遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity 作:NONAME0195
5ターン目 黒機
「俺のターン! ドロー!」
黒機は勢いよくカードを引く。
その瞬間、引いたカードを見て思わず笑みがこぼれた。
(来た……!)
(俺の切り札。)
(運まで俺に味方してるってことか。)
勝利を確信した黒機は、そのまま一枚のカードをフィールドへ叩きつける。
「《グリーン・ガジェット》召喚!」
緑色の装甲をまとった機械兵が、軽快な駆動音を響かせながらフィールドへ姿を現した。
⸻
【グリーン・ガジェット】
レベル:4
攻撃力:1400
守備力:600
種族:機械族
属性:地
【効果】
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから「レッド・ガジェット」1体を手札に加える。
⸻
「効果発動!」
「デッキから《レッド・ガジェット》を手札に加える!」
デュエルディスクが光り、デッキから新たなカードが黒機の手札へ収まる。
「また手札が増えた!」
「ガジェットって次々に仲間を呼ぶんだ……。」
朝比奈が思わず声を漏らす。
その隣で九条凛が静かに補足した。
「ガジェットは手札を絶やさず戦うことに長けたテーマです。」
「継戦能力が高い……堅実なデッキですね。」
しかし黒機の狙いは、ガジェットではない。
ゆっくりと伏せカードへ右手を伸ばす。
「永続罠発動!」
「《血の代償》!!」
赤黒い魔法陣がフィールド一面へ広がった。
⸻
【血の代償】
永続罠
【効果】
500ライフポイントを払うことで、自分は通常召喚・セットに加え、もう一度だけ通常召喚または通常セットを行うことができる。
⸻
「血の代償!?」
「追加で召喚できるカードだ!」
小町が思わず立ち上がる。
「まさか……!」
九条は静かに頷いた。
「ええ。」
「このターンの本命は、その先でしょう。」
黒機は不敵に笑う。
「ライフ500ポイントを払う!」
⸻
Damage
黒機大河
LP8000
↓
LP7500
(《血の代償》の効果)
⸻
「グリーン・ガジェットをリリース!」
緑の機械兵が光となり、巨大なエネルギーへと変わる。
重低音がフィールドを震わせる。
紫色の電撃が空間を駆け巡った。
「現れろ!」
「《人造人間-サイコ・ショッカー》!!」
轟音。
巨大な人造人間がフィールドへ降臨する。
圧倒的な威圧感に、生徒たちは息を呑んだ。
⸻
【人造人間-サイコ・ショッカー】
レベル:6
攻撃力:2400
守備力:1500
種族:機械族
属性:闇
【効果】
このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、フィールド上の罠カードは発動できず、その効果は無効化される。
⸻
「ショッカーだ!」
「黒機君のエースモンスター!」
観客席がどよめく。
小町は思わずショッカーを見上げた。
(これが……黒機君の切り札。)
(しかも、お兄ちゃんの罠が全部使えなくなる……。)
黒機は勝ち誇ったように雄輝へ視線を向ける。
「先生。」
「これで、あんたの罠は終わりだ。」
「《人造人間-サイコ・ショッカー》の効果!」
「フィールド上の罠カードは発動できない!」
雄輝は何も答えない。
静かにショッカーを見つめるだけだった。
その反応に、黒機はわずかに違和感を覚える。
(……なんだ。)
(その余裕は。)
(ショッカーが出たんだぞ。)
(まだ何かあるっていうのか……?)
その考えを振り払うように、黒機は右手を勢いよく突き出した。
「バトル!」
「《人造人間-サイコ・ショッカー》!」
「ダイレクトアタック!!」
⸻
Battle
人造人間-サイコ・ショッカー
ATK2400
VS
神崎雄輝
ダイレクトアタック
⸻
ショッカーが大きく拳を振り上げる。
紫色の電撃をまとった鉄拳が一直線に雄輝へ叩き込まれた。
「サイコ・ナックル!!」
ドォォォォォン!!
凄まじい衝撃がフィールドを揺らす。
爆風が吹き抜け、観客席から悲鳴が上がった。
⸻
Damage
神崎雄輝
LP7800
↓
LP5400
(戦闘ダメージ:2400)
⸻
「先生っ!」
小町は思わず立ち上がる。
しかし黒機は攻撃の手を緩めない。
「終わりじゃねぇ!」
「レッド・ガジェット!」
「追撃だ!!」
⸻
Battle
レッド・ガジェット
ATK1300
VS
神崎雄輝
ダイレクトアタック
⸻
赤い機械兵が一気に距離を詰める。
鋼鉄の拳が容赦なく雄輝を捉えた。
ガァン!!
衝撃音が響き渡る。
⸻
Damage
神崎雄輝
LP5400
↓
LP4100
(戦闘ダメージ:1300)
⸻
「先生のライフが……!」
「もう半分近くまで……!」
教室中がざわめく。
朝比奈も思わず両手を握り締めた。
「大丈夫なの……?」
小町はフィールドから目を離せない。
(お兄ちゃん……。)
(フィールドにはモンスターもいない……。)
(どうするの……?)
黒機は腕を組み、勝利を確信した笑みを浮かべる。
「これで場は空だ。」
ショッカーの隣にはレッド・ガジェット。
伏せカードも一枚残っている。
対する雄輝のフィールドには、伏せカードが一枚あるだけ。
盤面だけを見れば、勝敗は決したように思えた。
「ターンエンド。」
黒機は自信に満ちた表情で雄輝を見据える。
「先生。」
「世界で戦ってきたっていうから期待してたけど……。」
一拍置き、小さく笑う。
「案外、その程度だったな。」
その言葉に、観客席は静まり返る。
誰も反論できない。
フィールドだけを見れば、黒機が圧倒していた。
そんな中――。
九条凛だけは、静かに雄輝を見つめていた。
「……。」
その瞳は、ショッカーではなく雄輝の手札を追っている。
そして、小さく、本当に小さく呟いた。
「まだ……終わっていませんね。」
誰にも聞こえないほどの、小さな一言だった。
雄輝は静かにデッキへ右手を伸ばす。
「……俺のターン。」
デュエルが、大きく動き出す。
⸻
6ターン目 神崎雄輝
「……俺のターン。」
雄輝は静かにカードを引く。
引いた一枚を確認すると、わずかに口元が緩んだ。
雄輝は伏せカードへ手を伸ばす。
「リバースオープン。」
「通常魔法発動!」
「《ハーピィの羽根帚》!!」
突如、フィールドに暴風が吹き荒れる。
巨大な竜巻が黒機の魔法・罠ゾーンへ襲い掛かった。
⸻
【ハーピィの羽根帚】
通常魔法
【効果】
相手フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する。
⸻
「《血の代償》もろとも――」
「吹き飛べ。」
暴風が《血の代償》を飲み込み、その隣に伏せられていたカードごと粉砕する。
バキィィィン!!
砕け散るカード。
黒機の表情が初めて曇る。
「なっ……!」
「伏せまで全部……!」
朝比奈が驚きの声を上げる。
小町も思わず拳を握った。
(よかった……!)
(ショッカーがいても、魔法は止められない!)
九条は静かに頷く。
「ショッカーは罠を封じます。」
「ですが、魔法までは止められません。」
「まずは妨害を取り除きましたか……。」
雄輝は続けて一枚のカードを掲げる。
「通常魔法。」
「《強欲な壺》発動。」
⸻
【強欲な壺】
通常魔法
【効果】
自分のデッキからカードを2枚ドローする。
⸻
壺が妖しく光り、雄輝はデッキから二枚のカードを引き抜く。
その動きは淀みがない。
黒機は静かに雄輝を見つめる。
(まだドローするのか……。)
(だが。)
(場にはショッカー。)
(レッド・ガジェット。)
(先生の場は空だ。)
(二枚引いたところで……。)
そんな黒機の考えをよそに、雄輝は間髪入れず次のカードを掲げた。
「通常魔法。」
「《ヒーローアライブ》発動。」
小町が目を見開く。
「ヒーローアライブ!」
⸻
【ヒーローアライブ】
通常魔法
【効果】
自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
ライフポイントを半分払って、デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する。
⸻
「ライフポイントを半分払う。」
⸻
Damage
神崎雄輝
LP4100
↓
LP2050
(《ヒーローアライブ》の効果)
⸻
「ライフが半分に!?」
朝比奈が思わず立ち上がる。
小町も驚きを隠せない。
「そこまでして……!?」
九条だけは静かにフィールドを見つめる。
「……なるほど。」
短く呟く。
雄輝はデッキへ右手を伸ばいた。
「来い。」
「《E・HERO バーストレディ》。」
紅蓮の炎をまとった女性HEROが、鮮やかな炎とともにフィールドへ舞い降りた。
⸻
【E・HERO バーストレディ】
レベル:3
攻撃力:1200
守備力:800
種族:戦士族
属性:炎
【効果】
通常モンスター
炎を自在に操る女性HERO。
優れた瞬発力と高い戦闘能力を誇る。
フィールドへ降り立ったバーストレディを見つめ、黒機は小さく眉をひそめる。
(バーストレディ……。)
(融合するつもりかなのか?。)
(だが、生半可なモンスターじゃショッカーは越えられねぇ。)
九条凛だけは、静かにバーストレディと墓地へ視線を移した。
「……。」
何かを確信したように、ほんのわずかに口元が緩む。
だが、その理由を語ることはなかった。
雄輝はさらに一枚のカードへ手を伸ばす――。
雄輝は一枚のカードを静かに掲げた。
「通常魔法。」
「《戦士の生還》発動。」
⸻
【戦士の生還】
通常魔法
【効果】
自分の墓地の戦士族モンスター1体を手札に加える。
⸻
墓地のカードが淡い光に包まれる。
その光は一枚のカードとなり、雄輝の手札へ戻った。
「墓地の《E・HERO フェザーマン》を手札に加える。」
「フェザーマンだ!」
小町が思わず声を上げる。
「さっきやられたカード!」
九条は雄輝の手札へ静かに視線を向ける。
「……。」
フェザーマン。
そしてフィールドにはバーストレディ。
二枚のHEROが揃った。
しかし、それ以上は何も口にしない。
一方、黒機も静かにその光景を見つめていた。
(フェザーマンを回収……。)
(墓地利用か?)
(それとも別のコンボ……。)
まだ相手の狙いは見えない。
だが、一つだけ確かなことがある。
雄輝はここから勝負を仕掛けるつもりだということ。
その瞬間。
雄輝は新たなカードをゆっくりと掲げた。
「通常魔法。」
「《融合》発動。」
⸻
【融合】
通常魔法
【効果】
手札・フィールドの融合素材モンスターを墓地へ送り、融合モンスター1体を融合召喚する。
⸻
「やっぱり融合だ!」
小町が目を輝かせる。
九条も静かに頷く。
「そういうことでしたか。」
「フェザーマンを回収した時点で、融合素材を揃えていたんですね。」
黒機もようやく雄輝の狙いを理解した。
「融合召喚か……!」
フェザーマンとバーストレディが光の粒子となって宙へ舞い上がる。
二つの光は空中で交わり、巨大な光の渦を生み出した。
教室中が静まり返る。
誰もが、その光の中から現れる新たな英雄を見つめている。
雄輝は右手を高く掲げた。
「風と炎が一つとなり──」
光の渦が激しく輝きを増す。
「新たなる力を今ここに!」
巨大な翼がゆっくりと広がった。
「融合召喚!」
「現れろ!」
「《E・HERO フレイム・ウィングマン》!!」
轟音とともに、炎をまとった英雄がフィールドへ降臨する。
燃え盛る翼を大きく広げたその姿に、生徒たちは一斉に息を呑んだ。
⸻
【E・HERO フレイム・ウィングマン】
レベル:6
攻撃力:2100
守備力:1200
種族:戦士族
属性:風
【効果】
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
黒機は不敵な笑みを浮かべたまま、フレイム・ウィングマンを見つめる。
ディスクに表示された数値は2100。
対するショッカーは2400。
勝敗は明らかだった。
「へっ……。」
肩をすくめながら、黒機は小さく笑う。
「先生。」
「攻撃力2100じゃ、ショッカーは倒せねぇ。」
観客席にも緊張が走る。
「300足りない……。」
「このままじゃ返り討ちだ。」
朝比奈が不安そうに呟く。
しかし。
雄輝は慌てる様子もなく、一枚のカードを静かに掲げた。
「焦るなよ。」
その一言に、黒機の眉がわずかに動く。
雄輝はフィールド全体を見渡し、穏やかな口調で続けた。
「HEROには――」
一拍置く。
その場にいた全員が、雄輝の次の言葉へ耳を傾ける。
「HEROにふさわしい舞台がある。」
カードをデュエルディスクへセットした瞬間、フィールド全体が眩い光に包まれた。
「フィールド魔法発動!」
「《摩天楼-スカイスクレイパー》!!」
大地が揺れる。
無数の高層ビルが次々と姿を現し、デュエルフィールドは巨大都市へと変貌した。
⸻
【摩天楼-スカイスクレイパー】
フィールド魔法
【効果】
自分フィールドの「E・HERO」モンスターが、自分より攻撃力の高いモンスターと戦闘を行う場合、その戦闘中のみ攻撃力は1000ポイントアップする。
⸻
「摩天楼……!」
小町は思わず息を呑む。
九条は静かにフィールド全体を見渡した。
「なるほど。」
「このためのフレイム・ウィングマンでしたか。」
黒機は摩天楼とショッカーを見比べる。
「フィールド魔法……?」
次の瞬間だった。
⸻
Attack Up
E・HERO フレイム・ウィングマン
ATK2100
↓
ATK3100
(《摩天楼-スカイスクレイパー》)
⸻
「なっ……!?」
黒機の表情から余裕が消える。
「攻撃力……3100!?」
「ショッカーを超えた!」
教室中がどよめいた。
小町は思わず笑みを浮かべる。
「やった……!」
「逆転した!」
雄輝は静かに右手を前へ突き出した。
「バトル。」
「フレイム・ウィングマン。」
「《人造人間-サイコ・ショッカー》を攻撃。」
⸻
Battle
E・HERO フレイム・ウィングマン
ATK3100
VS
人造人間-サイコ・ショッカー
ATK2400
⸻
炎の翼が大きく広がる。
フレイム・ウィングマンは一気に大空へ舞い上がると、燃え盛る右足へ炎を集中させた。
「フレイム――」
雄輝が静かに技名を告げる。
「シュゥゥゥト!!」
轟音。
燃え盛る飛び蹴りがショッカーを真正面から貫いた。
ドォォォォォン!!
紫色の電撃が四散し、ショッカーは爆炎の中へ消えていく。
⸻
Damage
黒機大河
LP7500
↓
LP6800
(戦闘ダメージ:700)
⸻
「まだ終わりじゃない。」
雄輝は静かにフレイム・ウィングマンを見つめる。
「フレイム・ウィングマンの効果発動。」
爆散したショッカーの残骸が炎へと変わり、巨大な火柱となって黒機を包み込む。
⸻
Effect Damage
人造人間-サイコ・ショッカー
元々の攻撃力:2400
⸻
Damage
黒機大河
LP6800
↓
LP4400
(効果ダメージ:2400)
⸻
「ぐあああああっ!!」
黒機は思わず片膝をつく。
歓声が教室中に響き渡った。
「すげぇ!!」
「ショッカーを倒しただけじゃない!」
「効果ダメージまで!」
朝比奈が興奮したように叫ぶ。
小町も思わず胸の前で拳を握った。
「これがお兄ちゃんのHERO……!」
九条は静かにフレイム・ウィングマンを見上げ、小さく頷く。
「盤面だけではなく、ライフまで計算した逆転。」
「……見事です。」
一方、黒機は肩で息をしながらも、ゆっくりと立ち上がった。
フレイム・ウィングマンを真っ直ぐ見据え、小さく笑う。
(これが……。)
(世界で戦ってきたデュエリスト……。)
初めて、その笑みに焦りが混じった。
⸻
7ターン目 黒機
爆炎が晴れたフィールドに、静寂が訪れる。
黒機は肩で息をしながらも、その瞳から闘志は消えていなかった。
(まだだ……。)
(まだ終わってねぇ。)
ゆっくりとデッキへ右手を伸ばす。
「俺のターン!」
勢いよくカードを引き抜く。
そのカードを確認すると、小さく笑みがこぼれた。
「まだ勝負は終わらせねぇ。」
迷うことなくカードを掲げる。
「通常魔法!」
「《天使の施し》発動!」
⸻
【天使の施し】
通常魔法
【効果】
自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後、手札を2枚選んで墓地へ捨てる。
⸻
光の天使が舞い降りる。
黒機は三枚のカードを引き、静かに手札を見つめた。
(これなら……。)
迷いはない。
二枚のカードを墓地へ送り、次の一枚を高く掲げる。
「通常魔法!」
「《モンスター転生》!」
⸻
【モンスター転生】
通常魔法
【効果】
手札を1枚捨てて発動する。
自分の墓地のモンスター1体を手札に加える。
⸻
黒機は手札を一枚墓地へ送る。
「墓地の《人造人間-サイコ・ショッカー》を手札に加える!」
ショッカーのカードが黒機の手札へ戻る。
「ショッカーが戻った!」
朝比奈が驚きの声を上げる。
小町も目を丸くする。
「また出す気なの!?」
九条は静かに頷いた。
「墓地回収……。」
「まだ切り札を諦めていません。」
黒機はレッド・ガジェットへ視線を向ける。
「レッド・ガジェットをリリース!」
赤い機械兵が光へと変わる。
「もう一度来い!!」
「《人造人間-サイコ・ショッカー》!!」
紫色の雷鳴がフィールドへ轟く。
巨大な人造人間が、再び大地へ降り立った。
教室中がどよめく。
「またショッカー!?」
「二体目じゃない!」
「さっき倒したばかりなのに!」
黒機はショッカーを指差し、不敵に笑う。
「先生。」
「これが俺の執念だ。」
その言葉を残すと、次のカードを静かに掲げる。
「通常魔法。」
「《サイクロン》発動。」
⸻
【サイクロン】
速攻魔法
【効果】
フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。
そのカードを破壊する。
⸻
激しい旋風がフィールドを駆け抜ける。
黒機は一直線に雄輝のフィールドを指差した。
「《摩天楼-スカイスクレイパー》を破壊する!!」
轟音。
高層ビル群が崩れ落ち、フィールドは元の姿へ戻っていく。
フレイム・ウィングマンの足元から、力強い光が静かに消えた。
黒機はディスクへ表示された数値を見つめ、静かに笑う。
⸻
Attack Down
E・HERO フレイム・ウィングマン
ATK3100
↓
ATK2100
(《摩天楼-スカイスクレイパー》消滅)
⸻
「これで先生の切り札は攻撃力2100。」
ショッカーへ視線を移す。
⸻
Field
E・HERO フレイム・ウィングマン
ATK2100
VS
人造人間-サイコ・ショッカー
ATK2400
⸻
ショッカーが雄叫びを上げる。
両腕に紫色の電流が走り、その巨体が一気にフレイム・ウィングマンとの間合いを詰めた。
「サイコ・ナックル!!」
鋼鉄の拳が唸りを上げる。
対するフレイム・ウィングマンも炎の翼を大きく広げ、迎え撃つ。
互いの拳が激突した瞬間――
ドォォォォン!!
凄まじい衝撃波がフィールド全体を揺らした。
しかし、その衝撃を押し切ったのはショッカーだった。
鋼鉄の拳が炎の英雄を貫く。
フレイム・ウィングマンは静かに光へと変わり、フィールドから姿を消した。
⸻
Damage
神崎雄輝
LP2050
↓
LP1750
(戦闘ダメージ:300)
⸻
「先生のフレイム・ウィングマンが……!」
朝比奈が思わず声を漏らす。
小町も息を呑んだ。
(倒された……。)
(でも……。)
雄輝の表情を見る。
やはり、その表情は変わらない。
黒機はゆっくりと息を吐いた。
(倒した……。)
(やっと追いついた。)
ショッカーの後ろ姿を見つめながら、小さく笑う。
「先生。」
一歩前へ踏み出す。
「これで、あんたの切り札はいなくなった。」
その声には、先ほどまでの余裕ではなく、自分を奮い立たせるような力強さがあった。
雄輝は静かにショッカーを見つめる。
何も語らない。
その沈黙が、黒機には不気味だった。
(……何だ。)
(また、その顔か。)
(まだ終わってないって言うのか……。)
観客席も静まり返る。
誰もが、次の一枚を待っていた。
黒機は右手をゆっくりと下ろす。
「ターンエンド。」
フィールドには再び、人造人間-サイコ・ショッカーだけが立っている。
その圧倒的な存在感が、フィールドを支配していた。
そして――
雄輝は静かにデッキへ右手を伸ばす。
「……俺のターン。」
その一言に、九条凛の瞳がわずかに細まる。
誰よりも冷静だった彼女が、初めて雄輝の右手へ視線を向けた。
「ここからですね。」
その呟きは、歓声もざわめきもない静かなフィールドへ、そっと溶けていった。⸻
8ターン目 神崎雄輝
静寂に包まれたフィールド。
雄輝はゆっくりとデッキへ右手を伸ばす。
「……俺のターン。」
一枚のカードを引き抜く。
そのまま手札へ加えると、間髪入れず一枚のカードを掲げた。
「通常魔法。」
「《死者蘇生》発動。」
⸻
【死者蘇生】
通常魔法
【効果】
自分または相手の墓地のモンスター1体を特殊召喚する。
⸻
墓地が眩い光に包まれる。
炎が渦を巻き、一人の英雄が再び姿を現した。
「甦れ。」
「《E・HERO フレイム・ウィングマン》。」
炎の翼を大きく広げ、英雄が再びフィールドへ舞い降りる。
「またフレイム・ウィングマン!?」
「先生のエースが復活した!」
教室中がどよめく。
黒機も思わず表情を曇らせた。
(また来た……!)
(だが。)
(攻撃力は2100。)
(ショッカーには届かねぇ。)
その時だった。
雄輝は最後の一枚を静かに掲げる。
「速攻魔法。」
「《スカイスクレイパー・シュート》発動。」
⸻
【スカイスクレイパー・シュート】
速攻魔法
【効果】
自分フィールドの「E・HERO フレイム・ウィングマン」1体を対象として発動できる。
対象モンスターより攻撃力の高い相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える。
⸻
九条凛が初めて目を見開いた。
「……そういうことでしたか。」
小町が思わず九条を見る。
「凛ちゃん?」
九条は静かにショッカーへ視線を向けた。
「先生は最初から、この一枚まで見据えてデュエルを組み立てていたんですね。」
黒機の表情が凍り付く。
「まさか……!」
フレイム・ウィングマンが大空へ舞い上がる。
無数の高層ビルを駆け抜けるように急上昇し、天空から急降下した。
「スカイスクレイパー――」
雄輝が静かに右手を振り下ろす。
「シュート!!」
轟音。
炎をまとった飛び蹴りがショッカーを貫く。
紫色の雷撃は一瞬で砕け散り、巨大な人造人間は光となって消滅した。
⸻
Effect Damage
人造人間-サイコ・ショッカー
元々の攻撃力:2400
⸻
Damage
黒機大河
LP4400
↓
LP2000
(効果ダメージ:2400)
⸻
黒機は膝をつく。
「ぐっ……!」
しかし、雄輝は攻撃の手を止めない。
静かに右手を前へ突き出す。
「これで終わりだ。」
フレイム・ウィングマンが大きく翼を広げる。
「バトル。」
「フレイム・ウィングマン。」
「ダイレクトアタック。」
⸻
Battle
E・HERO フレイム・ウィングマン
ATK2100
VS
黒機大河
ダイレクトアタック
⸻
炎の翼が大きく羽ばたく。
一直線に放たれた飛び蹴りが、黒機を正面から貫いた。
ドォォォォォン!!
⸻
Damage
黒機大河
LP2000
↓
LP0
(戦闘ダメージ:2100)
⸻
勝敗を告げる電子音が、フィールドへ高らかに響き渡る。
WINNER
神崎雄輝
⸻
一瞬の静寂。
そして次の瞬間――
「うおおおおおおっ!!」
観戦していた生徒たちの歓声がデュエルフィールドを包み込んだ。
「先生の勝ちだ!」
「すげぇ!」
「HEROかっこよすぎる!」
小町は思わず満面の笑みを浮かべる。
(やっぱり……。)
(お兄ちゃんは最高だ。)
黒機はしばらくその場に立ち尽くしていた。
やがて静かに笑い、小さく息を吐く。
「……完敗だ。」
雄輝はデュエルディスクを外し、黒機の前まで歩み寄る。
そして、静かに右手を差し出した。
「いいデュエルだった。」
黒機はその手を見つめ、照れくさそうに笑う。
「先生。」
一度深く頭を下げる。
「俺、もっと強くなります。」
「次は……。」
顔を上げ、まっすぐ雄輝を見据える。
「次は必ず、勝ちます。」
雄輝は穏やかに微笑み、その手をしっかりと握り返した。
「ああ。」
「その日を楽しみにしている。」
そのやり取りを見つめながら、九条凛は静かに目を閉じる。
(世界で戦ってきたデュエリスト……。)
(強いだけじゃない。)
(相手を導き、成長させるデュエル。)
(これが……先生。)
夕日に染まるデュエルフィールド。
新任教師、神崎雄輝の最初の一戦は、一人の生徒の心に、そして三年A組全員の記憶に深く刻まれた。