遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity   作:NONAME0195

4 / 19
第3話「世界を知るHERO」〈前編〉

春の柔らかな陽射しが、教室の窓から差し込む。

 

 新年度最初のホームルーム。

 

 三年A組の教室には、新しい担任への期待と好奇心が入り混じった空気が漂っていた。

 

 教壇に立つのは、赤い教師用ジャケットを身にまとった青年。

 

 神崎雄輝。

 

 二十三歳。

 

 世界を舞台に戦ってきた元プロデュエリストであり、この春からデュエルアカデミアへ赴任した新任教師である。

 

 年齢は生徒たちと十歳も離れていない。

 

 その若さもあってか、教室にはどこか落ち着かない空気が流れていた。

 

(本当に先生なのか?)

 

(世界で戦ったって本当?)

 

(昨日の始業式だけじゃ分からないよな……。)

 

 誰も口には出さない。

 

 だが、その疑問は教室中の誰もが抱いていた。

 

 雄輝もまた、その視線の意味を理解していた。

 

(当然だ。)

 

(言葉だけで信用されるほど、教師って仕事は甘くない。)

 

 生徒にとって教師とは、自分たちを導く存在。

 

 だからこそ、その実力を疑うのは当然だった。

 

 そんな静寂を破ったのは、一つの椅子を引く音だった。

 

 ガタン。

 

 教室中の視線が、一人の男子生徒へ集まる。

 

 黒機大河。

 

 短く整えた黒髪に鋭い眼差し。

 

 闘志を隠そうともしないその姿は、一目で只者ではないことを感じさせる。

 

 デュエルアカデミア中等部三年――ランキング十八位。

 

 二十位以内の生徒だけに与えられるランキングバッジが、制服の胸元で静かに光っていた。

 

 学年を代表する実力者。

 

 その順位は、公式認定デュエルや授業成績などを総合して決定される、生徒たちにとって実力の証だ。

 

 その黒機が、ゆっくりと雄輝を見据える。

 

「先生。」

 

 教室が静まり返る。

 

 雄輝は穏やかな表情のまま視線を向けた。

 

「世界で戦った元プロデュエリスト……その話は聞いた。」

 

 一呼吸置く。

 

「だからこそ、聞きたい。」

 

「その肩書きは、本物なのか。」

 

 教室の空気が張り詰める。

 

 朝比奈は思わず小さく息をのんだ。

 

「黒機……。」

 

 しかし黒機は視線を逸らさない。

 

「ここはデュエルアカデミアだ。」

 

「この学校じゃ、言葉よりデュエル。」

 

「教師なら――。」

 

 胸元のデュエルディスクへ手を添える。

 

「その強さを、俺に見せてくれ。」

 

 挑発ではない。

 

 純粋な挑戦だった。

 

 世界で戦ってきたという男が、本当に自分より強いのか。

 

 その答えを、自分自身のデュエルで確かめたい。

 

 それだけだった。

 

 教室は静まり返る。

 

 誰も口を挟まない。

 

 いや、挟めなかった。

 

 ランキング十八位。

 

 その黒機が真正面から挑戦状を叩きつけているのだ。

 

 雄輝は黒機を静かに見つめる。

 

(いい目をしている。)

 

(自分の強さを信じ、その先を見ようとしている。)

 

(こういう生徒は伸びる。)

 

 ふっと口元が緩んだ。

 

「……まあ。」

 

 小さく笑う。

 

「それもそうか。」

 

 机の上に置いていたデュエルディスクを手に取る。

 

 静かに左腕へ装着した。

 

 カチリ――。

 

 乾いた音が教室に響く。

 

 その瞬間、教室中の空気が変わった。

 

「俺という人間を紹介するなら――。」

 

 一拍置く。

 

 雄輝は黒機を真っ直ぐ見据えた。

 

「デュエルが、一番手っ取り早いな。」

 

 その言葉を聞いた黒機は、不敵に笑う。

 

「その言葉を待ってたぜ、先生。」

 

 小町は思わず息をのんだ。

 

(始まる……。)

 

 家では何度も見てきた。

 

 でも。

 

 先生としてデュエルするお兄ちゃんを見るのは、今日が初めてだった。

 

 胸の鼓動が、少しずつ速くなる。

 

 一方、教室の後方では九条凛が静かに文庫本を閉じていた。

 

 艶のある黒髪を耳へ掛け、ゆっくりと立ち上がる。

 

 中等部三年ランキング第一位。

 

 学年最強と評される少女は、静かな眼差しで雄輝を見つめた。

 

「世界を知るデュエリスト……ですか。」

 

 小さく呟く。

 

「その実力、確かめさせていただきます。」

 

 雄輝は教室の扉へ向かって歩き出す。

 

「移動するぞ。」

 

 黒機が眉をひそめた。

 

「移動?」

 

「ここじゃ狭い。」

 

 雄輝は肩越しに振り返る。

 

「せっかくなら、本物のフィールドでやろう。」

 

 穏やかに笑った。

 

「デュエルフィールドを借りる。」

 

 その一言で、教室が一気にざわめく。

 

「マジか!」

 

「フィールド使うのか!」

 

「先生がデュエルするぞ!」

 

「急げ!」

 

 椅子を引く音が次々と響く。

 

 生徒たちは我先にと教室を飛び出していく。

 

 その後ろ姿を見ながら、小町はそっと拳を握った。

 

(お兄ちゃん……。)

 

(先生としての最初のデュエル。)

 

(しっかり見届けるからね。)

 

 その想いを胸に、小町もまたデュエルフィールドへ駆け出した。

 

 これから始まる一戦が、三年A組全員の記憶に残るデュエルになることを、この時はまだ誰も知らなかった。

 

         ◇

 

 数分後。

 

 デュエルアカデミア内・第一デュエルフィールド。

 

 授業や公式認定デュエルにも使用される、本格的なデュエル施設。

 

 フィールド中央へ雄輝と黒機が歩み出ると、立体映像システムがゆっくりと起動を始めた。

 

 淡い青白い光が床一面を駆け巡り、無数の粒子が空中へ舞い上がる。

 

 やがて粒子は荒野を模したホログラムフィールドを形成し、静かな空間は一瞬にして戦場へと姿を変えた。

 

「おぉ……。」

 

 思わず歓声が漏れる。

 

 まだ始まってもいない。

 

 それなのに、生徒たちの視線は自然とフィールド中央へ吸い寄せられていた。

 

「先生、本当にやるんだ。」

 

「黒機とのデュエルか……。」

 

「いきなりランキング十八位とぶつかるなんて。」

 

 三年A組の生徒たちは観客席へと集まり、それぞれ思い思いの場所へ腰を下ろす。

 

 最前列には、小町と朝比奈。

 

 そして、その少し後ろには九条凛の姿があった。

 

 朝比奈は落ち着かない様子で小町へ話しかける。

 

「小町……。」

 

「先生って、本当に強いの?」

 

 小町は少しだけ笑う。

 

「強いよ。」

 

「でも……。」

 

 視線は自然と雄輝へ向く。

 

「学校でデュエルするお兄ちゃんを見るのは、小町も初めてなんだ。」

 

「だから……。」

 

「ちょっとドキドキしてる。」

 

 朝比奈は「そっか」と小さく頷き、再びフィールドへ目を向けた。

 

 一方、九条は静かに腕を組み、雄輝を見つめていた。

 

 世界を知る元プロデュエリスト。

 

 その肩書きだけで判断するつもりはない。

 

 デュエリストは、デュエルで語るもの。

 

 それが凛の考えだった。

 

 だからこそ、その一挙手一投足を見逃すつもりはない。

 

 フィールド中央。

 

 黒機はゆっくりとデュエルディスクを構える。

 

 制服の胸元で輝くランキングバッジ。

 

 学年ランキング十八位。

 

 その順位は決して偶然ではない。

 

 積み重ねてきた勝利と努力が証明する、確かな実力だった。

 

「先生。」

 

 黒機が口を開く。

 

「遠慮はいらねぇ。」

 

「俺も手加減はしない。」

 

 雄輝は小さく笑みを浮かべた。

 

「その方がありがたい。」

 

「授業とはいえ、本気で来てもらわなきゃ意味がない。」

 

 その穏やかな返答に、黒機も不敵な笑みを浮かべる。

 

「そうこなくちゃな。」

 

 雄輝は左腕のデュエルディスクを静かに構えた。

 

 その動きに一切の無駄はない。

 

 家で見る兄としての姿ではなく、一人のデュエリストとして立つその姿に、小町は思わず息を呑んだ。

 

(やっぱり……。)

 

(こういう時のお兄ちゃん、いつもと雰囲気が違う。)

 

 フィールドを包む空気が変わる。

 

 誰も言葉を発しない。

 

 張り詰めた静寂だけが、その場を支配していた。

 

 雄輝と黒機。

 

 二人は同時に右手を掲げる。

 

「「デュエル!!」」

 

神崎雄輝 LP8000

 

黒機大河 LP8000

 

1ターン目 黒機

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 勢いよくカードを引いた黒機は、迷うことなく一枚のカードをデュエルディスクへ叩きつけた。

 

「《レッド・ガジェット》召喚!」

 

 赤い装甲を身にまとった小型の機械兵が、金属音を響かせながらフィールドへ姿を現す。

 

 

【レッド・ガジェット】

 

レベル:4

 

攻撃力:1300

 

守備力:1500

 

種族:機械族

 

属性:地

 

【効果】

 

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

 

デッキから「イエロー・ガジェット」1体を手札に加える。

 

 

「効果発動!」

 

「デッキから《イエロー・ガジェット》を手札に加える!」

 

 デュエルディスクが淡く光り、一枚のカードが黒機の手札へ加わる。

 

 ガジェットデッキ最大の特徴。

 

 一体の召喚が、次の一体へと繋がっていく。

 

「黒機君のガジェットだ!」

 

「やっぱりあのデッキか!」

 

 観客席から歓声が上がる。

 

 学年ランキング十八位。

 

 黒機のデッキは、三年生なら誰もが知っていた。

 

 黒機は続けてカードを二枚伏せる。

 

「カードを二枚セット。」

 

 伏せカードが静かにフィールドへ現れる。

 

「ターンエンド。」

 

 腕を組み、雄輝を見据える。

 

(まずは予定通り。)

 

(ガジェットで手札を増やしながら相手を見る。)

 

(先生……。)

 

(世界で戦ったっていう実力、見せてもらうぜ。)

 

 

2ターン目 雄輝

 

「俺のターン。」

 

 雄輝は静かにカードを引く。

 

 手札を確認すると、一枚のカードを前へ出した。

 

「《E・HERO フェザーマン》召喚。」

 

 白い翼を広げた若き英雄が、風をまといながらフィールドへ舞い降りる。

 

 

【E・HERO フェザーマン】

 

レベル:3

 

攻撃力:1000

 

守備力:1000

 

種族:戦士族

 

属性:風

 

【効果】

 

通常モンスター

 

風を自在に操る若きHERO。

 

仲間との融合によって、数々の英雄へと進化する。

 

 

「フェザーマン!」

 

「懐かしいな!」

 

「初代HEROだ!」

 

 生徒たちがどよめく。

 

 小町も思わず笑みを浮かべた。

 

(今日はフェザーマンからなんだ。)

 

 家で何度も見てきた兄のデュエル。

 

 その戦い方は毎回違う。

 

 だからこそ、小町は知っている。

 

 この一枚にも、必ず意味があることを。

 

 雄輝はカードを一枚伏せる。

 

「カードを一枚セット。」

 

「ターンエンド。」

 

 それだけだった。

 

 黒機は盤面を見つめる。

 

(攻撃表示のフェザーマン。)

 

(攻撃力1000。)

 

(伏せ一枚。)

 

(様子見……か?)

 

 世界を知る男にしては、あまりにも静かな立ち上がり。

 

 その静けさが、逆に黒機の警戒心を刺激していた。

 

 観客席では、九条凛だけが静かにフィールドを見つめていた。

 

「……。」

 

 その表情は変わらない。

 

 まだ何も語らない。

 

 ただ、二人の盤面をじっと見つめていた。

 

3ターン目 黒機

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 黒機は引いたカードを確認すると、すぐさまフィールドへ叩きつけた。

 

「《イエロー・ガジェット》召喚!」

 

 黄色い装甲をまとった機械兵が、レッド・ガジェットの隣へ軽快な動きで着地する。

 

 

【イエロー・ガジェット】

 

レベル:4

 

攻撃力:1200

 

守備力:1200

 

種族:機械族

 

属性:地

 

【効果】

 

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

 

デッキから「グリーン・ガジェット」1体を手札に加える。

 

 

「効果発動!」

 

「デッキから《グリーン・ガジェット》を手札に加える!」

 

 デュエルディスクが淡く光り、一枚のカードが黒機の手札へ加わる。

 

 これで手札はさらに充実する。

 

(よし……。)

 

(次の準備も整った。)

 

 ガジェットの連鎖。

 

 これこそが黒機の勝ち筋だった。

 

 右手を前へ突き出す。

 

「バトル!」

 

「レッド・ガジェット!」

 

「フェザーマンを攻撃!」

 

 

Battle

 

レッド・ガジェット

 

ATK 1300

 

    VS

 

E・HERO フェザーマン

 

ATK 1000

 

 

 鋼鉄の拳が一直線に振り下ろされる。

 

 その瞬間だった。

 

「罠カード発動。」

 

 雄輝が静かに伏せカードを開く。

 

「《ヒーローバリア》。」

 

 フェザーマンの前に眩い光の障壁が展開される。

 

 

【ヒーローバリア】

 

通常罠

 

【効果】

 

自分フィールドに「E・HERO」モンスターが存在する場合、相手モンスター1体の攻撃を無効にする。

 

 

 ガァァァン!!

 

 レッド・ガジェットの拳は障壁に阻まれ、大きく弾き返された。

 

「攻撃を防いだ!」

 

「さすが先生!」

 

 生徒たちから歓声が上がる。

 

 しかし黒機は落ち着いていた。

 

「一回防ぐだけか。」

 

 その視線はすでに二体目のガジェットへ向いている。

 

「イエロー・ガジェット!」

 

「フェザーマンを攻撃!」

 

 

Battle

 

イエロー・ガジェット

 

ATK 1200

 

    VS

 

E・HERO フェザーマン

 

ATK 1000

 

 

 黄色い機械兵が勢いよく飛び出す。

 

 フェザーマンも迎え撃つが、攻撃力の差はわずか二〇〇。

 

 その差は埋まらず、白い翼が砕け散った。

 

 フェザーマンは光の粒子となり、静かにフィールドから姿を消す。

 

 

Damage

 

神崎雄輝

 

LP 8000

 

    ↓

 

LP 7800

 

(戦闘ダメージ:200)

 

 

「ターンエンド。」

 

 黒機は腕を組み、雄輝を見据えた。

 

「一回防いだくらいじゃ、流れは変わらねぇ。」

 

 観客席からも小さなどよめきが起こる。

 

「先生、場が空いた……。」

 

「どうするんだ?」

 

 小町はフィールドを見つめる。

 

(ライフは200だけ……。)

 

(でも、お兄ちゃんはまだ何も動じてない。)

 

 その落ち着きが、逆に不安になる。

 

 一方、黒機もまた同じ違和感を覚えていた。

 

(フェザーマンがやられても反応なし……。)

 

(ブラフか。)

 

(それとも、まだ何かあるのか。)

 

 その時だった。

 

 観客席の後方から、小さな声が聞こえる。

 

「……面白いですね。」

 

 九条凛だった。

 

 その視線はブレることなく雄輝のフィールドを見つめている。

 

 何かに気付いたようにも見える。

 

 だが、それ以上は何も語らない。

 

 静かな沈黙だけが、その場に残った。

 

 

4ターン目 神崎雄輝

 

「俺のターン。」

 

 雄輝は静かにカードを引く。

 

 そのまま一枚のカードをフィールドへ置いた。

 

「《E・HERO ブレイズマン》召喚。」

 

 燃え盛る炎を身にまとったHEROが、雄々しくフィールドへ降り立つ。

 

 

【E・HERO ブレイズマン】

 

レベル:4

 

攻撃力:1200

 

守備力:1800

 

種族:戦士族

 

属性:炎

 

【効果】

 

このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、以下の効果から1つを選択して発動できる。

 

①デッキから「融合」1枚を手札に加える。

 

②デッキから「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送り、このカードの属性・攻撃力・守備力を、そのモンスターと同じにする。

 

 

「ブレイズマンだ!」

 

「融合サーチできるHERO!」

 

 観客席から歓声が上がる。

 

 雄輝は間を置かずに宣言した。

 

「ブレイズマンの効果発動。」

 

「デッキから《融合》を手札に加える。」

 

 デッキから一枚の魔法カードが手札へ加わる。

 

 小町は思わず身を乗り出した。

 

(融合……!)

 

(やっぱり狙いは融合召喚なんだ!)

 

 その隣で、九条凛は静かにフィールドを見つめていた。

 

「……融合カード。」

 

「次のターンには、融合召喚を狙える盤面になりますね。」

 

 しかし、その視線はすぐにブレイズマンへ戻る。

 

「ですが……。」

 

 そこで言葉を切る。

 

 何かが引っ掛かる。

 

 だが、まだ確信には至らない。

 

 黒機は鼻で笑った。

 

「融合か。」

 

「次のターンまで待ってくれるほど、甘くねぇぞ。」

 

 雄輝は静かに右手を前へ向ける。

 

「バトル。」

 

「ブレイズマン。」

 

「イエロー・ガジェットを攻撃。」

 

 

Battle

 

E・HERO ブレイズマン

 

ATK1200

 

    VS

 

イエロー・ガジェット

 

ATK1200

 

 

 炎をまとった拳と、機械兵の拳が真正面から激突する。

 

 ドォォォン!!

 

 衝撃がフィールドを駆け抜けた。

 

 互いの攻撃力は同じ。

 

 勝者はいない。

 

 ブレイズマンとイエロー・ガジェットは、同時に光となって砕け散った。

 

 

Battle Result

 

E・HERO ブレイズマン 撃破

 

×

 

イエロー・ガジェット 撃破

 

相打ち

 

 

「相打ち……!」

 

「先生、自分から仕掛けた!」

 

 生徒たちがざわめく。

 

 黒機もわずかに眉をひそめた。

 

(自分から相打ち?)

 

(融合素材を墓地へ送った……。)

 

(いや。)

 

(それだけじゃない。)

 

(何を狙ってる……?)

 

 雄輝は表情を変えない。

 

 静かにカードを一枚伏せる。

 

「カードを一枚セット。」

 

「ターンエンド。」

 

 フィールドにはレッド・ガジェットのみ。

 

 雄輝の場は伏せカード一枚だけ。

 

 盤面だけを見れば、黒機が圧倒的に有利だった。

 

 黒機は腕を組み、不敵に笑う。

 

「へっ……。」

 

「融合素材を揃えたみてぇだが、場はガラ空き。」

 

 一歩前へ踏み出す。

 

「その程度かよ。」

 

 観客席にも同じ空気が流れる。

 

「先生、大丈夫なのか……?」

 

「次のターン、かなり危ないぞ。」

 

 しかし、その中でただ一人。

 

 九条凛だけは静かに雄輝を見つめていた。

 

「……。」

 

 紫色の瞳が、わずかに細くなる。

 

 まだ誰も知らない。

 

 この一手一手が、すべて計算された布石であることを。

 

 そして次のターン、デュエルは大きく動き出す――。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。