遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity   作:NONAME0195

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第3話「世界を知るHERO」〈後半〉

5ターン目 黒機

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 黒機は勢いよくカードを引く。

 

 その瞬間、引いたカードを見て思わず笑みがこぼれた。

 

(来た……!)

 

(俺の切り札。)

 

(運まで俺に味方してるってことか。)

 

 勝利を確信した黒機は、そのまま一枚のカードをフィールドへ叩きつける。

 

「《グリーン・ガジェット》召喚!」

 

 緑色の装甲をまとった機械兵が、軽快な駆動音を響かせながらフィールドへ姿を現した。

 

 

【グリーン・ガジェット】

 

レベル:4

 

攻撃力:1400

 

守備力:600

 

種族:機械族

 

属性:地

 

【効果】

 

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから「レッド・ガジェット」1体を手札に加える。

 

 

「効果発動!」

 

「デッキから《レッド・ガジェット》を手札に加える!」

 

 デュエルディスクが光り、デッキから新たなカードが黒機の手札へ収まる。

 

「また手札が増えた!」

 

「ガジェットって次々に仲間を呼ぶんだ……。」

 

 朝比奈が思わず声を漏らす。

 

 その隣で九条凛が静かに補足した。

 

「ガジェットは手札を絶やさず戦うことに長けたテーマです。」

 

「継戦能力が高い……堅実なデッキですね。」

 

 しかし黒機の狙いは、ガジェットではない。

 

 ゆっくりと伏せカードへ右手を伸ばす。

 

「永続罠発動!」

 

「《血の代償》!!」

 

 赤黒い魔法陣がフィールド一面へ広がった。

 

 

【血の代償】

 

永続罠

 

【効果】

 

500ライフポイントを払うことで、自分は通常召喚・セットに加え、もう一度だけ通常召喚または通常セットを行うことができる。

 

 

「血の代償!?」

 

「追加で召喚できるカードだ!」

 

 小町が思わず立ち上がる。

 

「まさか……!」

 

 九条は静かに頷いた。

 

「ええ。」

 

「このターンの本命は、その先でしょう。」

 

 黒機は不敵に笑う。

 

「ライフ500ポイントを払う!」

 

 

Damage

 

黒機大河

 

LP8000

 

    ↓

 

LP7500

 

(《血の代償》の効果)

 

 

「グリーン・ガジェットをリリース!」

 

 緑の機械兵が光となり、巨大なエネルギーへと変わる。

 

 重低音がフィールドを震わせる。

 

 紫色の電撃が空間を駆け巡った。

 

「現れろ!」

 

「《人造人間-サイコ・ショッカー》!!」

 

 轟音。

 

 巨大な人造人間がフィールドへ降臨する。

 

 圧倒的な威圧感に、生徒たちは息を呑んだ。

 

 

【人造人間-サイコ・ショッカー】

 

レベル:6

 

攻撃力:2400

 

守備力:1500

 

種族:機械族

 

属性:闇

 

【効果】

 

このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、フィールド上の罠カードは発動できず、その効果は無効化される。

 

 

「ショッカーだ!」

 

「黒機君のエースモンスター!」

 

 観客席がどよめく。

 

 小町は思わずショッカーを見上げた。

 

(これが……黒機君の切り札。)

 

(しかも、お兄ちゃんの罠が全部使えなくなる……。)

 

 黒機は勝ち誇ったように雄輝へ視線を向ける。

 

「先生。」

 

「これで、あんたの罠は終わりだ。」

 

「《人造人間-サイコ・ショッカー》の効果!」

 

「フィールド上の罠カードは発動できない!」

 

 雄輝は何も答えない。

 

 静かにショッカーを見つめるだけだった。

 

 その反応に、黒機はわずかに違和感を覚える。

 

(……なんだ。)

 

(その余裕は。)

 

(ショッカーが出たんだぞ。)

 

(まだ何かあるっていうのか……?)

 

 その考えを振り払うように、黒機は右手を勢いよく突き出した。

 

「バトル!」

 

「《人造人間-サイコ・ショッカー》!」

 

「ダイレクトアタック!!」

 

 

Battle

 

人造人間-サイコ・ショッカー

 

ATK2400

 

    VS

 

神崎雄輝

 

ダイレクトアタック

 

 

 ショッカーが大きく拳を振り上げる。

 

 紫色の電撃をまとった鉄拳が一直線に雄輝へ叩き込まれた。

 

「サイコ・ナックル!!」

 

 ドォォォォォン!!

 

 凄まじい衝撃がフィールドを揺らす。

 

 爆風が吹き抜け、観客席から悲鳴が上がった。

 

 

Damage

 

神崎雄輝

 

LP7800

 

   ↓

 

LP5400

 

(戦闘ダメージ:2400)

 

 

「先生っ!」

 

 小町は思わず立ち上がる。

 

 しかし黒機は攻撃の手を緩めない。

 

「終わりじゃねぇ!」

 

「レッド・ガジェット!」

 

「追撃だ!!」

 

 

Battle

 

レッド・ガジェット

 

ATK1300

 

    VS

 

神崎雄輝

 

ダイレクトアタック

 

 

 赤い機械兵が一気に距離を詰める。

 

 鋼鉄の拳が容赦なく雄輝を捉えた。

 

 ガァン!!

 

 衝撃音が響き渡る。

 

 

Damage

 

神崎雄輝

 

LP5400

 

   ↓

 

LP4100

 

(戦闘ダメージ:1300)

 

 

「先生のライフが……!」

 

「もう半分近くまで……!」

 

 教室中がざわめく。

 

 朝比奈も思わず両手を握り締めた。

 

「大丈夫なの……?」

 

 小町はフィールドから目を離せない。

 

(お兄ちゃん……。)

 

(フィールドにはモンスターもいない……。)

 

(どうするの……?)

 

 黒機は腕を組み、勝利を確信した笑みを浮かべる。

 

「これで場は空だ。」

 

 ショッカーの隣にはレッド・ガジェット。

 

 伏せカードも一枚残っている。

 

 対する雄輝のフィールドには、伏せカードが一枚あるだけ。

 

 盤面だけを見れば、勝敗は決したように思えた。

 

「ターンエンド。」

 

 黒機は自信に満ちた表情で雄輝を見据える。

 

「先生。」

 

「世界で戦ってきたっていうから期待してたけど……。」

 

 一拍置き、小さく笑う。

 

「案外、その程度だったな。」

 

 その言葉に、観客席は静まり返る。

 

 誰も反論できない。

 

 フィールドだけを見れば、黒機が圧倒していた。

 

 そんな中――。

 

 九条凛だけは、静かに雄輝を見つめていた。

 

「……。」

 

 その瞳は、ショッカーではなく雄輝の手札を追っている。

 

 そして、小さく、本当に小さく呟いた。

 

「まだ……終わっていませんね。」

 

 誰にも聞こえないほどの、小さな一言だった。

 

 雄輝は静かにデッキへ右手を伸ばす。

 

「……俺のターン。」

 

 デュエルが、大きく動き出す。

 

 

6ターン目 神崎雄輝

 

「……俺のターン。」

 

 雄輝は静かにカードを引く。

 

 引いた一枚を確認すると、わずかに口元が緩んだ。

 

雄輝は伏せカードへ手を伸ばす。

 

「リバースオープン。」

 

「通常魔法発動!」

 

「《ハーピィの羽根帚》!!」

 

 突如、フィールドに暴風が吹き荒れる。

 

 巨大な竜巻が黒機の魔法・罠ゾーンへ襲い掛かった。

 

 

【ハーピィの羽根帚】

 

通常魔法

 

【効果】

 

相手フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する。

 

 

「《血の代償》もろとも――」

 

「吹き飛べ。」

 

 暴風が《血の代償》を飲み込み、その隣に伏せられていたカードごと粉砕する。

 

 バキィィィン!!

 

 砕け散るカード。

 

 黒機の表情が初めて曇る。

 

「なっ……!」

 

「伏せまで全部……!」

 

 朝比奈が驚きの声を上げる。

 

 小町も思わず拳を握った。

 

(よかった……!)

 

(ショッカーがいても、魔法は止められない!)

 

 九条は静かに頷く。

 

「ショッカーは罠を封じます。」

 

「ですが、魔法までは止められません。」

 

「まずは妨害を取り除きましたか……。」

 

 雄輝は続けて一枚のカードを掲げる。

 

「通常魔法。」

 

「《強欲な壺》発動。」

 

 

【強欲な壺】

 

通常魔法

 

【効果】

 

自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 

 

 壺が妖しく光り、雄輝はデッキから二枚のカードを引き抜く。

 

 その動きは淀みがない。

 

 黒機は静かに雄輝を見つめる。

 

(まだドローするのか……。)

 

(だが。)

 

(場にはショッカー。)

 

(レッド・ガジェット。)

 

(先生の場は空だ。)

 

(二枚引いたところで……。)

 

 そんな黒機の考えをよそに、雄輝は間髪入れず次のカードを掲げた。

 

「通常魔法。」

 

「《ヒーローアライブ》発動。」

 

 小町が目を見開く。

 

「ヒーローアライブ!」

 

 

【ヒーローアライブ】

 

通常魔法

 

【効果】

 

自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。

 

ライフポイントを半分払って、デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「ライフポイントを半分払う。」

 

 

Damage

 

神崎雄輝

 

LP4100

 

   ↓

 

LP2050

 

(《ヒーローアライブ》の効果)

 

 

「ライフが半分に!?」

 

 朝比奈が思わず立ち上がる。

 

 小町も驚きを隠せない。

 

「そこまでして……!?」

 

 九条だけは静かにフィールドを見つめる。

 

「……なるほど。」

 

 短く呟く。

 

 雄輝はデッキへ右手を伸ばいた。

 

「来い。」

 

「《E・HERO バーストレディ》。」

 

 紅蓮の炎をまとった女性HEROが、鮮やかな炎とともにフィールドへ舞い降りた。

 

 

【E・HERO バーストレディ】

 

レベル:3

 

攻撃力:1200

 

守備力:800

 

種族:戦士族

 

属性:炎

 

【効果】

 

通常モンスター

 

炎を自在に操る女性HERO。

 

優れた瞬発力と高い戦闘能力を誇る。

 

フィールドへ降り立ったバーストレディを見つめ、黒機は小さく眉をひそめる。

 

(バーストレディ……。)

 

(融合するつもりかなのか?。)

 

(だが、生半可なモンスターじゃショッカーは越えられねぇ。)

 

 九条凛だけは、静かにバーストレディと墓地へ視線を移した。

 

「……。」

 

 何かを確信したように、ほんのわずかに口元が緩む。

 

 だが、その理由を語ることはなかった。

 

 雄輝はさらに一枚のカードへ手を伸ばす――。

 

雄輝は一枚のカードを静かに掲げた。

 

「通常魔法。」

 

「《戦士の生還》発動。」

 

 

【戦士の生還】

 

通常魔法

 

【効果】

 

自分の墓地の戦士族モンスター1体を手札に加える。

 

 

 墓地のカードが淡い光に包まれる。

 

 その光は一枚のカードとなり、雄輝の手札へ戻った。

 

「墓地の《E・HERO フェザーマン》を手札に加える。」

 

「フェザーマンだ!」

 

 小町が思わず声を上げる。

 

「さっきやられたカード!」

 

 九条は雄輝の手札へ静かに視線を向ける。

 

「……。」

 

 フェザーマン。

 

 そしてフィールドにはバーストレディ。

 

 二枚のHEROが揃った。

 

 しかし、それ以上は何も口にしない。

 

 一方、黒機も静かにその光景を見つめていた。

 

(フェザーマンを回収……。)

 

(墓地利用か?)

 

(それとも別のコンボ……。)

 

 まだ相手の狙いは見えない。

 

 だが、一つだけ確かなことがある。

 

 雄輝はここから勝負を仕掛けるつもりだということ。

 

 その瞬間。

 

 雄輝は新たなカードをゆっくりと掲げた。

 

「通常魔法。」

 

「《融合》発動。」

 

 

【融合】

 

通常魔法

 

【効果】

 

手札・フィールドの融合素材モンスターを墓地へ送り、融合モンスター1体を融合召喚する。

 

 

「やっぱり融合だ!」

 

 小町が目を輝かせる。

 

 九条も静かに頷く。

 

「そういうことでしたか。」

 

「フェザーマンを回収した時点で、融合素材を揃えていたんですね。」

 

 黒機もようやく雄輝の狙いを理解した。

 

「融合召喚か……!」

 

 フェザーマンとバーストレディが光の粒子となって宙へ舞い上がる。

 

 二つの光は空中で交わり、巨大な光の渦を生み出した。

 

 教室中が静まり返る。

 

 誰もが、その光の中から現れる新たな英雄を見つめている。

 

 雄輝は右手を高く掲げた。

 

「風と炎が一つとなり──」

 

 光の渦が激しく輝きを増す。

 

「新たなる力を今ここに!」

 

 巨大な翼がゆっくりと広がった。

 

「融合召喚!」

 

「現れろ!」

 

「《E・HERO フレイム・ウィングマン》!!」

 

 轟音とともに、炎をまとった英雄がフィールドへ降臨する。

 

 燃え盛る翼を大きく広げたその姿に、生徒たちは一斉に息を呑んだ。

 

 

【E・HERO フレイム・ウィングマン】

 

レベル:6

 

攻撃力:2100

 

守備力:1200

 

種族:戦士族

 

属性:風

 

【効果】

 

「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」

 

このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 黒機は不敵な笑みを浮かべたまま、フレイム・ウィングマンを見つめる。

 

 ディスクに表示された数値は2100。

 

 対するショッカーは2400。

 

 勝敗は明らかだった。

 

「へっ……。」

 

 肩をすくめながら、黒機は小さく笑う。

 

「先生。」

 

「攻撃力2100じゃ、ショッカーは倒せねぇ。」

 

 観客席にも緊張が走る。

 

「300足りない……。」

 

「このままじゃ返り討ちだ。」

 

 朝比奈が不安そうに呟く。

 

 しかし。

 

 雄輝は慌てる様子もなく、一枚のカードを静かに掲げた。

 

「焦るなよ。」

 

 その一言に、黒機の眉がわずかに動く。

 

 雄輝はフィールド全体を見渡し、穏やかな口調で続けた。

 

「HEROには――」

 

 一拍置く。

 

 その場にいた全員が、雄輝の次の言葉へ耳を傾ける。

 

「HEROにふさわしい舞台がある。」

 

 カードをデュエルディスクへセットした瞬間、フィールド全体が眩い光に包まれた。

 

「フィールド魔法発動!」

 

「《摩天楼-スカイスクレイパー》!!」

 

 大地が揺れる。

 

 無数の高層ビルが次々と姿を現し、デュエルフィールドは巨大都市へと変貌した。

 

 

【摩天楼-スカイスクレイパー】

 

フィールド魔法

 

【効果】

 

自分フィールドの「E・HERO」モンスターが、自分より攻撃力の高いモンスターと戦闘を行う場合、その戦闘中のみ攻撃力は1000ポイントアップする。

 

 

「摩天楼……!」

 

 小町は思わず息を呑む。

 

 九条は静かにフィールド全体を見渡した。

 

「なるほど。」

 

「このためのフレイム・ウィングマンでしたか。」

 

 黒機は摩天楼とショッカーを見比べる。

 

「フィールド魔法……?」

 

 次の瞬間だった。

 

 

Attack Up

 

E・HERO フレイム・ウィングマン

 

ATK2100

 

    ↓

 

ATK3100

 

(《摩天楼-スカイスクレイパー》)

 

 

「なっ……!?」

 

 黒機の表情から余裕が消える。

 

「攻撃力……3100!?」

 

「ショッカーを超えた!」

 

 教室中がどよめいた。

 

 小町は思わず笑みを浮かべる。

 

「やった……!」

 

「逆転した!」

 

 雄輝は静かに右手を前へ突き出した。

 

「バトル。」

 

「フレイム・ウィングマン。」

 

「《人造人間-サイコ・ショッカー》を攻撃。」

 

 

Battle

 

E・HERO フレイム・ウィングマン

 

ATK3100

 

    VS

 

人造人間-サイコ・ショッカー

 

ATK2400

 

 

 炎の翼が大きく広がる。

 

 フレイム・ウィングマンは一気に大空へ舞い上がると、燃え盛る右足へ炎を集中させた。

 

「フレイム――」

 

 雄輝が静かに技名を告げる。

 

「シュゥゥゥト!!」

 

 轟音。

 

 燃え盛る飛び蹴りがショッカーを真正面から貫いた。

 

 ドォォォォォン!!

 

 紫色の電撃が四散し、ショッカーは爆炎の中へ消えていく。

 

 

Damage

 

黒機大河

 

LP7500

 

    ↓

 

LP6800

 

(戦闘ダメージ:700)

 

 

「まだ終わりじゃない。」

 

 雄輝は静かにフレイム・ウィングマンを見つめる。

 

「フレイム・ウィングマンの効果発動。」

 

 爆散したショッカーの残骸が炎へと変わり、巨大な火柱となって黒機を包み込む。

 

 

Effect Damage

 

人造人間-サイコ・ショッカー

 

元々の攻撃力:2400

 

 

Damage

 

黒機大河

 

LP6800

 

    ↓

 

LP4400

 

(効果ダメージ:2400)

 

 

「ぐあああああっ!!」

 

 黒機は思わず片膝をつく。

 

 歓声が教室中に響き渡った。

 

「すげぇ!!」

 

「ショッカーを倒しただけじゃない!」

 

「効果ダメージまで!」

 

 朝比奈が興奮したように叫ぶ。

 

 小町も思わず胸の前で拳を握った。

 

「これがお兄ちゃんのHERO……!」

 

 九条は静かにフレイム・ウィングマンを見上げ、小さく頷く。

 

「盤面だけではなく、ライフまで計算した逆転。」

 

「……見事です。」

 

 一方、黒機は肩で息をしながらも、ゆっくりと立ち上がった。

 

 フレイム・ウィングマンを真っ直ぐ見据え、小さく笑う。

 

(これが……。)

 

(世界で戦ってきたデュエリスト……。)

 

 初めて、その笑みに焦りが混じった。

 

 

7ターン目 黒機

 

 爆炎が晴れたフィールドに、静寂が訪れる。

 

 黒機は肩で息をしながらも、その瞳から闘志は消えていなかった。

 

(まだだ……。)

 

(まだ終わってねぇ。)

 

 ゆっくりとデッキへ右手を伸ばす。

 

「俺のターン!」

 

 勢いよくカードを引き抜く。

 

 そのカードを確認すると、小さく笑みがこぼれた。

 

「まだ勝負は終わらせねぇ。」

 

 迷うことなくカードを掲げる。

 

「通常魔法!」

 

「《天使の施し》発動!」

 

 

【天使の施し】

 

通常魔法

 

【効果】

 

自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後、手札を2枚選んで墓地へ捨てる。

 

 

 光の天使が舞い降りる。

 

 黒機は三枚のカードを引き、静かに手札を見つめた。

 

(これなら……。)

 

 迷いはない。

 

 二枚のカードを墓地へ送り、次の一枚を高く掲げる。

 

「通常魔法!」

 

「《モンスター転生》!」

 

 

【モンスター転生】

 

通常魔法

 

【効果】

 

手札を1枚捨てて発動する。

 

自分の墓地のモンスター1体を手札に加える。

 

 

 黒機は手札を一枚墓地へ送る。

 

「墓地の《人造人間-サイコ・ショッカー》を手札に加える!」

 

 ショッカーのカードが黒機の手札へ戻る。

 

「ショッカーが戻った!」

 

 朝比奈が驚きの声を上げる。

 

 小町も目を丸くする。

 

「また出す気なの!?」

 

 九条は静かに頷いた。

 

「墓地回収……。」

 

「まだ切り札を諦めていません。」

 

 黒機はレッド・ガジェットへ視線を向ける。

 

「レッド・ガジェットをリリース!」

 

 赤い機械兵が光へと変わる。

 

「もう一度来い!!」

 

「《人造人間-サイコ・ショッカー》!!」

 

 紫色の雷鳴がフィールドへ轟く。

 

 巨大な人造人間が、再び大地へ降り立った。

 

 教室中がどよめく。

 

「またショッカー!?」

 

「二体目じゃない!」

 

「さっき倒したばかりなのに!」

 

 黒機はショッカーを指差し、不敵に笑う。

 

「先生。」

 

「これが俺の執念だ。」

 

 その言葉を残すと、次のカードを静かに掲げる。

 

「通常魔法。」

 

「《サイクロン》発動。」

 

 

【サイクロン】

 

速攻魔法

 

【効果】

 

フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。

 

そのカードを破壊する。

 

 

 激しい旋風がフィールドを駆け抜ける。

 

 黒機は一直線に雄輝のフィールドを指差した。

 

「《摩天楼-スカイスクレイパー》を破壊する!!」

 

 轟音。

 

 高層ビル群が崩れ落ち、フィールドは元の姿へ戻っていく。

 

 フレイム・ウィングマンの足元から、力強い光が静かに消えた。

 

 黒機はディスクへ表示された数値を見つめ、静かに笑う。

 

 

Attack Down

 

E・HERO フレイム・ウィングマン

 

ATK3100

 

    ↓

 

ATK2100

 

(《摩天楼-スカイスクレイパー》消滅)

 

 

「これで先生の切り札は攻撃力2100。」

 

 ショッカーへ視線を移す。

 

 

Field

 

E・HERO フレイム・ウィングマン

 

ATK2100

 

    VS

 

人造人間-サイコ・ショッカー

 

ATK2400

 

 

 ショッカーが雄叫びを上げる。

 

 両腕に紫色の電流が走り、その巨体が一気にフレイム・ウィングマンとの間合いを詰めた。

 

「サイコ・ナックル!!」

 

 鋼鉄の拳が唸りを上げる。

 

 対するフレイム・ウィングマンも炎の翼を大きく広げ、迎え撃つ。

 

 互いの拳が激突した瞬間――

 

 ドォォォォン!!

 

 凄まじい衝撃波がフィールド全体を揺らした。

 

 しかし、その衝撃を押し切ったのはショッカーだった。

 

 鋼鉄の拳が炎の英雄を貫く。

 

 フレイム・ウィングマンは静かに光へと変わり、フィールドから姿を消した。

 

 

Damage

 

神崎雄輝

 

LP2050

 

    ↓

 

LP1750

 

(戦闘ダメージ:300)

 

 

「先生のフレイム・ウィングマンが……!」

 

 朝比奈が思わず声を漏らす。

 

 小町も息を呑んだ。

 

(倒された……。)

 

(でも……。)

 

 雄輝の表情を見る。

 

 やはり、その表情は変わらない。

 

 黒機はゆっくりと息を吐いた。

 

(倒した……。)

 

(やっと追いついた。)

 

 ショッカーの後ろ姿を見つめながら、小さく笑う。

 

「先生。」

 

 一歩前へ踏み出す。

 

「これで、あんたの切り札はいなくなった。」

 

 その声には、先ほどまでの余裕ではなく、自分を奮い立たせるような力強さがあった。

 

 雄輝は静かにショッカーを見つめる。

 

 何も語らない。

 

 その沈黙が、黒機には不気味だった。

 

(……何だ。)

 

(また、その顔か。)

 

(まだ終わってないって言うのか……。)

 

 観客席も静まり返る。

 

 誰もが、次の一枚を待っていた。

 

 黒機は右手をゆっくりと下ろす。

 

「ターンエンド。」

 

 フィールドには再び、人造人間-サイコ・ショッカーだけが立っている。

 

 その圧倒的な存在感が、フィールドを支配していた。

 

 そして――

 

 雄輝は静かにデッキへ右手を伸ばす。

 

「……俺のターン。」

 

 その一言に、九条凛の瞳がわずかに細まる。

 

 誰よりも冷静だった彼女が、初めて雄輝の右手へ視線を向けた。

 

「ここからですね。」

 

 その呟きは、歓声もざわめきもない静かなフィールドへ、そっと溶けていった。⸻

 

8ターン目 神崎雄輝

 

 静寂に包まれたフィールド。

 

 雄輝はゆっくりとデッキへ右手を伸ばす。

 

「……俺のターン。」

 

 一枚のカードを引き抜く。

 

 そのまま手札へ加えると、間髪入れず一枚のカードを掲げた。

 

「通常魔法。」

 

「《死者蘇生》発動。」

 

 

【死者蘇生】

 

通常魔法

 

【効果】

 

自分または相手の墓地のモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 墓地が眩い光に包まれる。

 

 炎が渦を巻き、一人の英雄が再び姿を現した。

 

「甦れ。」

 

「《E・HERO フレイム・ウィングマン》。」

 

 炎の翼を大きく広げ、英雄が再びフィールドへ舞い降りる。

 

「またフレイム・ウィングマン!?」

 

「先生のエースが復活した!」

 

 教室中がどよめく。

 

 黒機も思わず表情を曇らせた。

 

(また来た……!)

 

(だが。)

 

(攻撃力は2100。)

 

(ショッカーには届かねぇ。)

 

 その時だった。

 

 雄輝は最後の一枚を静かに掲げる。

 

「速攻魔法。」

 

「《スカイスクレイパー・シュート》発動。」

 

 

【スカイスクレイパー・シュート】

 

速攻魔法

 

【効果】

 

自分フィールドの「E・HERO フレイム・ウィングマン」1体を対象として発動できる。

 

対象モンスターより攻撃力の高い相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

 九条凛が初めて目を見開いた。

 

「……そういうことでしたか。」

 

 小町が思わず九条を見る。

 

「凛ちゃん?」

 

 九条は静かにショッカーへ視線を向けた。

 

「先生は最初から、この一枚まで見据えてデュエルを組み立てていたんですね。」

 

 黒機の表情が凍り付く。

 

「まさか……!」

 

 フレイム・ウィングマンが大空へ舞い上がる。

 

 無数の高層ビルを駆け抜けるように急上昇し、天空から急降下した。

 

「スカイスクレイパー――」

 

 雄輝が静かに右手を振り下ろす。

 

「シュート!!」

 

 轟音。

 

 炎をまとった飛び蹴りがショッカーを貫く。

 

 紫色の雷撃は一瞬で砕け散り、巨大な人造人間は光となって消滅した。

 

 

Effect Damage

 

人造人間-サイコ・ショッカー

 

元々の攻撃力:2400

 

 

Damage

 

黒機大河

 

LP4400

 

    ↓

 

LP2000

 

(効果ダメージ:2400)

 

 

 黒機は膝をつく。

 

「ぐっ……!」

 

 しかし、雄輝は攻撃の手を止めない。

 

 静かに右手を前へ突き出す。

 

「これで終わりだ。」

 

 フレイム・ウィングマンが大きく翼を広げる。

 

「バトル。」

 

「フレイム・ウィングマン。」

 

「ダイレクトアタック。」

 

 

Battle

 

E・HERO フレイム・ウィングマン

 

ATK2100

 

    VS

 

黒機大河

 

ダイレクトアタック

 

 

 炎の翼が大きく羽ばたく。

 

 一直線に放たれた飛び蹴りが、黒機を正面から貫いた。

 

 ドォォォォォン!!

 

 

Damage

 

黒機大河

 

LP2000

 

    ↓

 

LP0

 

(戦闘ダメージ:2100)

 

 

 勝敗を告げる電子音が、フィールドへ高らかに響き渡る。

 

WINNER

 

神崎雄輝

 

 

 一瞬の静寂。

 

 そして次の瞬間――

 

「うおおおおおおっ!!」

 

 観戦していた生徒たちの歓声がデュエルフィールドを包み込んだ。

 

「先生の勝ちだ!」

 

「すげぇ!」

 

「HEROかっこよすぎる!」

 

 小町は思わず満面の笑みを浮かべる。

 

(やっぱり……。)

 

(お兄ちゃんは最高だ。)

 

 黒機はしばらくその場に立ち尽くしていた。

 

 やがて静かに笑い、小さく息を吐く。

 

「……完敗だ。」

 

 雄輝はデュエルディスクを外し、黒機の前まで歩み寄る。

 

 そして、静かに右手を差し出した。

 

「いいデュエルだった。」

 

 黒機はその手を見つめ、照れくさそうに笑う。

 

「先生。」

 

 一度深く頭を下げる。

 

「俺、もっと強くなります。」

 

「次は……。」

 

 顔を上げ、まっすぐ雄輝を見据える。

 

「次は必ず、勝ちます。」

 

 雄輝は穏やかに微笑み、その手をしっかりと握り返した。

 

「ああ。」

 

「その日を楽しみにしている。」

 

 そのやり取りを見つめながら、九条凛は静かに目を閉じる。

 

(世界で戦ってきたデュエリスト……。)

 

(強いだけじゃない。)

 

(相手を導き、成長させるデュエル。)

 

(これが……先生。)

 

 夕日に染まるデュエルフィールド。

 

 新任教師、神崎雄輝の最初の一戦は、一人の生徒の心に、そして三年A組全員の記憶に深く刻まれた。

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