ようこそCODEエージェントが住まう実力主義の学校へ 作:不知火新夜
11話
「お前か、櫛田の心の奥底から生み出されたナイトメアは」
「だったら何だ!こんな思い通りにならない世の中も、邪魔立てする貴様も、全て木っ端微塵にしてくれる!」
ある日の夜遅く、学校内のとある路上で清隆は異形――ナイトメアと対峙していた。
起爆スイッチを思わせる機構を有した両手首と赤と青のケーブルが複雑に絡み合った胴体が特徴的な上半身、黒地に青系統のインクが飛び散った色合いの下半身という体躯、辛うじて人っぽいシルエットだが木端微塵と言う物騒な言葉に違わぬ『爆弾』を思わせる姿のナイトメア――ボムナイトメアは、何かしらの破壊活動を行おうとした所に現れた清隆によって妨害を受け、激高していた。
対する清隆は、黒い車体に白地と赤いラインのカウルが全体に取り付けられたバイク――コードゼロイダーに跨り、今しがたボムナイトメアの出鼻を挫くべく発砲した、拳銃と言えなくもない形状のカプセムを装填する穴が設けられた武器――ブレイカムゼッツァーを向けていた。
ナイトメアって何だとか何で清隆はバイクに乗っているんだとか色々とツッコみ所はあるだろうが、少なくともバイクに乗っている事についてはこの学校においておかしな光景とは言えない。
某夢の国よりも一回り大きい敷地面積であるこの学校、場所によっては数十分も歩いて行かなければ辿り着けない為か、珍しいケースとはいえ敷地内でバイクを運転している学校関係者はいる、原付や普通二輪等しか免許取得出来ないとはいえ教習所もあれば、それに合わせたラインナップしかないもののバイクショップもある。
とはいえ清隆の誕生日は10月20日で、この学校には現役で入学している為に現時点ではまだ15歳、免許を取得出来る年齢ではない為、明らかな無免許運転であるのだが。
――色々と言葉を並べはしたが早い話、この出来事は清隆の夢の中の話である。
「
『STREAM!Meztzamelo!Meztzamelo!』
そんな夢の中の清隆は、ボムナイトメアによる次なる行動への警戒として腰だめで発砲したブレイカムゼッツァーの構えを維持しつつ、いつの間にか右手に握っていた青色のカプセム――ストリームカプセムをゼッツドライバーに装填、トリガムを押し込んだ。
それと共に流れ出す待機音、だったがその音声はフィジカムウイング等に変身した時とは異なりテクノポップ調とした物、それを聞いた清隆が取ったポーズも以前変身した時とは違い、空いた右掌を前へ突き出し、ダイヤルを回すかの様に捻りを入れた直後に左肩へと引き戻し、
「変身!」
『Good Morning Rider!ZeZeZeZeZeeeeztz!STREAM!』
手の甲で払う様にロータムウインドーを回転させた。
それと共に現れる、暴風雨の中を佇む青い眼の悪魔のアニメーションと共にゼッツへと変貌していく清隆、だったのだが矢張りと言うべきか、その姿形は以前と異なっていた。
胴体にはフィジカムコンバーターが装着される代わりに、大気の流れを思わせる3本の青いライン――テクノロムコンバーターが刻まれ、ゼッツゲイムラインは青色に染まり、両手両足は青色の装甲――ストリーレムアームとストリーレムレッグが装着され、頭部のマスクは眼の部分が青く染まった物――テクノロムマスクと化した。
そんな新たなる姿――テクノロムストリームへと変貌したゼッツは、左手のブレイカムゼッツァーから青色のエネルギー弾らしき物を連射しつつコードゼロイダーから飛び降り、ボムナイトメアへと接近する。
そんなゼッツの行動に対してボムナイトメアは、エネルギー弾を弾き飛ばしたり避けたりしてダメージを抑えつつも、接近して来る事に対しては望む所だと迎え撃つ構えを見せていた。
「馬鹿め、遠くからちまちま叩き込んでれば良い物を!飛んで火にいる夏の虫とは貴様の事だ!」
「ふっ!やぁっ!」
こうして互いの打撃が届く間合いで始まった戦闘、ボムナイトメアの煽りにも動じないゼッツは、武器を持っていない右腕及び両足による打撃、至近距離からのブレイカムゼッツァーによる射撃、だけでなくブレイカムゼッツァーの銃身上部にサメのヒレの如く設けられた銃剣――ブレイカムブレードによる斬撃と言った攻撃を、ガンカタを思わせる流麗な動作で叩き込んでいく。
対するボムナイトメアもゼッツの多種多様な攻撃に対処しつつ反撃を試みる、ゼッツの右ストレートが今にも直撃するというタイミングで逆にダメージを与えようと、己の身を構成する爆弾を爆破させた、が、
「ば、馬鹿な!俺の身体は爆弾その物!俺の身に攻撃をして傷つくのは貴様の筈!」
「爆弾が物を破壊するのは、爆発の際に発する衝撃と熱で出来た爆風による物。その爆風さえ操ってしまえば、お前は何の脅威も無い」
「ふざけるなぁぁぁぁ!」
その瞬間にストリーレムアームから吹き上がる暴風、それがボムナイトメアの自爆によって発生した爆風を取り込み、逆にボムナイトメア自身の身体を傷付けて行く。
まさかの事態に動揺を隠せないボムナイトメアに能力の優位性――ストリームカプセムの力である『大気操作』によって爆発による攻撃は通じない事を突きつけるゼッツだが、その言葉が受け入れられないボムナイトメアは逆上、更なる爆発を叩き込もうとする。
然しながらゼッツは的確に対処、爆発の瞬間に風を発して爆風をコントロールし、ボムナイトメアの身に当たる様操作、やがてダメージが蓄積したのか立っているのもやっとな状態になった。
それを確認したゼッツは、止めを刺すと言った様子でトリガムを3度押し込んでロータムウインドーを回転、ストリームカプセムの力を限界まで引き出した。
「ふっ!」
「ぐぅっ!」
7
まずは暴風を纏った両腕をクロスさせボムナイトメアの顔面に、其々の手の甲で引っ叩く要領で振り抜き、
「はっ!」
「がぁっ!」
77
その攻撃で態勢を崩した事で正面へ向いた側頭部へ右ストレートパンチを打ち込み、
「せいっ!」
「ぐぁぁぁぁ!」
『STREAM!Vanish!』
777
最後に左ボディブローでその身を空中へと打ち上げた。
その一撃を食らって己の身体が耐えきれなくなったのか、或いはせめて一矢報いてやるといった思惑か、その全身が爆発するぞと言わんばかりに赤白く輝くも、
ZZZ
「これが灘神影流の禁じ手、呪怨…なんてな」
「ば、馬鹿な、うわぁぁぁぁぁ!」
『Ze!Ze!Zeeeeztz!』
その身は既に暴風の檻の中、その爆発はゼッツや周囲に被害を与える事は叶わず、寧ろ自分自身を荒らし回り、焼き焦がすだけで、やがてその身は消失、したかと思ったら黒い蝶の様な姿と化し、何処かへと飛び去った。
「
そんなボムナイトメアが変貌した黒い蝶の事は気に留める事無く、ゼッツはそう宣言した。
――――――――――――
こうして高度育成高等学校の生徒として1日を過ごし、眠っている時は日常の裏で暗躍するエージェント『ゼッツ』としてナイトメアと戦ったりスパイの様な任務に臨んだりといった夢を見るという日常を過ごしていた清隆だったのだが、月が7月に変わったその日の朝、異変が起こった。
「pptが変化していない?今日は振込日の筈だが…?」
毎月初日に、その時点でのcptに応じた額が振り込まれる筈のppt、ところがその所持額が昨晩から変化していない、これ即ち、振り込みが行われていないという事になる。
まさかの事態に困惑の色を隠せない清隆だったものの、茶柱から何かしら説明はあるだろうと深く考えずに教室へ向かう、其処はやはりと言うべきかpptの振り込みが無かった件で様々な反応があった。
cptが0になったから振り込まれなくなったんじゃないかと考え、その原因となる事をやらかしそうな春樹や寛治を睨む者、それに対して身に覚えが無いと言わんばかりに睨み返す2人、或いは何か学校側の機材トラブルで振り込みが遅れたとかじゃないかと考える者と反応は分かれたが、いずれも原因を決めつけて無用に騒ぎ立ててはcptをマイナスされかねないと、原因は茶柱が説明してくれるだろうと大人しく待っていた。
「揃っているな。ではこれから朝のホームルームを、お前達が気にしているであろう件についての説明を始めよう」
教室に入ってくるなりそう切り出した茶柱、本件を皆が気にしているのは想定していたのか真っ先に説明をしてくれる様だったので、誰も質問等で遮る者はいなかった。
「最初に言って置くと、お前達が問題を起こしたからcptが0まで減った結果として、支給pptが0になったという訳では無い」
そう言いながら貼り出された各クラスの現時点でのcptは下記の通りとなる。
Aクラス 1004cpt
Bクラス 845cpt
Cクラス 663cpt
Dクラス 492cpt
全クラスが赤点無しで中間テストを乗り切った事で100cptが上乗せされた後、日々の素行による減点も加味された結果、清隆達Bクラスは5月開始時点よりも95cpt増加となり、Aクラスとの差は159と少しながら近づき、Cクラスとは182と倍近く、Dとは350以上も突き放す等、順調に上位を目指せる状況になった。
一歩一歩ではあるが着実に上位との差を詰めている状況に喜びを隠せない生徒達だが、では何故振り込みがされなかったのかは分からないまま、茶柱も勿体ぶる積りは無いのかその訳を口にした。
「現在、トラブルの発生によってpptの支給が遅れている。トラブルが解決するまでは待って欲しい」
「えーマジっすかぁ?学校の不備なんだし、何とかオマケ出来ないんですか?」
「池。そう言うな、問題が解決しない限り、私ではどうする事も出来ん。トラブルが解決次第ポイントは支給される筈だ。トラブルが解決次第、な」
何かしらのトラブルによって支給遅れが発生している、振り込みが無かった件の原因を聞いて安堵する者もいた一方で、トラブルが何なのかは分からないが支給遅れに対する賠償は無いのかと訴える寛治だったもののそれが受け入れられる様子は無い。
寛治のクレームを受け流しつつ、何か意味深な言葉を呟きながら茶柱は教室を去って行った。
高度育成高等学校での日常に忍び寄る悪意は、やがて事件という形で学校に激震を与える事となる騒動は、こうして幕を開けたのだった。