遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity 作:NONAME0195
時刻は夕方
空はオレンジに染まり、一日の終わりを告げるようにカラスが鳴いている
そして俺の休日も、俺の用意した高級肉も終わった
クソがっ!!
バーベキューのせいで俺の休日がお亡くなりになってしまい!
挙句に、復讐のために用意した高級肉すら半分以上シルヴィに食われたァァァ!!!
ァァァァ……って、あれ?
そういえばシルヴィは?
「おい、誰かシルヴィ知らねぇ? いねぇんだけど?」
「シルヴィアさんならトイレに行ったよ?」
はーん、お花を摘みにねぇ
「そういえば、シルヴィアさん……遅いね? バーベキューの片付けを始めた頃くらいにトイレ行ったのに」
……なに?
小町のやつ、なんて言った?
バーベキューの片付けが始まった頃?
それ、30分以上たってるってことか?
背中に冷たい汗が出る
……嫌な予感がする
「おまえら!! 先に車戻ってろ!」
「えっ!? お兄ちゃん!?」
小町の驚いた声が聞こえたが、構ってられない
頼む! 俺の勘違いであってくれ!
俺はシルヴィを探すため、走り出した
◇◇◇
相手フィールドには、雷を纏い、凄まじい存在感を放つ《降雷皇ハモン》
その攻撃を受けたワタシは、膝が震え、身体が軋むような痛みで立っているのがやっとだった
それでも、ワタシは負けられない
脳裏に浮かぶのは、ボロボロになりながらも御堂へ立ち向かうユウの姿……
ワタシは震える手を握りしめる
ユウを傷つけたこの人たちだけは……
絶対に許さない
6ターン目 シルヴィア LP2400
「ワタシのターン! ドロー!!」
デッキから勢いよくカードを引き抜く
!
《ハーピィの羽根帚》……
このカードなら、相手の魔法・罠カードを一掃できる
でも……鷹城には永続魔法《失落の霹靂》がある
1ターンに1度、魔法・罠カードの効果を無効にする厄介なカードだ
さらに、《失楽園》によって完全耐性を得た《降雷皇ハモン》
今のワタシには、この盤面を突破する手段がない
ここは……耐えるしかない!
「ワタシは前のターン、《D-HERO ダイヤモンドガイ》の効果で墓地へ送った《天使の施し》……その効果を適用する!」
────
天使の施し
効果通常魔法
カードテキスト
①:自分は3枚ドローする。その後、自分の手札を2枚選んで捨てる。
────
「デッキから3枚ドロー!」
ワタシはデッキから勢いよく、カードを引き抜く
そして、手札から2枚のカードを選び、墓地へ送った
……やっぱり、《失落の霹靂》の効果無効を使ってこない
ワタシの予想通り、魔法カードの破壊に焦点を当ててるんだ……
なら!
「さらに墓地の《D-HERO ディアボリックガイ》の効果を発動!」
墓地の《D-HERO ディアボリックガイ》が闇の粒子となって除外され、ワタシのフィールドに、もう一体の《D-HERO ディアボリックガイ》が守備表示で姿を現した
「さらに、フィールドの《D-HERO ディシジョンガイ》を守備表示にし……ターンエンド」
今のワタシにできることは、もうない
あとは、この盤面で鷹城の攻撃を凌ぎきるしかない……
7ターン目 鷹城 LP2300
「俺のターン!ドロー!」
スタンバイフェイズ
ワタシのフィールドにそびえる《幽獄の時計塔》の鐘が鳴る
カチッ……
時計塔へ、3つ目のカウンターが刻まれる
時計カウンター:3
「きひっ、守りを固めたようだが
その程度で果たして守り切れるかなあ」
鷹城はニヤリと笑うと、フィールド魔法の効果を発動させる
「まずは《失楽園》の効果発動
俺はさらにカードを2枚ドロー」
鷹城はデッキからカードを引き抜き、手札に加える
そして、手札から1体のモンスターを召喚した
「俺は手札から《黒き森のウィッチ》を召喚」
────
黒き森のウィッチ
闇属性/レベル4/魔法使い族
ATK 1100/DEF 1200
効果
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない
①:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動する
デッキから守備力1500以下のモンスター1体を手札に加える
このターン、自分はこの効果で手札に加えたカード及びその同名カードの効果を発動できない
────
黒き森のウィッチ……?
フィールドから墓地へ送られると、モンスターをサーチできる強力なカードだけど……
このタイミングで?
「さらに俺は……永続魔法《異次元隔離マシーン》を発動」
────
異次元隔離マシーン
効果:永続魔法
自分と相手のフィールド上からモンスターを1体ずつ選択し、ゲームから除外する
このカードが破壊され墓地へ送られた時、除外したモンスターを同じ表示形式で元のフィールド上に戻す
────
「きひっ、俺は《黒き森のウィッチ》と、あんたの場にいる《D-HERO ディシジョンガイ》を選択し、除外するぜ」
!?
やられた!
鷹城の狙いは、《D-HERO ディシジョンガイ》の除外!
レベル6以上のモンスターから攻撃されず、墓地にいても効果ダメージを防げる……
フィールドでも、墓地でも、ワタシを守ってくれるモンスター
それを、一手で封じられた!
「さらにもう1枚……速攻魔法《サイクロン》発動!《幽獄の時計塔》を破壊」
────
サイクロン
魔法
速攻
①:フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
────
「な!?」
フィールドに暴風が吹き荒れ、ワタシのフィールドにそびえる時計塔が崩れて破壊される
「きひひ!これであんたのフィールドには《ディアボリックガイ》だけだな
……イッツショーターイム」
鷹城が、どす黒い笑みを浮かべる
その背後では、巨大な雷の幻獣が全身に電撃を纏い、轟々と唸りを上げていた
空気が震える
次に何が起こるのか、嫌でも理解させられるほどの威圧感
鷹城は、まるで死刑宣告でも下すかのように告げた
「《降雷皇ハモン》で《ディアボリックガイ》を攻撃……失落の霹靂!!」
ハモンが咆哮し、凄まじい雷撃を放つ
轟音とともに、ディアボリックガイの身体が雷に包まれた
次の瞬間、その姿は跡形もなく消し飛ぶ
「っ、ああああああっ!!」
全身を駆け巡る激痛に、ワタシの身体が大きく揺れる
まるで、自分自身が雷に打たれたかのような衝撃
膝が折れかけ、思わず地面に手をつきそうになる
だが、苦痛はそれだけでは終わらなかった
「きひひひ、そして……ハモンの効果発動! 1000ポイントのダメージを受けな!!」
ハモンの全身が再び凄まじい放電を始める
「くらいなあ! 地獄の贖罪!!」
再び、身体の奥底を抉るような衝撃が走る
「ひぐっ、あああああっ!!」
シルヴィアLP2400→LP1400
声を押し殺すことすらできない
視界が明滅し、呼吸が乱れる
それでも耐えろ!
意識を繋げ!
ワタシは震える足に力を込め、倒れまいと歯を食いしばった
「きひひひひ……!」
耳障りな笑い声が響く
「さすがだねぇ……今までのやつらは、とっくに泣き喚いて許しを乞うてたぜぇ?」
鷹城は、苦痛に耐えるワタシを見下ろし、愉快そうに口元を歪めた
「……誰が、あんたなんかに許しを乞うものか」
声が震える
身体は痛い
今にも膝をついてしまいそうだ
それでも、ワタシは目の前の男を睨みつけた
脳裏をよぎるのは、満身創痍になりながらも戦い続けたユウの姿
あの人が、あれほどの苦痛に耐えて戦ったのなら
ワタシだって、ここで折れるわけにはいかない!
「ワタシは……まだ、戦える!」
◇◇◇
「シルヴィ!! おい! どこだ!」
くそっ、案の定
トイレにシルヴィの姿はない!
俺は公園中を走り回り、シルヴィを探したが、どこにも見つからなかった
ここまで探しても姿が見えないとなると……
シルヴィは、三幻魔強奪犯と遭遇したのか?
もしくは、俺たちが監視されていることに気づいて、自分から離れたって可能性もある
もしそうだとしたら……
シルヴィは今、ヤツらと戦っている可能性が高い
あの忌々しい闇のデュエルを!!
「クソッタレが!!」
落ち着け!
もしデュエルをしているなら、人目につかない場所を選ぶはずだ!
どこだ!!? 一体どこにいる!?
俺は焦る気持ちを抑えながら、周囲を見渡した
!
あれは……?
遠目に、廃倉庫らしき建物が見えた
俺は自分の直感を信じ、走り出した
頼む!
後生だから、無事でいてくれ!!
◇◇◇
8ターン目 シルヴィア LP1400
身体が痛い……
正直、意識を保つのもギリギリで、どうにか踏みとどまっているような状態
それでもワタシは……
まだ、倒れるわけにはいかない!
逆転の一手は、既に打ってある!
問題は、ワタシが《降雷皇ハモン》の攻撃と、効果による追加ダメージを耐え抜けるかどうかだった
そして……
ワタシは、耐え抜いた
この瞬間を迎えるために
この一手を、繋ぐために
「ワタシのターン……ドロー!」
さあ、ここからよ……
反撃を、始める!
まずはスタンバイフェイズ
「ワタシは前のターン、《天使の施し》の効果で墓地へ送った《D-HERO ダークエンジェル》の効果を発動!」
────
D-HERO ダークエンジェル
闇属性
レベル 1
【戦士族/効果】
攻撃力 0
守備力 0
①:自分の墓地の「D-HERO」モンスターが3体以上の場合、このカードを手札から捨て、自分の墓地の「D-HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを相手フィールドに守備表示で特殊召喚する。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分が発動した魔法カードの効果は無効化され破壊される。
③:自分スタンバイフェイズに、自分の墓地からこのカードと「D-HERO」モンスター1体を除外して発動できる。お互いはそれぞれ自身のデッキから通常魔法カード1枚を選んでデッキの一番上に置く。
────
「《D-HERO ダークエンジェル》と、墓地の《D-HERO ダイヤモンドガイ》を除外!」
墓地から2体のD-HEROが消え去る
そして、ワタシと鷹城は、それぞれデッキから通常魔法カードを1枚選び、デッキの一番上に置いた
「……きひっ」
鷹城は、ワタシをじっと見つめる
「わざわざ俺にもカードを仕込ませるとはねぇ……何を企んでる?」
その目が、探るように細められた
ワタシは額に汗を滲ませながら、不敵に笑う
「決まってるでしょ……反撃よ!」
そして、手札からカードを取り出す
「魔法カード《ハーピィの羽根帚》発動!」
────
ハーピィの羽根帚
魔法
①:相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。
────
宣言と同時に、カードが眩い光を放つ
次の瞬間
――ゴォォォォッ!!
フィールドを凄まじい突風が吹き抜けた
風に乗って無数の羽根が舞い踊り、鷹城のフィールドへと殺到する
そして、魔法・罠ゾーンを蹂躙しようとした、その瞬間――
「きひっ! 永続魔法《失落の霹靂》の効果発動!!」
《降雷皇ハモン》の身体が激しく放電する
バチバチバチッ!!
迸る電撃が、魔法・罠ゾーンを破壊しようと迫っていた《ハーピィの羽根帚》を吹き飛ばした
そして、《降雷皇ハモン》は防御態勢へと姿勢を変える
「きひひっ……何を企んでいたか知らないが、無駄だったなあ
これで妨害効果は使えないが、《降雷皇ハモン》の完全耐性は守られる」
鷹城は勝ち誇った笑みを浮かべる
でもーー
「いいや!狙い通りよ!!
手札から装備魔法《早すぎた埋葬》発動!!」
────
早すぎた埋葬
効果
装備魔法
カードテキスト
①:800LPを払い、自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時にそのモンスターは破壊される。
────
「うぐっ……ぐぅ」
シルヴィアLP1400→LP600
効果によりワタシに鈍い痛みが走る
それでも!
「ワタシは前のターンに《天使の施し》で墓地へ送った《D-HEROディスクガイ》を攻撃表示で特殊召喚!!」
ワタシの足元に、青白い光が広がる
光の中から、無数の円盤を背負った機械仕掛けの戦士が飛び出した
《D-HERO ディスクガイ》が、ワタシの前に降り立つ
────
D-HERO ディスクガイ
闇属性
レベル 1
ATK300DEF300
戦士族
効果
カードテキスト
このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
このカードは墓地へ送られたターンには墓地から特殊召喚できない。
①:このカードが墓地から特殊召喚した場合に発動できる。自分は2枚ドローする。
────
「効果により!ワタシはデッキから2枚ドロー!」
ワタシは引いたカードを確認し、口元に小さく笑みを浮かべた
「……っ!?」
鷹城の顔から笑みが消える
「ま、まさか……《ハーピィの羽根帚》はブラフ!? 本命は、そっちかァァ!!」
「ご明察!いくわよ!
手札より魔法カード《大嵐》発動!!」
────
大嵐
魔法
①:フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。
────
フィールド全体に凄まじい暴風が吹き荒れる
轟音とともに風が渦を巻き、鷹城とワタシ、双方の魔法・罠ゾーンを呑み込んだ
次の瞬間、暴風に引き裂かれるように、フィールドの魔法・罠カードが次々と砕け散った
そして、装備魔法《早すぎた埋葬》が破壊され、復活していた《D-HERO ディスクガイ》も光となって消滅する
代わりに、《異次元隔離マシーン》の効果によって除外されていた《D-HERO ディシジョンガイ》が守備表示で、鷹城の《黒き森のウィッチ》が攻撃表示でフィールドへと帰還した
「これであなたを守っていた厄介な永続魔法は無くなったわ」
「…………」
鷹城は苦々しげに顔を歪めた
だが、ふと背後の《降雷皇ハモン》に目を向けると、口元に歪んだ笑みが戻る
「きひひっ……だが、まだ俺には《降雷皇ハモン》がいるぜぇ?
こいつをどうにかできなきゃ、次のターンであんたはおしまいだなあ!」
確かに……
次の鷹城のターンで《降雷皇ハモン》の攻撃を受けられるライフは、ワタシには残っていない
……次の鷹城のターンがあればだけどね!!
「ワタシは手札から永続魔法《D-フォース》発動!!」
────
D-フォース
効果永続魔法
カードテキスト
①:このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキ・墓地から「D-HERO Bloo-D」1体を手札に加える事ができる。
②:自分フィールドに「D-HERO Bloo-D」が存在する限り、以下の効果を適用する。
●自分はドローフェイズにドローできない。
●自分フィールドのカードを相手は効果の対象にできない。
●自分のモンスターゾーンの「D-HERO Bloo-D」は、攻撃力がお互いの墓地のモンスターの数×100アップし、相手の効果では破壊されず、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
────
ワタシはデッキから《D-HERO Bloo-D 》を手札へ加える
「ぎひっ……《D-HERO Bloo-D》か
だがあんたのフィールドにはそいつを召喚するコストとなるモンスターはいねぇ」
そう……ワタシには《D-HERO Bloo-D》
を召喚する術はない
でもワタシの狙いは《D-HERO Bloo-D》の召喚じゃない!
「手札から《融合》発動!
《D-HERO Bloo-D》と《D-HERO ドグマガイ》を融合!!」
「……は?」
鷹城の顔から、笑みが消えた
「ゆ、融合だと!?」
2人のHEROが上空へ飛び上がり
ひとつとなる
「希望が潰え、運命が閉ざされようとも
この魂までは、誰にも砕けはしない!
ならば、ここに示そう
絶望を切り裂く、最後の英雄の姿を!
融合召喚!!
すべての運命に終焉を告げよ!
《Dragoon D-END》!!」
────
Dragoon D-END
闇属性
レベル 10
ATK3000DEF3000
戦士族
/
融合/効果
カードテキスト
「D-HERO Bloo-D」+「D-HERO ドグマガイ」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。①:1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを破壊し、表側表示モンスターを破壊した場合、その攻撃力分のダメージを相手に与える。この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。②:このカードが墓地に存在する場合、自分スタンバイフェイズに自分の墓地の「D-HERO」カード1枚を除外して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。
────
漆黒と深紫の鎧を纏い、背中には赤黒い翼のようなマントを広げた異形の戦士
鋭い角を持つ兜と、禍々しい剣が見る者を威圧する
絶望を体現したかのようなその姿は、まさに運命の終焉を告げる英雄――《Dragoon D-END》がフィールドに姿を現した
「《Dragoon D-END》の効果で《降雷皇ハモン》を破壊し、その攻撃力分のダメージを与えられる……」
シルヴィアの切り札を前に、鷹城はしばし沈黙していた
やがて、その肩が小刻みに震え始める
「ぎひっ……ぎひひひ……はははははは!」
壊れた人形のように、鷹城は笑い出した
その顔に浮かぶのは、敗北への恐怖か
それとも、すべてを受け入れた者の歓喜か
もはや、その表情からは読み取れない
「はははは……! さすがだよ……
シルヴィア・エミリー・カーター……」
鷹城は両手を大きく広げた
まるで、己の命を刈り取る刃を、喜んで受け入れるかのように
「さあ! やれよ! シルヴィア!あんたの勝ちだ!」
目の前の男は、まるで死を恐れていないかのように笑っていた
……理解できない
命を懸けたデュエルの果てに、どうしてそんな顔で笑えるのか
けれど、臆するわけにはいかない!
ここで決着をつける!!
「《Dragoon D-END》の効果発動!
《降雷皇ハモン》を破壊する!」
《Dragoon D-END》が、ゆっくりと片腕を持ち上げた
その掌に、漆黒のエネルギーが収束していく
次の瞬間、D-ENDがハモンへと手をかざす
「インビンシブル・D!!」
放たれた闇が、ハモンの巨体を包み込んだ
黄金の雷光が激しく迸る
だが、闇は揺るがない
ハモンの身体に亀裂が走り、黄金の巨体が内側から崩壊していく
そして――
眩い光とともに、《降雷皇ハモン》は砕け散った
その光景を前にしても、鷹城は微動だにしなかった
ただ、口元に歪な笑みを浮かべたまま、静かにその最期を見届けていた
そしてーー
ライフは0となる
鷹城LP2300→0
すると鷹城の身体から淡い光抜け出し
人の形を成す
あれは……鷹城の魂?
「きひひひ……さすがだなあ
俺の負けだ……きひひひひ」
な、なぜ
なぜ、この男は!?
「どうして笑っていられるの!?
これからあなたがどうなるのか……っ」
「知ってるさ、俺はハモンに喰われる
だから、どうした?
俺は命をかけたデュエルに負けたんだ
そういうルールだろうが」
「……っ」
ワタシは言葉が出なかった
この男とワタシとでは、あまりにも価値観が違いすぎる
「ぎひっ、みくびるんじゃねぇよ?
てめぇの命を懸けたルールだからこそ面白いんだろ
ノーリスクで勝負しても、何も面白くねぇのさ、俺は」
《降雷皇ハモン》が、半透明の姿となって鷹城の前に現れた
その巨体が、ゆっくりと鷹城へ迫る
「……ぎひっ」
鷹城の口元が、歪んだ
「ぎひひっ……!」
肩を震わせ、喉を鳴らす
まるで、堪えきれない笑いを必死に押し殺しているかのように
「ハハッ……ハハハハハッ!!」
やがて、その笑い声は廃倉庫に響き渡った
目の前には、自分の命を奪う怪物がいる
それなのに、鷹城の顔には恐怖の欠片もなかった
「さあ、喰らえよ……! 俺の魂を!!」
ハモンが、その巨大な口を開く
鷹城は最後まで笑っていた
その魂が、怪物の口へと消えていく瞬間まで
そして
笑い声は、途絶えた
廃倉庫の中が、静寂に包まれる
「……終わった」
ズキンっ
今まで張り詰めていた緊張が途切れ、ようやく自分の身体が限界だったと気づく
鈍い痛みとともに、視界が歪んだ
まずい……!
立っていられない……
足から力が抜け、ワタシの体が傾く
思わず目を瞑った、その瞬間
誰かが駆け寄り、ワタシの体を優しく抱きとめた
ゆっくりと目を開ける
そこには、息を切らしながら
心配そうに、そして悲しそうな目でワタシを見つめるユウがいた
「……ユウ」
「バカヤローが……無茶しやがって」
そう言うユウの声は、怒っているようでいて、どこか震えていた
「ごめんね……心配かけたね」
「全くだ……無事でよかった」
ユウはワタシから視線を外し
魂を喰われ、抜け殻となった鷹城へと目を向けた
「あいつが……」
「ええ、今回の犯人の一人よ……うぐっ」
「おい、シルヴィ!?」
ユウの目が、不安そうにワタシを見つめる
「大丈夫よ……でも、ごめん……
少し……ねむる……ね」
もう、限界だった
ユウの声が遠ざかっていく
そして、ワタシの意識は闇の中へと沈んでいった
◇◇◇
「……バカヤローが」
俺は、腕の中で眠るシルヴィにそっと声をかけた
闇のデュエルの恐ろしさは、実際に体験した俺がよくわかっている
それでも、俺が戦ったときはシルヴィがそばにいてくれた
だが、今回は違う
シルヴィに戦わせた挙句、そばにいることすらできなかった……
俺は、シルヴィの顔を見つめた
……無事でよかった
安堵したのも束の間、悔しさが込み上げてくる
「バカヤローは……俺か」
俺は一人、呟いた
そして、傍らに落ちていた《降雷皇ハモン》のカードを拾い上げる
これで三幻魔のカードは二枚……
残り一枚……か
もう誰も傷つけさせはしない
俺が……決着をつける
そう、自分の魂に誓い、俺はシルヴィを優しくおぶった
「帰るぞ、シルヴィ」
聞こえていないであろう彼女に声をかけ、俺は廃倉庫を後にした