遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity   作:NONAME0195

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第20話 ご褒美はバーベキュー!?

デュエルシティの、とある場所

 

夜の街から少し離れた、人気のない建物

 

その一室は、明かりもほとんどなく薄暗かった

 

部屋の中では、二人の男が向かい合っていた

 

「……御堂がやられたようだ」

 

一人の男が、静かに口を開く

 

男の名は黒瀬隼人

 

三幻魔強奪事件を企てた男である

 

その表情には、御堂が敗北したことへの動揺は見られない

 

「へー……あのインテリ根暗、やられたのか」

 

きひひ……

 

聞いている者を不快にさせるような笑い声を上げる男――鷹城蓮司

 

「それで、旦那? 御堂のやつは誰にやられたんで?」

 

黒瀬は懐から2枚の写真を取り出すと、鷹城へ投げて渡した

 

「ほーー、これはこれは……」

 

鷹城は写真を受け取り、そこに写った人物を見る

 

その写真に写っていたのは、神崎雄輝とシルヴィアだった

 

「きひっ……なるほど、元世界ランカーと現世界ランカーに喧嘩ふっかけたわけですかい」

 

写真を眺めながら、鷹城は面白そうに口元を歪める

 

「より強いデュエリストの魂を捧げれば、三幻魔の復活は早まる……が

どうやら御堂は、神崎雄輝の実力を見誤ったようだ」

 

黒瀬は淡々と告げる

 

きひひ……

 

鷹城は再び、不快な笑い声を漏らした

 

「旦那あ、それは違いますぜ

三幻魔のカードを使って負ける御堂が、雑魚だったってだけですぜ」

 

その言葉に、黒瀬は何も返さない

 

鷹城は写真の中のシルヴィアへ視線を移すと、舌なめずりをする

 

「しかし、このシルヴィアってやつはいい女だなあ……

こいつの恐怖に固まった顔を想像すると……唆るねぇ」

 

その言葉に、黒瀬は僅かに眉をひそめる

 

「お前がどうしようと勝手だが……目的を忘れるなよ」

 

「わかってますよ、旦那あ」

 

鷹城はニヤリと笑うと、写真を黒瀬へ投げ返した

 

そして、そのまま部屋を出ていった

 

静かになった部屋の中

 

黒瀬は一人、残された写真へ視線を向ける

 

神崎雄輝

 

そして、シルヴィア

 

「誰であろうと我々の復讐の邪魔はさせやしない」

 

黒瀬はそう呟くと、写真を懐へしまった

 

◇◇◇

 

夏休み

 

それは、学生にとって一年で最も楽しい時間

 

青春を謳歌する私たち学生にとって、これ以上ない季節

 

それが、夏休みというもの

 

だけど……

 

そんな楽しい夏休みにも、私たちを待ち受ける試練が存在する

 

それは――

 

「うがァァァァ! なんでこんなに数学の宿題が多いのぉぉぉぉ!!」

 

そう

 

夏休みの宿題です……

 

例によって私、神崎小町は

 

絶賛、数学の宿題に苦戦してます……

 

「はいはい、小町

騒いでも嘆いても宿題の量は変わらないんだから、手を動かす」

 

隣で瑠奈が呆れたように私へ言う

 

「瑠奈〜お願い! 宿題写させっ――」

 

「嫌よ」

 

言い切る前に、この返答……

 

私の親友は鬼なのかな!?

 

「今、鬼とか思ってない?」

 

ジトーッとした目で瑠奈が私を見る

 

……なんで分かるのん?

 

「そもそも、ただでさえ数学は赤点ギリギリなんだから、ちゃんとやらないと次のテストで赤点になるよ?」

 

「正論なんて!! 聞きたくなーーーい」

 

瑠奈はやれやれと、半ば呆れたような仕草を見せると

 

再び自分の宿題に向き合った

 

ううう……

 

こんな数学の証明問題なんて

 

将来、何の役に立つというのだろう

 

そんなことを考えながら問題と睨めっこしていると

 

瑠奈がふと思い出したように口を開く

 

「そういえば、今日は先生は? いないみたいだけど?」

 

そう

 

今、私たちは自宅――

 

もとい、神崎家で一緒に宿題をしている

 

「お兄ちゃんなら今日は仕事だよ

教師は夏休みも仕事があるんだって」

 

「へー、夏休みは先生も休みになるもんだと思ってた」

 

まあ、瑠奈の言うことは、実は私も思ってたんだけどねー

 

ふと、先日のことを思い出す

 

あのプールに遊びに行った日……

 

私たちと別れてから数時間後

 

お兄ちゃんとシルヴィアさんは帰ってきた

 

その時のお兄ちゃんは、顔が真っ青で

 

今にも倒れそうな状態だった

 

私が何を聞いても

 

「なんでもない」

 

その一点張り

 

シルヴィアさんに聞いても

 

「ちょっとね」

 

と誤魔化されて

 

結局、何も聞けなかった

 

たぶん、何かを隠してるのは間違いないんだけど……

 

そんなことを考えていると

 

リビングのドアが開く音がした

 

「おはよぉ〜」

 

ふぁ〜っと欠伸をしながら現れたのは、シルヴィアさんだった

 

「あっ、おはようございます!

シルヴィアさん……って、もう昼ですよ?」

 

瑠奈が呆れたように言う

 

「いやー、昨日の夜

面白い映画見つけちゃってさ〜

朝方まで見てたから」

 

そう言いながら、シルヴィアさんは大きく伸びをする

 

そして私たちの机に目を向ける

 

「二人は……勉強?」

 

シルヴィアさんの問いに、私は

 

「うん、夏休みの宿題

もう、数学がわかんなくて困ってるんだー」

 

と、若干「助けて?」というニュアンスを込めて言う

 

ちなみに、なんでこんな砕けた口調なのかというと

 

本人から、そうしてほしいと言われているから

 

居候の身で敬語を使われるのは嫌みたい

 

そんなシルヴィアさんは

 

「あははー♪ ワタシも数学苦手」

 

と、軽い調子で言う

 

ふええん……

 

世界はどこまでも私に厳しいよおお

 

と絶望していると

 

シルヴィアさんはキョロキョロと辺りを見渡し

 

「ユウは?」

 

と尋ねる

 

すると、絶望している私の代わりに瑠奈が答える

 

「仕事みたいですよ?」

 

「そっか……」

 

シルヴィアさんは小さく呟く

 

そして、誰にも聞こえないような声で

 

「……まだ本調子じゃないのに」

 

「え?」

 

私が顔を上げる

 

「何か言った?」

 

「ううん、何でもないよ♪」

 

シルヴィアさんはいつもの笑顔に戻る

 

「そっか」

 

私は再び数学の問題へ視線を戻す

 

くそおおお、数学なんて嫌いだァァァ!!

 

◇◇◇

 

「……痛てぇ」

 

くそう……

 

外傷はないんだがなあ

 

だいぶマシにはなったが

 

まだ時折

 

ズキンズキンという痛みが襲ってくる

 

そんな満身創痍でも、仕事というものはある

 

社畜街道まっしぐらな俺は、本日も仕事をしていた

 

そうしていたのだ

 

……呼び出しを食らうまでは

 

毎度の事ながら俺は無駄に豪華な扉の前にいる

 

はい、その通りです

 

僕を呼び出したのは、お馴染みの海馬社長です

 

……くそう、俺は何回ここに来ればいいんだよ

 

そんなことを考えながら俺は扉をノックする

 

すると

 

「入れ」

 

と、いつも通りの返事をもらい

 

社長室に入室する

 

「失礼します」

 

入室すると社長は、これまた無駄に豪華な椅子に座り、窓の外を見ていた

 

……なんか、このシチュエーション前にもあったな

 

そんな、どうでもいいことを考えていると

 

社長はクルリとこちらを向き、口を開く

 

「先日の御堂の件はご苦労だったな

……どうやらまだ、体は本調子ではないようだが」

 

……一目で見抜かれてしまった

 

なんでわかるんだよ、おい

 

「貴様の顔を見ればわかる」

 

いやだから!

 

なんで俺が考えてることまでわかんだよ、毎回!

 

なにこれ?

 

もしかして口に出てんの、俺?

 

「さて、無駄話はここまでにして本題だ……御堂の件だが」

 

やはり……か

 

まあ、呼び出される理由なんて、それ以外ない……

 

……ないよね?

 

生徒の保護者からクレームとか

 

いやいや、ないないない

 

そんな俺の心情を知ってか知らぬか、社長は続ける

 

「貴様に倒されたことで、他の被害者同様にやつは意識不明の状態になった」

 

俺はあの時のことを思い出す

 

御堂は俺に負けた後、半透明で現れたウリアに魂を喰われていた

 

あれが、敗北者の末路ってわけなのだろう

 

「だが、そのかわりに……

今まで意識不明だった者が、何人か目を覚ました」

 

!?

 

思わず、目を見開く

 

目を覚ました……?

 

御堂が意識を失った、その一方で?

 

ということは……

 

「察しの通りだ

目を覚ましたのは、御堂に襲われた被害者たちだ

本人たちの証言も取っているから間違いない」

 

それならば、希望はある!

 

「三幻魔の所持者を倒せば、それまで襲われた人たちを救うことができる……」

 

海馬社長は頷く

 

「ああ……

おそらく喰われた……と言っても、即座にエネルギーとなっているわけではないようだ

被害者たちは皆、口を揃えて同じようなことを言っていた」

 

「同じようなこと?」

 

一呼吸置くと海馬社長は言った

 

「まるで何も無い、闇の中に囚われているような夢を見ていた……と」

 

「闇の中……」

 

なら、今眠っている人たちは、そんな闇に囚われているってことか……

 

「そういえば、最近の被害状況はどうなんです?」

 

俺は海馬社長に尋ねる

 

海馬社長は無言で資料を俺に渡した

 

俺は渡された資料に目を通す

 

そこには――

 

「被害者が……すべて女性?」

 

海馬社長は頷く

 

「そうだ

現在確認されている被害者は、全員女性……

それも実力がある、名の知れた者たちだ」

 

俺は資料を握る手に力を込める

 

実力がある、名の知れた女性デュエリスト……

 

そう聞いて、俺の頭に一人の人物が浮かんだ

 

それは――

 

「今、貴様のところにシルヴィア・エミリー・カーターが居候しているようだな」

 

「……はい」

 

そう……

 

奴らにとって、シルヴィは絶好のターゲットになりうるということだ

 

ふざけやがって!!

 

俺は資料を睨みつける

 

……絶対にシルヴィを奴らの手に渡しはしない!

 

「……そういえば」

 

俺は懐に手を入れる

 

取り出したのは、一枚のカード

 

《神炎皇ウリア》

 

御堂とのデュエルの後、俺が預かっていたカードだ

 

「これ、どうします?」

 

俺は海馬社長へカードを差し出す

 

すると――

 

「そのカードは、貴様が管理しろ」

 

「……え?」

 

「奴らは元々、我が海馬コーポレーションの社員だった

社内の設備や警備体制について、我々の知らぬ抜け道を知っている可能性がある」

 

確かに、会社の人間だったからこそ知っていることもある

 

そりゃそうかもしれないが……

 

「俺、こんなヤバいカード持っていたくないんですが……」

 

理屈はわかる

 

だが、こんな呪われたみたいなカード

持っていたくはないというのが本音である

 

「奴らは、そのカードの奪還に動くだろう

となれば、貴様が持っていた方が都合がいい」

 

……それってつまり

 

「囮じゃねぇか!!」

 

海馬社長は平然と頷く

 

「そういうことだ」

 

鬼か! この人は!!

 

「話は以上だ、用心しろ」

 

海馬社長は話を切り上げると、椅子を回転させ俺に背を向ける

 

くそっ、ダメだ

 

本当に俺を囮にする気だ、この人

 

俺は諦めて部屋を退出しようとした

 

その時、ふと思い出す

 

「そういえば、なんで俺のところにシルヴィが居候してること知ってるんです?

俺、言ってませんよね?」

 

「……ふん」

 

……いや、怖いよ

 

怖い

 

◇◇◇

 

「あー……くそう」

 

俺は海馬コーポレーションからの帰り道、思わず愚痴を零す

 

あんの、大魔王(海馬社長)

 

俺をなんだと思ってんだ

 

こんな縁起もクソもあったもんじゃないカードを押し付けた上に、囮にするとは……

 

……でもまあ、確かに

 

認めるのは癪だが、御堂は強かった

 

並のデュエリストなら、まず勝てないだろう

 

だから海馬社長の判断は合理的……とも言えなくもない

 

「だからってなあ……」

 

はあ……

 

なんて思っていると

 

ズキン

 

また身体に痛みが走る

 

「……っ」

 

 

ぐっ……痛え

 

いつになったら治んだよ、これ

 

だいぶ間隔は空くようになっては来たが

 

思い出したかのように襲ってくる、この痛み……

 

夜中に襲ってくることもあって、若干寝不足気味でもあるんだよな……

 

ほかにも寝不足な理由があったりするんだが……

 

実は、痛みで夜中に唸ってるところをシルヴィに見つかってしまったのだ

 

おかげで心配したシルヴィは、今まで客間に寝ていたのに

 

毎晩、俺の部屋で寝るようになったのだ

 

……誓って!

 

やましいことはない!

 

断じて!

 

……ほんとだよ?

 

本気で心配してくれてるシルヴィに

 

「いや、余計眠れなくなるわ!!」

 

……とも言えず

 

半分強制的に、同じ部屋で寝ている

 

ちなみに俺の部屋には、ベッドがひとつしかないとだけ言っておく

 

……ほんとに何もしてねぇからな!!

 

なんて考えながら歩いていると

 

いつの間にやら、自宅が見えてきた

 

愛しのマイホームよ……

 

わたしは帰ってきた!!(ジオ〇の少佐風)

 

なんて茶番劇を心の中でしながら、家の玄関を開けると……

 

「もうぅぅぅいやぁぁぁぁ、数学なんてぇぇぇぇ」

 

という、やかましい声が聞こえてくる

 

……我が妹は相も変わらず数学が苦手のようだな

 

哀れなり、ナームー

 

なんて考えながら、リビングのドアを開ける

 

「ただい……」

 

「おにいちゃぁぁぁぁん! 助けて!」

 

……俺に来るんかい

 

めんどくせぇ……

 

そう思った俺は、すぐさま

 

「無理だ、数学は苦手なんだ」

 

こう言っとけば、諦めるだろ

 

「まだ何も言ってなーーーい!!

それに!! お兄ちゃんが成績良かったのも知ってるんだからね!!」

 

ちっ、知ってやがったか

 

「いやだよ、面倒くさい」

 

「ストレート!! ド直球で面倒くさいって言った!! 鬼! この鬼いちゃん!」

 

すると朝比奈が、遠慮がちに俺へ言う

 

「あのう、先生……

私もちょっと古典が分かんなくって……

お願いできます?」

 

「ほらーーー、瑠奈も言ってるじゃん!!

ねっ! お願い、お兄ちゃん!」

 

むう……

 

小町だけなら、どうとでも突っ撥ねるんだが

 

朝比奈もか……

 

「はあ……しゃーねぇなあ」

 

「やった!」

 

小町と朝比奈がハイタッチをして喜んでいる

 

それを見て、俺のイタズラ心がうずうずしてくる

 

俺は、なるべく嫌な笑みを浮かべ……

 

「この俺が勉強を教えるんだ……

休み明けのテスト、無様な点数なんて取ったら……分かってるよな?」

 

一歩離れて見ていたシルヴィが、腹を押さえて笑っていた

 

「ユウ……顔面白いよ、ぷくくく」

 

台無しだよ、コノヤロー

 

それからしばらくして

 

俺の指導の甲斐もあって、二人は宿題を終えることができた

 

朝比奈はともかく

 

小町の数学は、ほっっっとに苦労を強いられた

 

我が妹ながら、ホントに数学がダメすぎる

 

どれくらいダメかと言うと……

 

ゴッドガン〇ムに乗ってるのに、ゴッドフィ〇ガーが使えないくらいのレベル

 

やれやれ

 

俺も疲れてるようだ

 

何言ってんだろ、ほんと

 

「お兄ちゃん……」

 

疲れきってテーブルに突っ伏している小町が

 

教え疲れて椅子に座りながら、天井を見上げている俺に話しかけてきた

 

「私は、めっちゃ……

めちゃめちゃ頑張りました……」

 

「おう、そうだな

俺の方が頑張ってた気がするが」

 

「そんな私には、ご褒美があってもいいと思うのです」

 

おう?

 

俺の発言はガン無視ですか?

 

そうですか

 

「というわけで!! 週末にバーベキューを希望します!!」

 

「……は?」

 

突然の提案に、俺は思わず小町を見る

 

すると小町は、俺ではなく隣にいる瑠奈へ視線を向ける

 

「ね!? 瑠奈もやりたいよね!?」

 

「ぜひ! やりたいです☆」

 

小町が突然話を振ったのに、澱みなく返事をする朝比奈

 

ん?

 

待てよ?

 

そもそも、なんでこいつらはこんなに宿題を急いでやっていた?

 

夏休みはまだ中盤だ

 

なんなら、今から宿題を始めるやつだっているはず

 

俺が学生の時なんて、手をつけてるわけがなかった

 

なのにこいつらは、わざわざ俺に教えを乞うてまで今日中に終わらせることにこだわった……

 

しかも、図書館とかではなく、この神崎家で……

 

つまり、導き出される答えは!!

 

(ここまで0.5秒)

 

「てめえら、初めからご褒美にかこつけて俺にバーベキューねだるつもり満々だったな!!」

 

すると二人揃って

 

ギクッ!

 

という効果音が聞こえてきそうなほど、顔を強ばらせる

 

……いや

 

分かりやすー

 

お前ら、もうちょっと誤魔化す努力とかしろよ……

 

ここまで露骨だと、怒る気にもならんわ

 

「お兄ちゃ〜〜~ん……お願いだよぉ〜〜〜」

 

小町はそう言いながら、俺の腕を掴んでぶんぶんと揺さぶってくる

 

「中学生だけじゃ、色々問題があるんだよぉーーーーー」

 

上目遣いで俺を見ながら、さらに腕をぎゅっと抱きしめてくる

 

……こいつ

 

開き直って、泣き落としにかかりやがった

 

こうなったらこいつは、俺が了承するまで終わらない

 

そのことを、経験上俺はよーーーーく知っていた

 

ふと隣を見ると

 

朝比奈が若干引きつった笑顔を浮かべながら、俺たちを見ている

 

……その顔やめろ

 

俺が悪いことしてるみたいじゃねぇか

 

「はあ……わかったわかった

わかったから離れろ、朝比奈が若干引いてるから」

 

「ほんと!? やったァ!」

 

俺の一言で、満面の笑みではしゃぎまくる小町

 

やれやれ

 

ほんと俺って……小町に甘すぎる気もするなあ

 

……まあ、考えないようにしよ

 

そういえば

 

こんな時、いの一番に乗っかってくる居候が大人しいな

 

怪訝に思い、後ろを振り返ると

 

心配そうな顔で俺を見ているシルヴィと目が合った

 

あー……

 

なるほどね

 

俺はシルヴィにだけ聞こえるように、声を落とす

 

「もう、身体は大丈夫だ

だからそんな顔するな」

 

「そう……ならいいのだけど」

 

シルヴィはそう言うと、少しだけ安心したように表情を緩めた

 

……俺の体を心配してくれてたのか

 

なんだ

 

こいつも、ちゃんと可愛いところあるじゃないか

 

そう思っていると

 

「ユウ……」

 

「ん?」

 

「ワタシは黒毛和牛がいいな♪」

 

………………

 

なんだ、この手首がねじ切れんばかりの手のひら返しは!!

 

やっぱ可愛くねぇぇぇぇ!!

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