ようこそCODEエージェントが住まう実力主義の学校へ 作:不知火新夜
Dクラスの生徒達による罠に嵌められたCクラスの颯を救けて欲しいという帆波から依頼を受けた清隆は翌日から行動していた、のだが、その進捗は余り良い物とは言えなかった。
まずは自クラスでの情報収集だとして、依頼を受けた翌朝のホームルームで茶柱からppt支給が遅れたトラブルの詳細、DクラスとCクラスとの間での暴力が絡んだ揉め事についてと、それが解決したのを受けてpptの支給を行う旨の説明があった後、帆波からの依頼については伏せつつこの件で何かしら手掛かりとなる情報が無いかと提供を呼びかけるも、所詮は別クラス同士間で起こったトラブル、対岸の火事に過ぎないという認識を持つ者が多かったのか*1、あまり良い反応は得られなかった。
その中でも良識的な洋介や、清隆に逆らったら裏の顔をばら撒かれてしまう事からその意に従うしかない桔梗といったBクラスの中心人物が真っ先に協力を申し出た為、少なくない者達が情報収集に手を貸してくれる事となったのだが、元々Bクラスとは関わりが無い上、監視カメラが置かれていない特別棟で起こった事だ、得られる情報等たかが知れているのは容易に想像がつく。
更に言うと帆波は生徒会役員という立場上、今回の審議には颯の弁護側、Cクラス生という立場で参加出来なくなってしまい、当日は当事者である颯と弁護役を担う事となった清隆の他に、Cクラスの生徒で、帆波の参謀的な存在である
まさにCクラス及び弁護人の清隆にとって圧倒的不利な状況、にも拘わらず審議当日、会場である生徒会室の割り当てられたエリアにいち早く着席していた、訴えられた側である颯や、弁護を担当する隆二と清隆に焦った様子は微塵も感じられない、それどころか勝利を確信していると言わんばかりの自信に満ちた表情でDクラス側の到着を、審議の開始を待っていた。
そんな自信満々な様にCクラス担任として同席していた星之宮や、開始予定時刻の少し前に入室した
「おや、この規模の審議に生徒会長である貴方が席を連ねているとは」
審議の進行役、裁判官的な立場として参加していた生徒会役員の中に、生徒会長である学の姿があったからだ。
こういった生徒同士のトラブルでは、生徒会が中立の立場で審議を行うのが規定ではあるのだが、それでも審議の場で進行役となるのは役職が無いか、役職付きだとしても書記等、其処まで大きい権限を有していない役員が殆どで、学を頂点とした現生徒会でも、今回も進行役として席に着く3年Aクラスの生徒で、生徒会書記である
尤もそれに対する学の答えは「偶々今日顔出ししようと思っただけ」との事で、疑問はお流れとなった。
「では、全員揃いましたので。これより、先月末に起こった暴力事件について、生徒会及び事件の関係者、担任の先生を交え、審議を執り行いたいと思います。進行は私、生徒会書記、橘が務めます」
ともあれ今回の審議を行う上で参加すべき者達は揃った為に茜は開始を宣言、まず審議の前提となる当日の状況について改めて颯及びDクラスの面々に質問があり、颯が清隆へ伝えていたのと同じ内容を説明するも、Dクラス側は「逆です。自分達が呼び出され、Cクラスへ度々注意していた件を怒鳴られた挙句殴られたんです」と、今回の件どころかCクラスへの嫌がらせの事実すらも真っ向から否定する説明をした。
颯からしてみれば嘘に嘘を重ねたDクラス側の主張に怒りが湧きあがるも、
「今のDクラス側の主張に異議あり」
「何でしょう?」
「先程提出致しました動画ファイルの、2番及び3番の開示を求めます」
「ゑ?」
「分かりました、開示を認めます。一之瀬さん、動画ファイルの再生を」
Dクラス側が主張を終わらせた直後にそう言いながら挙手した清隆の、自分の無実を信じて弁護を引き受けてくれた清隆の整然としたやり取りで溜飲を下げた。
一方のDクラス側は、清隆が口にした『動画ファイル』という言葉に、監視カメラの設置されていない筈の特別棟で起こった事件で発生する訳の無い動画ファイルが提出されていたという事実が理解できなかったのか、啞然としていたが、進行役として事前にその存在を知っていた茜及び彼女の補佐役として同席していた帆波はそれを尻目に、動画再生の準備を進めた。
「なっ!?」
「今しがた再生されていた動画の通り、Dクラス側が嘘をついています。音声が入っていないので口論の内容までは分かりませんが、Dクラスの生徒から特別棟の一室へと呼び出された柴田君が詰め寄られました。それで柴田君が言い返した内容が気に食わなかったのか石崎君が殴りかかり、何とか避けた柴田君は反撃する事無くその場を退出しました。次の動画にもありますが、その後同じ部屋に入って来たDクラスの龍園君達2人が何を咎めたのかは分かりませんが石崎君達を容赦なく殴っており、その直前まで傷らしい傷は負っておりません。つまりDクラス側より提出された診断書、その根拠となる怪我は自作自演による物、それを理由とした今回の訴えはCクラスを壊滅に追い込まんが為にDクラスが組織的に仕掛けた冤罪です」
程無く、設置されていたモニターに再生された動画、其処にはこの場にいるDクラスの生徒全員が特別棟の一室で待ち構え、其処に入って来た颯に言いがかりをつけて口論となり、やがて颯に殴りかかり、避けた彼が逃げる様に退出した光景が映し出され、次に再生された動画には、其処から数分も経つ事無く入室した2人組、ガラの悪いホストと言った風貌の男子――龍園翔とアメリカ系黒人の血筋を引いていると言わんばかりの体躯を有した男子――
動画を撮影するのに使用された機材にマイクが付いていなかったのか或いは録音機能が使えなかったのか、声こそ聞こえなかったもののその映し出された一部始終は颯の言っていることが真実で、Dクラスの面々が嘘をついた挙句、診断書を作ってまで暴行という罪を捏造していた事を証明するには十分すぎた。
監視カメラが無いが故に此方のでっち上げの証拠が残らない特別棟を選んだのに、まさか自分達の行動を一部始終撮られていたとは思ってもいなかったのか、動揺の声を上げるDクラス側、そんな彼らにもう好き勝手はさせないぞと言わんばかりに清隆は動画の内容を元に事実を突きつけていく。
クラスの生徒を守る立場である坂上も、此処まで明確な証拠を突きつけられてしまってはどうしようもないと言わんばかりに、冷や汗を流す事しか出来ず、
「では、他に異議の申し立てがありませんので、審議の結論を言い渡します。Dクラスの石崎君達4人による他クラスの生徒への脅迫と暴力行為並びに、虚偽の申告とそれに伴う不正な書類の提出を、龍園君と山田君による事件の首謀並びに、虚偽事実の捏造とそれに伴う傷害行為を認定します。本件に対し、まずDクラスの罰則としてcptから1人につき50、合計300減点とし、減点分をCクラスへの慰謝料として移譲とします。次に6人への処罰として本日から9月末日までの停学及び10月支給分までのppt支給停止、並びに店舗払い以外の取引行為禁止と致します」
退学以外では最大限に近いと言って良い罰則が下されるのを、黙って見ているしかなかった。
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「本当にありがとうな、摂津!お前が色々動いてくれたお陰でクラスメート達もDの連中に怯えなくて済むし、サッカー部も辞めなくて済んだ!やっぱお前に頼って良かったよ!」
「どういたしまして。近いうちにスタメンデビューなんだ、心置きなく力を揮って行けよ」
「おう!」
颯の無実が証明され、Dクラスの面々へ最大限に近いと言って良い処分が下された、Cクラスにとって正に完全勝利と言っても過言では無い結果となった今回の審判、それが終わり、先にとぼとぼと帰って行ったDクラス側に遅れて退室したCクラス側、その途上で颯はこの結果を勝ち取るべく奔走してくれた清隆へ満面の笑みで礼を言い、清隆も応じつつ激励した。
そんな喜び一杯の颯に対して、何処か複雑そうな表情を浮かべていたのは隆二、何故なら、
「しかし、良かったのか摂津?今回の件で俺達Cクラスに300cptがDクラスから移譲された事で今は963cpt、お前達Bクラスと逆転した事でクラスが入れ替わる事になったんだぞ?」
「構わないさ。オレ達のcptが減った訳じゃないし、Aクラスとの差が広がった訳でもない。卒業後の進路保証がAクラスにしか適用されない以上はBもCも変わらないし、確定まであと2年半もある。一々クラスの昇降格で一喜一憂していたら身が持たないぞ」
「お前はそうだとしてもお前のクラスメートはそう思っているとは限らないだろう?余計な事しやがってと反発する奴も出て来るんじゃないか?」
「オレ達は入学時Dクラス、一番下という前評判での入学だ。オレの注意が無ければCにすら上がれていなかったとまで言われているクラスだぞ、文句は言わせない。それよりも今後脅威となるDクラスを、龍園を叩き潰せた事を安堵すべきだって言い聞かせるさ」
審議の結果Cクラスのcptが一気に増えた事でクラスが入れ替えとなり自分達のクラスが昇格した一方、この件で一番奔走していた清隆のクラスがCに降格してしまったからだ。
今回の審議の結果としてポイントの変動は次の様になる。
Aクラス 1004cpt
Bクラス 845cpt(7/1付よりCクラス)
Cクラス 663cpt→963cpt(7/1付よりBクラス)
Dクラス 492cpt→192cpt
清隆の言う通りcpt自体の変動は無いし、Aクラスとの差も開いた訳では無いのだが、息を吹き返す形でBクラスの座を奪還された事で清隆に反発し、失脚を企てる者が出て来るかも知れない、それを隆二は危惧していたのだが、清隆は平然とした様子で、心配するなと返した。
「その龍園の事なんだが本当に、お前に一任しても良いんだな?」
「ああ、任せろ。Dクラスの、龍園の横暴が本格的になるその前に、牙を引っこ抜いて見せる」
「全くだ。奴がこのまま引き下がるとは思えない、いずれ俺達が考え付かない様な方法でまた仕掛けて来るかも知れないからな。対処してくれると言うのなら、任せる」
そんな中でDクラスへの更なる対応を示唆した清隆に対応を一任してその場を去った隆二、その背後で何処か含みを持たせた笑みを浮かべる清隆の、服の内側に装備されたゼッツドライバーには、空色のカプセム――プロジェクションカプセムが装填されていた。