

 

ウォータースライダーも楽しかったし

 

飛込台で競争したのも楽しかった

 

「ね! お兄ちゃん!」

 

私は隣を歩くお兄ちゃんを見る

 

すると――

 

「…………」

 

お兄ちゃんは、後ろを振り返っていた

 

しかも――

 

さっきまでの楽しそうな顔とは違う

 

鋭い目で、何かを警戒するように後方を見ている

 

「……?」

 

なんだろう

 

「お兄ちゃん?」

 

私が声をかけると、お兄ちゃんはすぐにこちらを向いた

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんでもない」

 

そう言って、お兄ちゃんはいつものように笑う

 

「……?」

 

なんでもない?

 

でも――

 

さっきの目

 

あれは、なんでもない人の目じゃなかった

 

私が少し気になっていると、お兄ちゃんが口を開く

 

「あー、わるい」

 

「え?」

 

「俺、ちょっと用事あるから」

 

「用事?」

 

瑠奈が首を傾げる

 

「うん、ちょっと寄るところがあるんだ」

 

お兄ちゃんは、何でもないことのように言う

 

「お前ら、先に電車で帰ってろ」

 

「分かりました」

 

黒機くんはあっさり頷いた

 

「じゃあ、神崎と朝比奈は俺が送るよ」

 

「ありがと、黒機」

 

瑠奈も特に疑う様子はない

 

「じゃあ、お兄ちゃん。また後でね」

 

「おう」

 

……でも

 

私はもう一度、お兄ちゃんの顔を見る

 

やっぱり――

 

何かおかしい

 

どうして急に用事ができたんだろう

 

さっき後ろを見ていたのは何だったんだろう

 

「…………」

 

私がそんなことを考えていると――

 

「ユウ」

 

シルヴィアさんが、お兄ちゃんに声をかけた

 

「ん?」

 

「ワタシも行く」

 

「……は?」

 

お兄ちゃんが目を丸くする

 

「いや、お前は帰れよ」

 

「嫌」

 

即答だった

 

シルヴィアさんは、さっきまでの明るい表情とは少し違う顔でお兄ちゃんを見る

 

「…………」

 

お兄ちゃんが黙る

 

その一瞬の沈黙を見て――

 

私は確信した

 

やっぱり

 

何かある

 

「……分かったよ」

 

お兄ちゃんは諦めたように息を吐く

 

「じゃあ、行くぞ」

 

「うん♪」

 

シルヴィアさんは、お兄ちゃんの隣に並ぶ

 

二人はそのまま歩き出した

 

私はその背中を見送る

 

「…………」

 

なんだろう

 

お兄ちゃんは、私たちには何も言わなかった

 

でも――

 

シルヴィアさんには、何か伝わっている

 

そんな気がした

 

「神崎、行こうぜ」

 

「え?」

 

黒機くんの声で我に返る

 

「電車、遅れるぞ」

 

「あ、うん」

 

私は二人について歩き出す

 

でも――

 

どうしても気になってしまう

 

◇◇◇

 

さて、どうするか

 

俺は歩きながら考える

 

ここらじゃ、人が多すぎるな

 

するとシルヴィが――

 

「ユウ……」

 

やっぱり、気づいてたんだな

 

俺はシルヴィへ視線を向ける

 

「ああ……」

 

周囲を確認しながら、声を落とす

 

そして少し先へ視線を向ける

 

「もう少し行ったところに、廃工場があったはずだ」

 

「……うん」

 

シルヴィも小さく頷く

 

「とりあえずそこに行こう」

 

俺たちは何事もなかったように歩き出す

 

しばらくして――

 

目的の廃工場へ足を踏み入れる

 

錆びついた鉄骨

 

割れた窓

 

誰も使っていないのか、工場内には不気味な静けさが漂っている

 

俺はそのまま数歩進み――

 

立ち止まった

 

そして、ゆっくりと後ろを振り返る

 

「……」

 

シルヴィも何も言わず、俺の隣に立つ

 

俺は暗がりへ向かって口を開いた

 

「そこでずっと俺たちを見てるやつ」

 

一拍置いて――

 

「出てこいよ」

 

すると――

 

暗がりから、一人の男が姿を現した

 

「…………」

 

俺は、その顔を見た瞬間に気づいた

 

こいつを知っている

 

海馬社長から渡された資料

 

そこに載っていた顔だ

 

確か、こいつは――

 

「御堂 一真だな」

 

男は口元を僅かに吊り上げる

 

「こいつは光栄ですね」

 

そして――

 

「元世界ランカーの神崎雄輝さんに認知されているとは」

 

「…………」

 

やっぱり間違いない

 

俺は警戒を解かず、男を睨みつける

 

すると、隣にいたシルヴィが小声で尋ねてきた

 

「ユウ……この人が?」

 

「ああ」

 

俺は御堂から視線を逸らさない

 

「三幻魔強奪犯の一人だ」

 

薄々わかっていた

 

こいつの狙いは、俺だ

 

「俺になんの用だ……って聞くのは野暮だな」

 

御堂は不気味な笑みを浮かべる

 

「ええ、あなたの魂を頂戴しに参りました」

 

クックック……

 

不気味な笑い声が廃工場に響く

 

「私とのデュエルを断ってもいいですが――」

 

御堂は、楽しそうに続ける

 

「あなたの大切な生徒がどうなっても知りませんよ?」

 

「…………」

 

この野郎……

 

元から断るつもりなんてない

 

だが――

 

生徒を盾に脅しやがるとは

 

ふざけやがって!!!

 

「子供を使って脅すなんて……この外道!!」

 

シルヴィが吐き捨てると

 

御堂はさらに楽しそうに笑った

 

「なんとでも言いなさい」

 

その目には、人を傷つけることへの躊躇など微塵もない

 

「私は魂という名のエネルギーさえ集まれば、なんでもいいのです」

 

「…………」

 

「だまれ」

 

俺は低く言い放つ

 

こいつは……

 

こいつらだけは放置できねぇ!!

 

俺はバッグからデュエルディスクを取り出す

 

そして――

 

「かかってこいよ……」

 

デュエルディスクを構える

 

「てめえらに引導を渡してやる」

 

御堂は笑みを浮かべる

 

「ええ……では始めましょう」

 

そして――

 

「闇のデュエルを!!」

 

「「デュエル!!」」

 

こうして――

 

俺と御堂の闇のデュエルが幕を開ける

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。