遊☆戯☆王ーデュエルモンスターズー BattleCity 作:NONAME0195
夕焼けが街をオレンジに染める
俺は疲れた身体を引きずりながら、帰り道を歩く
あーーー、疲れたあ
世には、働いたら負けとか言ってる奴がいるが……
いや、その通りですね!!
俺も本日、実感しました!!
なんせ、俺はずっとプロで戦ってたわけで
まともな労働なんてしてこなかった人間……
……ダメ人間みたく聞こえるな、これじゃ
まあ、実際
今日は教師として働いたわけなんですがね
……教師って、考えてた以上に仕事多くね?
俺は授業以外は
エアコンの効いてる職員室でふんぞり返ってるだけかと思ってた
(全国の教師の皆様すいません!!)
とか何とか考えていると
段々と自宅が見えてきた
おー、我が愛しきスイートホーム!
素晴らしき我が家!
ルンルン気分で自宅の玄関に手をかける
「ただい………ま?」
そこには――
背後からゴゴゴゴゴというオーラが見えそうな小町がいた
俺は無言で玄関をゆっくり閉めた
……よし、逃げるか
回れ右をし、逃走しようとするが……
「お・兄・ちゃーん……おかえりー」
と、恐ろしい速さで玄関を開け
俺の首根っこを捕まえ――
っておい!
はやいな!
「こ、小町……」
しまったあ!
そういや俺、教師になったこと黙ってたんだった!!
「さて、お兄ちゃん……詳しく話をしようねぇ」
こわいこわいこわい!
笑顔なのが余計に怖い!
絶対、目の奥笑ってないやつ!!
◇◇◇
「それで? お兄ちゃん……
なーんで、私に黙ってたのかな?」
はい、俺は現在
我が家のリビングにて
足と腕を組んでソファに鎮座する女王――小町の前に
正座で座ってます
……どうしてこうなった
いや、理由はわかってる
小町の反応が面白そうだなとか考えて
イタズラ心を爆発させた結果だ
だってー
絶対面白い反応するじゃんよー
見たかったんだもん
そんなことを考えながら
俺が頭の中で現実逃避していると……
バン!
バン!
裁判長よろしく
小町様がソファを叩く
「お兄ちゃん?」
ヒェッ……やばい!
何とか言い訳を……!
「いや……ちょっと忘れてたというか……」
「お兄ちゃん……目が合った時、少し笑ってたよね?」
のおおお!
ダメだ!
これバレとる!!
反応面白がったのバレとる!
こうなるの分かってたろって?
分かっていてもやりたかったんじゃ!!
イタズラするなら命をかけろ!
わかったか、諸君!
……俺は誰に言ってんだ?
「はあ……
どうせ、私をびっくりさせて面白いリアクションが見たかっただけでしょ?」
「うん、そう……ぶべらっ!?」
ケロッと答えた俺に
0.5秒でクッションが顔面に飛んできた
我が妹ながら、素晴らしい反応速度……
がくり……
「こんの! バカ兄!
毎度毎度、やることを派手すぎる!!」
全く、ほんとにそういうとこは昔から成長しないんだから!
……と、ぶつぶつ言ってる小町を横目に俺は思った
……今回はそこまで派手じゃなくない?
ド派手なリアクションしたのは小町の方であって……
「それで?」
うひぃっ!
声に出てたか!?
「なんで、先生やることになったのさ?」
あーよかった
声に出してなかったわ
さて、俺が教師をやることになった理由か
うーーむ……
「話すと長くなるんだけど……」
ちょっとめんどくせぇなぁ、というニュアンスを含めると
「いいから話す!!」
あっ、はーい
時間は一カ月前
俺が帰国した日に遡る
◇◇◇
アメリカから帰国したばかりの俺は、一通の呼び出しを受けていた
向かった先は、海馬コーポレーション本社
街を見下ろす最上階の執務室
大きな窓の前に、一人の男が立っていた
「来たか」
その声だけで分かる
海馬瀬人
デュエルシティを統括する
海馬コーポレーション社長だ
つーーか
「なーーんで、俺が今日帰国すること知ってるんですかね?」
俺は思わず眉をひそめる
「家族にすら内緒で電撃帰国してるんですが?」
すると海馬社長は――
「ふん」
鼻で笑った
「貴様の行動など、把握していて当然だ」
「いや怖ぇよ!」
思わずツッコんでしまった
なんなの、この人
俺のこと好きなの?
……いや、待て
悪いが男はお断りだよ!!
……って、なんで俺はこんなこと考えてんだ
んじゃ?
彼女はいるのかって?
やかましいわ!
「脳内で一人芝居しているところ悪いが
貴様にやってもらうことがある」
なんで分かったんだよ
俺が一人芝居やってるの
やっぱ怖いよ、この人
いや、怖い
ん?
やってもらうこと?
「本日帰国したばかりで疲れてるので、後日でお願いします」
よし
そのまま忘れてたってことにしてバックれる!
「貴様には次の新学期から
デュエルアカデミアで教師をしてもらう」
うわっ、この人
俺の発言をガン無視しやがった!!
……ちょっと待て!!
教師だあぁ!?
「いやいやいや!
俺には無理です!!」
「貴様の意見など最初から聞いていない
やれ」
「横暴だ!!
そもそも教育免許持ってねぇ!!」
「アカデミアの理事長はこの俺だ
特例を出そう」
「職権濫用じゃねぇか!!」
これだから、権力者はあ!!
俺は絶対に権力に屈しない!
叛逆の精神を忘れるべからず!!
すると海馬社長は、そんな俺を鼻で笑い――
「ふん」
一瞬、間を置いてから口を開いた
「真面目な話、貴様が世界で戦ってきた経験は、今の生徒達に必要なのだ」
……いきなり真面目になると弱いんだが……
さっきまで権力で押し切ろうとしてた人とは思えないくらい、真っ当なことを言いやがる
俺は思わず黙り込んだ
……確かに
世界中のデュエリストと戦ってきた経験
それを誰かに伝えるというのは、悪い話じゃない
むしろ――
「それに……」
海馬社長が、再び口を開く
「?」
俺が顔を上げると
海馬社長は窓の外へ視線を向けた
「貴様の住んでいる、この街の実権を握っているのは俺だ」
「…………」
……なるほど
結局そこに戻ってくるのね
俺は無言のまま、拳を握りしめる
そして――
溜めに溜めて……
「結局、権力で脅すんじゃねぇかああああ!!!」
俺の叫び声が、海馬コーポレーションの最上階に響き渡った
「ちっくしょおおおお!!!」
◇◇◇
「それで、先生になったの?」
ここまでの成り行きを聞いた小町は
額に手を当て、悩ましそうな顔をしていた
仕方ねぇだろ!
そもそも、あの魔王――海馬社長の呼び出しに応じた時点で負けだったんだ!
俺だって、まさか教師をやることになるなんて思ってなかったんだから
「まあ、先生になった理由は分かったよ」
小町はため息を吐きながら頷く
「そういう訳だ……俺は……」
俺は一度、間を置く
そして真顔になって――
「長い物には巻かれろ、という意味が分かった」
「お兄ちゃん、かっこ悪い」
「なんでだよ!」
こうして――
神崎家の夜は更けていく
「いや、なんでだよ!」