遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity 作:NONAME0195
夕焼けが街をオレンジ色に染める。
デュエルアカデミアでの初日を終えた雄輝は、静かに玄関の扉を開けた。
「ただいま。」
その瞬間――
「お兄ちゃん!!」
ドタドタドタッ!!
廊下の奥から、勢いよく小町が飛び出してきた。
「た、ただいま?」
雄輝が言い終える前に、小町は目の前まで詰め寄る。
「ただいまじゃなーーーい!!」
ビシィッ!!
勢いよく指を突き付けた。
「なんで先生になるなんて黙ってたの!?」
「いや……。」
「いやじゃない!!」
小町は両手をぶんぶん振り回す。
「しかもさ!!」
「先週までアメリカにいたじゃん!!」
「帰ってきたばっかりじゃん!!」
「なんでいきなりアカデミアの先生やってんのさ!!」
「意味分かんないよーーー!!」
雄輝は苦笑いを浮かべながらソファへ腰を下ろす。
「まあ落ち着け。」
「落ち着けないよ!!」
「私、今日一日ずっと混乱してたんだから!!」
「朝は普通に『いってきます』って言ったよね!?」
「なのに学校行ったら教壇にお兄ちゃんが立ってるんだよ!?」
「心臓止まるかと思ったんだから!!」
雄輝は頭を掻いた。
「……悪かった。」
「でも。」
「言ったら面白くないだろ。」
一瞬の静寂。
小町はぷるぷる震え始める。
「…………。」
「その理由で黙ってたの?」
「まあ。」
「うがーーーーーーー!!!」
クッションを抱えてソファを叩く。
「サプライズにも限度があるよぉ!!」
雄輝は笑いを堪えながら、お茶を一口飲んだ。
小町は腕を組み、じーっと睨み続ける。
「……いいから説明して。」
「なんで先生になったの。」
雄輝は観念したように息を吐いた。
「……分かった。」
「話せば長くなるぞ。」
「いい。」
「聞く。」
雄輝は静かに目を閉じる。
「帰国した、その日のことだ。」
⸻
――数日前。
アメリカから帰国したばかりの雄輝は、一通の呼び出しを受けていた。
向かった先は、海馬コーポレーション本社。
街を見下ろす最上階の執務室。
大きな窓の前に、一人の男が立っていた。
「帰ったか。」
その声だけで分かる。
海馬瀬人。
デュエルシティを統括する海馬コーポレーション社長。
雄輝は肩をすくめる。
「帰ってきたその日に呼び出しですか。」
海馬は振り返ることなく口を開く。
「お前ほどのデュエリストを遊ばせておくのは惜しい。」
「デュエルアカデミアに席を用意した。」
「教師として、生徒を育てろ。」
雄輝は固まった。
「…………はい?」
数秒の沈黙。
「いやいやいや!」
「この歳で先生ですか!?」
「教育免許なんて持ってませんよ!?」
海馬は鼻で笑う。
「教育免許?」
「そんなもの、どうとでもなる。」
「それよりも。」
ようやく振り返り、雄輝を真っ直ぐ見据えた。
「世界で戦い、数々のデュエリストと戦ってきた。」
「その経験こそ、生徒たちに必要なものだ。」
雄輝は苦笑する。
「いやいや……。」
「暴論すぎません?」
海馬は表情一つ変えない。
「そうか。」
「なら断ればいい。」
「……え?」
雄輝が少し安堵した、その時だった。
海馬は再び窓の外へ視線を向ける。
「もっとも。」
「この街の実権を握っているのは、この俺だ。」
「その意味くらい、お前なら理解できるだろう。」
雄輝は額を押さえた。
「それもう脅しじゃねぇかァァァァ!!」
海馬はフッと口元だけを緩める。
「好きに受け取れ。」
「返事は明日までだ。」
雄輝は天井を仰ぐ。
「拒否権、ないじゃん……。」
⸻
場面は現在へ戻る。
小町はぽかんと口を開けていた。
「…………。」
「海馬社長らしいね。」
雄輝は深いため息をつく。
「俺もそう思う。」
「で、気付いたら教師になってた。」
小町はしばらく黙っていたが――
突然吹き出した。
「ぷっ……。」
「ふふっ。」
「アハハハハハ!!」
「お兄ちゃん、押し負けたんだ!」
「笑うな。」
「だって!」
「世界で戦ってきたデュエリストなのに、海馬社長には勝てなかったんだもん!」
雄輝は肩をすくめる。
「デュエルならともかく。」
「口では勝てん。」
兄妹の笑い声が、夕暮れの神崎家に響き渡った